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スキルAIがチートすぎて俺、使われてる気がするんだが?  作者: 暁の裏


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第11話 「王妃の願いと聖龍の怒り」

 結婚式のイベントプロデュースが大成功を収めた翌週、王都は社交シーズンの到来で一層の賑わいを見せていた。


「悠真さん、大変です!」


 エリアが慌てて俺の元に駆け寄ってくる。


「どうした?」

「王城から正式な依頼が来ています。イザベラ王妃様からです」


 俺は依頼書に目を通す。内容は意外なものだった。


「化粧品の開発?」


『旦那様、これは興味深い依頼ですね』


 アイの声が響く。


「社交シーズンに向けて、王妃様が新しい化粧品を求めていらっしゃるようです」


 エリアが説明する。


「従来の化粧品では満足できない何かがあるのでしょうか」


 リナリアが首をかしげる。彼女は母親の性格を理解しているだけに、困惑しているようだった。


「とりあえず、詳しい話を聞きに行こう」




 王城の応接室で、俺たちはイザベラ王妃と面会していた。


「お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます」


 王妃が優雅に頭を下げる。


「いえ、こちらこそ光栄です」


 俺が答えると、王妃は少し困ったような表情を見せた。


「実は、来月から本格的な社交シーズンが始まります」

「はい」

「各国の王族や貴族が一堂に会する重要な時期です。その中で、我が国の女性たちが最も美しく輝けるような化粧品を作っていただきたいのです」


 なるほど、国威発揚の意味もあるのか。


「具体的には、どのような効果をお求めですか?」

「肌を美しく見せるのはもちろん、長時間崩れない持続力、そして何より...」


 王妃が声を小さくする。


「年齢を感じさせない若々しさを演出できるものを」


『旦那様、これは高度な要求ですね』


 アイが分析する。


「承知いたします。リリィの浄化能力とエリアの魔法技術、そして俺のスキルを組み合わせれば、きっと満足いただける製品を作れるはずです」

「本当ですか?」


 王妃の瞳が希望に輝く。


「ええ。ただし、最高品質の材料が必要になります」

「費用は気になさらないでください。最高のものを作ってください」


 翌日から、俺たちは化粧品開発に着手した。


「まず、基本となる材料を揃えましょう」


 エリアが魔法書を片手に言う。


「美容効果のある植物エキス、鉱物パウダー、そして魔力を含んだ水...」

「《空間転移》を使えば、世界中から最高品質の材料を集められるな」


 俺は早速、遠方の産地に向かった。

 まずは南方の密林地帯。ここには美容効果で有名な「エターナル・フラワー」が自生している。


「これが噂のエターナル・フラワーか」


 淡いピンク色の花弁を持つ美しい花だった。触れただけで肌がなめらかになる感覚がある。


『旦那様、この花には強力なアンチエイジング効果があります』


「よし、これを大量に確保しよう」


 次に東方の山岳地帯。ここには「ミラクル・クレイ」と呼ばれる特殊な粘土がある。


「この粘土は毛穴の汚れを完璧に除去し、肌を引き締める効果があります」


 現地の商人が説明する。


「それだけじゃない。魔力を帯びているから、使用者の魔法抵抗力も上がるんです」


 これは素晴らしい材料だ。

 最後に北方の氷河地帯。ここには「アイスクリスタル・ウォーター」という特殊な水がある。


「この水は千年氷から滴る神聖な水です。不老不死の効果があると言われています」


『実際の不老不死効果はありませんが、肌の保湿と再生に驚異的な効果があります』


 アイが訂正する。

 一日で世界各地を回り、最高品質の材料を確保した。


 工房に戻ると、本格的な製造開始だった。


「まずは基礎となる化粧水から作りましょう」


 エリアが大きな釜を準備する。


「リリィ、エターナル・フラワーを浄化してもらえる?」

「はい!《ピュリファイ・エッセンス》!」


 リリィの魔法により、花のエキスが純粋な美容成分だけに精製される。


「すごい...不純物が完全に除去されてる」


 エリアが感嘆する。

 次に俺は《時間操作》を使って熟成プロセスを加速させる。


「通常なら数ヶ月かかる熟成を、数時間で完了させる」


 時間の流れを操作すると、エキスがみるみる内に琥珀色に変化していく。


「《空間転移》で温度と湿度を最適化」


 俺は世界各地の理想的な環境から空気を転送し、完璧な熟成環境を作り出す。


『旦那様、完璧です。このエキスなら王妃様も満足されるでしょう』


 続いてファンデーション作り。


「ミラクル・クレイを精製して、最高級のパウダーベースを作ります」


 エリアが魔法で粘土を細かく粉砕する。


「《ピュリフィケーション・ダスト》!」


 リリィの浄化魔法で、粘土が信じられないほど細かい粒子になった。


「これなら毛穴の奥まで浸透して、完璧なカバー力を発揮する」


 俺は《時間操作》で粒子の結晶化を調整し、光の反射率を最適化する。


「肌に乗せた瞬間、自然な輝きを放つように調整完了」


 最後にアイスクリスタル・ウォーターを使った美容液。


「この水をベースに、全ての成分を統合します」


 俺は慎重に各成分を混合していく。


「《バランス・フュージョン》」


 アイが新たに開発した魔法で、全ての成分が完璧に調和する。


『旦那様、この美容液の完成度は驚異的です。使用者の肌質に合わせて自動的に効果を調整する機能まで備わっています』


「よし、これで化粧品セットの完成だ」


 完成した化粧品を王妃に献上する日が来た。


「これが...」


 王妃が化粧品を手に取ると、容器からほのかな光が漏れていた。


「まず、化粧水からお試しください」


 エリアが丁寧に説明する。

 王妃が化粧水を肌に付けた瞬間、驚きの声を上げる。


「なんて滑らかな感触...それに、肌が内側から輝いているような」


 続いて美容液、そしてファンデーション。

 鏡を見た王妃の表情が一変した。


「これは...奇跡ですね」


 鏡に映る王妃は、明らかに10歳は若く見えた。肌は透き通るように美しく、シミやシワが完全に隠れている。


「素晴らしい...これなら社交シーズンも自信を持って臨めます」


 王妃が感動の涙を流す。


「ありがとうございます。これ以上の贈り物はありません」

「お気に召していただけて光栄です」


 俺が答えると、王妃は笑顔で頷いた。


「謝礼として100万ルスと、王室御用達の称号を贈らせていただきます」

「ありがとうございます」


 さらに予想外の提案があった。


「この化粧品を一般にも販売していただけませんか?王国の女性たちみなが美しくなれるように」


 これは大きなビジネスチャンスだった。


「喜んで。ただし、品質を維持するため、生産数は限定させていただきます」

「もちろんです。最高品質を保ってください」




 化粧品事業も順調にスタートし、王都の貴婦人たちから絶大な支持を得ていた。

 しかし、平和な日々は突然終わりを告げることになる。

 その日、俺は工房で新製品の開発をしていた。


『旦那様、大変です!空に巨大な影が現れました!』


 アイの緊急警告に俺は外に飛び出す。

 空を見上げると、巨大な白い竜が王都上空を旋回していた。


「あれは...聖龍(セイントドラゴン)?」


 聖龍は神聖な存在とされ、通常は人間に敵意を示すことはない。しかし、この聖龍は怒りに満ちていた。


「グオォォォ!」

 聖龍の咆哮が王都全体に響く。


『マスター、聖龍から強い悲痛の感情を感じます。何かが起きています』


「悲痛?」


 その時、城から急使が駆けつけた。


「一ノ瀬様!陛下がお呼びです!緊急事態です!」


 王城の作戦室で、緊急会議が開かれていた。


「状況を説明します」


 エヴァンジェリンが地図を広げる。


「昨夜、王国北部の聖龍の巣から卵が盗まれました」

「卵が?」

「はい。聖龍の卵は数百年に一度しか産まれない貴重なもので、強大な魔力を秘めています」


 なるほど、それで聖龍が怒っているのか。


「犯人は?」

「紅牙団です」


 セラフィナが苦い表情で答える。


「あの盗賊団が、ついにここまで...」


 マクシミリアンが拳を握り締める。


「聖龍は卵を取り戻すまで、王都への攻撃を止めないでしょう」


 アルフレッド国王が深刻な表情で言う。


「紅牙団のアジトを突き止めて、卵を取り戻す必要がある」


『旦那様、これは危険な任務ですね』


「ああ。でも、やるしかない」

「我々も同行します」


 三賢人が申し出る。


「いえ、三賢人の皆さんは王都の防御をお願いします」


 俺が提案する。


「聖龍への対処と、万が一の最後の砦として」

「しかし、紅牙団は手強い相手です」

「大丈夫です。俺たちには秘策があります」


 俺はリナリア、エリア、リリィを見る。


「みんな、準備はいいか?」

「もちろんです」


 リナリアが剣の柄に手をかける。


「私も頑張ります」


 エリアが杖を構える。


「お兄ちゃんたちと一緒なら、怖くない」


 リリィが決意に満ちた表情で頷く。




 セラフィナに教えてもらった紅牙団のアジトは、王都から北東に50キロ離れた山間部の洞窟だった。


「《空間転移》で一気に突入するのは危険すぎる」


 俺が作戦を練る。


「まず偵察から始めよう」


『旦那様、アジト周辺に約200名の盗賊がいます。かなりの大所帯ですね』


「200名...手強いな」

「でも、全員を相手にする必要はありません」


 エリアが分析する。


「卵を確保して、聖龍に返すのが目的です」

「そうだ。《時間操作》と《空間転移》を組み合わせて、電撃作戦で行こう」


 俺たちは洞窟の入口に近づく。見張りが数名立っているが、レベルは高くない。


「リリィ、眠らせてもらえる?」

「はい。《スリープ・ミスト》」


 リリィの魔法で見張りたちが静かに眠りについた。


「よし、侵入開始」


 洞窟の内部は複雑な構造になっていた。


『旦那様、卵の魔力を感知しました。奥から3つ目の部屋にあります』


「了解。《時間操作》発動」


 俺は時間の流れを遅くし、高速で洞窟内を移動する。

 途中で遭遇した盗賊たちを《魔法付与》されたナイフで眠らせていく。殺さずに済むよう、麻痺毒を付与していた。


「《サイレント・ムーブ》」


 エリアの魔法で、俺たちの足音が完全に消える。

 ついに、卵が保管されている部屋に到達した。


「あった...」


 美しい白銀の輝きを放つ聖龍の卵が、特製の台座に置かれていた。

 しかし、その瞬間だった。


「よくここまで来たな」


 背後から声がした。振り返ると、紅牙団のリーダーが立っていた。


「お前か...」


 以前戦った時よりも、明らかに強くなっている。


「聖龍の卵の力を借りて、俺は究極の力を手に入れた」


 リーダーの体からオーラが立ち上る。


「その卵を返してもらう」

「ふざけるな!この力があれば、王国など容易く支配できる」


 戦闘開始だった。

 リーダーは以前とは比べ物にならない速さで攻撃を仕掛けてくる。


「《シャドウ・ストライク》!」


 闇の刃が俺に向かって飛んでくる。


「《バリア》!」


 俺は防御魔法で攻撃を弾く。


「リナリア、エリア!卵を確保してくれ!」

「わかりました!」


 リナリアとエリアが卵に向かう間、俺はリーダーと一騎討ちを続ける。


「《ダーク・エンハンス》」


 リーダーが全身を闇で強化する。パワーとスピードが格段に上がった。


「厄介だな...」


 俺も本気を出す必要がありそうだ。


「《時間操作》最大出力!」


 時間の流れを限界まで遅くする。リーダーの動きがスローモーションになった。


「《空間転移》連続発動!」


 俺は瞬間移動を繰り返し、リーダーの死角から攻撃を仕掛ける。


「《ライトニング・エッジ》!」


 雷を纏ったナイフがリーダーを切り裂く。


「ぐあああ!」


 リーダーが苦痛の声を上げる。

 その隙に、リナリアが聖龍の卵を確保した。


「確保しました!」

「よし、撤退だ!」

「逃がすか!《ダーク・エクスプロージョン》!」


 リーダーが最後の力で自爆攻撃を仕掛けるが、俺は《空間転移》で全員を安全な場所に転送した。


 洞窟の外で、俺たちは聖龍の卵を確認していた。


「美しい...」


 リリィが感動の声を上げる。

 卵からは神聖な光が放たれ、触れるだけで心が清らかになる気がした。


『旦那様、聖龍が接近しています』


 空を見上げると、巨大な白い竜がゆっくりと降下してくる。

 聖龍は俺たちの前に降り立ち、卵を見つめた。


「グルル...」


 低く優しい鳴き声。明らかに感謝の気持ちを表していた。

 聖龍は大切に卵を持ち上げ、俺たちに深く頭をさげる。

 そして、空に舞い上がっていった。


「やったね」


 リリィが嬉しそうに言う。


「ええ。聖龍も安心したでしょう」


 エリアも微笑む。


「これで王都への攻撃も止むでしょう」


 リナリアが安堵の表情を見せる。


『旦那様、今回の任務で大量の経験値を獲得しました。2000ポイント追加です』


「それで累計は?」


『8800ポイントです。第三進化まであと6200ポイントですね』


 順調に成長している。




 王都に戻ると、大歓迎を受けた。


「よくやってくれた」


 アルフレッド国王が感謝の言葉を述べる。


「聖龍の件が解決し、王国に平和が戻った」

「当然のことをしたまでです」


 俺が答えると、国王は微笑んだ。


「謙虚だな。しかし、功績は正当に評価されるだ」

「報酬として1000万ルスと、王国騎士の称号を贈ります」


 これで俺たちの総資産は大幅に増加した。


「ありがとうございます」


 その夜、俺たちは宿屋で打ち上げをしていた。


「お疲れ様でした」


 エリアが乾杯の音頭を取る。


「今日は本当に危険でしたね」


 リナリアが振り返る。


「でも、みんなで力を合わせて乗り越えられました」

「そうですね。チームワークの勝利です」


 俺も同意する。


「それにしても、紅牙団のリーダーは強くなってましたね」

「ああ。きっと何らかの方法で力を増強しているんだろう」


『旦那様、あの組織の背後には、まだ大きな陰謀があるかもしれません』


 アイが警告する。


「そうかもしれないな。引き続き警戒が必要だ」


 しかし、今夜は成功を祝おう。


「乾杯!」


 四人のグラスが軽やかな音を立てた。


 翌日から、俺たちは再び平穏な商業活動に戻った。

 化粧品事業は大成功を収め、王室御用達ブランドとして確固たる地位を築いていた。


「注文が殺到しています」


 エリアが嬉しい悲鳴を上げる。


「生産が追いつきませんね」

「《時間操作》で生産効率を上げよう」


 俺は製造工程を加速させる。

 一方、リリィの浄化サービスも軌道に乗っていた。


「今日は5件の依頼が入っています」


 リリィが元気よく報告する。


「井戸の浄化が3件、農地の浄化が2件ですね」

「頑張ってるな、リリィ」


 俺がリリィの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

 リナリアも王女としての公務をこなしながら、商業活動に参加している。


「外交関係の調整も順調です」

「アルカディア王国との鉱石貿易協定も、来月には正式締結できそうです」


 すべてが順調に進んでいる。


『旦那様、現在の総資産は2000万ルスを突破しました』


「20億円相当か...すごいな」


『本当に一介の商人から、ここまで成長しましたね』


「みんなのおかげだ」


 俺は仲間たちを見回す。

 エリアは魔法技術の向上に余念がなく、新しい製品開発に取り組んでいる。

 リリィは浄化魔法の修行を続け、日々成長している。

 リナリアは王女としての責務を果たしながら、俺への愛情も深めている。

 そして、アイは俺のベストパートナーとして、あらゆる面でサポートしてくれている。


『旦那様、この平和な日々がずっと続けばいいですね』


「ああ、そう思う」


 しかし、俺たちの冒険はまだ始まったばかりだった。

 この異世界には、まだ見ぬ脅威と機会が数多く潜んでいる。

 だが、信頼できる仲間たちと共になら、どんな困難も乗り越えられるだろう。


『旦那様、また新しい依頼が来ています』


「今度は何だ?」


『隣々国のベルガリア帝国から、大規模な商業協定の打診です』


「ベルガリア帝国...大きな話になりそうだな」


『そうですね。でも、これまでの実績があれば大丈夫でしょう』


 俺は窓の外を見る。王都の街は活気に満ち、人々は平和な日常を送っている。

 この平和を守るため、そしてさらなる繁栄のため、俺たちの挑戦は続いていく。

 仲間たちと共に、この異世界で築き上げる未来を信じて。


『旦那様、頑張りましょうね』

「ああ、一緒に頑張ろう、アイ」


 夕日が王都を美しく染める中、俺たちの新たな冒険が幕を開けようとしていた。

今回のお話はいかがでしたでしょうか。

化粧品開発という一見平和な依頼から始まりましたが、その裏で聖龍を巻き込む大事件が待ち構えていました。

「美」を求める人の思いと、「命」を守ろうとする聖龍の怒り。対照的な二つの出来事が同じ回に描かれることで、物語に大きなうねりが生まれたと思います。


次回は、紅牙団の背後に潜むさらなる陰謀、そして隣国ベルガリア帝国との商業協定が物語の軸となっていきます。

悠真たちの冒険はますますスケールを増していきますので、ぜひご期待ください。


暁の裏

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