第4話「ヴァルムートにて学ぶ力」
グランツを発って三日目の午後。街道は緩やかに森へと入り込み、昼間だというのに木々が陽光を遮り、あたりは薄暗く沈んでいた。地面には落ち葉が分厚く積もり、踏みしめるたびにかすかな音が響く。ときおり木漏れ日が差し込み、光の筋が道を照らしていた。
俺とリーナは並んで歩いていた。彼女は旅装に身を包みながらも、その姿勢は凛として乱れがない。道端の枝に衣の裾が触れても、すぐに指先で静かに整える。その仕草ひとつにも、隠しきれぬ品の良さがにじんでいた。
俺がリーナに見惚れていた――その時だった。
鳥の鳴き声が唐突に途絶え、森の奥から重苦しい気配が流れ込んでくる。背筋がぞくりとした。
「……リーナ、立ち止まれ」
「え? なにかお気づきに――」
彼女が言葉を紡ぐより早く、藪が揺れ、影が飛び出す。
濁った緑色の肌、ぎらつく黄色い眼。粗末な棍棒や錆びた短剣を手にした人型の生き物。
数は十。獲物を囲むように半円を描いて立ち並び、ギギギと喉を鳴らして笑う。
さらに、奥から低く唸る声。
暗がりを割って姿を現したのは、肩まで届きそうな巨体を持つ狼。黒毛が逆立ち、口から滴る唾液が光を反射する。その背後には盗賊と思われる格好の男たちが数人いる。
『マスター、あれは魔物と推測します』
「まさか、ゴブリンにダイアウルフまでいるなんて…」
リーナが恐怖のあまり腰を抜かしてしまう。
そんなに恐ろしい敵なのだろうか?ゲームで見たことはあるが実際に見るのは初めてだ。
リーナの反応を見るに相当厄介な敵に違いないと直感的にそう思った。
「へっへっへ……おい小僧、その女を置いていけ。俺たちの目的はその女だけだ。女を置いて行くなら命だけは見逃してやる」
盗賊の下卑た声に合わせ、ゴブリンたちが囃し立てる。
リーナは怯えた声で
「どうかお気をつけください。」
「ああ、任せろ」
自分でも驚くほど強い声音が出た。心臓は激しく脈打っている。だが逃げ場はない。
だが恐怖はない。俺には村を出てから何体もの野獣と戦い新たなスキルを習得していた。
【累計スキルポイント:502】
《新スキル〈身体能力強化〉を習得しています》
《アイテムボックスの容量が拡張されています。収容容量『中』》
「……スキル発動だ」
『了解しました。』
身体の奥底から、熱が吹き上がってくる感覚。筋肉が膨張し、血流が速くなり、視界が鮮明になる。空気の匂い、ゴブリンの体臭、盗賊の汗までもがはっきりと分かった。
最初に飛び込んできたゴブリンが、棍棒を振り下ろす。だが、世界が遅く見えた。俺は自然に身を捻り、横薙ぎに蹴りを放つ。
――バキッ!
乾いた骨の砕ける音。ゴブリンは呻き声をあげる間もなく宙を舞い、地に叩きつけられて動かなくなった。
「なっ……ゴブリンを、一撃……!?」
「ば、化け物か!」
盗賊の声が裏返る。だがダイアウルフは怯まず、唸りを高めて飛びかかってきた。
迫りくる顎、むき出しの牙。
「うおおおっ!」
強化された腕が勝手に反応する。腰を沈め、拳を突き出す。
轟音とともに、拳が狼の額を撃ち抜いた。
巨体が悲鳴を上げることもなく、地面に転がり、砂煙を巻き上げる。
残ったゴブリンたちが怯え、後ずさる。
「に、逃げろ! こんな奴、聞いてねぇ!」
「依頼主は“娘”を捕らえろと言ってたが……こいつ相手じゃ無理だ!」
盗賊は慌てて仲間を呼び戻し、森の奥へと退いていく。ゴブリンも我先にと散り散りに逃げ去った。
静寂が戻る。荒い呼吸を抑えきれない。
拳を握りしめ、地面に視線を落とす。あまりにあっけなく、命を奪ってしまった。それでも――いまは身体に宿った力の余韻が強くるだけだった・・・
《スキルポイントが350ポイント加算されます。累計ポイントは853ポイントです》
《ゴブリンとダイアウルフの討伐により2100ルス獲得しました》
《累計ポイントが800ポイントを超えたことにより、新規スキル緊急防御を取得》
緊急防御?なんだそれは?
『回避不可能な攻撃や死角からの攻撃を1日に1度まで自動で防御できます』
「なかなか強力なスキルだな」
確実に強くなっている。そう実感せざるを得なかった。
「……ご無事ですか?」
背後から、声が聞こえる。
振り返りながらあぁと答えると、リーナが裾を整えながら安堵の表情を見せた。
「先ほどの者たち……“娘”を捕らえろと申しておりました。やはり、狙われているのはわたくしなのでしょう」
その言葉に胸の奥がざわつく。彼女は何者なのか。なぜ狙われるのか。
答えはまだ闇の中だが――俺は確かに、一歩その真実へ近づいた気がした。
森に静寂が戻ってしばらく。俺は拳を見つめていた。魔物とはいえあの感触は好きにはなれない。
「……すごい力でしたね」
リーナの柔らかな声が、緊張で張り詰めていた空気を和らげる。
「すごいっていうか……怖いくらいだ。あの狼を殴り倒すなんて、自分じゃないみたいだった」
「いいえ。あの一撃は、確かにあなた自身の意志が乗っていました。力に流されることなく、守るために振るった拳……私はそう見えました」
丁寧に言葉を選びながらも、まっすぐに俺を見つめる瞳。その誠実さに、少し救われる気がした。
だが、頭の隅ではさっきの盗賊の叫びが何度も反響していた。――『娘を捕らえろ』。
「……なぁ、さっきの言葉。やっぱりリーナ、お前を狙ってたんだよな」
「……はい。否定はできません。ですが、どうか今は、それ以上お尋ねにならないでいただけますか」
静かに、しかしはっきりとした拒み。
俺は息を吐き、無理に追及するのをやめた。彼女が自分から話すまで待つべきだろう。
「わかったよ。ただ……俺は約束する。どんな理由があっても、もう二度とお前をあんな奴らに渡したりはしない」
「……ありがとうございます。そのお言葉だけで、十分です」
リーナは深く頭を下げた。旅の衣の裾が揺れ、光を受けてきらりと白布が輝いた。
ほんの数日前に出会ったばかりだというのに、不思議と心は固く結びついていく。
その後、二人は森を慎重に進んだ。逃げた盗賊や魔物の残党がいるかもしれない。
しかし幸い、それ以上の襲撃はなかった。
木々の隙間から夕日が差し込み、街道が赤く染まっていく。
「今日は……この辺りで野営をいたしましょうか」
「そうだな。俺も休まないと、体がもたない」
荷を降ろし、焚き火を起こす。燃え上がる炎に照らされ、リーナは丁寧に衣を直し、裾の土埃を払っている。その仕草は、どう見てもただの旅人のものではなかった。
俺は火の揺らめきを見ながら、胸の奥で小さくつぶやいた。
「……高貴な娘、か。本当はどんな人なんだ、リーナ」
答えは夜の森の闇に溶けていった。
次の日の昼過ぎ。小川を見つけ、休憩を取ることにした。
リーナは「少し衣を整えて参ります」と言って、林の影に入っていった。
俺は水を汲みながら、昨日の戦いを思い返す。新しい力――〈身体能力強化〉が、まだ自分のものではないような感覚があった。
ふと、風に揺れる布の音。振り返ると……。
「お待たせいたしま、きゃっ……!」
林の中から出てきた、リーナが足を滑らせて転んできた。
俺の方へ倒れ込むように。
「うわっ!」
慌てて支えた拍子に、柔らかな感触が胸に押し当てられる。
目の前には、普段は凛とした表情のリーナの顔――赤くなって、瞳を泳がせていた。
「……っ! し、失礼いたしました……! わ、わたくしとしたことが……」
耳まで赤く染めて、慌てて身を離す。衣の裾は少し乱れ、白い足首が覗いた。
俺も慌てて視線を逸らす。
「い、いや……こっちこそ。大丈夫か?」
「は、はい……。お手を煩わせてしまい、申し訳ございません」
気まずい沈黙が流れる。小川のせせらぎだけが耳に残った。
けれど、不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ……リーナとの距離が、ほんの少しだけ近づいた気がした。
休憩を終え、街道に戻る。
リーナは恥ずかしそうに、それでもいつものように丁寧な声で言った。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。先ほどのことは……どうか、お忘れくださいませ」
「……迷惑なんかじゃないよ。俺は、一緒に旅してる仲間だからさ」
リーナは驚いたように目を瞬かせ、それから小さく微笑んだ。
森を抜ける街道を進むと、風がやわらかくなり、遠くに開けた平野が広がっていった。歩きながら、俺は隣を行くリーナに声をかける。
「王都まではまだ距離があるけど他に町はあるのか?」
「近くにヴァルムートという町が近くにあります」
「なあ、リーナ。……ヴァルムートって、どんな町なんだ?」
彼女は少し歩調をゆるめ、空の方を見上げてから静かに答えた。
「ヴァルムートは交易と学問の町として知られております。西方からの商隊が必ず立ち寄るため、珍しい品々が市場に並びますし、各地から学者や魔法使いが集まる書庫もございます。ですから、活気と知識の両方に満ちた場所なのです」
「交易と学問、それと魔法使いか……なるほど。もしかしたら魔法について学べるかもしれないな」
俺は魔法という言葉を聴いて胸躍らせていた。
「ええ。それに、ヴァルムートの中央広場には大きな噴水がありまして……そこは町の象徴とも言える光景です。旅人も市民も集い、時には吟遊詩人が歌を披露することもございます」
彼女の言葉は、まるで町そのものを絵に描いて見せているようだった。聞いているだけで、まだ見ぬ景色が胸に広がっていく。
「へえ……想像するだけで賑やかそうだな。俺みたいな田舎者でも浮かないだろうか」
「浮くことなどございませんわ。むしろ、さまざまな出自の方々が集まる町ですから、誰もが受け入れられるでしょう。ただ……」
「ただ?」
リーナは言葉を選ぶように少し間を置いてから続けた。
「治安は決して悪くはございませんが、人も物も多く集まるゆえに、影もまた濃くなるのです。市場での盗難や詐欺まがいの取引もございますから、どうかお気をつけくださいませ」
「……忠告ありがとう。気を引き締めておくよ」
彼女の丁寧な口調の裏にある、確かな知識と経験。その姿を見て、ただの旅人ではないことを改めて実感する。だが彼女は微笑みを浮かべ、あくまで「偽名のリーナ」として振る舞い続けていた。
「無事にたどり着けましたら、ぜひ共に市場を巡りましょう。きっとあなたの商いの助けになるはずです」
「おう、楽しみにしてる」
二人の足取りは軽く、やがて遠方に石造りの高い城壁らしき影が見え始めた。――そこが、ヴァルムートの町だった。
「リーナ、あの町がヴァルムートかな?」
俺が指をさすと、彼女は視線を追い、静かに頷く。
「はい、まさにお話に聞いた通りでございます。城壁は石造りでしっかりとしており、中央広場には噴水、周囲には商店や工房が立ち並び、街の活気がひと目で伝わってまいります」
門前に立つ門衛が行き交う商隊や旅人を確認している。馬車がぎしぎしと音を立て、子供たちが広場で遊ぶ声が聞こえる。市場の屋台では果物や野菜、香辛料や布製品が所狭しと並び、通行人が品定めをしている。
「活気のある町だな……グランツよりもずっと大きい」
「ええ。交易路の要衝であるため、様々な地域から商人が訪れます。それに学問の面でも知られておりまして……特に魔法に関しては、この町に拠点を置く学者や魔法使いも多くございます」
町の門をくぐると、広場には多くの人々が集まっており、噴水の周りでは吟遊詩人が歌を披露していた。屋台の香ばしい匂いや、果物の甘い香りが風に乗って流れてくる。まるで別世界に迷い込んだような感覚だ。
俺たちが広場を進んでいると、近くで騒ぎが起きた。小柄な男が数匹の魔物に囲まれていたのだ。
直感で、俺は駆け出した。
「待ってろ!」
魔物はゴブリンとは異なり、灰色の毛皮に覆われた四足獣。鋭い爪と牙を持ち、恐ろしい速さで飛びかかってくる。俺は〈身体能力強化〉を頼りに、素早く回避しつつ反撃。魔物は地面に叩きつけられ、苦悶の声を上げた。
戦闘が終わると、助けた男は息を整えながら深く頭を下げる。
「助けていただき、感謝します……私はこの町の魔法学校、アルカナ・アカデミアの校長でエルドリック・ファルメインと申します。お名前をお聴きしても?」
俺たちは自己紹介を済ませこの町で魔法のことを学びたいと伝えると、男は微笑んで言った。
「……ならば、ぜひ我が校で数日間、滞在しませんか? あなた方にはちょうど良い学びの場になるでしょう。特に魔法について学ぶことは、これからの旅に大きな助けとなるはずです」
リーナは微かに頭を下げる。
「ご提案、誠にありがとうございます。わたくしたちにとっても、有意義な時間となることでしょう」
俺は心の中で少し驚いた。魔法を学べる……しかも数日間。これは商売の準備や今後の旅にも大きく役立つ。
ヴァルムートの街に到着した次の日、俺たちは校長エルドリック・ファルメインの案内で、街外れの大きな建物――アルカナ・アカデミアへと足を踏み入れた。
石造りの建物は重厚で、塔がいくつもそびえ、窓からは魔力を帯びた淡い光が漏れていた。建物の壁面には魔法陣が刻まれ、門の前には光の結界が張られている。
門をくぐると、広い中庭に噴水と花壇が整然と配置され、訓練場へ続く通路には生徒たちが杖を手に魔力の制御を練習していた。
「ここが……魔法学校か」
俺は思わず息をのむ。グランツやヴァルムートの町並みとは違い、神聖な場所に来たかのような感覚だった。
「お待ちしておりました、お二方」
校長エルドリック・ファルメインは静かに歩み寄り、深々と頭を下げる。
長い白髪を後ろで束ね、濃紺の魔法衣に金の刺繍が施されている。瞳には知識と経験の重みが宿り、威厳が漂っていた。
「こちらが我が校です。数日間、あなた方にはこの学校で滞在し、魔法の基礎と応用、そして戦闘への活用法を学んでいただきます」
「承知いたしました。よろしくお願いいたします」
リーナは丁寧にお辞儀をし、言葉の端々に礼儀正しさと慎重さが滲む。
教室に案内された俺たちは教壇の横に立つ。教室は円形の広さを持ち、床には大小さまざまな魔法陣が刻まれていた。天井は高く、天窓から光が差し込み、空中には微かな魔力の粒が漂う。壁には魔法書が整然と並び、巻物や研究資料が重ねられ、ところどころに浮かぶ光の球体が、淡く照明として光っていた。
この学校生徒たちがそれぞれの机に座っている。
校長のエルドリック・ファルメインは教壇に立ち、静かに口を開く。
「おはようございます皆さん、今日は皆さんと一緒に数日間学ぶことになった人達を紹介します」
「一ノ瀬悠真です。よろしくお願いします。」
「リーナと申します。よろしくお願いいたします。」
「それでは空いている席についてください」
俺たちは窓際の席に腰掛ける。
「それでは授業を始めます。まず、魔法とは何か――その本質を理解することから始めます」
彼の声は低く落ち着いており、しかし一言一言に重みがある。耳に入るたび、俺の中で理屈としてではなく、感覚として魔力の存在が伝わってくるようだ。
「魔法とは、自然界に存在するエネルギーを引き出し、意志と法則によって形作る行為です。スキルとは異なりますが、基本の構造は非常に似ています」
エルドリックが杖を掲げると、教室中央の魔法陣が淡く光り、空間に波紋のような揺らぎが広がった。
「目で見える光、耳に届く音、手で感じる圧……すべてが魔法の波動です。この感覚を捉え、理解することが魔法の第一歩となります」
俺は視界の端に浮かぶスキルウィンドウを確認する。
――《魔法理解》習得率:15%
理論を理解しているつもりでも、実際に魔力を手元に集めると、感覚が波のように変化する。熱や冷気、微かな振動――それを正確に操作するのは難しいが、スキルが情報を整理してくれるため、理論と感覚が少しずつ結びつく。
リーナも隣で静か、魔力の流れを手のひらで感じている。
「少しずつ、魔法の感覚が……掴めてまいりました」
彼女の声はいつも通り丁寧で落ち着いているが、額には薄く汗が光り、集中の深さがうかがえる。
校長は教壇を降り、俺たちの前を歩きながら説明を続ける。
「魔法は単に呪文を唱えるだけではありません。魔力の流れを理解し、制御し、目的に合わせて変化させる――それが魔法の醍醐味です」
言葉に従い、俺は手のひらに小さな光の球を浮かべてみる。最初は揺らぐだけで安定しなかったが、スキルの補助で、球は静かに浮かび、光を放ちながらゆらゆらと揺れる。
教室の周囲を見ると、他の生徒たちも真剣に魔法と向き合っている。ある者は火の球を操り、ある者は小さな氷の結晶を生み出す。だが、まだ誰も俺やリーナほどスムーズには扱えていないようだ。
「次に、魔法の制御を身体と結びつける訓練に移ります」
エルドリックは杖を掲げ、教室中央に一瞬の閃光を走らせる。その光が空中に広がると、周囲の空気が振動するように感じられる。
「魔力は身体と精神の両方で制御されるのです。意志だけでなく、体全体の感覚を研ぎ澄ませなさい」
俺は〈身体能力強化〉スキルを発動する。筋肉が熱を帯び、視界が鮮明になり、周囲の魔力の流れがまるで線として見えるような感覚が広がる。これを利用し、手元の光の球の大きさや浮かぶ位置を正確に調整する。
リーナも同じように集中する。指先から、呼吸のリズムまで、すべてが魔力と同期しているように見える。
『マスター、次は防御魔法の組み合わせを試すべきでございます』
「わかった、やってみる」
俺は小さな防御壁を立て、その上に炎の弾を打ち上げる。魔力の流れとスキルの補助により、精度は格段に上がっていた。
授業は数時間にわたり続いた。光、炎、風、氷……さまざまな属性の魔法を順番に操り、対象物への影響や軌道、威力の調整を試す。俺はスキルの情報を取り込みつつ、魔力の細かな波動まで理解していく。
リーナも焦ることなく、ひとつひとつの動作を正確に行う。
「ここで魔力をこう流すと、炎は円を描くように変化するのですね」
彼女の丁寧な口調が響き、周囲の生徒たちも感嘆の声を上げる。
校長は時折アドバイスをしながら、俺たちの進度を確認している。
「君たちは異常に吸収が早い。最初からここまで魔力を制御力するとは素晴らしい」
授業の終盤、校長は杖を高く掲げ、大きな光の渦を作り出す。
「では最後に、学んだ魔法を組み合わせ、攻撃・防御・支援の三種を同時に行使してみなさい」
俺は炎の弾、防御壁、光の回復球を同時に操作する。スキルの補助がなければ絶対に無理な精密さだが、体と意識、魔力が一体化する感覚は爽快だった。
リーナも隣で魔法を連動させる。光の盾、氷の罠、風の小波――ひとつひとつの魔法が互いに干渉せず、完璧に統合されていた。
最後に、校長は満足げに微笑んだ。
「よくできました。あなた方には、素晴らしい才能があるようですね。それに素晴らしい応用力。さらに極めれば、旅路での力は飛躍的に高まるでしょう」
俺とリーナは静かに頷く。教室を後にするころには、疲労よりも達成感と自信が身体を満たしていた。
それから数日たち俺たちは魔法についての理解を深めていった。
そんなある日校長に呼び出され校長室へと足を運んでいた。
「急に呼び出してしまって申し訳ありません」
「構いません。それで要件というのは?」
「私には娘がいるのです。昔から魔法のことを教え込んできたおかげで、今では天才少女といわれているのですが、周りとの実力が付きすぎてしまったせいでこの学校で学べることがなくなってしまったのです」
「それでお願いというのは、あなたたちの旅に娘を同行させていただきたいのです。素晴らしい才能を持っているあなたたちについていけば新たな発見ができると考えているのです」
俺とリーナは顔を見合わせ考える。リーナのこともある。盗賊たちにまた襲われるかもしれない。そんな中校長の大事な娘さんを連れて行っていいのだろうか?
校長は考え込んでいる俺たちを見て
「心配はいりませんよ、私の娘は強いですから」
そう言い切った校長は自信で満ち溢れていた。それを見て俺は思った。この人親バカなんだと...
ヴァルムートでの数日間は、主人公とリーナ、そして新たに仲間となるアリシアにとって、魔法の力を体感する貴重な時間でした。魔力の流れを学び、身体と意志を一致させることで、二人の力はさらに研ぎ澄まされていきます。
読者の皆さまには、魔法という未知の力と、現代のスキルが交わる瞬間のワクワクを少しでも感じていただけたなら幸いです。この学びが、彼らの旅路にどのような影響を与えるのか――次の冒険への扉は、今まさに開かれようとしています。
暁の裏




