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第11話「光と影の間」

朝霧透は、机の端に置かれた小さな砂時計を眺めていた。砂が落ちる音は微かで、部屋の静寂に溶け込む。その音さえ、胸の奥に小さな圧迫感を残す。

「……あれ、今の感じ……いや、違う……いや、わからない」

透は言い直す。善意は、意図せずユイの自由を縛る何かになっているように感じる。だが、どう行動すればいいのかはまだわからない。

ユイは、窓際の小さな植物の葉先を指で触れる。茶色く枯れかけた葉が揺れ、光が反射して小さな影を作る。透は手を伸ばそうとするが、届かない。触れられない存在の距離感が、胸の奥の圧迫感をさらに押し広げる。

透は別の行動を考える――カメラを消す、椅子から立ち上がる、雨音を聞きながら深呼吸――どれも選ばれなかった。頭の隅で選ばれなかった行動たちが小さなざわめきとなり、胸の奥の痛みを増幅する。

「透くん……あのね……」

ユイの声はかすれ、途中で途切れる。透は返す言葉を探すが、口はもつれ、胸の奥の崩れが微かに疼く。生活ノイズがそれを際立たせる――冷蔵庫の低いうなり、カーテンの触れる音、秒針の跳ねる音。

「……願わないで……見てるだけ……かな……いや……」

言葉は繰り返すほどに揺れ、意味を失いかける。透は理解できず、ただ胸の奥の圧迫を感じ続けるだけだった。

ユイは、窓の外を見つめながら微かに笑ったような表情を浮かべる。しかし、それが希望なのか絶望なのかは、透にはわからない。光と影が重なる瞬間、日常の微かな違和感が、次の何かを予感させるだけだった。

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