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クーカイ×クーカイ  作者: 青山 高峰
第九章(第三部)

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28 賢者と愚者

 詩織(しおり)と言う名前(なまえ)反応(はんのう)したように、女の子がこっちを見た。


クリッとした目はお義母(かあ)さんに、小さい(はな)(くちびる)はお義父(とう)さんに()ている。なんで、どうして、ここにいる? お義父(とう)さんとお義母(かあ)さんと(しあわ)せに()らしているんじゃなかったのか?


 そう思った瞬間(しゅんかん)、6年前の夜を思い出した。お義母(かあ)さんのお(なか)義妹(いもうと)がいる時、体の中に黒狐(くろぎつね)が入った。あの時、もっときちんと(はら)うべきだった。


「お義兄(にい)ちゃん」


 詩織(しおり)がにっこりとほほ()んだ。


「あのね、キンキン、お(なか)()いているんだって。最近(さいきん)詩織(しおり)があげるお(にく)だけじゃ()りないんだって。やっぱり人のお(にく)がいいんだって」


 黒狐(くろぎつね)をなで()げた。


「でもお義兄(にい)ちゃんがいじわるして、キンキンにお(にく)くれないんだ」


 詩織(しおり)が何もないところに()かって(はな)しかけた。


「どうしようか、伊吹(いぶき)


 すると水の中に墨汁(ぼくじゅう)でも()らしたように、空気中(くうきちゅう)(やみ)(ひろ)がった。その(やみ)(かたち)をなし、黒羽伊吹(くろはいぶき)(あらわ)れた。

咄嗟(とっさ)金剛杵(こんごうしょう)から(ひかり)(たま)()り出す。クリスも指揮棒(しきぼう)の先を素早(すばや)く動かし、(ひかり)(たま)()り出した。2つの(ひかり)(たま)七色(なないろ)(かがや)きながら、黒羽(くろは)めがけて()んでいく。(ひかり)がぶつかる寸前(すんぜん)黒羽(くろは)人形(にんぎょう)自分(じぶん)の前に(たて)のようにしておいた。悲鳴(ひめい)()がった。人形(にんぎょう)の口から。いや、あれは人形(にんぎょう)なんかじゃない! キャミソールにミニスカートを着た女の子! 若菜(わかな)ちゃんが(くず)れるようにしゃがみこんだ。


若菜(わかな)ちゃん」


 咄嗟(とっさ)()()そうとした時、クリスに(うで)(つか)まれた。


()せ、この魔法陣(まほうじん)から出るな」


「でも若菜(わかな)ちゃんが!」


 クリスの(うで)()りほどこうと、もみ()っていると、黒羽(くろは)(つめ)たい(こえ)(ひび)いた。


詩織(しおり)、この若菜(わかな)(えさ)にするといい」


本当(ほんと)に? いいの? でもこの子、イズルの大切(たいせつ)な子なんじゃないの?」


「まさか。(たん)なる()(ごま)さ。いくらでも()わりはいる。そうだろ、イズル」


 黒羽(くろは)の後ろに(ひか)えていたイズルが立ち上がると、若菜(わかな)ちゃんの(そば)にしゃがみこんだ。


「イズルさん。(うそ)でしょ……わたし(すべ)てをあなたに(ささ)げてきたのに」


 イズルが若菜(わかな)ちゃんの(なが)(かみ)()()()り、強引(ごういん)()たせると、お(なか)()()げた。(まり)のように()()げられ、若菜(わかな)ちゃんが地面(じめん)(たた)きつけられた。


若菜(わかな)ちゃん」


 ぼくの(さけ)(ごえ)なんか(みみ)(はい)らないのか、若菜(わかな)ちゃんはイズルに(むか)かって()(はじ)めた。


()って、見捨(みす)てないで。今度(こんど)こそ絶対(ぜったい)絶対(ぜったい)(やく)()つから」


 若菜(わかな)ちゃんの(かお)(なみだ)でボロボロだ。(ふく)(つち)(よご)れてぐちゃぐちゃだ。


(やく)()つから」


「そうかい若菜(わかな)。その気持(きもち)はよく分かったよ」


 イズルの()は、まるで使い()わったティッシュでも見るように若菜(わかな)ちゃんを見つめ、


「なら、黒狐(くろぎつね)(えさ)になって黒羽(くろは)様の(やく)()つといい」


 そう言うと、詩織(しおり)微笑(ほほえ)みかけた。詩織(しおり)(かお)から(はじ)けるような笑顔(えがお)()かんだ。


「ありがとう、イズル」


 黒狐(くろぎつね)よだれを()らしながら、若菜(わかな)ちゃんに()かって(おそ)()かろうとしている。若菜(わかな)ちゃんは(うご)かない。その()絶望(ぜつぼう)しきっている。()づくとぼくはクリスの()()りほどいていた。


「バカ、()せ」


 クリスの(こえ)()きながら、黒狐(くろぎつね)の口の中に金剛杵(こんごうしょう)()()てた。


「オンアボキャベイロシャノウマカボダラマニハンドラジンバラハラハリタヤウン」


 黄金(おうごん)の光が金剛杵(こんごうしょう)突端(とったん)にふくれ()がり、黒狐(くろぎつね)(からだ)()いた。黒い(どろ)のような肉片(にくへん)がポタリポタリと(あた)りに()()った。


「キンキン!」


 詩織(しおり)がその(どろ)をかき(あつ)めるようにしている。ぼくはぐったりとしている若菜(わかな)ちゃんを()()げた。


「しっかりしてくれ、若菜(わかな)ちゃん」


 若菜(わかな)ちゃんがうっすらと()()けた。


海人(かいと)……わたし、もう(いや)だ。こんな人生(じんせい)(いや)! ()きていたくない。もう死んじゃいたい」


「ダメだ。そんなこと言っちゃダメだ。若菜(わかな)ちゃん」


海人(かいと)……」


「今からでも(おそ)くない。何度(なんど)でも言う。(おそ)いなんてことは絶対(ぜったい)ない。若菜(わかな)ちゃんはいつだって(よわ)い人や(こま)っている人の味方(みかた)をする(やさ)しい人じゃないか。みんなから必要(ひつよう)とされるスピリチュアルカウンセラーになれるから。だから()んじゃいたいなんて言っちゃダメだ」


海人(かいと)、ありがとう……わたし本当(ほんとう)はね。小学校(しょうがっこう)(ころ)海人(かいと)のこと……」


 若菜(わかな)ちゃんが(ささや)くように()って、()()じた。


若菜(わかな)ちゃん、しっかりしてくれ」


 ()(ごえ)()げた。


()(うしな)っているだけだろ。それより、この子の方だ。黒狐(くろぎつね)復活(ふっかつ)させようとしている!」


 クリスの(こえ)にギョッとした。いつの()にか詩織(しおり)(つか)()げている。


(はな)してよ、キンキンを(もと)(もど)すんだから」


 ジタバタと詩織(しおり)(あば)れている。


 その(とき)だった。


「お(まえ)たちは(そろ)いも(そろ)って、本物(ほんもの)のバカだな」


 黒羽(くろは)(こえ)()(かえ)ると、魔法陣(まほうじん)(うえ)(りん)ちゃんを(うで)(かか)えて黒羽(くろは)()っている。


賢者(けんじゃ)(あやま)ちから(まな)ぶが、愚者(ぐしゃ)何度(なんど)(おな)(あやま)ちを()(かえ)す」


(りん)ちゃん」


 金剛杵(こんごうしょう)(かま)え、(りん)ちゃんの(もと)(はし)った。しかし地面(じめん)から()(のぼ)る黒い(かべ)(はば)まれ、()(かえ)される。


賢者(けんじゃ)(あやま)ちから(まな)ぶと()っただろ」


魔法陣(まほうじん)の下に男が(たお)れている。まさかその男を利用(りよう)して魔法陣(まほうじん)()()えたな」


 イズルが、漆黒(しっこく)魔法陣(まほうじん)の中、うつ()せに(たお)れている。


「そうだよ、クリストファー。リー一族(いちぞく)当主(とうしゅ)であるお前ともあろう者が今頃(いまごろ)()づくとは、なんとも(おろ)かしい。まあマダム・リーからその()()いだばかりのガキには期待(きたい)されるほどの力もなかったのであろう。マダム・リーの(あさ)はかさは本当(ほんとう)(なげ)かわしい(かぎ)りだ」


「マダム・リーのことを(わる)()うな!」


(わる)()う? 事実(じじつ)だろ? あの女の浅知恵(あさじえ)のせいで、飛鳥(あすか)との(なか)上手(うま)くいかなくなったんだ。リー一族(いちぞく)(もの)全員(ぜにん)()()きにしても()りない」


 その言葉(ことば)に、日記(にっき)(なか)()せられた映像(えいぞう)()かんだ。そうか、クリスはあの横浜港(よこはまこう)客船(きゃくせん)で会った黒衣(こくい)の女の人の一族(いちぞく)なんだ。クリスが(はな)でせせら(わら)った。


逆恨(さかうら)みも(はなは)だしい。おばさまの助言(あどばいす)()かず、悪霊(あくりょう)(たましい)()ったくせに」


「なんとでも言え。(りん)さえ手に入ればお前たちなどこわくはないわ」


 黒羽(くろは)足元(あしもと)漆黒(しっこく)魔法陣(まほうじん)から黒い土埃(つちぼこり)()(のぼ)り、(うず)のように回転(かいてん)した。突風(とっぷう)()き、(すな)小石(こいし)(つぶて)のように()んでくる。ぼくは若菜(わかな)ちゃんを、クリスは詩織(しおり)(かば)うようにした。(つよ)(かぜ)()むと、黒羽(くろは)(りん)ちゃんと(とも)()えていた。


(第三部完 第四部に続く)

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