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スキルAIがチートすぎて俺、使われてる気がするんだが?  作者: 暁の裏


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第6話 「咆哮する王者と新たなる声」

『サンタナリア』の町で商隊と別れて、それぞれがやりたい事をやって三日が過ぎていた。

俺たちは次の町『クラリッジ』に向けて街道を進んでいる。

 リナリア――もう心の中では自然にそう呼んでいるがリーナと呼ぶようにと言われている――の正体を知ってからも、三人の関係は変わらない。

 むしろ、秘密を共有したことで絆が深まった気がする。


「悠真さん、あの雲の形、犬に見えませんか?」


 エリアが空を指差して言う。確かに、もこもこした雲が犬のように見えた。


「本当ですね。可愛らしい」


 リナリアも微笑んで空を見上げる。王女という重い立場を忘れ、一人の女性として旅を楽しんでいる彼女の表情は、とても穏やかだった。


『マスター、前方約2キロメートル地点で異常な魔力反応を検知しました。警戒レベル:高』


 AIの警告に、俺は歩みを止める。


「どうかしました?」


 エリアが不思議そうに聞く。


「少し様子がおかしい。何か強い魔物がいるかもしれない」


『マスター、反応がこちらに近づいています。移動速度は時速約40キロメートル。到達予想時刻は3分後です』


 俺は即座に警戒態勢に入る。


「リーナ、エリア。強い魔物が近づいている。戦闘準備を」


 二人の表情が一瞬で引き締まる。リナリアは剣の柄に手をかけ、エリアは杖を構える。

 街道の向こうから、地鳴りのような音が響いてくる。木々がざわめき、鳥たちが一斉に空に舞い上がった。

 そして現れたのは、俺たちがこれまで見たことのない巨大な魔物だった。

 体長は優に5メートルを超える巨大な狼のような形をしているが、その体は岩のような硬い外皮に覆われ、背中からは鋭い棘が無数に生えている。目は血のように赤く光り、口からは毒々しい紫色の煙が立ち上っていた。


『マスター、魔物の詳細を分析しました。種族:スパイクウルフ・キング。特殊能力:毒霧放出、突撃攻撃、岩肌装甲。弱点:腹部と関節部分』


「スパイクウルフ・キング……かなり強そうな相手だ」


 魔物は俺たちを見つけると、低い唸り声を上げる。その声だけで周囲の空気が震え、エリアが一歩後ずさりする。


「こ、こんな大きな魔物……理論で学んだものとは比べ物になりません」

「やばそうだが大丈夫。俺たちなら勝てる」


 俺はリナリアとエリアに向けて言う。


「エリア、君は遠距離から魔法攻撃。特に弱点の腹部を狙ってくれ。リーナ、俺と一緒に近接戦闘。君は左側、俺は右側から攻める」

「承知いたしました」

「わ、わかりました!」


 2人の不安な気持ちが伝わってくるが、怯えている場合ではないことを分かっているのだろう。頬を叩き気合を入れる2人。

 その隙に魔物が最初の攻撃を仕掛けてくる。巨大な体で突進し、俺たちを踏み潰そうとする。


「散開!」


 三人は別々の方向に飛び退く。魔物の巨体が地面に激突し、大きな穴が開いた。


「今だ!」


 俺は〈身体能力強化〉と〈近接格闘術〉と〈ナイフ近接術〉を発動し、魔物の右脇腹に向かって突進する。ナイフを構え、硬い外皮の隙間を狙って攻撃を仕掛けた。

 しかし、予想以上に反応が速く、尻尾が凄まじい速度で繰り出される


「っっ……!」


 俺は避けきれずに、尻尾が当たってしまう。

 だが、スキル〈緊急防御〉が発動し、間一髪で攻撃を無効化する。

 その時、リナリアが左側から切り込んでいく。彼女の剣技は美しく、魔物の足関節部分を正確に狙っていた。


「はぁっ!」


 リナリアの剣が魔物の左前足に切り込むと、ついに外皮を貫いて血しぶきが上がる。


「グルルルルッ!」


 痛みに激昂した魔物が、口から紫色の毒霧を吐き出す。


「毒霧だ! 息を止めろ!」


 三人は慌てて毒霧から退避する。しかし、魔物の攻撃はそれだけではなかった。

 背中の棘を飛ばし、まるで矢のように俺たちに向けて放つ。


「《ウィンドバリア》!」


 エリアが防御魔法を発動し、風の壁を作り出す。いくつかの棘は防げたが、全てを防ぎきることはできない。

 俺の左腕に棘が掠り、鋭い痛みが走る。


『マスター、棘にも軽い毒性があります。体力の消耗が通常の1.5倍になります』


「毒か……厄介だな」


 それでも俺は攻撃の手を緩めない。魔物の動きを観察し、攻撃パターンを読み取ろうとする。


「エリア! 腹部に攻撃魔法を!」

「はい! 《ファイアランス》!」


 エリアが放った炎の槍が魔物の腹部に直撃する。さすがに弱点だけあって、今度はダメージが通った。


「ガアアアアッ!」


 魔物の咆哮が響く。しかし、まだ倒れない。

 リナリアが再び切り込んでいく。今度は右後ろ足の関節を狙っている。


「悠真さん、今です!」


 リナリアの声に応じて、俺は〈身体能力強化〉で跳躍する。魔物の背中に飛び乗り、首の付け根を狙ってナイフを突き立てた。

 今度は深く刺さる感触がある。


「よし!」


 しかし、魔物は背中を激しく揺さぶって俺を振り落とそうとする。俺は必死にしがみつきながら、さらにナイフを深く突き立てた。


「《アイスランス》!《ファイアボルト》!《ウィンドブレード》!」


 エリアが立て続けに魔法を放つ。三つの魔法が同時に魔物の腹部に直撃し、大きなダメージを与える。


「すごい……三つの魔法を同時に!」


 戦闘の中でエリアが急激に成長しているのが分かる。

 魔物がついにバランスを崩し、横倒しになる。俺は飛び降りて、リナリアと共に最後の攻撃に移った。


「一緒に行こう、リーナ!」

「はい!」


 毒で結構体力を減らしているがここで倒れるわけにはいかない。

 気合を入れた俺とリナリアは同時に魔物の首に向かって攻撃を仕掛ける。俺のナイフとリナリアの剣が、同時に急所を貫いた。


「グル……」


 魔物は最後の呻き声を上げて動かなくなる。

 戦闘が終わると、三人は疲労でその場に座り込んだ。


「つ、疲れました……」


 エリアが荒い息をつく。


「でも、やりましたね」


 リナリアも微笑んでいる。汗で髪が顔に張り付いているが、その表情は達成感に満ちていた。


『マスター、戦闘により1000ポイントを獲得しました。累計2110ポイントに到達しました』


 ついに来た。2000ポイント到達。


『第二進化の条件を満たしました。進化を開始しますか?』


「ああ、頼む」



 その瞬間、俺の頭の中で何かが変わった。


『進化完了。演算能力が飛躍的に向上し、知性が芽生えました。旦那様、お疲れさまでした、これからは私のことはAIなのでアイとお呼びください♪』


 声が変わった。機械的だった音声が、明らかに女性の声色になり、感情がこもっている。


『あら、驚いているのですね。私にも感情が芽生えて喜んでいるのですか?』


「えーっと、そうじゃなくって呼び方・・・」


『あ、そうそう。進化したことにより魔法も使えるようになりました。旦那様の回復をお手伝いしますね』


 俺の体が淡い光に包まれ、傷と疲労と毒が回復していく。


「これは……」

「悠真さん、体が光って……」


 エリアが驚いている。


『あ、まずいです。見えちゃいました? まあ、いいでしょう。旦那様の仲間ですから』


 俺は慌てて二人に説明する。


「実は、俺には特殊な能力があって……」


『全部説明する必要はないでしょう。適当に魔法の一種だとでも』


 アイが助言してくれる。確かに、全てを説明するのは難しい。


「魔法の一種で、自己回復能力があるんだ」

「それは便利ですね」


 リナリアは特に深く追求しない。彼女自身も秘密を抱えていたから、他人の秘密を詮索しないのだろう。

 エリアも同じように頷く。


「悠真さんにはまだまだ秘密がありそうですね」


『旦那様、この二人は信頼できそうですが、私のことは秘密にしておいた方が良いでしょうね』


 確かにその通りだ。二人には悪いがしばらく秘密にしておこう。



 魔物の死骸を調べていると、貴重な素材がいくつも手に入った。


「この外皮は鎧の材料として高く売れそうだ」


「棘も武器の素材になりますね」


 エリアが魔法で素材を浮上させ、俺のアイテムボックスに収納していく。


『旦那様、進化したことにより全てのスキル能力が大幅に向上して、アイテムボックスの容量も増大しています、また次の進化に必要なポイントは15000ポイントです』

『1300ポイントを超えたことにより新規スキル魔物支配、1800を超えたことで魔法付与が追加されています』


「魔物支配と魔法付与?」


『魔物支配は格下の魔物をしばらくの間支配できるスキルです。また、魔物が一緒に居たいと思えば使役することも可能です』

『魔法付与はその名の通り武器に魔法を付与できます。また、作成時に付与することで恒久的な付与も可能です。』


「チートすぎだろ」

 

 こんな簡単に魔法付与が手に入るならわざわざ高いナイフを買わなくて良かったのでは?

 アイの話を聴いて、ナイフのことを後悔していると後ろから声が聞こえる。


「これは……魔石ですね。それもかなり高品質の」


 エリアが目を輝かせる。


「魔石?」

「魔法使いにとって必須の道具です。魔法の威力を増幅したり、魔力の回復を早めたりできます」

「それは貴重だな。エリア、君が使ってくれ」


 俺が魔石を差し出すと、エリアは慌てて首を振る。


「そ、そんな! 私にはもったいないです」

「いや、俺たちは魔法が杖は使わないから、君が持っている方が有効活用できる」

「でも……」


 リナリアが口を開く。


「エリアさん、遠慮なさらず。仲間同士、お互いの得意分野を活かすのが大切です」

「……ありがとうございます。大切に使わせていただきます」


 エリアは魔石を受け取ると、杖の先端にはめ込んだ。途端に杖が淡い青い光を放ち始める。


「わあ……魔力の流れが格段に良くなりました」

『旦那様、彼女の魔力効率が約30%向上しています。良い判断ですね』


 夕方になり、俺たちは近くに小さな集落を発見したので休むことにした。

 集落の人々は俺たちが強力な魔物を倒したことを聞いて、大変感謝してくれた。


「スパイクウルフ・キングを倒していただいたとは……ここ数日、家畜が襲われて困っていたのです」


 集落の長老が深々と頭を下げる。


「お礼として、今夜は我々の家に泊まっていただけませんか」


 俺たちは長老の家に泊めてもらうことになった。

 夕食を食べながら、長老が興味深い話をしてくれる。


「実は、最近この辺りで魔物の活動が活発化しているのです」

「どうしてでしょうか?」


 エリアが質問する。


「古い言い伝えによると、近くにある封印された古代の遺跡が何かの拍子に活動を始めると、周辺の魔物が興奮状態になるのだとか」

「古代の遺跡……」


 リナリアが興味深そうに聞く。


「ええ。この先の山の奥に、昔から『禁足地』として立ち入りが禁じられている場所があります。そこに古代文明の遺跡があると言われています」


『旦那様、興味深い情報です。古代遺跡には貴重な魔法具や知識が眠っている可能性があります』


 確かに面白そうだ。しかし、危険も伴うだろう。


「その遺跡は、どのくらい危険なのですか?」


 俺が尋ねると、長老は深刻な表情になる。


「過去に何人もの冒険者が挑戦しましたが、戻ってきた者はほとんどいません。戻ってきた者も、記憶を失っていたり、廃人同然になっていたり……」


 ゾッとする話だった。

 しかし、俺の中で冒険心が疼いている。新たに進化したAIと、信頼できる仲間がいる今なら、挑戦してみる価値があるかもしれない。

 その夜、俺は一人で外に出て星空を見上げていた。


『旦那様、何か考え事ですか?』


「遺跡のことを考えていた。興味があるんだ」


『私も同じです。古代の知識や技術に触れることができれば、旦那様の成長にも大きく寄与するでしょう』


「でも、リーナとエリアを危険に巻き込むわけにはいかない」


『それについては、明日二人と相談してみてはいかがでしょう? 彼女たちも成長したいと思っているはずです』


 確かにその通りかもしれない。

 翌朝、俺は二人に遺跡について相談してみることにした。


「古代遺跡に興味があるんだが、どう思う?」


 エリアの目がパッと輝く。


「古代遺跡ですか! ぜひ行ってみたいです! 古代魔法の研究は私の夢の一つなんです」


 リナリアは少し慎重そうだ。


「確かに興味深いのですが……危険も大きいのでは?」

「もちろん危険はある。でも、俺たちなら乗り越えられると思う」


『旦那様、今がちょうど良いタイミングかもしれません。私の能力も向上していますし、戦闘データも蓄積されています』


 俺はアイの言葉に勇気づけられる。


「それに、古代の知識や技術を手に入れることができれば、今後の旅にも大きく役立つはずだ」


 リナリアは少し考えてから頷いた。


「わたくしも、自分自身をもっと成長させたいと思っています。危険を承知で、挑戦してみましょう」

「やったあ! 古代遺跡探索ですね!」


 エリアが嬉しそうに手を叩く。

 こうして、俺たちは古代遺跡に向かうことを決めた。

 長老から詳しい道順を教えてもらい、必要な装備を整える。


「気をつけてくださいよ。無理は禁物です」


 長老が心配そうに見送ってくれる。


「ありがとうございます。必ず無事に戻ってきます」


 俺たちは集落を後にし、山奥の遺跡に向かって歩き始めた。

 道中、エリアが楽しそうに話す。


「古代文明って、現在よりも高度な魔法技術を持っていたと言われているんです。もしかしたら、失われた魔法の秘術に出会えるかもしれません」

「そんなにすごいのか」

「ええ! 例えば、時間を操る魔法とか、空間を移動する魔法とか……想像するだけでワクワクします」


 エリアの興奮が伝わってくる。彼女の純粋な学究心は、見ていて気持ちがいい。

 リナリアも微笑んでいる。


「エリアさんを見ていると、わたくしも新しいことを学びたくなります」


『旦那様、良いチームワークですね。この調子なら、遺跡攻略も成功しそうです』


 アイの明るい声が響く。確かに、今の俺たちなら何でもできそうな気がする。

 山道を登り続けて数時間、ついに目的地が見えてきた。

 古い石造りの建物が、木々の間に姿を現す。苔むした石壁と、崩れかけた塔が、長い年月の経過を物語っていた。


「あれが遺跡ですね……」


 エリアが感嘆の声を上げる。


「思ったより大きい」


 俺も驚いている。遺跡は想像していた以上に巨大で、複雑な構造をしているようだった。


『旦那様、強力な魔法結界を感知します。この遺跡は単なる廃墟ではありません』


 アイの警告に、俺は身を引き締める。


「みんな、気をつけよう。ここからが本番だ」


 三人は遺跡の入り口に向かって歩いていく。新たな冒険の始まりだった。

 遺跡の入り口には、古代文字で何かが刻まれている。


「この文字、読めるか?」


 エリアが文字を見詰める。

「少しなら……『知恵を求める者、試練に立ち向かえ』と書かれているようです」

「試練か……」


 リナリアが剣の柄に手をかける。


『内部から複数の魔法的な仕掛けを感知します。慎重に進みましょう』


 俺たちはついに遺跡の中に足を踏み入れた。内部は外見以上に広く、天井は高く、壁面には美しい壁画が描かれている。


「美しい……」


 リナリアが壁画に見入っている。


「これらの壁画、古代の魔法使いたちの生活を描いているようですね」


 エリアが興味深そうに解説する。

 しかし、美しさに見とれているばかりではいられない。


『旦那様、前方に魔法的な罠を感知しました。床のパネルに仕掛けがあります、押してみますか?』


「わざわざ罠にハマりに行くバカがどこにいる?」

「?」

「悠真さん、どうかなさいました?」


 急に叫んだせいで二人に心配される。

 なんかコイツ、進化したことで茶目っ気が出てきたなコイツ。


「いや、何でもない。罠がある。慎重に進もう」


 俺たちは一歩一歩、慎重に遺跡の奥へと進んでいく。

 古代遺跡の探索は、きっと俺たちに新たな力と知識をもたらしてくれるだろう。そして、それは王都への旅路を、より意味のあるものにしてくれるはずだ。


『旦那様、この冒険は私たちの成長にとって重要な転機になりそうです』


 アイの声を聞きながら、俺は仲間たちと共に古代の謎に挑んでいく。

 王女との旅、天才魔法使いの少女との出会い、そして進化したAIパートナー。全てが俺を強くしてくれている。

今回のエピソードでは、ついにAIの第二進化を迎えることができました。機械的だった声が感情豊かな女性の声に変わり、魔法まで使えるようになるという大きな転換点でしたね。

次回はどんな話になるのか乞うご期待!


暁の裏

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