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スキルAIがチートすぎて俺、使われてる気がするんだが?  作者: 暁の裏


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第19話 公国潜入 後編 「平穏はまだ仮初めのまま」

 

 宿『月光亭』に戻った俺たちは、自分の部屋に集まって作戦会議を開くことにした。

 テーブルを囲むように座り、俺が地図を広げる。


「さて、ここから本格的な作戦を立てよう」


 俺が切り出すと、みんなが真剣な表情で頷く。


「まず、現状を整理しよう。破壊神の細胞片はアルカナ商会の建物内に厳重に保管されている。魔法障壁で守られていて、見張りも複数いる」

「そして、三日後に儀式が行われる予定です」


 リナリアが補足する。


「ああ。つまり、俺たちにはあまり時間がない」

「旦那様、細胞片を奪還するだけでなく、儀式そのものを阻止する必要がありますね」


 アイが指摘する。


「その通りだ。でも、正面から突入するのは危険すぎる」

「どうしましょうか?」


 エリアが不安そうに尋ねる。


「作戦は二段階に分ける。まず第一段階として、儀式の前日……つまり明後日の夜に、細胞片を奪還する。第二段階として、儀式当日に現場に突入し、儀式を完全に阻止する」

「なるほど……細胞片がなければ、儀式は完成しないということですね」


 リナリアが理解する。


「ああ。でも、問題は細胞片の奪還だ。魔法障壁をどうやって突破するか……」

「旦那様、私が魔法障壁を解析して、解除方法を見つけられるかもしれません」

「本当か?」

「はい。ただし、実際に建物の中に入って、障壁を直接観察する必要があります」

「となると……潜入作戦だな」


 俺が考えていると、リリィが手を挙げた。


「お兄ちゃん、私、役に立てるかな?」

「もちろんだ。リリィの浄化能力は、邪悪な魔法を無効化できる。もしかしたら、魔法障壁にも効果があるかもしれない」

「やった!頑張る!」


 リリィが目を輝かせる。


「エリアは?」

「わたくしは……魔法での支援ができます」


 エリアが真剣な表情で答える。


「《ウィンドカッター》や《エクスプロージョン》で敵を牽制できます」

「頼む。リナリアは?」

「わたくしは剣で戦います。それに……」


 リナリアが自分の指にはめている指輪を見る。


「古代遺跡で手に入れた魔力増幅の指輪があります。これを使えば、剣技の威力を上げられます」

「そうか。じゃあ、作戦の詳細を詰めよう」


 俺は地図を指差しながら説明を続ける。


「まず、建物の裏口から侵入する。表の見張りは避ける。エリアの魔法で足音を消しながら進む」

「了解です♪」

「建物内部に入ったら、アイが魔法障壁を解析する。その間、俺たちは周囲を警戒する」

「わかりました」


 みんなが頷く。


「障壁を解除したら、細胞片を回収して即座に撤退。《空間転移》でこの宿に戻る」

「単純明快な作戦ですね」


 リナリアが微笑む。


「ああ。複雑な作戦は失敗しやすいからな」

「旦那様、もし敵に発見された場合の対処も考えておくべきです」

「そうだな……その場合は、俺とリナリアが前衛で敵を食い止める。エリアとリリィは後衛で支援と浄化を担当する」

「了解です」


 エリアが頷く。


「そして、細胞片を奪還した後の第二段階だが……」


 俺が続けようとしたとき、リナリアが口を開いた。


「儀式当日、ドレッドたちは必ず儀式を強行しようとするでしょう。細胞片がなくても、別の方法を試すかもしれません」

「その通りだ。だから、儀式の現場に突入して、完全に阻止する必要がある」

「現場は……地下の魔法陣だと情報屋が言っていました」


 エリアが思い出す。


「ああ。つまり、地下への入口を見つけなければならない」

「旦那様、建物内部を探索すれば、地下への通路が見つかるはずです」

「そうか。じゃあ、明後日の夜、細胞片を奪還するときに、地下への通路も確認しておこう」

「わかりました」


 みんなが同意する。


「よし、作戦はこれで決まりだ。明日は準備に充てる。明後日の夜、作戦を実行する」

「了解しました」


 リナリアが立ち上がる。


「それでは、今日はゆっくり休みましょう」

「ああ。明日も長い一日になるからな」


 俺たちはそれぞれの部屋に戻り、明日に備えることにした。




 翌日、俺たちは作戦の準備を進めた。

 アイが物質創造で必要な道具を作成し、エリアが魔法の詠唱を練習する。

 リナリアは剣の手入れをし、リリィは浄化魔法の訓練をする。


「お兄ちゃん、見て!《ホーリーライト》が前より強くなったよ!」


 リリィが嬉しそうに浄化の光を発する。


「すごいな。どんどん成長してる」

「えへへ、ありがとう」


 一方、エリアは部屋の隅で魔法の詠唱を繰り返している。


「《ウィンドカッター》……風よ、刃となりて敵を切り裂け……」


 小さな風の刃が空中に現れ、消える。


「エリア、調子はどうだ?」

「はい……だいぶ安定してきました」


 エリアが微笑む。


「明日の作戦、必ず成功させましょう」

「ああ」


 俺も頷く。


「旦那様、私も準備が整いました♪魔法障壁の解析プログラムも完成しています」

「頼もしいな」


 夕方になり、俺たちは宿の屋上に集まった。

 クレセントシティの街並みを見下ろしながら、最終確認をする。


「明日の夜に作戦を開始する。それまでは普通に過ごして、怪しまれないようにしよう」

「わかりました」


 みんなが頷く。


「悠真さん」


 リナリアが俺を見つめる。


「?」

「わたくし……少し不安です」

「リナリア……」

「でも、悠真さんがいれば大丈夫だと信じています」


 リナリアが微笑む。


「ああ。俺も、みんながいるから心強いよ」


 俺が答えると、リナリアは安心したように頷く。


「お兄ちゃん、私も頑張る!」


 リリィが元気よく言う。


「ああ、頼むぞ」

「わたくしも……全力で戦います」


 エリアも決意を新たにする。


「みんな、素敵ですよ♪」


 アイの声が響く。


「アイもありがとう。お前がいなかったら、ここまで来られなかった」

「えへへ♪当然です」


 俺たちは夕日を見つめながら、明日の作戦に向けて決意を固めた。




 そして、作戦決行の日がやってきた。

 午後11時、俺たちは宿を出発した。

 今回はコスプレ衣装ではなく、動きやすい黒い服を着ている。夜の闇に紛れるための装備だ。


「行くぞ」


 俺が先頭に立ち、旧市街地に向かう。

 街は静かで、人通りもほとんどない。


「悠真さん、《サイレントムーブ》を発動します」


 エリアの魔法により、俺たちの足音が完全に消える。


「これなら見張りに気づかれることもないな」


 俺たちは慎重に進み、アルカナ商会の建物に到着した。

 表には相変わらず見張りが二人いる。


「裏に回るぞ」


 俺たちは建物の裏側に回り、窓を確認する。


「この窓から入れそうだ」


 リナリアが窓を指差す。


「よし」


 俺は《身体能力強化》を発動し、窓をそっと開ける。

 幸い、鍵はかかっていなかった。


「中に入るぞ」


 俺が最初に窓から中に入り、次にリナリア、エリア、リリィの順に入る。


「旦那様、周囲に敵の反応はありません。安全です」

「よし」


 俺たちは暗い倉庫の中を進む。

 大量の古代遺物が並んでおり、薄気味悪い雰囲気だ。


「破壊神の細胞片は……あそこだ」


 俺が指差す方向には、祭壇のような台があり、その上にガラスケースが置かれている。

 中には、黒い液体のようなものが入った小瓶ある。


「あれが細胞片……」


 リナリアが呟く。


「旦那様、魔法障壁を確認しました。かなり複雑な構造です。解析に3分ほどかかります」

「わかった。その間、俺たちは警戒する」


 俺たちは祭壇の周囲に陣取り、周囲を見張る。

 アイが目を閉じて集中し始める。彼女のホログラム体が淡く光り、魔法障壁の解析を始めた。


「お兄ちゃん、何か嫌な感じがする……」


 リリィが不安そうに呟く。


「大丈夫だ。すぐに終わる」


 俺が励ますが、リリィの直感は当たっていた。

 突然、倉庫の入口の扉が開き、複数の足音が近づいてくる。


「誰だ!」


 見張りの一人が叫ぶ。


「見つかった!」


 リナリアが剣を抜く。


「旦那様、あと1分です!時間を稼いでください!」

「わかった!」


 俺は《身体能力強化》を最大限に発動し、敵に向かう。


「こんな夜中に侵入者とは……深淵の使徒(ヴォイド・セイント)を舐めるなよ!」


 見張りの一人が魔法を放つ。

 火の玉が俺に向かって飛んでくる。


「《バリア》!」


 俺が防御魔法を展開し、火の玉を防ぐ。


「リナリア、頼む!」

「はい!」


 リナリアが俺の横を駆け抜け、見張りに斬りかかる。

 《光輝の剣(セラフィックブレイド)》が発動し、彼女の剣が眩い光を放つ。


「はあっ!」


 光の剣が見張りを切り裂く。

 見張りは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。


「やるな……!」


 もう一人の見張りが呪文を唱え始める。


「させない!《ウィンドカッター》!」


 エリアが風の刃を放つ。

 風の刃が見張りの腕を切り裂き、詠唱が中断される。


「ぐあっ!」

「リリィ!」

「わかった!《ホーリーライト》!」


 リリィが浄化の光を放つ。

 光が見張りたちを包み込み、彼らは意識を失って倒れる。


「よし、時間は稼いだ!アイ、どうだ?」

「あと30秒です!」

「急げ!」


 その時、倉庫の奥からさらに足音が響いてきた。

 そして、見覚えのある声が聞こえる。


「侵入者か……面白い」


 ドレッドだ。

 黒いローブを纏った男が、ゆっくりとこちらに歩いてくる。


「貴様らか……堂々と侵入するとはな」


 ドレッドが俺たちを見据える。


「ああ、そうだ。お前の計画は、ここで終わりだ」


 俺が答えると、ドレッドは冷笑する。


「終わり? 笑わせるな。破壊神ゼルヴァロスの復活は、もはや誰にも止められない」

「それはどうかな」

「旦那様、解析完了しました!障壁を解除します!」


 アイの声と共に、魔法障壁が消え去る。


「よし!細胞片を回収する!」


 俺がガラスケースに手を伸ばすが、ドレッドが素早く動く。


「させるか!《ダークネス・チェイン》!」


 闇の鎖が俺に向かって飛んでくる。


「《時間操作》!」


 俺が時間を遅くし、鎖の動きが鈍る。

 その隙に、俺は細胞片を掴む。


「取ったぞ!」

「くっ……!」


 ドレッドが苛立った表情を見せる。


「みんな、撤退だ!《空間転移》!」


 俺が魔法を発動し、俺たちは瞬時に宿『月光亭』の部屋に転移した。


「ふう……成功したな」


 俺がガラスケースを見つめる。

 中には、黒い液体のような細胞片が入っている。


「これが……破壊神の細胞片」


 リナリアが不安そうに見つめる。


「ええ……こんなものが、あの巨大な破壊神の一部だなんて」


 エリアも信じられないという表情だ。


「お兄ちゃん、これからどうするの?」


 リリィが尋ねる。


「明日、儀式を完全に阻止する。地下の魔法陣を破壊して、ドレッドたちの計画を潰す」

「わかった!」


 リリィが頷く。


「旦那様、お疲れさまでした♪でも、これで終わりではありません」

「ああ。明日が本番だ」


 俺たちは細胞片を厳重に保管し、明日の作戦に備えて休むことにした。




 翌日、儀式当日。

 俺たちは朝から緊張していた。


「今日、すべてを終わらせる」


 俺が決意を新たにする。


「ええ。この街を、そして王国を守るために」


 リナリアも頷く。


「でも……地下への入口はどうやって見つけるんですか?」


 エリアが尋ねる。


『旦那様、昨夜、建物内部をスキャンした際、地下への階段を発見しました。倉庫の奥の隠し扉の先にあります』


「そうか。じゃあ、そこから突入するぞ」


 午後8時、儀式開始の2時間前。

 俺たちは再びアルカナ商会の建物に向かった。

 今回は正面突破だ。もう隠れる必要はない。


「行くぞ!」


 俺が建物の扉を蹴破る。

 中にいた見張りたちが驚いて武器を構える。


「貴様ら……!」

「悪いが、通してもらうぞ!」


 俺は《身体能力強化》を発動し、見張りたちに突っ込む。


「《聖光(ディヴァイン・)(スラッシュ)》!」


 リナリアの剣が光を放ち、見張りたちを薙ぎ払う。


「《ウィンドカッター》!」


 エリアの風の刃が飛び、残りの見張りたちを吹き飛ばす。


「《ホーリーライト》!」


 リリィの浄化の光が敵を無力化する。


「よし、地下へ急ぐぞ!」


 俺たちは倉庫の奥へと進む。

 アイが示した場所に隠し扉があり、その先に階段が続いている。


「ここだ!」


 俺が階段を駆け下りる。

 地下は広大な空間で、床一面に複雑な魔法陣が描かれている。

 そして、その中心にドレッドが立っていた。


「やはり来たか……ルストニア王国の犬どもめ」


 ドレッドが冷笑する。


「ドレッド!お前の計画は終わりだ。破壊神の細胞片は、もう俺たちが持っている」


 俺が言うと、ドレッドは笑い出した。


「ハハハ……細胞片? そんなもの、もはや不要だ」

「何?」

「我々は既に細胞片の分裂に成功している」


 ドレッドが指を鳴らすと、魔法陣の両側から、二つのガラスケースが現れる。


「分裂で増やした二つの細胞片は、ここにある」

「くっ……!」

「だが……お前たちが奪った細胞片のせいで、完全復活は不可能になった」


 ドレッドが悔しそうに呟く。


「なら、もう諦めろ!」

「諦める? ふざけるな!」


 ドレッドが激昂する。


「ならば……この身に細胞片を取り込み、その力で貴様らを葬ってやる!」


 ドレッドが二つのガラスケースを開け、中の細胞片を自分の体に注入し始める。


「やめろ!」


 俺が止めようとするが、間に合わない。

 黒い液体がドレッドの体内に流れ込む。


「ぐあああああああっ!」


 ドレッドが苦しそうに叫ぶ。

 彼の体が膨れ上がり、黒い鱗のようなものが表面に現れる。


「力が……溢れる……これが破壊神の力か……!」


 ドレッドの目が赤く光り、彼の体から強大な魔力が放出される。


『旦那様、これは危険です!細胞片の力に飲まれています!』


「何?」


『ドレッドは破壊神の力をコントロールできていません。このままでは暴走します!』


「暴走……?」

「ハハハ……力だ……力が満ちてくる……!」


 ドレッドの体がさらに変貌する。

 身長が2メートルを超え、筋肉が異常に発達し、顔も歪んでいく。


「これで……お前たちを……殺せる……!」


 ドレッドが咆哮し、俺たちに襲いかかる。


「くっ、みんな避けろ!」


 俺が叫び、みんなが散開する。

 ドレッドの拳が床を叩き、地面が大きくひび割れる。


「なんて力……!」


 リナリアが驚く。


「エリア、リリィ、後方支援を頼む!リナリア、俺と一緒に前線を支えるぞ!」

「わかりました!」


 リナリアが剣を構える。


「《ウィンドカッター》!」


 エリアが風の刃を放つが、ドレッドの硬化した皮膚に弾かれる。


「効いていない……!」

「《ホーリーライト》!」


 リリィが浄化の光を放つが、こちらも効果が薄い。


「お兄ちゃん、魔法が効かない!」

「くっ……破壊神の力が強すぎるのか……!」


『旦那様、分析結果が出ました!』


「何か分かったか!」


『ドレッドの体内では、細胞片が暴走しています。しかし、その制御中枢は彼の心臓付近にあります。そこを攻撃すれば、暴走を止められるかもしれません!』


「心臓……!」

「ガアアアアッ!」


 ドレッドが再び襲いかかる。

 俺は《時間操作》を発動し、彼の動きを遅くする。


「今だ!リナリア!」

「はい!《聖光(ディヴァイン・)(スラッシュ)》!」


 リナリアの光の剣がドレッドの胸を狙う。

 しかし、ドレッドは素早く腕で防御する。


「くっ……硬い!」

「ハハハ……無駄だ……この力の前では、お前たちなど虫けら同然……!」


 ドレッドが魔法を放つ。

 黒い球体が俺たちに向かって飛んでくる。


「《バリア》!」


 俺が防御魔法を展開するが、球体の威力は凄まじく、バリアがひび割れる。


「うわっ!」


 俺が吹き飛ばされる。


「悠真さん!」


 リナリアが駆け寄る。


「大丈夫だ……でも、このままじゃ……」


『旦那様、課金システムを使用してください!』


「あれか」


『はい!5000ルスを消費しますが、今なら資金は十分ですし、10分間スキルが200%強化されます!これなら、ドレッドに対抗できます!』


「わかった!課金システム、発動!」


 俺が叫ぶと、視界に課金システムのウィンドウが表示される。


『5000ルスを消費します』


「ああ!」


 《課金完了。スキル強化時間:10分》


 瞬間、俺の体に強大な力が流れ込む。

 筋力、反射神経、魔力……すべてが爆発的に向上する。


「凄まじい力だ!」


 俺が立ち上がると、ドレッドが驚いた表情を見せる。


「何だ……貴様、急に力が……!」

「ドレッド、お前の相手は俺だ!」


 俺は《身体能力強化》を最大限に発動し、ドレッドに突っ込む。

 スピードは以前の比ではない。


「速い……!」


 ドレッドが防御しようとするが、間に合わない。

 俺の拳がドレッドの腹部に直撃する。


「ぐはっ!」


 ドレッドが吹き飛ばされる。


「今だ、リナリア!」

「はい!《聖光(ディヴァイン・)(スラッシュ)》!」


 リナリアの光の剣がドレッドの胸を狙う。

 今度は、剣がドレッドの皮膚を切り裂く。


「ぐああああっ!」


 ドレッドが苦痛の叫びを上げる。


「エリア、リリィ、続けて攻撃だ!」

「はい!《エクスプロージョン》!」


 エリアが爆発魔法を放つ。

 爆発がドレッドを包み込む。


「《ホーリー・ノヴァ》!」


 リリィが強力な浄化攻撃を放つ。

 浄化の光がドレッドの体を包み、黒い鱗が剥がれ始める。


「ぐっ……貴様ら……!」


 ドレッドが怒りに震える。


『旦那様、今です!心臓を狙ってください!』


「わかった!」


 俺は《時間操作》で時間を遅くし、ドレッドの懐に潜り込む。

 そして、全力で拳を振り抜く。


「終わりだ、ドレッド!」


 俺のナイフがドレッドの心臓を貫く。


「ぐあああああああああっ!」


 ドレッドが絶叫する。

 彼の体内で、細胞片が暴走を始め、黒い光が溢れ出す。


「このまま……爆発する……!」


 ドレッドの体が膨張し始める。


『旦那様、このままでは大爆発が起こります!すぐにみんなを避難させてください!』


「みんな、今すぐここから離れろ!《空間転移》!」


 俺が魔法を発動し、リナリア、エリア、リリィを地上に転移させる。


「悠真さん!あなたも早く!」


 リナリアが叫ぶ。


「今行く!」


 俺も《空間転移》で地上に転移しようとするが、その瞬間、ドレッドの体が爆発した。


「ぐああああっ!」


 轟音と共に、地下全体が崩壊する。




 爆発の衝撃で、俺は地上に吹き飛ばされた。

 体中が痛む。


「悠真さん!」


 リナリアが駆け寄る。


「大丈夫……だ……」


 俺が立ち上がると、アルカナ商会の建物は完全に崩壊していた。

 地下の魔法陣も、ドレッドも、すべて消滅した。


「終わった……のか……?」


 エリアが呟く。


『はい、破壊神の細胞片の反応も消えました。ドレッドも……』


「そうか……」


 俺は安堵のため息をつく。


「やりましたね、悠真さん」


 リナリアが微笑む。


「ああ。でも、みんなのおかげだ」

「お兄ちゃん、すごかったよ!」


 リリィが抱きつく。


「ありがとう、リリィ」


 俺がリリィの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに笑う。


「でも課金システムですか…10分で5000ルスは高いですね」


 エリアが苦笑する。


「ああ。でも、あれがなかったら勝てなかった」


『旦那様、お疲れさまでした♪』


「アイもありがとう」


 俺たちは崩壊した建物を見つめる。

 深淵の使徒の野望は、ここに潰えた。


「さて……王都に帰ろう」


 俺が言うと、みんなが頷く。


「はい。国王陛下に報告しなければなりません」


 リナリアも同意する。


「でも、その前に……」


 エリアが屋台を指差す。


「お祝いに、何か食べませんか?」

「いいな。じゃあ、みんなで」


 俺たちは屋台に向かい、クレープを買った。

 戦いの後の甘いクレープは、格別に美味しかった。




 翌日、俺たちは《空間転移》でルストニア王国の王都に帰還した。

 王城の謁見の間で、国王アルフレッドとイザベラ王妃、そして三賢人(トライステラ)が俺たちを出迎えた。


「おお、悠真殿!無事でなによりだ」


 国王が満面の笑みで迎える。


「はい。任務を完了しました」


 俺が報告すると、国王は大きく頷く。


「よくやってくれた。深淵の使徒の野望を阻止し、破壊神の復活を防いだ。これは王国にとって、いや、この世界にとって大きな功績だ」

「ありがとうございます」

「そして、リナリア」


 国王が娘を見つめる。


「お前も立派に戦ったようだな」

「はい、父上。わたくし、悠真さんたちと共に戦えて、誇りに思います」


 リナリアが微笑む。


「うむ。お前は成長したな」


 イザベラ王妃も嬉しそうに微笑む。


「リナリア、本当によく頑張りましたね」

「ありがとうございます、母上」


 セラフィナが一歩前に出る。


「悠真殿、詳しい報告をお聞かせください」

「はい」


 俺は、エスペリア公国での出来事を詳しく報告した。

 カジノでの情報収集、細胞片の奪還、そしてドレッドとの最終決戦。


「なるほど……ドレッドは細胞片を自らに取り込み、暴走したのか」


 マクシミリアンが顎に手を当てる。


「はい。彼は破壊神の力をコントロールできませんでした」

「愚かなことを……」


 エヴァンジェリンが呟く。


「しかし、これで一安心だな」


 国王が安堵する。


「いえ、まだ油断はできません」


 俺が警告する。


「と、言うと?」

深淵の使徒(ヴォイド・セイント)は組織です。ドレッドは一人の幹部に過ぎません。他にもメンバーがいる可能性があります」

「なるほど……確かにその通りだ」


 国王が真剣な表情になる。


「今後も警戒を怠らないようにしよう」

「はい」

「さて、悠真殿。今回の功績に対して、褒賞を与えたい」


 国王が宣言する。


「褒賞……ですか」

「うむ。まず、報酬金として50000ルスを授与する」

「ありがとうございます」

「光栄です」


 俺が頭を下げると、みんなもそれに続く。


「それでは、しばらくゆっくり休んでください。王城の部屋を用意しておきます」


「ありがとうございます」


 こうして、俺たちの戦いは一区切りついた。




 それから二週間が経過した。

 俺たちは王城で休息を取りながら、日常生活に戻っていった。

 リナリアは王女としての公務に復帰し、エリアは一度魔法学校に戻り、リリィは浄化サービスの仕事を再開した。


 俺は王城の自室で、今後の計画を練っていた。


「旦那様、お疲れさまです♪」


 アイが姿を現す。


「ああ。アイもお疲れ」

「今回の戦い、本当に大変でしたね」

「ああ。でも、みんなが無事で良かった」

「そうですね♪」


 アイが微笑む。


「それにしても……深淵の使徒か。まだ他にもメンバーがいるんだろうな」

「おそらく。でも、今回の勝利で、彼らの計画は大きく遅れたはずです」

「そうだといいんだが……」

「因みに今回の戦いでスキルポイントが30000ポイントまで貯まりました、順調ですね」

「そうか...」


 俺が窓の外を見つめていると、部屋のドアがノックされた。


「はい」

「悠真さん、少しよろしいですか?」


 リナリアの声だった。


「ああ、入ってくれ」


 リナリアが部屋に入ってくる。

 彼女は王女らしい優雅なドレスを着ており、相変わらず美しい。


「どうした?」

「いえ……今日は、お客様がいらっしゃっているんです」

「お客様?」

「はい。悠真さんに会いたいと」

「俺に?」


 不思議に思いながらも、俺はリナリアに案内されて謁見の間に向かった。




 謁見の間には、一人の女性が立っていた。

 銀色の長い髪、神秘的な青い瞳、そして凛とした佇まい。

 年齢は20代後半くらいに見えるが、どこか人間離れした雰囲気を纏っている。


「こちらが一ノ瀬悠真殿です」


 リナリアが紹介する。


「初めまして、一ノ瀬悠真様」


 女性が優雅に礼をする。


「初めまして……あなたは?」

「私の名はシルヴィア。遠い地から参りました」


 シルヴィアと名乗った女性が微笑む。


「遠い地……?」

「ええ。あなたに、お願いがあって参りました」

「お願い……?」


『旦那様、この女性……ただ者ではありません』


 アイが警告する。


『強大な魔力を感じます。人間ではない可能性があります』


「人間じゃない……?」


 俺が警戒すると、シルヴィアは微笑んだまま続ける。


「ご心配なく。私はあなた方に害を与えるつもりはありません」

「それなら、お願いとは何ですか?」

「それは……」


 シルヴィアが一瞬、躊躇する。


「私の故郷で、ある問題が発生しています。その解決に、あなたの力が必要なのです」

「俺の力……?」

「ええ。あなたは破壊神ゼルヴァロスの完全復活を阻止しました。その実績を聞いて、あなたならば私の故郷の問題も解決してくれるのではないかと思い、訪ねてきたのです」


 シルヴィアが真剣な表情で俺を見つめる。


「故郷の問題……とは?」

「詳しくは、後ほど説明させていただきます。今日は、ご挨拶だけと思っておりましたので」

「そうですか」


 俺は少し考える。

 この女性、シルヴィア……確かにただ者ではない。

 アイが言うように、人間ではない可能性が高い。


「わかりました。詳しいお話は、改めて聞かせてください」

「ありがとうございます」


 シルヴィアが深く礼をする。


「それでは、また近日中に参ります」


 シルヴィアは優雅に謁見の間を後にした。


「悠真さん……あの方、一体……」


 リナリアが不安そうに尋ねる。


「わからない。でも、何か大きな出来事が起こりそうな予感がする」


『旦那様、私も同感です。あの女性……おそらく、龍族か、それに近い存在です』


「龍族……?」


『はい。聖龍のような、強大な力を持つ存在です』


「それって……」


 俺は窓の外を見つめる。

 シルヴィアの背中が、遠くに消えていく。


「また、新しい冒険が始まるのかもしれないな」


 俺が呟くと、リナリアが微笑む。


「ええ。でも、わたくしたちがいれば大丈夫です」

「ああ、そうだな」


 俺も微笑む。


 こうして、俺の異世界での生活は、また新たな展開を迎えようとしていた。




 数日後、シルヴィアが再び王城を訪れた。

 今回は、詳しい話を聞くために、俺とリナリア、エリア、リリィが集まった。


「お集まりいただき、ありがとうございます」


 シルヴィアが礼をする。


「それで、あなたの故郷の問題とは?」


 俺が尋ねると、シルヴィアは真剣な表情で語り始めた。


「私の故郷は……龍の谷と呼ばれる場所です」

「龍の谷……?」


 リナリアが驚く。


「ええ。そこには、多くの龍族が住んでいます」

「龍族……やはり、あなたは人間ではないのですね」


 エリアが確認する。


「はい。私は龍族の一員です。正確には……聖龍の末裔です」

「聖龍の末裔……!」


 リリィが驚く。


「以前、聖龍様の卵を助けていただいたと聞きました。ありがとうございます」


 シルヴィアが頭を下げる。


「いえ、当然のことをしただけです」


 俺が答えると、シルヴィアは微笑む。


「その件もあり、今回お願いに参りました」

「それで、龍の谷で何が起こっているのですか?」


 リナリアが尋ねる。


「実は……谷の奥深くに封印されていた古代の邪龍が、目覚めようとしているのです」

「邪龍……!」

「ええ。この邪龍は、かつて世界を脅かした存在で、先代の聖龍たちが命がけで封印したものです」

「それが、今、目覚めようとしている……?」

「はい。封印が弱まっているのです。このままでは、邪龍が完全に復活し、再び世界を脅かすでしょう」


 シルヴィアの表情が曇る。


「私たち龍族だけでは、この危機を乗り越えられません。だから……」

「俺たちの力が必要、ということですか」


 俺が確認すると、シルヴィアは頷く。


「はい。一ノ瀬悠真様、どうか力を貸していただけませんか?」


 シルヴィアが深く頭を下げる。


 俺は少し考える。

 邪龍……また厄介な敵が現れたものだ。


「悠真さん、どうしますか?」


 リナリアが尋ねる。


「もちろん、引き受けるさ」


 俺が答えると、みんなが驚く。


「悠真さん……」

「だって、放っておけないだろう? 世界を脅かす存在なら、俺たちが止めなきゃ」

「ええ……そうですね」


 リナリアが微笑む。


「わたくしも、お手伝いします」

「わたくしも!」


 エリアが手を挙げる。


「私も!お兄ちゃんと一緒に戦う!」


 リリィも元気よく言う。


「みんな……ありがとう」


 俺が微笑むと、シルヴィアが感激した表情を見せる。


「ありがとうございます……本当に、ありがとうございます」


 シルヴィアの目に涙が浮かぶ。


「では、いつ出発しますか?」


 俺が尋ねると、シルヴィアは答える。


「できるだけ早い方がいいです。封印が完全に破れる前に、対処しなければなりません」

「わかりました。では、明日、出発しましょう」

「ありがとうございます」

「しかし、こんな話ばっかりだな、俺は普通に暮らしたいだけなのに…」


『波乱万丈ですね旦那様♪』


 こうして、俺たちの新たな冒険が始まることになった。

 龍の谷へ向かい、邪龍の封印を強化する。

 そして、シルヴィアの正体……彼女が聖龍であることを、俺たちはまだ知らない。


 だが、それを知るのも、そう遠くないだろう。




 翌日、俺たちは王城を出発する準備を整えた。

 国王アルフレッドが見送りに来てくれた。


「悠真殿、今回もまた大変な任務だな」

「はい。でも、必ず成功させます」


 俺が答えると、国王は頷く。


「うむ。お前たちなら大丈夫だろう。無事に戻ってくることを祈っている」

「ありがとうございます」


 イザベラ王妃もリナリアを抱きしめる。


「リナリア、気をつけてね」

「はい、母上。必ず無事に戻ります」


 リナリアが微笑む。

 セラフィナも三賢人の代表として、俺たちを見送る。


「悠真殿、今回の任務、くれぐれも無理をしないでください」

「はい。ありがとうございます」


 こうして、俺たちは王城を後にした。

 シルヴィアが先導し、龍の谷へと向かう。


「龍の谷は、王都から北東に300キロほどの場所にあります」


 シルヴィアが説明する。


「300キロ……《空間転移》で行けるか?」


 俺がアイに尋ねる。


『はい。座標さえわかれば可能です』


「シルヴィアさん、座標を教えていただけますか?」

「ええ」


 シルヴィアが座標を伝える。

 アイがそれを解析し、転移の準備を整える。


「それでは、行きます。《空間転移》!」


 俺が魔法を発動し、俺たちは瞬時に龍の谷の入口に転移した。


「ここが……龍の谷」


 リナリアが周囲を見回す。


 険しい山々に囲まれた谷。

 空気は澄んでおり、どこか神聖な雰囲気が漂っている。


「ええ。私たち龍族の聖地です」


 シルヴィアが誇らしげに言う。


「すごい……」


 エリアが感動している。


「お兄ちゃん、ここ、すごく綺麗!」


 リリィも目を輝かせる。


「さあ、谷の奥へ進みましょう」


 シルヴィアが先導し、俺たちは谷の奥深くへと進んでいく。


 やがて、巨大な洞窟が見えてきた。


「あの洞窟の奥に、邪龍が封印されています」


 シルヴィアが指差す。


「あそこか……」

「まずは族長と会っていただきます」

「わかった」



 こうして、俺たちと邪龍の戦いが始まろうとしていた。


 しかし、この戦いは、俺たちが想像していた以上に困難なものになる。


守りたいものが増えれば増えるほど、

怖さも増える。

でも、それでも守りたいと思える仲間に出会えた。


この日常を続けるために――

俺は戦う。

それだけだ。


――悠真

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