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スキルAIがチートすぎて俺、使われてる気がするんだが?  作者: 暁の裏


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第17話 「平和の余韻と黒き報せ」

 学園での戦いから一週間が経過した。

 俺たちは王都に戻り、束の間の休息を得ていた。深淵の使徒との戦い、禁書の奪取、そして破壊神の魂との激闘。心身ともに疲弊していた俺たちにとって、この平和な時間は何よりも貴重だった。


「旦那様、朝ですよ♪」


 アイの明るい声で目が覚める。窓から差し込む朝日が、部屋を優しく照らしていた。

 アイはそっと俺の頬に手を当てる。もちろんホログラムなので感触はない。


「ああ……もう朝か」


 体を起こすと、窓の外には王都の街並みが広がっている。平和な朝の風景。人々が活気に満ちて動き始めている。


「今日は特に予定がありませんね。たまにはゆっくり休んでください♪」


 アイが俺の肩に座る。第三進化を遂げてから、アイの姿は本当に可愛らしい妖精のようだ。青い髪がふわふわと揺れ、大きな瞳がきらきらと輝いている。


「そうだな。でも、その前にアイに頼みたいことがあるんだ」

「何ですか?」

「俺の現在の能力を整理してまとめてくれないか?最近、色々なスキルを獲得しすぎて、自分でも把握しきれなくなってきた」

「了解です♪すぐに整理しますね」


 アイが空中に文字を浮かび上がらせる。


 一ノ瀬悠真 - 能力一覧

 基本スキル


 《AIアシスト》


 状況解析、戦術提案

 敵行動予知

 身体制御支援

 物質創造(素材不要)

 直接神経サポート




 戦闘スキル


 《身体能力強化》 - 筋力・反射神経を飛躍的に向上

 《時間操作》 - 周囲の時間の流れを遅くする、最大で完全停止可能

 《空間転移》 - 瞬間移動、座標を設定して転移

 《魔法付与》 - 武器に属性魔法を付与、威力大幅増加

 《ナイフ術》 - ナイフを使用した近接戦闘の技術

 《緊急防御》 - 1日1度、致命的攻撃を自動防御

 《バリア》 - 防御魔法、範囲展開可能

 《ウォーター・マスター》 - 水を自在に操る(海神の加護)

 《時空間シールド(クロノス・シールド)》 - 時間と空間を組み合わせた最強防御結界


 サポートスキル


 現代再現 - 現代の道具を作成

 アイテムボックス(容量:中) - 物品を異次元空間に収納

 報酬自動取得 - 戦闘で得た報酬を自動回収


 特殊システム


 課金システム - 5000ルスで10分間、全スキルを200%強化


 破壊神の細胞による強化


 魔力総量が1000倍に増加

 魔法威力が500%向上

 魔力回復速度が100倍に向上

 新規魔法の習得速度向上



「これが旦那様の現在の能力です♪」


 アイが説明を終える。


「改めて見ると……すごいな」


 俺は自分でも驚く。異世界に来てからまだ数ヶ月だが、これだけのスキルを獲得していたのか。


「特に破壊神の細胞による強化は凄まじいですね。魔力が1000倍になったことで、旦那様は世界でも追随を許さない魔力保有者になりました♪」

「そんなに……」

「はい♪三賢人やエリアさんと比べても圧倒的に多いです。ただし、使いこなすには訓練が必要ですね」


 その時、ドアがノックされた。


「悠真さん、起きていらっしゃいますか?」


 リナリアの声だ。


「ああ、起きてる。入ってくれ」


 ドアが開くと、リナリア、エリア、リリィの三人が入ってきた。


「おはようございます、悠真さん」


 エリアが微笑む。破壊神の魂との戦いで一時的に捕らえられていたが、今では完全に回復している。


「おはよう、みんな。どうした?」

「今日、みんなで王都の市場に行こうって話になったんです」


 リリィが嬉しそうに言う。


「市場?」

「ええ。最近ずっと戦闘続きでしたから、たまには平和的に買い物でもと思いまして」


 リナリアが説明する。


「それに、新しい食材も仕入れたいですし」


 エリアが付け加える。


「いいな、それ。俺も行く」

「本当ですか!」


 三人が嬉しそうに顔を輝かせる。


「じゃあ、準備して出かけよう」




 市場は朝から活気に満ちていた。


「新鮮な魚だよー!」

「野菜はいかがー!」


 商人たちの威勢のいい声が響き渡る。


「わあ、すごい人ですね」


 リリィが目を輝かせる。


「王都の中央市場は、王国最大の市場ですからね」


 リナリアが説明する。


「色々な地方から商人が集まって、珍しい品物も手に入ります」


 俺たちは市場を歩き始めた。


「あ、あれ美味しそう!」


 リリィが果物屋を指差す。色とりどりの果物が美しく並んでいる。


「じゃあ、買おうか」


 俺が店主に声をかける。


「すみません、このリンゴを10個ください」

「へい、毎度あり!」


 店主が手際よくリンゴを袋に詰める。


「20ルスになります」

「はい」


 懐からお金を取り出し店主に渡す。


「無駄遣いはいけないな」


『旦那様、現在の総資産は1億3500万ルスです。20ルスくらい、気にする必要はありませんよ♪』


 アイが肩の上で笑う。人前では姿を消しているが、声は聞こえている。


「わかってるけど、無駄遣いはしたくないんだよ」


 俺は心の中で答える。


「悠真さん、こっちに美味しそうなパン屋さんがあります」


 エリアが手を振る。


「おお、本当だ」


 香ばしいパンの匂いが漂ってくる。


「ここのパンは王都で一番美味しいって評判なんです」


 リナリアが説明する。


「じゃあ、色々買ってみよう」


 俺たちはパン屋に入り、様々な種類のパンを購入した。


「お兄ちゃん、これ食べていい?」


 リリィがクリームパンを見つめる。


「ああ、どうぞ」

「やったー!」


 リリィが嬉しそうにパンを頬張る。その笑顔を見ていると、心が温かくなる。


「平和っていいですね」


 エリアが呟く。


「ええ。戦いばかりの日々でしたから、こういう時間が本当に貴重に感じます」


 リナリアも同意する。


「そうだな。でも、この平和を守るために戦ってるんだ」


 俺が言うと、三人が頷く。


「はい。だからこそ、この平和な時間を大切にしたいです」


 エリアが微笑む。

 市場を歩いていると、突然人だかりができているのを発見した。


「何だろう?」


 近づいてみると、そこには小さな舞台が設置されており、旅芸人たちがパフォーマンスをしていた。


「すごい!」


 リリィが拍手する。

 ジャグリング、曲芸、音楽演奏。様々な芸が披露されている。


「面白いですね」


 エリアも楽しそうだ。

 パフォーマンスが終わると、俺たちも拍手を送る。


「ありがとうございます!」


 旅芸人たちが深々とお辞儀をする。


「投げ銭をしましょう」


 リナリアが提案する。


「そうだな」


 俺は財布から50ルスを取り出し、帽子に入れる。


「ありがとうございます、旦那様!」


 旅芸人の一人が感謝の言葉を述べる。

 市場での買い物を終え、俺たちは近くの公園でランチを取ることにした。


「ピクニックみたいですね」


 エリアが嬉しそうに言う。


「ええ。こういうのも楽しいです」


 リナリアが微笑む。

 アイが物質創造で作り出したブランケットを芝生に敷き、みんなで座る。


「じゃあ、いただきます」


 リリィが元気よく言う。

 市場で買ったパン、果物、チーズなどを広げる。


「美味しい……」


 リリィが幸せそうに頬張る。


「本当に美味しいですね」


 エリアも満足そうだ。


「こういう時間、久しぶりですね」


 リナリアが空を見上げる。


「ああ。最近は戦闘ばかりだったからな」


 俺も同意する。


『旦那様、平和な時間も大切ですね♪』


 アイの声が響く。


「そうだな、アイ」

「悠真さん、アイさんと話していらっしゃるんですか?」


 エリアが尋ねる。


「ああ。アイも一緒にピクニックを楽しんでるよ」

「そうなんですね。アイさんも食べられたらいいのに」


 リリィが残念そうに言う。


『ありがとうございます、リリィちゃん♪でも、私は旦那様たちの幸せそうな顔を見るだけで十分です』


 アイの言葉をみんなに伝えると、みんなが微笑む。

 ランチを終えた後、俺たちは公園でゆっくりと過ごした。


「ねえ、鬼ごっこしようよ!」


 リリィが提案する。


「鬼ごっこ……ですか」


 エリアが少し戸惑う。


「たまにはいいんじゃないか?」


 俺が言うと、リナリアも頷く。


「そうですね。楽しそうです」

「やったー!じゃあ、お兄ちゃんが鬼ね」

「え、俺か?」

「だって、お兄ちゃんが一番強いんだもん」


 リリィが笑う。


「それもそうだな。じゃあ、10秒数えるから逃げろ」

「はーい!」


 三人が駆け出す。


「1、2、3……」


 俺は数を数え始める。


『旦那様、《時間操作》を使えば一瞬で捕まえられますよ♪』


「それはズルだろ」


 俺は心の中で答える。


「10!行くぞー」


 俺は普通の速度で走り出す。


「きゃあ、来た!」


 リリィが逃げる。


「待てー」


 俺は追いかける。


「悠真さん、こっちですよー」


 リナリアが手を振る。


「リナリアは余裕そうだな」


 剣術で鍛えた俊敏性で、リナリアは軽々と俺を避ける。


「ふふ、捕まえられるものなら捕まえてみてください」


 リナリアが挑発的に笑う。


「よし、本気出すぞ」


 俺は《身体能力強化》を軽く発動する。


「わっ、速い!」


 エリアが驚く。

 俺はエリアに近づき、タッチする。


「エリア、捕まえた」

「ああ、捕まっちゃいました」


 エリアが残念そうに笑う。

 次にリリィを追う。


「お兄ちゃん、速すぎー!」


 リリィが必死に逃げる。


「逃がさないぞー」


 俺はリリィをあっさりと捕まえる。


「うー、捕まっちゃった」


 リリィが頬を膨らませる。


「さあ、リナリア。お前だけだ」

「ふふ、簡単には捕まりませんよ」


 リナリアが軽やかに動く。

 俺たちは公園を駆け回る。他の人々が微笑ましそうに見ている。


「はあ、はあ……」


 リナリアも少し息が上がってきた。


「もう限界か?」

「まだまだです」


 しかし、次の瞬間、リナリアが足を滑らせた。


「あっ」


 俺は反射的に駆け寄り、リナリアを抱きとめる。


「大丈夫か?」

「はい……ありがとうございます」


 リナリアが俺を見上げる。その顔は少し赤らんでいる。


「捕まえた」

「はい……負けました」


 リナリアが微笑む。

 周りから拍手が起こる。


「よかったですね」


 エリアが近づいてくる。


「お兄ちゃん、かっこよかった!」


 リリィも駆け寄る。


『旦那様とリナリアさん、いい雰囲気でしたね♪』


 アイの声が茶化すように響く。


「うるさい」


 俺は心の中で答える。




 公園での楽しい時間を過ごした後、俺たちは工房に戻った。


「今日は楽しかったですね」


 エリアが満足そうに言う。


「ええ。久しぶりにリラックスできました」


 リナリアも同意する。


「お兄ちゃん、また遊ぼうね」


 リリィが俺の手を握る。


「ああ、また遊ぼう」


 俺が答えると、リリィは嬉しそうに笑った。


「それでは、わたくしたちはそろそろ失礼しますね」


 リナリアが立ち上がる。


「ああ、今日はありがとう。楽しかった」

「こちらこそです」


 三人が部屋を出て行く。

 一人になった俺は、椅子に深く腰掛ける。


「今日は本当にいい日だったな」


『そうですね♪旦那様、幸せそうでした』


 アイが姿を現す。


「お前のおかげだよ、アイ」

「え?」

「お前がいてくれるから、俺はこんなに楽しい毎日を送れてるんだ」

「旦那様……」


 アイの目に涙が浮かぶ。


「ありがとうございます。私も、旦那様と一緒にいられて本当に幸せです」

「これからも、よろしく頼むよ」

「はい♪」


 その時、窓の外から奇妙な魔力を感じた。


「アイ、今の……」


『はい、感じました。非常に強力で、かつ禍々しい魔力です』


 俺は窓に近づく。王都の方角から、黒い煙のようなものが立ち上っているのが見えた。


「まさか……」


「旦那様、これは……ゼルヴァロスの細胞の反応があります」


 その瞬間、アイが警戒を強める。


「くそ、また何かが起きたのか!」


 俺は急いで装備を整える。


「リナリア、エリア、リリィ!」


 俺は大声で呼びかける。

 すぐに三人が駆けつけた。


「どうしたんですか?」


 リナリアが尋ねる。


「王都中央区で破壊神の細胞反応が検知された」

「えっ!」


 エリアが驚く。


「でも、破壊神は倒したはずでは……」

「俺が回収した細胞片とは別の、細胞があるんだ」


『学園の訓練場で検知された細胞と同じ反応です。深淵の使徒(ヴォイド・セイント)が動いています』


深淵の使徒(ヴォイド・セイント)……」


 リナリアが剣を握りしめる。


「急ぎましょう。被害が広がる前に」

「ああ」


 俺は《空間転移》を発動する準備をする。


「みんな、準備はいいか?」

「はい」


 三人が頷く。


「行くぞ!《空間転移》!」




 転移した先は、混乱に包まれていた。


「きゃああああ!」


 人々の悲鳴が響き渡る。

 中央広場には、巨大な魔法陣が描かれており、その中心に黒い結晶が浮かんでいる。


「あれは……」


『破壊神の細胞です。しかも、魂の転移魔法と組み合わされています』


 アイが警告する。


「この魔法陣は……まさか」


 その時、黒い結晶から禍々しいオーラが溢れ出した。


「グオオオオオ!」


 咆哮が響き、結晶から影が飛び出す。

 それは人型をしているが、全身が黒い霧に包まれており、目だけが赤く光っている。


「これは……また破壊神の魂の一部か?」


『その通りです。完全な復活ではありませんが、非常に危険です』


 影が動き出し、周囲の建物を破壊し始める。


「くそ、止めないと!」


 俺は《身体能力強化》を発動し、影に向かって突進する。


「《ライトニング・エッジ》!」


 雷を纏ったナイフが影を切り裂く。


「ギャアアア!」


 影が苦痛の声を上げる。


「効いてる!」

「《聖光(ディヴァイン・)(スラッシュ)》!」


 リナリアの剣が光を放ち、影を攻撃する。


「《メガサンダーストーム》!」


 エリアの雷撃魔法が次々と影に降り注ぐ。


「《ホーリー・ノヴァ》!」


 リリィの浄化魔法が広範囲に展開される。

 四人の連携攻撃に、影は徐々に弱っていく。


「よし、このまま押し切るぞ!」


 しかし、その時だった。

 影が突然、黒い結晶に戻り始めた。


「逃がすか!」


 俺は《時間操作》を発動し、影の動きを遅くする。


「《空間転移》!」


 俺は影を掴み、王都の外、人のいない荒野に転移させる。


「ここなら被害は出ない」


 荒野で、俺は影と一対一で向き合う。


「グルルル……」


 影が唸る。


「お前を完全に消滅させる」


 俺は全力を出す覚悟を決めた。


「《身体能力強化》最大出力!」


 体が光に包まれ、力が溢れる。


「《時間操作》!」


 周囲の時間が完全に停止する。

 静止した世界の中で、俺は影に近づく。


「《魔法付与》」


 ナイフに全ての属性を込める。

 火、水、風、土、雷、光、闇。すべての力が刃に集約される。


「そして……破壊神の細胞で強化された魔力を解放する」


『旦那様、破壊神の細胞の力を使用しますか?』


「ああ。こいつを倒すには必要だ」


『了解です。破壊神細胞強化モード、起動します』


 その瞬間、俺の体から膨大な魔力が溢れ出す。

 魔力が1000倍。

 魔法威力が500%向上。

 この力を持ってすれば、破壊神の魂の一部など――


「消し飛ばせる!」


 俺は時間停止を解除し、全力でナイフを振るう。


「《神殺しの(ラグナ=)極裂斬(ブレイカー)》!」


 七色の光を放つ刃が、影を貫く。


「ギャアアアアアアア!」


 影が絶叫する。

 その体が光に包まれ、徐々に消滅していく。


「これで……終わりだ」


 影が完全に消え去り、後には何も残らなかった。


『破壊神の魂の一部、完全消滅を確認しました』


「よし……」


 俺は膝をつく。破壊神の細胞の力を使用したことで、体に大きな負担がかかっていた。


「はぁ……はぁ……」


『旦那様、大丈夫ですか?』


「ああ……何とかな」


 その時、背後から声が聞こえた。


「見事でしたね」


 振り返ると、黒いローブを纏った人物が立っていた。


「お前は……ドレッド」


 ドレッドが不敵に笑う。


「今回も失敗しましたが、次はもっと強力な力で復活させましょう」

「させるか!」


 俺は立ち上がり、ナイフを構える。


「ふふ、今のあなたでは戦えないでしょう。無理な力を使用したことで体が動かないはずです」


 確かに、体が重い。


「くそ……」

「では、また会いましょう。次は、完全な形で破壊神を復活させますから」


 ドレッドが姿を消す。


「待て!」


 俺が叫ぶが、すでに遅かった。


『旦那様、無理をしないでください。今は休むことが優先です』


「わかってる……」


 俺はアイの補助で《空間転移》を使用し王都に戻った。




 王都に戻ると、すぐに医務室に運ばれた。


「悠真さん!」


 リナリアが駆け寄る。


「大丈夫ですか?」


 エリアも心配そうだ。


「ああ……少し無理をしすぎた」

「無理をしすぎたって……」


 リリィが涙ぐむ。


「お兄ちゃん、もう戦わないで」

「ごめんな、リリィ。でも、みんなを守るためには戦わないといけないんだ」

「そんな……」


 セラフィナが治療魔法を施してくれる。


「《グレートヒール》」


 温かい光が俺の体を包む。


「これで少しは楽になるはずです」

「ありがとう」


『旦那様、破壊神の細胞の力は強大ですが、使用には大きなリスクが伴います。今後は慎重に使用してください』


「わかってる」


 その時、国王が医務室に入ってきた。


「悠真殿、無事か?」

「はい、何とか」

「先ほどの戦闘、見事だった。しかし、深淵の使徒(ヴォイド・セイント)が再び動き出したとは……」


 国王が深刻な表情を見せる。


「三賢人を召集して、対策を練らねばならない」

「お願いします」


 俺は体を起こす。


「悠真さん、まだ休んでいてください」


 リナリアが止める。


「大丈夫だ。もう回復した」


 実際、セラフィナの治療魔法とアイのサポートで、体はほぼ元通りになっていた。


「それでは、作戦会議を開きましょう」


 国王が宣言する。

 こうして、新たな戦いの幕が上がった。

 深淵の使徒との戦い。

 破壊神の完全復活を阻止するための戦い。

 俺たちに、再び試練が訪れようとしていた。




 王城の作戦会議室には、三賢人、リナリア、エリア、リリィ、そして俺が集まっていた。


「状況を整理しよう」


 エヴァンジェリンが地図を広げる。


「深淵の使徒は、封印前の力を完全に取り戻した破壊神ゼルヴァロスの完全復活を目指している」

「そのために、禁書『魂の転移と復活』を奪取し、破壊神の細胞を集めている」


 セラフィナが補足する。


「しかし、我々が破壊神の細胞を5つ回収している。残りはどれだけあるのか?」


 マクシミリアンが尋ねる。


『私の分析では、全部で10個の細胞片が存在します』


 アイが答える。


『悠真様が5個、深淵の使徒が4個、残り1個の所在は不明です』


「つまり、残り1個を確保すれば、少なくとも完全復活は阻止できる?」


 俺が尋ねる。


『理論上はそうです。しかし、深淵の使徒は4個の細胞でも部分的な復活を試みる可能性があります』


「なるほど……つまり、最後の1個を確保することと、深淵の使徒の動きを封じることが重要なわけか」


 国王が頷く。


「その通りだ。悠真殿、最後の細胞片の場所を特定できないか?」

「アイ、できるか?」


『少し時間をください。破壊神の細胞は独特の魔力を放っているので、広範囲スキャンを行えば特定できるはずです』


「よし、頼む」


 アイが目を閉じ、集中する。彼女の体から淡い光が放たれ、部屋全体を包む。

 数秒後、アイが反応をキャッチする。


『見つけました。最後の細胞片は……以前ゼルヴァロスと戦闘した『永遠の闇の森(ネクロ・フォレスト)』の最深部から反応があります』


永遠の闇の森(ネクロ・フォレスト)……」


 エヴァンジェリンが眉をひそめる。


「あそこは非常に危険な場所です。強力な魔物が多数生息しており、ゼルヴァロス撃破後に調査隊を派遣しましたが、全滅しました」

「俺たちなら大丈夫だ」


 俺が立ち上がる。


深淵の使徒(ヴォイド・セイント)に先を越されるわけにはいかない」

「わたくしも行きます」


 リナリアが剣を握る。


「私も」


 エリアが杖を構える。


「私も行く!」


 リリィも立ち上がる。


「みんな……」


 俺は仲間たちを見回す。


「ありがとう。じゃあ、準備を整えて明日出発しよう」

「承知しました」


 三賢人も頷く。


「我々も王都の防衛を固めます。深淵の使徒がこちらを攻撃する可能性もありますから」

「お願いします」



 翌日の出発に備え、俺たちはそれぞれ準備を進めていた。

 俺は工房で装備の点検をしている。


「ナイフの切れ味、問題なし。《魔法付与》の精度も良好」


『旦那様、アイテムボックスの中身も確認しましょう』


「そうだな」


 アイテムボックスを開くと、様々なアイテムが整理されている。


 回復薬×50

 魔力回復薬×30

 解毒薬×20

 食料×100

 水×100

 テント×5

 寝袋×5

 破壊神の細胞片×5


「十分な量だな」


『はい♪これなら長期戦にも対応できます』


 その時、ドアがノックされた。


「悠真さん、入ってもいいですか?」


 リナリアの声だ。


「ああ、どうぞ」


 ドアが開き、リナリアが入ってくる。彼女は少し緊張した表情をしていた。


「どうした?」

「あの……明日の作戦のことで、少し話したいことが」

「座ってくれ」


 リナリアが椅子に座る。


「実は……わたくし、少し不安なんです」

「不安?」

「ええ。永遠の闇の森(ネクロ・フォレスト)は、この前エリアさんを失いかけた場所です。もし、悠真さんがいなくなってしまったら……」


 リナリアの声が震える。

 俺はリナリアの手を握る。


「大丈夫だ。俺たちには仲間がいる。そして、アイもいる」

「でも……」

「リナリア、俺はお前を絶対に守る。約束する」


 俺が真剣に見つめると、リナリアの瞳に涙が浮かぶ。


「悠真さん……」

「それに、お前は強い。剣の腕も、魔力も、そして何より心が強い」

「心……ですか」

「ああ。どんな困難にも立ち向かう勇気がある。そんなお前を、俺は誇りに思ってる」


 リナリアの涙がこぼれ落ちる。


「ありがとうございます……」


 リナリアが俺の胸に顔を埋める。


「わたくし、悠真さんと一緒なら、どこへでも行けます」

「ああ。一緒に行こう」


 しばらくの間、二人は抱き合っていた。


『旦那様、お熱いですね♪』


 アイの声が脳内に響く。


「黙ってろ」


 俺は心の中で答える。


『ふふ、でも本当に良かったです。リナリアさん、元気になりましたね♪』


「ああ」


 リナリアが顔を上げる。


「ありがとうございます、悠真さん。おかげで勇気が出ました」

「いつでも相談してくれ」

「はい」


 リナリアが部屋を出て行った後、俺は窓の外を見る。


「明日からまた、厳しい戦いが始まるな」


『大丈夫ですよ、旦那様。私たちなら必ず勝てます♪』


「ああ。お前がいてくれれば、何も怖くない」


 その夜、俺は久しぶりにゆっくりと眠ることができた。




 翌朝、俺たちは王城の正門に集合した。


「みんな、準備はいいか?」

「はい」


 リナリア、エリア、リリィが頷く。


「アイ、森の位置は把握してるな?」


『もちろんです♪座標設定完了しています』


「よし、じゃあ行くぞ。《空間転移》!」


 光に包まれ、次の瞬間、俺たちは巨大な森の入口に立っていた。

 目の前には、昼間だというのに薄暗い森が広がっていた。巨大な木々が空を覆い、陽光がほとんど届かない。


「やはり不気味ですね……」


 エリアが呟く。


『旦那様、ゼルヴァロスを撃破したとはいえ、通常の森とは異なります。魔力が異常に濃く、空間も歪んでいます』


「空間が歪んでる?」


『はい。普通に歩いても、同じ場所をぐるぐる回ることになるかもしれません』


「それは厄介だな」

「でも、アイさんがいれば大丈夫ですよね?」


 リリィが尋ねる。


『もちろんです♪私が正しい道を案内しますから、安心してください』


「頼むぞ、アイ」


 俺たちは森の中に足を踏み入れた。

 森の中は予想以上に暗く、魔法の光を灯さなければ何も見えないほどだった。


「《ライトボール》」


 エリアが光の球を作り出す。周囲がぼんやりと明るくなる。


「ありがとう、エリア」

「いえ」


 歩き始めてすぐ、奇妙な鳴き声が聞こえてきた。


「グルルル……」

「何の声だ?」


『魔物です。複数います』


 アイが警告する。


「みんな、警戒しろ」


 俺はナイフを構える。

 木々の間から、黒い影が飛び出してきた。


「シャドウウルフだ!」


 全長2メートルほどの黒い狼。その体は影でできており、物理攻撃が効きにくい。


「《ホーリーライト》!」


 リリィが浄化の光を放つ。


「キャイン!」


 光に触れたシャドウウルフが苦しみ、消滅する。


「リリィの浄化魔法が効くな」

「でも、数が多いです!」


 エリアが叫ぶ。

 次々とシャドウウルフが現れ、俺たちを囲む。


「《身体能力強化》!」


 俺は超高速で動き、シャドウウルフを切り裂いていく。


「《聖光(ディヴァイン・)(スラッシュ)》!」


 リナリアの剣が光を放ち、複数のシャドウウルフを一度に倒す。


「《メガサンダーストーム》!」


 エリアの雷撃が降り注ぐ。


「《サンクチュアリ・フィールド》!」


 リリィが広範囲の浄化領域を展開する。

 四人の連携で、シャドウウルフの群れを全滅させた。


「はぁ……はぁ……」


 みんな息が上がっている。


「大丈夫か?」

「はい……何とか」


 エリアが答える。


『旦那様、これは序の口です。森の奥に進むほど、強力な魔物が現れます』

「そうか……気を引き締めないとな」


 俺たちは慎重に森の奥へと進んでいく。




 数時間歩き続けた頃、日が暮れ始めた。


「今夜はここで野営しよう」


 俺が提案する。


「そうですね。これ以上暗くなると危険です」


 エリアが同意する。

 アイが物質創造でテントと寝袋を作り出す。


「今夜はゆっくり休んでください♪」

「ありがとう、アイ」


 俺たちはテントを設営し、焚き火を囲む。


「夕食は何にしましょうか?」


 エリアが尋ねる。


「アイテムボックスに保存食があるけど……」

「それだと味気ないですね」


 リナリアが苦笑する。


「じゃあ、私が料理しますね」


 エリアが張り切る。

 アイが新鮮な食材を創り出し、エリアがそれを使って料理を始める。


「今日はシチューにしましょう」


 エリアの手際は見事で、あっという間に美味しそうなシチューが完成した。


「いただきます」


 みんなで温かいシチューを食べる。


「美味しい……」


 リリィが幸せそうに微笑む。


「エリアさんの料理は本当に美味しいですね」


 リナリアも満足そうだ。


「ありがとうございます」


 エリアが照れくさそうに笑う。

 夕食後、俺たちは焚き火を囲んで座っていた。


「明日は森の最深部に到達できそうですね」


 エリアが言う。


「ああ。そこで最後の細胞片を回収する」


『ただし、深淵の使徒も同じ目的で動いている可能性があります』


 アイが警告する。


「その時は、全力で戦うだけだ」


 俺が答えると、みんなが頷く。


「お兄ちゃん、怖くないの?」


 リリィが尋ねる。


「怖いよ。でも、みんながいるから頑張れる」

「お兄ちゃん……」


 リリィが俺の腕にしがみつく。


「大丈夫だ。必ず守るから」


 俺がリリィの頭を撫でると、彼女は安心したように微笑んだ。


「そろそろ休みましょうか」


 リナリアが提案する。


「そうだな。明日に備えないと」


『私が見張りをしますから、安心して休んでください♪』


「頼むよ、アイ」


 俺たちはそれぞれのテントに入り、眠りについた。




 深夜、俺は突然アイの声で目を覚ました。


『旦那様、起きてください!敵が接近しています!』


「何!?」


 俺は飛び起きる。

 テントの外に出ると、黒い影が森の中から現れていた。


深淵の使徒(ヴォイド・セイント)か!」


 黒いローブを纏った人影が5人。それぞれが強力な魔力を放っている。


「よくぞ来た、一ノ瀬悠真」


 中央の人物が声を発すると同時に攻撃に転じようとしていた。


「させるか!」


 俺はナイフを構える。

 その時、リナリア、エリア、リリィもテントから出てきた。


「悠真さん!」

「みんな、敵だ!」


 深淵の使徒たちが一斉に魔法を放つ。


「《ダーク・スピア》!」

「《シャドウ・チェイン》!」

「《カース・ボルト》!」


 闇の魔法が俺たちに襲いかかる。


「《バリア》!」


 俺は防御魔法を展開する。


「《ウィンドシールド》!」


 エリアも防御魔法を重ねる。

 二重の防御で、敵の攻撃を防ぐ。


「はあ!」


 リナリアが反撃する。


「ぐっ……!」


 一人の使徒が攻撃を受けて後退する。


「やるな……しかし!」


 使徒たちが本気を出し始める。


「《アビス・フィールド》!」


 周囲が暗黒の領域に包まれる。視界が奪われ、呼吸も苦しくなる。


「くそ、これは……」


『旦那様、これは高位の闇魔法です。この領域内では、敵の能力が強化され、こちらの能力が弱体化します』


「厄介だな……」

「《ホーリー・フィールド》!」


 リリィが浄化の領域を展開する。

 暗黒の領域と浄化の領域がぶつかり合い、拮抗する。


「さすが聖女の血筋……しかし、まだまだ!」


 使徒たちが連携して攻撃を仕掛けてくる。

 俺は《時間操作》を発動する。


「《時間操作》!」


 周囲の時間が遅くなる。


「なっ……時間魔法だと!?」


 使徒たちの動きがスローモーションになる。


「今だ!《空間転移》!」


 俺は使徒の一人の背後に転移し、ナイフを突き立てる。


「ぐああああ!」


 一人目が倒れる。


「くそ……やるな!」


 残りの使徒たちが警戒する。


「《メガサンダー》!」


 エリアの雷撃が二人目を直撃する。


「ぎゃああ!」


 二人目も倒れる。


「ちっ……《カオス・テレポート》!」


 残りの三人が姿を消す。


「逃げたか……」


『いえ、まだ近くにいます。警戒してください』


 その瞬間、背後から攻撃が来た。


「《ダーク・エクスプロージョン》!」

「危ない!」


 俺は《緊急防御》で攻撃を無効化する。


「くっ……一日一回のスキルを使わせやがった」

「ふふ、次はどうする?」


 使徒が嘲笑う。

 俺は身体能力強化を使用し、全力の攻撃を放つ。


「ぎゃああああああ!」


 三人目が絶叫しながら倒れる。


「まだ二人いるぞ!」


『右から来ます!』


 アイの警告に従い、俺は右を向く。


「やらせません!!」


 リナリアの剣が閃き、四人目を切り裂く。


「最後の一人だ!」


 残った使徒が何かを取り出す。


「これで終わりだと思うな……我々の目的は達成された」

「何?」

「貴様らがここで足止めされている間に、我々の仲間が最後の細胞片を回収した」

「なんだと!?」


『旦那様、森の最深部から細胞の反応が消えました!』


「くそ、やられた!」

「ふふ、次は完全な形で破壊神を復活させる。楽しみにしていろ」


 使徒が姿を消す。


「待て!」


 俺が叫ぶが、もう遅かった。


「悠真さん……」


 リナリアが心配そうに近づく。


「大丈夫か?」

「ああ……でも、最後の細胞片を奪われた」


『旦那様、まだ諦めないでください。私たちには5個の細胞片があります。そして、敵は5個』


「つまり、五分五分か」


『はい。完全復活には10個すべてが必要なはずです。どちらかが相手の細胞片を奪取しない限り、破壊神は復活できません』


「そうか……じゃあ、まだチャンスはあるな」

「ええ。次こそは必ず勝ちましょう」


 リナリアが拳を握る。


「そうだな。みんな、怪我はないか?」

「はい、大丈夫です」


 エリアとリリィも無事だった。


「よし、じゃあ休もう。明日、王都に戻って作戦を練り直す」




 翌朝、俺たちは《空間転移》で王都に戻った。

 王城の謁見の間で、国王と三賢人に報告する。


「最後の細胞片を奪われたとは……」


 国王が深刻な表情を見せる。


「申し訳ありません」


 俺が頭を下げる。


「いや、そなたたちのせいではない。深淵の使徒(ヴォイド・セイント)の策略が巧妙だっただけだ」

「しかし、これで敵も完全復活はできません」


 エヴァンジェリンが分析する。


「我々が5個、敵が5個。完全復活には10個すべてが必要と」

「つまり、相手の細胞片を奪取するか、完全に守り切るかの勝負になるわけですね」


 セラフィナが言う。


「その通りです」


『旦那様、提案があります』


 アイの声が響く。


「何だ?」


『破壊神の細胞を利用して、逆に敵を追跡できるかもしれません』


「追跡?」


『はい。細胞同士は共鳴します。この性質を利用すれば、敵の細胞片の位置を特定できる可能性があります』


 アイの説明を俺がみんなに代弁する。


「それは素晴らしいアイデアですね」


 エヴァンジェリンが目を輝かせる。


「早速試してみましょう」




 王城の研究室で、俺とアイとエヴァンジェリンは細胞の共鳴実験を行っていた。


「まず、細胞片を台座に置いてください」


 エヴァンジェリンが指示する。

 俺は慎重に破壊神の細胞片を台座に置く。


『では、共鳴魔法を発動します』


 アイが集中し、細胞片に魔力を流し込む。

 すると、細胞片が淡く光り始めた。


「お、反応してる」


 光が強くなり、やがて空中に地図のようなものが浮かび上がった。


「これは……」


 地図上に5つの光点が示されている。


「敵の細胞片の位置か!」


『その通りです♪ただし、精度はあまり高くありません。大まかな位置しか分かりません』


「それでも十分だ。敵の動きが分かれば対処できる」


 エヴァンジェリンが地図を詳しく観察する。


「この位置は……エスペリア公国の方角ですね」

「エスペリア公国……隣国か」

「はい。以前、政略結婚の話が出ていた国です」


 リナリアが説明する。


「まさか、エスペリア公国が深淵の使徒と繋がっているのか?」

「可能性はあります。調査が必要ですね」


 国王が決断する。


「悠真殿、エスペリア公国に潜入調査を頼めるか?」

「わかりました」

「ただし、今回は秘密裏に動いてくれ。国際問題に発展する可能性がある」

「はい」


 こうして、俺たちは新たな任務を受けることになった。

 エスペリア公国への潜入調査。

 深淵の使徒の本拠地を突き止め、破壊神の細胞片を奪還する。

 そして、破壊神の完全復活を完全に阻止する。




 翌日、俺たちは潜入の準備を始めた。


「まず、身分を偽装する必要があります」


 エリアが提案する。


「そうだな」


 みんなが頷く。

 こうして、俺たちのエスペリア公国潜入作戦が始まった。

 深淵の使徒の本拠地は見つかるのか。

 破壊神の細胞片は奪還できるのか。

 そして、破壊神の完全復活は阻止できるのか。

 新たな戦いが、今始まろうとしていた。


【累計スキルポイント:28800】

【第四進化まで残り:71200ポイント】

みなさんあけましておめでとうございます。エリアです。

年明け早々読みに来てくださりありがとうございます。


今日のひとときは、とても温かくて……

まるで戦いなんてどこにもない世界にいるみたいでした。

けれど私たちが守るべき「平和」は、まだかろうじて続いているだけ。

次に立ち向かう闇は、きっとこれまでより強大です。

それでも――大丈夫。

みんなと一緒なら、私は怖くありません。


――エリア

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