第25話 「帝都襲撃!深淵の使徒が動き出す!?」
朝日が王都の街並みを優しく照らす。
俺は自宅の寝室で、ゆっくりと目を覚ました。
「んん……」
窓から差し込む光が心地よい。
昨夜の修羅場は何とか収まり、エリーゼも客室で休んでいるはずだ。
「旦那様、おはようございます♪」
アイが姿を現す。
青い髪の妖精が、俺の枕元で微笑んでいる。
「おはよう、アイ。よく眠れたよ」
「それは良かったです♪ 今日は特に予定がありませんから、ゆっくりしてください」
「そうだな……」
俺はベッドから起き上がり、窓の外を見る。
王都の街は活気に満ちている。商人たちが店を開き、子供たちが路地を駆け回っている。
「平和だな……」
「ええ。でも、この平和が永遠に続くとは限りませんね」
アイの言葉に、俺は少し表情を曇らせる。
「深淵の使徒のことか……」
「はい。昨日の村襲撃事件もありましたし、ゼノの脅威も無視できません」
「わかってる。でも、今はこの平和を楽しもう」
俺が微笑むと、アイも嬉しそうに頷いた。
「そうですね♪ では、朝食の準備をしましょう」
一階の食堂に降りると、すでにリナリアとシルヴィアが朝食の準備をしていた。
「おはようございます、悠真さん」
リナリアが微笑む。
その表情は穏やかだが、どこか疲れているようにも見える。
「おはよう、リナリア。この間はすまなかった」
「いえ、大丈夫です。ただ……」
リナリアが少し頬を染める。
「エリーゼ様は、とても積極的な方ですね」
「ああ……まあ、そうだな」
俺は苦笑する。
「悠真様、おはようございます」
シルヴィアが料理を運んでくる。
焼きたてのパン、スープ、卵料理、そしてフルーツ。栄養バランスの取れた朝食だ。
「おはよう、シルヴィア。いつもありがとう」
「いえいえ。悠真様のためですから♪」
シルヴィアが嬉しそうに微笑む。
その時、階段から足音が聞こえてきた。
「おはよう、みんな」
エリアが降りてくる。
「おはようございます、エリアさん」
「おはよう、エリア」
「今日はいい天気ですね」
エリアが窓の外を見る。
「ええ。こんな日は、外で過ごしたいですね」
リナリアが言う。
「そうだな。じゃあ、みんなで公園にでも行くか?」
俺が提案すると、全員が嬉しそうに頷いた。
「それは良いですね」
「わたくしも賛成です」
「わたしも行きたいです!」
リリィも階段を駆け下りてくる。
「お兄ちゃん、おはよう!」
「おはよう、リリィ」
俺がリリィの頭を撫でると、彼女が嬉しそうに笑う。
「それじゃあ、朝食を食べたら公園に行こう」
「はーい!」
リリィが元気よく返事をする。
朝食を終えた俺たちは、王都の中央公園に向かった。
公園は広大で、美しい花壇や噴水、そして大きな木々が立ち並んでいる。
朝の時間帯だが、すでに多くの人々が散歩や運動を楽しんでいた。
「わあ、綺麗……」
リリィが花壇を見て感嘆する。
「本当ですね。色とりどりの花が咲いています」
エリアも微笑む。
「この公園は、王都でも有数の美しい場所なんです」
リナリアが説明する。
「春には桜のような花が咲き、夏には緑が深まり、秋には紅葉が見られます」
「へえ、それは素敵だな」
俺も感心する。
「悠真様、あそこにベンチがあります。座りましょう」
シルヴィアが指差す。
「そうだな」
俺たちはベンチに座り、しばらく公園の景色を楽しんだ。
「こうしてみんなで過ごす時間、いいですね」
エリアが呟く。
「ええ。最近は戦闘ばかりでしたから」
リナリアも同意する。
「お兄ちゃん、あそこで鳥が遊んでるよ」
リリィが池を指差す。
池の周りでは、様々な鳥たちが羽を休めたり、水を飲んだりしている。
「本当だ。平和だな」
俺が呟くと、アイが姿を現す。
「旦那様、この平和な時間を大切にしてくださいね♪」
「ああ、わかってる」
その時、公園の入口から一人の少女が走ってくるのが見えた。
金髪のツインテール、深紅の瞳。
エリーゼだ。
「あ、エリーゼ様!」
シルヴィアが気づく。
「おはよう、みんな」
エリーゼが息を切らせながら近づいてくる。
「エリーゼ、どうした? そんなに慌てて」
俺が尋ねる。
「実は……城に戻ったら、父上が会いたいって」
「皇帝陛下が?」
「ええ。帝国に関する重要な話があるらしいの」
エリーゼの表情が真剣になる。
「わかった。すぐに行こう」
俺たちは公園を後にし、帝国へと向かった。
宮殿の謁見の間に到着すると、皇帝カールが待っていた。
その表情は厳しく、何か重大な事態が起きていることが伺える。
「一ノ瀬悠真殿、よく来てくれた」
皇帝が言う。
「陛下、何かあったのですか?」
俺が尋ねる。
「実は……昨夜、帝国北部でまた村が襲撃された」
「また……?」
「ええ。今度は二つの村が同時に襲われ、村人全員が消失した」
皇帝の声が重い。
「二つの村……深淵の使徒の仕業ですか」
「恐らく。そして、さらに悪い知らせがある」
皇帝が立ち上がる。
「帝都の北門付近で、黒いローブを纏った集団が目撃された」
「帝都に……!?」
俺は驚く。
「まだ帝都内には侵入していないが、時間の問題だろう」
「陛下、帝国軍は?」
「すでに北門に兵を配置している。だが、相手は深淵の使徒だ。通常の兵では太刀打ちできないかもしれない」
皇帝が俺を見つめる。
「一ノ瀬悠真殿、力を貸してほしい」
「もちろんです。俺たちも協力します」
俺が即答すると、皇帝は安堵の表情を見せた。
「ありがとう。では、詳しい状況を説明しよう」
商務大臣フリードリヒが地図を広げる。
「北門から約五キロの地点に、黒ローブの集団が陣取っています。その数、推定五十名」
「五十名……」
「はい。そして、彼らは強力な魔物を数体従えています」
「魔物……」
「ダークウルフ、ダークゴーレム、そして……ダークグリフォンです」
フリードリヒが続ける。
「ダークグリフォン……それは厄介ですね」
リナリアが眉をひそめる。
「ええ。グリフォンは空を飛び、強力な攻撃を仕掛けてきます。地上の兵だけでは対処が困難です」
「わかりました。俺たちが何とかします」
俺が決意を固める。
「ありがとう、何かあればエリーゼも出陣してくれ」
皇帝がエリーゼを見る。
「はい、父上」
エリーゼが頷く。
「では、準備が整い次第、出発してくれ」
「了解しました」
こうして、俺たちは帝都防衛の任務を受けることになった。
場面は変わり、帝都北門。
石造りの巨大な門の前に、帝国兵たちが整列している。
その数、約五百名。
重装備の歩兵、弓兵、そして魔法兵。
門の上には、近衛隊長ヴォルフガング将軍が立っている。
「全軍、警戒を怠るな! 敵はいつ攻めてくるかわからん!」
将軍の声が響く。
「はっ!」
兵士たちが声を揃える。
その時、門の外から不気味な音が聞こえてきた。
ゴォォォォ……
低く、重い音。
まるで、大地が唸るような音だ。
「来るぞ……!」
将軍が剣を抜く。
門の外、約一キロの地点に、黒い影が見える。
それは徐々に近づいてくる。
黒いローブを纏った集団。
その周りには、巨大な魔物たちが従っている。
「あれが……深淵の使徒か……」
兵士の一人が呟く。
「恐れるな! 我々は帝国兵だ! 帝国の誇りにかけて、奴らを一歩も通すな!」
将軍が叫ぶ。
「おおおお!」
兵士たちが士気を高める。
しかし、その顔には明らかな恐怖が浮かんでいる。
深淵の使徒。
伝説の組織。
その名を聞いただけで、多くの人々が震え上がる。
黒ローブの集団が、門から五百メートルの地点で止まった。
その中から、一人の人物が前に出る。
ローブのフードを取ると、青白い肌の男が現れた。
長い黒髪、赤い瞳。
その表情は冷酷で、生気が感じられない。
男の声が、不気味に響く。
「帝国の愚かな兵士たちよ。我々に逆らえば、死しかない」
「ふざけるな! 貴様らのような悪党に、帝都は渡さん!」
将軍が叫ぶ。
「ほう……勇敢だな。だが、無駄だ」
ローブ男が手を上げる。
「我が配下たちよ、進め。帝都を蹂躙せよ」
「オオオオオ!」
黒ローブたちが一斉に叫び、前進を始める。
そして、魔物たちも咆哮を上げた。
「ガルルルル!」
ダークウルフの群れが、地を蹴って突進してくる。
その数、約二十体。
一体一体が、通常の狼の三倍はある巨体だ。
「弓兵、射撃開始!」
将軍が命令する。
ヒュンヒュンヒュン!
矢の雨が、ダークウルフたちに降り注ぐ。
ガキンガキン!
しかし、矢はダークウルフの硬い毛皮に弾かれる。
「くそっ、効いていない!」
弓兵の一人が叫ぶ。
「魔法兵、魔法攻撃!」
将軍が次の命令を出す。
「《ファイアボール》!」
「《ライトニング》!」
「《アイスランス》!」
魔法兵たちが、様々な魔法を放つ。
ドォン!
炎、雷、氷の魔法が、ダークウルフたちに命中する。
「キャイン!」
何体かのダークウルフが倒れる。
「よし、効いているぞ!」
兵士たちが喜ぶ。
しかし、その喜びは束の間だった。
「グルルルル……」
倒れたはずのダークウルフたちが、ゆっくりと立ち上がる。
傷口から黒い霧が噴き出し、傷が瞬時に治っていく。
「なんだと……!?」
「馬鹿な……治った!?」
兵士たちが驚愕する。
「ふふふ……我が配下は、通常の魔物とは違う。深淵の力で強化されているのだ」
ローブ男が嘲笑う。
「くそっ……!」
将軍が歯噛みする。
その時、空から巨大な影が降りてきた。
「ギャアアアア!」
ダークグリフォンだ。
鷲の頭と翼、獅子の体。
全身が黒い鱗に覆われ、目は赤く光っている。
「グリフォンだ! 空中からの攻撃に備えろ!」
将軍が叫ぶ。
ダークグリフォンが急降下し、鋭い爪で兵士たちを襲う。
「ぐああああ!」
数人の兵士が爪に引き裂かれ、倒れる。
「衛生兵! 負傷者を後方に!」
将軍が指示を出す。
「はっ!」
衛生兵たちが負傷者を運び出す。
しかし、ダークグリフォンの攻撃は止まらない。
空中から何度も急降下し、兵士たちを次々と倒していく。
「くそっ、空から攻撃されたら防ぎようがない!」
兵士の一人が叫ぶ。
そして、地上ではダークウルフたちが門に迫っていた。
「歩兵隊、槍を構えろ!」
将軍が命令する。
「はっ!」
重装備の歩兵たちが、長槍を構える。
ダークウルフたちが、歩兵隊に突進してくる。
ガキィン!
槍がダークウルフの体に突き刺さるが、致命傷には至らない。
「硬い……!」
歩兵の一人が驚く。
「ガルルル!」
ダークウルフが歩兵に噛みつく。
「ぐあああ!」
歩兵が倒れる。
「くそっ、このままでは……!」
将軍が焦る。
その時、地面が激しく揺れた。
ドシン、ドシン、ドシン!
重い足音が近づいてくる。
「まさか……」
将軍が顔を上げると、巨大な石の塊が歩いてくるのが見えた。
ダークゴーレムだ。
高さ十メートルはある巨体。
全身が黒い岩石で覆われ、目だけが赤く光っている。
「ゴーレムまで……!」
「魔法兵、総攻撃! ゴーレムを止めろ!」
将軍が叫ぶ。
「《メガファイアボール》!」
「《サンダーストーム》!」
「《アイスブラスト》!」
魔法兵たちの最強魔法が、ゴーレムに命中する。
ドォォォン!
巨大な爆発が起こる。
「やった……か?」
兵士たちが期待を込めて見つめる。
しかし、煙が晴れると、ゴーレムは無傷で立っていた。
「嘘だろ……」
「あんなに攻撃したのに……」
兵士たちが絶望する。
「ゴオオオオ!」
ゴーレムが拳を振り上げ、地面に叩きつける。
ドゴォン!
地面が割れ、衝撃波が兵士たちを吹き飛ばす。
「うわああああ!」
数十人の兵士が倒れる。
「くそっ……このままでは全滅だ……!」
将軍が拳を握りしめる。
帝国兵たちは必死に戦うが、深淵の使徒の魔物たちには歯が立たない。
ダークウルフの再生能力。
ダークグリフォンの空中攻撃。
ダークゴーレムの圧倒的な防御力。
そして、黒ローブの魔法使いたちも、強力な魔法を次々と放ってくる。
「《ダークボルト》!」
「《シャドウランス》!」
「《カース・フォッグ》!」
闇の魔法が、兵士たちを襲う。
「ぐあああ!」
「助けてくれ……!」
兵士たちが次々と倒れていく。
将軍は、自らも剣を振るって戦っていた。
「はあああ!」
将軍の剣が、ダークウルフを切り裂く。
しかし、ダークウルフはすぐに再生する。
「くそっ、きりがない……!」
将軍が汗を流す。
その時、ドレッドが将軍の前に現れた。
「ほう、近衛隊長ヴォルフガング将軍か。貴様の勇名は聞いている」
「貴様……!」
将軍が剣を構える。
「だが、貴様の力も、ここまでだ」
ドレッドが手を上げる。
「《ダークネス・スフィア》」
黒い球体が、将軍に向かって飛んでくる。
「くっ……!」
将軍が剣で防ごうとするが、黒い球体は剣を貫通し、将軍の体に命中する。
「ぐあああああ!」
将軍が膝をつく。
「将軍!」
兵士たちが叫ぶ。
「ふふふ……終わりだ」
ドレッドが将軍にとどめを刺そうとする。
その時――
場面は変わり、宮殿の奥、エリーゼの執務室。
エリーゼは、帝都北門からの報告を聞いていた。
「なんですって!? 将軍が倒れた!?」
エリーゼが立ち上がる。
「はい、皇女殿下。ヴォルフガング将軍が、深淵の使徒に倒されました」
伝令の兵士が報告する。
「そして、兵士たちも次々と倒れています。このままでは、北門が突破されます」
「くっ……」
エリーゼが拳を握りしめる。
「私が直接出る!」
「で、ですが皇女殿下! 危険です!」
側近が止めようとする。
「黙りなさい! 私は帝国騎士団の名誉団長よ! 民が危機に瀕しているのに、ここで傍観しているわけにはいかないわ!」
エリーゼが剣を取る。
「それに……一ノ瀬悠真たちの準備が完了するまで、時間を稼がなければ」
「わかりました……」
側近が頷く。
「では、精鋭騎士百名を招集します」
「お願い。急いで」
数分後、エリーゼは百名の精鋭騎士を率いて、宮殿を出た。
「全軍、私に続け! 帝都を守るのよ!」
「おおおお!」
騎士たちが雄叫びを上げる。
エリーゼは馬に乗り、北門へと駆けていく。
その姿は凛々しく、まるで戦女神のようだった。
一方、俺たちは宮殿の応接室で、最終確認をしていた。
「リナリア、準備はいいか?」
「はい、いつでも」
リナリアが剣を握りしめる。
「エリア、魔法は?」
「準備万端です」
エリアが杖を構える。
「リリィ、浄化魔法は?」
「うん、大丈夫!」
リリィが元気よく答える。
「シルヴィア、龍の力は?」
「いつでも変身できます」
シルヴィアが頷く。
『旦那様、各種スキルの確認も完了しました』
アイが報告する。
「よし、それじゃあ――」
その時、扉が勢いよく開いた。
「悠真! 大変だ!」
息を切らせて入ってきたのは、商務大臣フリードリヒだ。
「フリードリヒ閣下、どうしました?」
「北門が……北門が深淵の使徒に襲撃されている!」
「え……!?」
「ヴォルフガング将軍が倒され、兵士たちも次々と倒れている! エリーゼ様も出陣されたが、このままでは、北門が突破される!」
「くそっ、予想より早い……!」
俺は立ち上がる。
「みんな、急ぐぞ! 北門へ向かう!」
「はい!」
全員が頷く。
「《空間転移》!」
俺は全員を転移させようとする。
しかし――
『旦那様、魔法妨害が発生しています!』
アイが警告する。
「魔法妨害……!?」
『はい。北門周辺に強力な魔法結界が張られています。転移魔法が使えません』
「くそっ、深淵の使徒め……用意周到だな……」
「どうするんですか、悠真さん?」
リナリアが尋ねる。
「仕方ない。走るぞ! 全速力で北門へ向かう!」
「わかりました!」
俺たちは宮殿を飛び出し、北門へと駆け出した。
帝都の大通りを全速力で駆ける。
《身体能力強化》を発動し、通常の人間の何倍もの速度で走る。
「急げ、急げ!」
俺が叫ぶ。
「はい!」
みんなが必死についてくる。
帝都の街並みが猛スピードで流れていく。
商店、民家、広場……
そして、遠くから戦いの音が聞こえてくる。
ドォン、ドォン!
爆発音。
ガキィン、ガキィン!
金属がぶつかる音。
そして、人々の悲鳴。
「もうすぐだ!」
俺が叫ぶ。
北門が見えてきた。
そこは、まさに地獄絵図だった。
場面は再び、北門。
ドレッドが、倒れたヴォルフガング将軍にとどめを刺そうとした、その瞬間――
「《紅蓮の剣・爆炎斬》!」
炎を纏った剣撃が、ローブ男に襲いかかる。
「なに!?」
ローブ男が咄嗟に飛び退く。
ドォン!
剣撃が地面に命中し、大爆発を起こす。
「誰だ……!?」
煙の向こうを見る。
煙が晴れると、一人の少女が立っていた。
金髪のツインテール、深紅の瞳。
手には、炎を纏った剣。
「私の名はエリーゼ・フォン・ベルガリア! ベルガリア帝国第一皇女にして、帝国騎士団名誉団長!」
エリーゼが剣を構える。
「《紅蓮の剣》。帝国に代々伝わる宝剣」
「この力で貴様ら深淵の使徒を、ここで食い止める!」
「ほう……帝国の皇女か」
ドレッドが興味深そうに見る。
「だが、小娘一人で何ができる」
「一人じゃないわ!」
エリーゼの後ろから、百名の精鋭騎士たちが現れる。
「帝国騎士団、突撃!」
「おおおお!」
騎士たちが一斉に突進する。
「フン、無駄だ」
ドレッドが手を上げる。
「《ダークウェーブ》!」
黒い波動が、騎士たちに襲いかかる。
「くっ……!」
騎士たちが防御魔法を展開する。
しかし、黒い波動は防御魔法を貫通し、騎士たちを吹き飛ばす。
「ぐああああ!」
数十人の騎士が倒れる。
「みんな!」
エリーゼが叫ぶ。
「ふふふ……帝国騎士団など、この程度か」
ローブ男が嘲笑う。
「黙りなさい……!」
エリーゼが剣を握りしめる。
「《紅蓮の剣・炎龍舞》!」
エリーゼが剣を振るうと、炎の龍が現れる。
「ゴオオオオ!」
炎の龍が、ローブ男に襲いかかる。
「ほう、なかなかやるな」
ローブ男が手を振るう。
「《シャドウシールド》」
黒い盾が現れ、炎の龍を防ぐ。
ドォン!
炎と闇がぶつかり、大爆発を起こす。
「くっ……!」
エリーゼが後退する。
「だが、まだだ!」
エリーゼが再び剣を振るう。
「《紅蓮の剣・連炎斬》!」
連続する炎の斬撃が、ローブ男に襲いかかる。
ローブ男は、それらを全て避ける。
「速い……!」
エリーゼが驚く。
「皇女よ、貴様の実力は認めよう。だが、まだ甘い」
ローブ男が反撃する。
「《ダークランス》!」
黒い槍が、エリーゼに向かって飛んでくる。
「くっ……!」
エリーゼが剣で防ぐ。
ガキィン!
しかし、黒い槍の威力は凄まじく、エリーゼが後ろに吹き飛ばされる。
「ぐっ……!」
エリーゼが地面に膝をつく。
「エリーゼ様!」
騎士たちが駆け寄る。
「大丈夫……まだ戦える……」
エリーゼが立ち上がる。
しかし、その体は傷だらけだ。
「ふふふ……よく頑張った。だが、ここまでだ」
ローブ男が手を上げる。
「《ダークネス・ジャッジメント》」
巨大な黒い光球が、エリーゼたちに向かって降ってくる。
「まずい……!」
エリーゼが剣を構える。
「《紅蓮の剣・炎の盾》!」
炎の盾が現れ、黒い光球を防ごうとする。
しかし、黒い光球の威力は圧倒的だった。
バリバリバリ!
炎の盾が砕ける。
「くっ……!」
エリーゼが必死に耐える。
しかし、もう限界だった。
「もう……ダメ……」
エリーゼの視界が暗くなる。
その時――
「《時空間シールド》!」
金色の光が、エリーゼたちを包み込む。
黒い光球が、金色の盾にぶつかる。
ドゴォォン!
凄まじい爆発が起こる。
しかし、金色の盾は砕けない。
「なに……!?」
ローブ男が驚く。
「誰だ……!?」
煙が晴れると、一人の青年が立っていた。
黒い髪、鋭い目つき。
その周りには、四人の少女たちがいる。
「遅くなって悪かった、エリーゼ」
悠真が微笑む。
「悠真……!」
エリーゼが安堵の表情を見せる。
「あとは、俺たちに任せろ」
悠真が前に出る。
「お前が……一ノ瀬悠真か」
ローブ男が興味深そうに見る。
「ゼノ様から話は聞いている。なかなかの実力者だと」
「ゼノ……お前たちの指導者か」
「そうだ。そして、貴様はゼノ様の邪魔になる」
ローブ男が剣を抜く。
「だから、ここで死んでもらう」
「それは、どうかな」
悠真が《身体能力強化》を発動する。
全身に力が漲る。
「リナリア、エリア、シルヴィア、リリィ。お前たちは、他の黒ローブたちと魔物を頼む」
「わかりました」
リナリアが剣を抜く。
「私も手伝うわ」
エリーゼが立ち上がる。
「エリーゼ、無理するな」
「大丈夫よ。まだ戦える」
エリーゼが不敵に笑う。
「わかった。じゃあ、頼む」
悠真が頷く。
「それじゃあ、行くぞ!」
「おおおお!」
全員が雄叫びを上げる。
戦いが、再び始まった。
リナリアは、ダークウルフの群れに向かって突進する。
「《聖龍剣舞・序》!」
剣が光を纏い、ダークウルフたちを切り裂く。
「キャイン!」
ダークウルフたちが倒れる。
「今度は、再生させない!」
リナリアが聖なる光を放つ。
光がダークウルフたちを包み込み、浄化する。
「これで、再生はできないわ」
リナリアが微笑む。
一方、エリアはダークゴーレムと戦っていた。
「《エクスプロージョン》!」
強力な爆発魔法が、ゴーレムに命中する。
ドォン!
しかし、ゴーレムは無傷だ。
「くっ、硬い……」
エリアが考える。
「なら、内部から攻撃すれば……」
エリアが杖を振る。
「《テレポート・ボム》!」
小さな魔法の塊が、ゴーレムの内部に転送される。
そして――
ドゴォォン!
ゴーレムの内部で爆発が起こる。
「ゴオオオオ!」
ゴーレムが苦しそうに叫ぶ。
そして、体が崩れ始める。
「やった!」
エリアが喜ぶ。
シルヴィアは、ダークグリフォンと空中戦を繰り広げていた。
「《聖龍変身》!」
シルヴィアの体が光に包まれ、美しい白い龍に変わる。
「ギャアアアア!」
ダークグリフォンが襲いかかる。
「させません! 《聖龍の光弾》!」
シルヴィアが口から光の球を放つ。
光の球が、ダークグリフォンに命中する。
「ギャアアアア!」
ダークグリフォンが苦しそうに叫ぶ。
「もう一撃! 《聖龍の咆哮》!」
シルヴィアが強力なブレスを放つ。
ドォォォン!
ダークグリフォンが、光に包まれて消滅する。
「やりました!」
シルヴィアが喜ぶ。
リリィは、負傷した兵士たちを治療していた。
「《ヒーリング・ライト》!」
柔らかい光が、兵士たちを包み込む。
傷が瞬く間に治っていく。
「ありがとう、お嬢ちゃん……」
兵士たちが感謝する。
「いえいえ。まだまだ頑張ってください」
リリィが微笑む。
エリーゼは、黒ローブの魔法使いたちと戦っていた。
「《紅蓮の剣・爆炎斬》!」
炎の斬撃が、黒ローブたちを襲う。
「ぐああああ!」
黒ローブたちが倒れる。
「まだまだ! 《紅蓮の剣・連炎斬》!」
連続する炎の斬撃が、次々と黒ローブたちを倒していく。
「さすが、帝国の皇女……」
騎士たちが感嘆する。
「みんなも、負けないで! 一緒に戦うのよ!」
エリーゼが叫ぶ。
「おおおお!」
騎士たちが再び立ち上がり、戦い始める。
こうして、戦況は一気に逆転した。
悠真たちの到着により、帝国軍が優勢になる。
黒ローブたちと魔物たちが、次々と倒されていく。
しかし、ドレッドはまだ倒れていなかった。
悠真とドレッドは、激しい戦いを繰り広げていた。
「《時間操作》!」
悠真が時間を遅くする。
ローブ男の動きがスローモーションになる。
「くっ……なんだこの力は!?……」
ローブ男が驚く。
「はあああ!」
悠真が拳を叩き込む。
ドゴォ!
ローブ男が吹き飛ぶ。
「ぐあっ……!」
地面に倒れる。
「まだだ……まだ終わらない……」
男が立ち上がる。
「《ダークネス・エクスプロージョン》!」
自爆魔法を発動する。
「まずい……!」
悠真が叫ぶ。
『旦那様、《時空間シールド》を最大展開してください!』
アイが指示する。
「わかった! 《時空間シールド》最大展開!」
金色の光が、周囲を包み込む。
ドォォォン!
凄まじい爆発が起こる。
しかし、《時空間シールド》が全ての爆発を防ぐ。
爆発が収まると、男の姿はなかった。
「逃げたか……」
悠真が呟く。
『いえ、自爆で消滅したようです』
アイが分析する。
「そうか……」
悠真が周囲を見回す。
黒ローブたちと魔物たちは、全て倒されていた。
帝国兵たちが、歓声を上げる。
「勝った……勝ったぞ!」
「帝都を守ったぞ!」
兵士たちが喜ぶ。
「やったな、みんな」
悠真が微笑む。
「はい!」
リナリア、エリア、シルヴィア、リリィが集まる。
「悠真、ありがとう」
エリーゼが近づいてくる。
「あなたたちのおかげで、帝都が救われたわ」
「いや、エリーゼも頑張ったじゃないか」
悠真が微笑む。
「将軍たちを守り、時間を稼いでくれた。それがなければ、俺たちも間に合わなかった」
「そう……ありがとう」
エリーゼが微笑む。
その時、ヴォルフガング将軍が起き上がった。
「うっ……」
「将軍!」
兵士たちが駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「ああ……何とか……」
将軍が立ち上がる。
「一ノ瀬殿……ありがとう。あなたのおかげで、帝都が救われた」
「いえ、将軍たちが頑張ってくれたおかげです」
悠真が答える。
「それにしても……深淵の使徒は、恐ろしい敵だ」
将軍が呟く。
「ええ。しかし、今回の戦いで、彼らの力の一端を知ることができました」
悠真が言う。
「次は、もっと強力な敵が来るかもしれない。準備を整えなければ」
「そうだな……」
将軍が頷く。
こうして、帝都防衛戦は終わった。
しかし、これは序章に過ぎなかった。
深淵の使徒の本当の脅威は、まだこれから始まろうとしていた。
悠真は、空を見上げる。
暗雲が立ち込め、不吉な予感が漂っている。
「ゼノ……お前たちの目的は何だ……」
悠真が呟く。
『旦那様、これからもっと大変な戦いが待っています』
アイが囁く。
「ああ、わかってる」
悠真が拳を握りしめる。
「でも、俺たちには仲間がいる。みんなで力を合わせれば、どんな敵でも倒せる」
「そうですね♪」
アイが微笑む。
夕日が、戦場を赤く染める。
世界の命運をかけた、壮大な戦いが、今始まろうとしていた。
第25話、お読みいただきありがとうございました。
今回は帝都防衛戦ということで、これまでとは違う大規模戦闘を描きました。悠真たち個人の力だけでなく、帝国兵や騎士団との連携、エリーゼの活躍など、多様なキャラクターの見せ場を意識しました。
深淵の使徒幹部ドレッドとの戦いは序章に過ぎません。指導者ゼノ、そして「世界創造の書」をめぐる本格的な戦いが、これから始まります。
アイの新たな力、そして悠真の更なる成長にご期待ください。
それでは、次回もお楽しみに!
暁の裏




