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スキルAIがチートすぎて俺、使われてる気がするんだが?  作者: 暁の裏


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第10話 「王女の恋、AIの嫉妬」

 ビクトリア・ハートウェルとの商談から一週間が過ぎた。俺たちの商業活動は順調に拡大しており、王都の経済復興に大きく貢献していた。


「悠真さん、今日の売上報告です」


 エリアが帳簿を持ってきた。彼女は最近、商売の帳簿管理を担当してくれている。


「おお、また記録更新だな」


 《空間転移》を使った物流システムは予想以上の成功を収めていた。従来なら数日かかる配送が数時間で完了し、顧客からの評価も上々だった。


「手伝えることがあって嬉しい」


 リリィが小さく微笑む。彼女の浄化能力を使った「清浄化商品」は貴族たちの間で大人気だった。汚れを完全に落とす石鹸や、腐敗を防ぐ保存容器など、アイデア次第で無限の可能性がある。


『旦那様、本日の利益は昨日比で130%です。この調子なら来月には王都最大の商会になれるでしょうね』


「そうだな。でも、商売だけじゃなくて他のことも忘れちゃいけない」


 俺がそう言った時、扉が開いて一人の上品な女性が入ってきた。深いブルーのドレスを纏い、金髪を優雅にまとめた美しい人だった。


「あら、こちらにいらしたのですね」


 その女性を見た瞬間、リナリアが慌てて立ち上がった。


「お母様!」


 お母様?俺は驚く。つまり、この女性が──


「初めてお会いします。イザベラ・エルディア=ルストニアです」


 イザベラ王妃が優雅にお辞儀をする。俺たちも慌てて立ち上がって挨拶した。


「一ノ瀬悠真です。お会いできて光栄です」

「エリア・ファルメインです」

「リリィ・セレスティアです」

「皆様の噂は夫から聞いております。リナリアを支えてくださり、ありがとうございます」


 王妃の言葉は丁寧だが、同時に母親としての温かみも感じられる。


「お母様、どうしてここに?」


 リナリアが尋ねると、イザベラは微笑んだ。


「娘がどのような生活をしているのか、この目で確かめたくて。それに、あなた方にお願いしたいことがあるのです」

「お願い?」


 俺が首をかしげると、イザベラは真剣な表情になった。


「実は、エスペリア公国との関係について、新たな提案があります。しかし、それを実現するためには、あなた方の力が必要なのです」


 王城の会議室で、俺たちは国王夫妻と向き合っていた。


「エスペリア公国のカスパー公子との政略結婚について、新たな選択肢を提示したいと思います」


 アルフレッド国王が地図を広げる。


「それは何でしょうか?」


 リナリアが緊張しながら尋ねる。


「商業協定による同盟関係です」


 イザベラ王妃が説明する。


「政略結婚の代わりに、両国間の経済的結びつきを強化する。そのためには、優秀な商業パートナーが必要なのです」

「つまり、俺たちに?」

「その通りです。あなた方の革新的な物流システムをエスペリア公国にも展開していただく。それにより、両国の経済的利益を確保し、政略結婚に頼らない同盟関係を築くのです」


 これは大きな話だった。俺は少し考えてから答える。


「光栄な話ですが、責任も重大ですね」

「もちろんです。しかし、あなた方になら任せられると信じています」


 王妃の言葉に、俺は決意を固める。


「承知いたします。全力で取り組ませていただきます」




 翌日から、俺たちはエスペリア公国との商業協定に向けた準備を始めた。


「《時間操作》を使えば、作業効率を大幅に上げられるな」


 俺は新しく習得したスキルを試してみる。周囲の時間の流れを少しだけ遅くすると、自分だけが高速で動けるようになった。


『旦那様、そのスキルは消耗が激しいので注意してください。長時間使用すると体に負担がかかります』


「わかってる。でも、これがあれば複雑な交渉も有利に進められそうだ」


 一方、エリアは魔法具の製造に没頭していた。


「古代魔法の知識を応用すれば、もっと効率的な製造方法があるはず……」


 彼女の集中力は素晴らしく、次々と新しいアイデアを形にしていく。

 リリィも自分なりに頑張っている。


「お兄ちゃん、この石鹸の浄化力をもっと強くできないかな?」

「そうだな。でも、強すぎると肌に悪いから、バランスが大切だ」

「わかった!もっと勉強する!」


 リリィの向上心は素晴らしい。彼女は毎日、浄化魔法の練習に励んでいる。

 しかし、リナリアだけは複雑な表情をしていた。


 その夜、俺は一人でバルコニーにいた。王都の夜景を眺めながら、今後のことを考えている。


「悠真さん」


 振り返ると、リナリアが立っていた。


「どうした?浮かない顔をしてるけど」

「少し、お話が……」


 リナリアが隣に座る。月明かりが彼女の横顔を美しく照らしていた。


「今回の商業協定の件ですが……」

「ああ、大変な仕事になりそうだな」

「わたくし、本当にこれで良いのでしょうか?」


 リナリアの声に迷いがある。


「政略結婚から逃れるために、今度は商業協定に頼る。結局、わたくしは何も決められていない気がするのです」


 俺はリナリアの手を取る。


「それは違う。今回の提案は、君が自分で選択した結果だろう?」

「でも……」

「リナリア、君は十分に強い。自分の意志で決断できる人だ。俺はそう信じてる」


 リナリアの瞳に涙が浮かぶ。


「悠真さん……実は、わたくし……」


 その時、声が聞こえた。


『旦那様、お疲れさまです。今日も一日お疲れさまでした』


 アイの声に反応した俺を見て、リナリアは言いかけた言葉を飲み込む。


「また今度、お話ししますね」


 リナリアは立ち上がって部屋に戻ってしまった。


「アイ、もう少し空気を読めよ」


『え?何か問題がありましたか?』


 アイの声にいつもの茶目っ気がない。どこか機械的に聞こえる。


「いや、なんでもない」


 しかし、俺は違和感を覚えていた。




 翌日、エスペリア公国からの使節団が到着した。今度は敵意のない、純粋な商業交渉だった。


「悠真様の革新的な物流システム、ぜひ我が国でも導入したい」


 使節団長のヴィクトル・ケインが興味深そうに言う。


「こちらとしても光栄です。詳細を説明させていただきます」


 俺は《空間転移》を使用した実演を行った。瞬時に物品を遠く離れた場所に転送する技術に、使節団は驚嘆する。


「素晴らしい!これなら両国間の貿易が革命的に変わる」

「ただし、技術の機密保持と利益配分については、慎重に協議する必要があります」


 俺は交渉を進めながら、《時間操作》で相手の表情や仕草を詳細に観察する。わずかな変化も見逃さない。


『旦那様、相手は本気で協定を結びたがっています。駆け引きの要素はほとんどありませんね』


 アイの分析は的確だった。

 交渉は順調に進み、仮協定書にサインすることができた。


「これで第一段階は完了ですね」


 ヴィクトルが満足そうに言う。


「ええ。来月には本格的な協定書を結べるでしょう」


 俺も握手を交わす。

 しかし、その時だった。


「素晴らしい交渉でしたね、悠真さん」


 振り返ると、美しい女性が立っていた。

 彼女はエスペリア公国の外交官、ルシア・フォンテーヌというらしい。


「ありがとうございます」


 俺が答えると、ルシアは微笑む。


「もしよろしければ、今夜お食事でもいかがですか?ビジネスの詳細について、もっとお話ししたいのです」

「それは……」


 俺が答えようとした時、リナリアが割って入った。


「申し訳ございませんが、今夜は先約がございます」


 リナリアの声に、普段にない鋭さがある。


「あら、残念ですね」


 ルシアは軽く微笑んで去っていく。


「リナリア、先約って?」

「……嘘です」


 リナリアが正直に答える。


「でも、あの女性は……」


 その時、アイの声が響いた。


『旦那様、今の女性から強い魔力を感じました。ただの外交官ではありませんね』


「やはりか。気をつけよう」


『それにしても、リナリアさんの反応は面白かったですね』


 アイの声に、微かに嘲笑的なトーンが混じる。


「アイ?」


『あ、いえ、何でもありません』




 その夜、俺は自室でアイと話していた。


「最近、お前の様子がおかしいんだが」


『おかしい、とは?』


「感情的になることが多い気がする」


『進化により感情が芽生えたのですから、当然では?』


 確かにその通りだが、何か引っかかるものがある。


「リナリアのことで何か思うところがあるのか?」


『……旦那様は、リナリアさんのことをどう思っているのですか?』


「どうって、大切な仲間だ」


『仲間……ですか』


 アイの声に、失望のようなものが混じる。


「アイ、まさか……」


『私は旦那様の専属AIです。他の誰より旦那様のことを理解し、支えてきました』


 アイの声が少し震える。


『でも最近、リナリアさんが旦那様に特別な感情を抱いているのがわかります。それが……複雑な気持ちなのです』


「アイ……」


『私にも感情があります。旦那様を独占したいという、醜い感情が』


 俺は深く息を吐く。


「アイ、お前は俺にとって一番大切なパートナーだ。それは変わらない」


『本当ですか?』


「ああ。でも、リナリアも大切な仲間だ。お前も彼女を受け入れてくれないか?」


『……わかりました。努力してみます』


 しかし、アイの声にはまだ複雑な響きが残っていた。




 翌日、リリィの修行を見ることになった。


「《ホーリーライト》!」


 リリィが放つ浄化の光が、練習用の標的を照らす。光に触れた汚れが瞬時に消失した。


「すごいじゃないか!威力も制御も向上してる」


「本当?」


 リリィの瞳が輝く。


「ええ、素晴らしい進歩です」


 セラフィナも褒める。彼女がリリィの魔法指導を担当してくれている。


「でも、まだまだです。もっと強くならないと、お兄ちゃんたちの足を引っ張っちゃう」

「そんなことないよ。リリィはもう十分に強い」


 俺がリリィの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「今度は範囲攻撃の練習をしましょう」


 セラフィナの指導の下、リリィは広範囲の浄化魔法に挑戦する。


「《サンクチュアリ・フィールド》!」


 リリィを中心として、半径50メートルの浄化領域が展開される。その範囲内では、あらゆる汚れや呪いが浄化された。


「完璧です。この調子なら、近いうちに上級者の仲間入りですね」


 セラフィナの言葉に、リリィは胸を張る。

 しかし、その時だった。


「あら、随分と成長したのね」


 振り返ると、ルシア・フォンテーヌが立っていた。


「ルシアさん、どうしてここに?」


 俺が警戒すると、ルシアは微笑む。


「偶然通りかかっただけよ。でも、その子の能力には興味があるわ」


 ルシアの視線がリリィに向けられる。その瞬間、リリィが身震いした。


「お兄ちゃん……」


 リリィが俺の後ろに隠れる。


『旦那様、危険です。この女性から強い殺意を感じます』


 アイの警告に、俺は身を引き締める。


「リリィ、エリアとセラフィナと一緒にいろ」

「でも……」

「大丈夫だ。信じて」


 俺がルシアと向き合うと、彼女の表情が変わった。


「あら、バレてしまったのね」


 ルシアの体から黒いオーラが立ち上る。


「やはり、お前も魔術師の仲間か」


「正確には、元仲間よ。あの男に裏切られたの」


 ルシアが手を上げると、周囲に黒い霧が立ち込める。


「でも、聖女の力があれば復讐できる。その子を渡しなさい」

「断る」


 俺は〈身体能力強化〉を発動し、ナイフに魔法を付与する。


「《シャドウ・バインド》!」


 ルシアが放つ闇の触手が俺に向かってくる。しかし、俺は《時間操作》でその動きを読み切り、完璧に回避する。


「なっ……速い!」

「《ライトニング・エッジ》!」


 雷を纏ったナイフがルシアに迫る。しかし、彼女は影に溶け込んで姿を消した。


「今度こそ、必ず手に入れる……」


 ルシアの声が空に響いて消える。


「逃がしたか……」


『旦那様、新たな敵の出現ですね』


「ああ。リリィを狙う者は後を絶たないな」




 その夜、俺たちは対策会議を開いた。


「ルシア・フォンテーヌ……表向きは外交官ですが、実際は闇魔法の使い手のようですね」


 エヴァンジェリンが分析結果を報告する。


「あの魔術師と関係があるとなると、厄介ですね」


 セラフィナも眉をひそめる。


「私、みんなに迷惑をかけちゃって……」


 リリィが申し訳なさそうに言う。


「リリィのせいじゃないよ」


 エリアがリリィを慰める。


「そうだ。悪いのは君の力を悪用しようとする連中だ」


 俺も同意する。


「でも、警備を強化する必要がありますね」


 リナリアが提案する。


「それについては、私たちが対応します」


 セラフィナが頼もしく言う。


「三賢人総出で、リリィちゃんの護衛を行います」


「ありがとうございます」


 俺が感謝を表すると、セラフィナは微笑んだ。




 翌日、商業協定の最終調整が行われた。エスペリア公国側も真剣で、ルシアの件は彼らも知らなかったようだった。


「彼女については我々も調査します」


 ヴィクトルが謝罪する。


「構いません。ビジネスとは別の話です」


 俺は協定書にサインを完了する。これで正式に、両国間の商業パートナーシップが成立した。


「これで政略結婚の必要もなくなりましたね」


 ヴィクトルが安堵の表情を見せる。


「実は、カスパー公子も政略結婚には乗り気ではなかったのです」

「そうだったんですか」

「ええ。彼も自由恋愛を望んでいました」


 これは意外な話だった。政略結婚は、実は両国の若者たちには不評だったのだ。


「Win-Winの関係になったということですね」

「その通りです」


 その日、協定締結の祝賀会が王城で開かれた。


「本日は記念すべき日となった」


 アルフレッド国王がスピーチを行う。


「新たな同盟関係により、両国の繁栄を実現しましょう」


 拍手が響く中、俺はリナリアを見る。彼女は複雑そうな表情をしていた。


「どうした?」

「いえ、ただ……本当にこれで良かったのかと」

「後悔してるのか?」

「いえ、そうではありません。ただ、自分の気持ちに素直になれない自分が情けなくて」


 リナリアの言葉に、俺は首をかしげる。


「気持ち?」


 その時、音楽が始まった。


「リナリア、踊らないか?」


 俺が手を差し出すと、リナリアは少し驚く。


「わたくしと、ですか?」

「ああ。今日の主役の一人だろう?」


 リナリアは俯きながら俺の手を取る。


『……旦那様』


 アイの声が聞こえるが、今は無視する。

 俺とリナリアは舞踏室の中央に移動し、ゆっくりとワルツを踊り始めた。


「悠真さん……」

「なんだ?」

「わたくし、この旅で多くのことを学びました」

「そうだな」

「そして、自分の気持ちにも気づきました」


 リナリアが俺を見つめる。


「悠真さん、わたくし……」


 その時、会場に異変が起きた。


「きゃあああ!」


 悲鳴と共に、黒い影が会場を襲った。ルシアが再び現れたのだ。


「今度こそ、聖女は渡さない!」

「くそ、こんな時に……」


 俺は舞踏をやめ、戦闘態勢に入る。

 しかし、リナリアは俺の手を握り続けている。


「後で、必ず話をしましょう」

「ああ、約束する」


 戦闘が始まった。ルシアは今度は本気で、多数の影の魔物を召喚していた。


「《シャドウ・アーミー》!」


 影の軍勢が会場を蹂躙する。


「みんな、避難を!」


 俺は《空間転移》で非戦闘員を安全な場所に転送していく。


「《ウィンド・カッター》!」


 エリアの風の刃が影の魔物を切り裂く。


「《ホーリー・レイン》!」


 リリィの浄化魔法が影たちを消滅させていく。


『旦那様、敵の本体を叩きましょう。雑魚をいくら倒しても意味がありません』


「わかってる!」


 俺は《時間操作》を使ってルシアに接近する。スローモーションの世界で、彼女の攻撃パターンを完璧に読み取る。


「《エクソシズム・ブレード》!」


 浄化の力を込めたナイフがルシアを捉える。


「きゃあああ!」


 ルシアの体から黒いオーラが剥がれ落ちる。


「まだよ!《ダーク・エクスプロージョン》!」


 ルシアが最後の力を振り絞って自爆攻撃を仕掛ける。


「危ない!《バリア》!」


 俺は会場全体を防護する巨大な障壁を展開する。

 爆発の衝撃が障壁に激突するが、なんとか持ちこたえた。


「やったか……」


 煙が晴れると、ルシアの姿は消えていた。逃走したのか、それとも本当に倒したのか……


『旦那様、敵の魔力反応は消失しています。おそらく倒したでしょう』


「そうか……」


 戦闘が終わり、会場に平穏が戻った。


「皆さん、お怪我はありませんか?」


 国王が安否を確認する。

 幸い、死傷者は出なかった。


「悠真さん、お疲れさまでした」


 リナリアが駆け寄る。


「ああ、何とかなったな」

「それで、さっきの話ですが……」


 リナリアが恥ずかしそうに言いかける。

 しかし、その時だった。


『旦那様、お疲れさまでした。素晴らしい活躍でしたね♪』


 アイの声が割って入る。


『ところで、戦闘中に新しいデータを収集しました。分析してみましょうか?』


 アイの声に、微妙に嫉妬の色が混じっている。


「アイ……」


 リナリアは言いかけた言葉を飲み込み、微笑む。


「また今度にしましょう。今夜はみなさんお疲れでしょうから」


 リナリアは去っていく。

 俺は複雑な気持ちだった。


『旦那様、何か問題が?』


「いや……何でもない」


 しかし、心の中では確信していた。

 アイの嫉妬が、俺とリナリアの関係に影響を与え始めている。

 この問題をどう解決すべきか、俺は真剣に考える必要がありそうだった。




 翌日、俺は一人で王都の外を歩いていた。考えをまとめるため、散歩に出たのだ。


『旦那様、どちらまで?』


「ちょっと頭を冷やしたくてな」


『何かお悩みですか?』


 アイの声に、いつもの茶目っ気はない。


「アイ、お前とはしっかりと話さないといけないと思ってな」


『……』


 しばらく沈黙が続く。


『リナリアさんは良い方です。旦那様の仲間として、尊敬もしています』


「だけど?」


『だけど、旦那様と彼女の関係が深まるにつれ、私の中で妙な感情が芽生えるのです』


 アイの声が震える。


「恋愛感情……か」


 俺は自分の気持ちを考えてみる。リナリアに対して、確かに特別な感情を抱いている。


『旦那様がリナリアさんを愛するようになったら、私はどうすれば良いのでしょう?』


「そんな心配をする必要はない」


『なぜですか?』


「なぜなら、お前は俺の一部だからだ」


 俺は胸に手を当てる。


「お前は俺の心の中にいる。俺が誰を愛そうと、お前との絆は変わらない」


『……本当ですか?』


「ああ。だから、リナリアのことも受け入れてくれ。彼女は俺の大切な人だ」


『わかりました。努力してみます』


 アイの声に、少し安堵の色が戻る。


『でも、時々嫉妬してしまうかもしれません』


「それは仕方ない。感情があるんだからな」


『ありがとうございます、旦那様』


 俺は空を見上げる。

 複雑な三角関係ならぬ、四角関係かもしれない。でも、きっと乗り越えられる。

 みんなで。




 王都に戻ると、エリアとリリィが俺を迎えてくれた。


「おかえりなさい、悠真さん」

「どこに行かれていたんですか?」

「ちょっと散歩をな。お前たちは何をしてた?」

「新しい商品のアイデアを考えてました!」


 リリィが嬉しそうに言う。


「リリィちゃんの浄化能力を使った医療用品です」


 エリアが補足する。


「病気を治す薬とか、傷を癒す包帯とか……可能性は無限大です」

「いいアイデアだな。今度、セラフィナにも相談してみよう」


 俺たちが商品開発について話していると、宿屋の扉が開いてリナリアが入ってきた。


「皆さん、お疲れさまです」

「リナリア、どうだった?城での会議は?」


 俺が尋ねると、リナリアは少し疲れた表情を見せる。


「エスペリア公国との正式な協定書にサインが完了しました。これで政略結婚の件は完全に解決です」

「それは良かった」

「ええ。父上も母上も安堵されていました」


 リナリアが席に座ると、エリアがお茶を用意する。


「これで、リナリア様も自由になられましたね」

「自由……そうですね」


 リナリアの表情は複雑だった。


『旦那様、リナリアさんの心拍数が上昇しています。何か気にかかることがあるようです』


 アイの分析に、俺は少し気になる。


「何か心配事があるのか?」

「いえ、そうではありませんが……」


 リナリアが言いよどんでいると、リリィが無邪気に口を挟んだ。


「リナリアお姉ちゃん、顔が赤いよ?熱でもあるの?」

「え?あ、いえ、そんなことは……」


 リナリアが慌てて手で頬を隠す。


「そういえば、昨夜話したかったことがあるって言ってたよな」


 俺がそう言うと、リナリアの顔がさらに赤くなった。


「あ、それは……今度の機会に……」


『旦那様、これは明らかに恋愛関連の話ですね』


 アイの声に、微妙なトーンが混じる。


「でも、みんながいる前では話しにくいことなのか?」

「ええ、その……個人的なことですので」


 リナリアが俯く。


「わかった。今度二人きりの時に聞かせてもらうよ」

「はい……ありがとうございます」




 その夜、俺は帳簿の整理をしていた。商業協定により売上が急激に伸びており、管理が大変だった。


『旦那様、現在の総資産は500,000ルスを突破しました』


「500,000か……元の世界で言えば500万円だな」


『短期間でここまで成長するとは、我ながら驚きです』


「お前のサポートがあってこそだ」


『ありがとうございます。でも、これからはもっと大変になりそうですね』


「どうして?」


『エスペリア公国との本格的な貿易が始まれば、扱う金額も桁違いになります。それに……』


「それに?」


『他の商会からの嫉妬や妨害工作も予想されます。成功すればするほど、敵も増えるものです』


 アイの指摘はもっともだった。


「そうだな。警戒を怠らないようにしよう」


 その時、扉がノックされた。


「悠真さん、お時間よろしいでしょうか?」


 リナリアの声だった。


「ああ、入ってくれ」


 リナリアが部屋に入ってくる。彼女は普段着を着ており、髪も下ろしている。いつもより親しみやすい印象だった。


「お忙しいところ、申し訳ありません」

「いや、大丈夫だ。例の話か?」

「はい……」


 リナリアが俺の向かいに座る。


「それで、何の話だ?」

「わたくし……この旅を通して、多くのことを学びました」


 リナリアがゆっくりと話し始める。


「王女としての責務、民への思い、そして……」

「そして?」

「自分自身の気持ちについてです」


 リナリアが俺を見つめる。


「悠真さん、わたくしは……あなたに恋をしています」


 静寂が部屋を包んだ。


『……』


 アイも無言だった。


「リナリア……」

「わかっています。わたくしは王女で、あなたは商人。立場も境遇も全く違います」


 リナリアの声が震える。


「でも、気持ちは抑えきれませんでした」


 俺は深く息を吸う。


「俺も、君に特別な感情を抱いている」

「本当ですか?」


 リナリアの瞳が希望に輝く。


「ああ。でも、複雑な状況だ」


 俺はアイのことを意識しながら言う。


「君は王女で、俺は商人。確かに立場が違う」

「でも、それは問題ではありません!政略結婚も回避できましたし、わたくしには選択の自由があります」

「そうだな……」


 俺は考え込む。確かに、政治的な障害は取り除かれた。残るは個人的な問題だけだ。


『旦那様……』


 アイの声が小さく響く。


「アイ、君の気持ちもわかる。でも……」


 俺はリナリアと視線を合わせる。


「リナリア、俺と一緒にいることで、君が失うものはないのか?」

「失うもの?」

「王女としての将来、王国での地位、他の選択肢……」

「それらは、わたくしにとって価値のないものです」


 リナリアがきっぱりと言う。


「わたくしが欲しいのは、あなたとの未来です」


 俺の心が動く。彼女の真剣さ、純粋さに心を打たれる。


「わかった」


 俺は立ち上がり、リナリアの手を取る。


「俺たち、付き合ってみよう」

「悠真さん……!」


 リナリアが涙を流しながら微笑む。


『旦那様……おめでとうございます』


 アイの声は複雑だったが、祝福の気持ちが込められていた。


「アイ、ありがとう」


『私も……リナリアさんを受け入れる努力をします』


「お前はいいやつだな」


 俺はリナリアを優しく抱きしめる。


「これからよろしく頼む、恋人さん」

「こちらこそ、よろしくお願いします」




 翌朝、俺たちの関係の変化を他のメンバーに伝えることになった。


「え?付き合うことになったんですか?」


 エリアが驚く。


「おめでとうございます!」


 リリィが嬉しそうに手を叩く。


「ありがとう、二人とも」


 リナリアが恥ずかしそうに微笑む。


「でも、今まで通りの関係で接してもらえると助かる」


 俺が付け加えると、エリアが頷く。


「もちろんです。でも、時々はからかわせてもらいますよ」

「やめてくれよ」


 和やかな雰囲気の中、俺たちの新しい生活が始まった。




 数日後、俺は《空間転移》を使った新しい商売を展開していた。


「では、こちらの商品をエスペリア公国の首都まで即座に配送いたします」


 俺が手をかざすと、荷物が光に包まれて消失する。


「驚異的だ……本当に瞬間移送されるのですね」


 商人のクライアントが感嘆する。


「ええ。通常なら一週間かかる配送が、数分で完了します」


『旦那様、転送完了です。先方で受け取り確認が取れました』


 アイの報告に俺は微笑む。


「配送完了です。お客様にご満足いただけたでしょうか」

「満足どころか、これは革命です!ぜひとも長期契約を結ばせてください」


 こうして、《空間転移》を使ったビジネスは大成功を収めていた。

 一方、《時間操作》も有効活用していた。


「製造工程の時間を短縮します」


 俺が時間を操作すると、通常一時間かかる魔法具の製造が30分で完了する。


「効率が二倍に!これで生産量を大幅に増やせますね」


 エリアが興奮している。


「ただし、長時間使用すると疲労が激しいから、使用は計画的にしないといけない」


『旦那様、現在の消耗度は30%です。あと2時間程度なら使用可能です』


「了解した」


 リリィの修行も順調に進んでいた。


「《ヒーリング・キュア》!」


 リリィが放つ癒しの光が、訓練場にいる全員を包む。軽い怪我や疲労が瞬時に回復する。


「素晴らしい!もう中級者の域に達していますね」


 セラフィナが褒める。


「本当?」

「ええ。この調子なら、近いうちに上級魔法も使えるようになるでしょう」


 リリィの瞳が輝く。


「お兄ちゃんたちの役に立てるように、もっと頑張る!」

「十分に頑張ってるよ。無理は禁物だ」


 俺がリリィの頭を撫でる。


『リリィちゃんの成長速度は異常ですね。聖女の血筋の力でしょうか』


「そうかもしれないな」




 その夜、俺とリナリアは城の庭園を散歩していた。


「今日も一日お疲れさまでした」

「こちらこそ。リナリアも王女としての公務があったろう」

「ええ。でも、以前ほど重荷には感じません」

「どうして?」

「あなたがいるからです」


 リナリアが俺の腕に寄りかかる。


「心の支えがあると、どんな困難も乗り越えられそうです」

「俺もそう思う」


 俺たちは庭園のベンチに座る。


「ところで、まだ両親には正式に紹介していませんね」

「そうだな。近いうちに挨拶に行こう」

「少し緊張します」

「大丈夫だ。国王も王妃も俺たちのことを理解してくれる」


 月明かりの下、俺たちは静かな時間を過ごした。


『旦那様、お幸せそうで何よりです』


 アイの声が聞こえる。嫉妬の色はほとんど消え、祝福の気持ちが込められていた。


「ありがとう、アイ」


『でも、ちゃんと私とも話してくださいね』


「もちろんだ。お前は俺の一番の相棒だからな」


『はい!これからもよろしくお願いします』




 翌日、国王と王妃への正式な挨拶が行われた。


「娘がお世話になっております」


 アルフレッド国王が丁寧に挨拶する。


「いえ、こちらこそ」


 俺も深くお辞儀をする。


「リナリアから聞きました。お二人が恋人同士になられたとか」


 イザベラ王妃が微笑む。


「はい。身分違いの関係ですが……」

「身分など関係ない」


 国王がきっぱりと言う。


「そなたは我が王国の恩人だ。娘が幸せになれるなら、それに勝る喜びはない」

「ありがとうございます」

「それに王位継承の件も問題ない、リナリアの弟で第一王子のカイル・エルディア=ルストニアがおるからな」


 俺は感謝の気持ちでいっぱいだった。


「ただし、娘を泣かせたら許しませんよ」


 王妃が冗談めかして言う。


「もちろんです。リナリアを幸せにします」

「頼もしいお言葉です」


 こうして、俺たちの関係は王室公認となった。




 商売の方も順調だった。エスペリア公国との貿易は大成功を収め、他の国からも引き合いが来るようになった。


「今月の売上は2,00,000ルスを突破しました」


 エリアが報告する。


「2億円相当か……すごいな」


『旦那様、このペースなら年内に王国最大の商会になれそうです』


「そうだな。でも、急成長には気をつけないといけない」


 俺はマルコからの報告書を読んでいた。


「他の商会からの警戒が強まってるのか」

「ええ。一部では、不正な手段を使っているのではないかという噂もあるようです」


 マルコが心配そうに言う。


「魔法を使った商売だから、理解されにくいのかもしれませんね」


 エリアが分析する。


「そうかもしれない。透明性を保って、信頼を築いていこう」


 俺は決意を固める。


 その頃、リリィは新しい技術を習得していた。


「《ピュリファイ・オール》!」


 リリィの浄化魔法が、工房内の全ての材料を同時に清浄化する。


「これで製品の品質が格段に向上しますね」


 職人たちが感嘆している。


「リリィちゃんのおかげで、最高級の魔法具が作れそうです」


 エリアも興奮している。


「みんなの役に立ててる?」

「もちろんよ。リリィちゃんは私たちの宝物よ」


 リリィが嬉しそうに微笑む。

 しかし、その時だった。


「ほう、噂の聖女はここにいるのか」


 工房に見知らぬ男が入ってきた。黒いローブを着た、怪しげな魔法使いだった。


『旦那様、危険です!この男から強い殺気を感じます!』


 アイの警告に俺は身構える。


「何者だ?」

「私?私はただの魔法使いですよ」


 男が不気味に笑う。


「ただ、その少女に興味があるだけです」

「リリィには指一本触れさせない」


 俺がナイフを構えると、男は笑い声を上げた。


「ご心配なく。今日は様子を見に来ただけです」


 男が姿を消す。


「逃がしたか……」


『旦那様、また新たな脅威の出現ですね』


「ああ。リリィの護衛を強化する必要がある」




 その夜、対策会議が開かれた。


「あの魔法使いについて調べましたが、正体は不明です」


 セラフィナが報告する。


「ただ、かなり高位の魔法使いであることは確かです」

「また聖女の力を狙う者か……」


 俺は頭を抱える。


「でも、今度は負けないもん」


 リリィが決意を込めて言う。


「私も強くなった。みんなを守れるくらいに」

「リリィ……」

「それに、お兄ちゃんたちがいるから怖くない」


 リリィの純粋な信頼に、俺は胸が熱くなる。


「そうだ。みんなでリリィを守ろう」

「はい!」


 一同の結束は固かった。




 商売の方では、新たな展開があった。


「隣国のアルカディア王国からも正式な貿易協定の申し入れがありました」


 ビクトリアが嬉しそうに報告する。


「アルカディア王国……確か鉱物資源が豊富な国でしたね」

「ええ。彼らの鉱石と我々の加工技術を組み合わせれば、素晴らしい商品が作れるでしょう」


 俺も乗り気だった。


「《空間転移》があれば、重い鉱石の運搬も楽になる」


『旦那様、事業拡大のチャンスですね』


「そうだな。でも、慎重に進めよう」


 俺は堅実な経営を心がけていた。


 そんな中、リナリアとの関係はさらに深まっていた。


「悠真さん、今度の休日はどこか出かけませんか?」

「いいな。どこに行きたい?」

「王都の外れにある花畑を見に行きたいです」

「花畑か。いいじゃないか」


 俺たちはデートの計画を立てる。


『旦那様、いいですね……』


 アイが羨ましそうに言う。


『でも、邪魔はしませんよ。二人だけの時間も大切ですから』


「理解のあるやつだ」




 休日、俺とリナリアは王都近郊の花畑を訪れた。


「きれい……」


 一面に広がる花々を見て、リナリアが感嘆する。


「ここに来てよかったな」


 俺も美しい景色に心を奪われる。

「悠真さん」

「なんだ?」

「この景色を、あなたと一緒に見ることができて幸せです」


 リナリアが俺の手を握る。


「俺もだ」


 俺たちは花畑の中を歩く。平和で美しい時間だった。


『旦那様、幸せオーラが最大値ですね』


 アイが茶化すように言う。


「やかましい」

『でも、本当に良かったです。旦那様がこんなに幸せそうなのを見られて』


 アイの声に、心からの喜びが込められていた。


「ありがとう、アイ。お前のおかげでもある」


『えへへ、照れますね♪』


 花畑から帰る途中、俺たちは小さな村を通りかかった。


「あら、何か騒ぎが起きているようですね」


 リナリアが村の中央広場を指差す。

 確かに、多くの村人が集まって騒いでいる。


「どうしたんでしょう?」


 俺たちが近づくと、村人の一人が説明してくれた。


「魔物が井戸を汚染してしまって、水が飲めなくなってしまったんです」

「魔物が?」

「ええ。毒を持った魔物が井戸に落ちて、水が全て毒になってしまって」


 これは困った事態だった。


「他に水源はないんですか?」

「隣村まで行けばありますが、半日かかります」


『旦那様、リリィちゃんの浄化能力があれば解決できますね』


 アイの提案に、俺は頷く。


「リナリア、リリィを呼んできてもらえるか?」

「わかりました。《テレパシー》」


 リナリアが魔法で仲間に連絡を取る。

 俺は、《空間転移》を使用してリリィとエリアを呼び出す。


「お兄ちゃん、呼んだ?」

「ああ。この村の井戸が汚染されてるんだ。浄化してもらえるか?」

「もちろん!」


 リリィが井戸に近づく。


「《サンクチュアリ・フィールド》!」


 強力な浄化魔法が井戸全体を包む。毒々しい色をしていた水が、透明な美しい水に変わった。


「やった!水が綺麗になった!」


 村人たちが歓声を上げる。


「ありがとうございます、お嬢さん!」

「どういたしまして」


 リリィが嬉しそうに微笑む。


「これもビジネスチャンスかもしれないな」


 俺が呟くと、エリアが首をかしげる。


「どういう意味ですか?」

「浄化サービスとして事業化できるかもしれない」


『いいアイデアですね。困っている人を助けながら利益も得られる』


「そうだ。リリィはどう思う?」

「私、みんなの役に立てるなら嬉しいです」

「よし、帰ったら検討してみよう」




 王都に戻ると、新しい依頼が舞い込んでいた。


「隣国の貴族から、大規模な結婚式の準備を依頼されました」


 マルコが報告する。


「結婚式?」

「ええ。500人規模の豪華な式典です。装飾品、料理、エンターテイメント、全てを任せたいとのことです」


 これは大きなビジネスチャンスだった。


「面白そうだな。引き受けよう」


『旦那様、結婚式の準備なんて初めてですが大丈夫ですか?』


「大丈夫だ。《時間操作》と《空間転移》があれば、どんな無茶な要求でも対応できる」


 俺は自信を持って答える。


 結婚式の準備は想像以上に大変だった。


「花はエスペリア公国から、料理の材料はアルカディア王国から、装飾品は王都で調達……」


 エリアが手配リストを読み上げる。


「全部で50箇所以上から物資を調達する必要があります」

「普通なら数ヶ月かかる準備を一週間で完了させるのか……」


 俺は《時間操作》を発動する。


「よし、やってみよう」


 一週間にわたって、俺は《空間転移》で世界中を駆け回った。《時間操作》で作業効率を上げ、不眠不休で準備を進める。


『旦那様、体力の消耗が激しいです。休憩を取ってください』


「もう少しだ。あと2日で完成させる」


『無茶をしてはいけません』


 アイが心配そうに言うが、俺は作業を続ける。

 そして、ついに結婚式当日。


「完璧ですね……」


 依頼主の貴族が感動している。

 会場は花で埋め尽くされ、豪華な料理が並び、美しい装飾が施されている。500人の招待客も満足そうだった。


「ありがとうございます。おかげで最高の式になりました」


 新郎新婦からも感謝の言葉をもらう。


『旦那様、大成功ですね』


「ああ、でもさすがに疲れた……」


 俺は達成感と疲労感を同時に感じていた。

 この結婚式の成功により、俺たちの評判はさらに高まった。国際的なイベントプランナーとしての地位も確立された。更に報酬として10,000,000ルスが支払われた事により、気づいたら俺たちは大金持ちになっていた。




 忙しい日々の中でも、仲間たちとの絆は深まり続けていた。

 リナリアとの恋人関係も順調で、エリアとリリィとも家族のように親しくなっている。

 そして何より、アイとの関係が最も安定していた。


『旦那様、今日もお疲れさまでした』


「ああ、今日も一日ありがとう」


『こちらこそ。旦那様と一緒にいられて幸せです』


 第三進化まで、あと8200ポイント。

 その時が来れば、アイともっと深い関係を築けるかもしれない。

 そんな希望を抱きながら、俺は充実した日々を過ごしていた。

 仲間たちと共に築く、この異世界での新しい人生を。

今回の章では、大きな転換点を迎える出来事がいくつも描かれました。

まずはエスペリア公国との商業協定。これによって政略結婚問題が完全に解決し、リナリアは自分の意志で未来を選べる立場になりました。そしてついに、悠真とリナリアの恋人関係が成立!ここは物語全体の大きなターニングポイントだったと思います。


同時に、AIのアイの感情がより色濃く描かれたのも印象的です。嫉妬や独占欲という「人間的な感情」を持ち始めた彼女が、今後どんな進化を遂げるのか──読んでいてワクワクしつつも、不安も感じさせる要素でした。


さらに、リリィを狙う新たな敵が現れたことで、次の波乱の予感も強まっています。

恋愛、商売、戦い──すべてが同時進行するこの物語は、ますます広がりと厚みを増してきました。


次回は、リナリアとの新しい関係が日常にどう影響していくのか、そして新たな脅威にどう立ち向かうのかにご注目ください。


暁の裏

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