表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クーカイ×クーカイ  作者: 青山 高峰
第八章(第三部)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/35

24 修学旅行

伊吹(いぶき)父親(ちちおや)って殺人犯(さつじんはん)らしいよ。それで今、裁判中(さいばんちゅう)なんだって」


(学校でそんな(うわさ)(なが)れた。修学旅行(しゅうがくりょこう)()(まえ)のことだった。あんなにチヤホヤしていた女子達(じょしたち)はみんな口をつぐみ。(まわ)りから()えた。当然(とうぜん)修学旅行(しゅうがくりょこう)班決(はんき)めでは、(おれ)()んでくれる人は(だれ)もいなかった。みんなどこかよそよそしく、()(もの)(さわ)るようだった。しかし飛鳥(あすか)だけは(ちが)った。)


「みんなも一緒(いっしょ)(まわ)らない?」

 さすがに校内(こうない)1モテる美少女(びしょうじょ)(こえ)をかけても、(おれ)一緒(いっしょ)となれば(うなず)(もの)一人(ひとり)もいなかった。


 担任(たんにん)田島康太(たじまこうた)先生が、ため(いき)をつきながら俺達(おれたち)を見、

「そこ、三人以上(さんにんいじょう)(はん)になれないなら、(わたし)(まわ)るように」

 と言った時だった。


「はい、は~い。一緒(いっしょ)(まわ)る、(まわ)る」

 廊下(ろうか)から(たの)しそうに亮太(りょうた)が手を()げて入ってきた。


亮太(りょうた)、あんた(となり)のクラスでしょ」


「いいじゃん飛鳥(あすか)(こま)かいこと言うなよ。俺達(おれたち)三人(さんにん)一緒(いっしょ)(まわ)った方が(たの)しいに()まってる」


「おい連城(れんじょう)、まだHR(ほーむるーむ)中だ。勝手(かって)に入ってくるんじゃない」


俺達(おれたち)三人(さんにん)()めば、田島(たじま)先生だってお前たちから解放(かいほう)される。そういう自由(じゆう)時間(じかん)が先生にも必要(ひつよう)なんだよね、田島(たじま)先生」


連城(れんじょう)、お前なあ。先生ってのは24時間365日、先生なんだ。解放(かいほう)なんてあり()ない」


「そお? うちの蓮見(はすみ)萌絵(もえ)先生は自由時間(じゆうじかん)があったら田島(たじま)先生と行きたいとこあるみたいでしたけど」


 亮太(りょうた)田島(たじま)先生に片目(かため)()じた。すると田島(たじま)先生の(かお)がパッと(あか)くなり、クラス中からヤジが()んだ。しかし(おれ)教室(きょうしつ)見回(みまわ)すと、みんなが視線(しせん)()らし(しず)かになった。


 田島(たじま)先生は()()な顔で興奮気味(こうふんぎみ)に言った。


「それで蓮見(はすみ)先生は何て言っているんだ」


「えっと、グラバー(えん)絶対(ぜったい)みたいです。あと夜景(やけい)稲佐山(いなさやま)で……」


「そうじゃなくて、連城(れんじょう)がうちのクラスの(はん)に入ることを(みと)めてるのか?」


「ああ、なんだそっちか『連城(れんじょう)くんがそういう理由(りゆう)で、(ほか)のクラスの生徒(せいと)(まわ)りたいなら例外的(れいがいてき)(みと)めます。話は学年主任(がくねんしゅにん)の先生に(とお)します』って」


 田島(たじま)先生が(むね)をなでおろした。


「なら私に異論(いろん)はない。あとは自分(じぶん)たちで()めなさい」


 教卓(きょうたく)()かっていく田島(たじま)先生を見送(みおく)りながら、飛鳥(あすか)(こし)()をあてた。


「そういうことなら、仕方(しかた)ないな、()れてあげますか」


飛鳥(あすか)ちゃん、そうこなくっちゃ」


「でも抹茶白玉(まっちゃしらたま)カステラパフェの(みせ)絶対(ぜったい)(はず)さないからね」


「よし、交渉成立(こうしょうせいりつ)

 亮太(りょうた)飛鳥(あすか)握手(あくしゅ)()わした。


伊吹(いぶき)()()して」

 飛鳥(あすか)(おれ)()(つか)んで、二人(ふたり)の手の上に()せた。


一生(いっしょう)一度(いちど)修学旅行(しゅうがくりょこう)(おも)いっきり(たの)しもう、ね」


 飛鳥(あすか)がにっこり(わら)った。それだけで一気(いっき)に花が満開(まんかい)になったような明るさだった。ふいに本当に三人(さんにん)長崎(ながさき)(まわ)るのも(わる)くない気がした。



☆☆☆☆☆


 修学旅行(しゅうがくりょこう)が終われば、いよいよ高校生活(こうこうせいかつ)もあと少しで終わる。そしてあの(てら)を出ていく日がくる。そう思うと、修学旅行(しゅうがくりょこう)を楽しむことなんてできないだろうと思っていた。しかし長崎(ながさき)()ると、一瞬(いっしゅん)一瞬(いっしゅん)(たの)しんでいた。

グラバースカイロードに大浦天主堂(おおうらてんしゅどう)、グラバー(えん)も、全てがキラキラと(かがや)いて見える。ただひたすら修行(しゅぎょう)()()んできた18年間ではじめて知った外界(がいかい)の光だった。ただ(ほか)(はん)学校(がっこう)連中(れんちゅう)()うと、()まって俺達(おれたち)()け、こそこそと話をしながらいなくなる。それだけがラジオに入る雑音(ざつおん)のように不快(ふかい)だった。


「気にすることないよ」

 飛鳥(あすか)微笑(ほほえ)んだ。


「みんなあることないこと言ってるだけだから」


 飛鳥(あすか)(やさ)しさが(こた)えた。グラバー(てい)周囲(しゅうい)をぐるりと歩き(はじ)めた。


「もうっ、ここにも亮太(りょうた)いないし。どこ行ったんだろう」

 (かた)(いか)らせる飛鳥(あすか)につぶやくように言った。


本当(ほんとう)だよ」


「えっ?」


親父(おやじ)母親(ははおや)(ころ)した殺人犯(さつじんはん)。そして(おれ)はその子ども」


 飛鳥(あすか)黒々(くろぐろ)とした(ひとみ)(まばた)きもせず(おれ)を見つめる。


「ふむ」


「ふむって何だよ。(おどろ)かないのか」


()ってたよ」


「えっ!」


()ってたよ、それ」


飛鳥(あすか)()ってたのに、『みんなあることないこと言ってる』って、なんでそんな(ふう)に言ってたんだよ」


「だって伊吹(いぶき)伊吹(いぶき)だから。お父さんがどうであれ、伊吹(いぶき)はお父さんとは(ちが)うから。お母さんとも(ちが)う。伊吹(いぶき)伊吹(いぶき)


 心臓(しんぞう)がドキッとした。(あき)()ざしを()けた飛鳥(あすか)()()()まれそうなほど(つや)やかだ。


「なのに、みんな血筋(ちすじ)だとか、()(あらそ)えないなんて勝手(かって)すぎる。伊吹(いぶき)のこと何も()らないくせにね」


「いや、(おれ)には人殺(ひとごろ)しの()(なが)れているんだ。(おや)がそんなんじゃ、飛鳥(あすか)だって友達(ともだち)()めた方がいいだろ。お(まえ)(おれ)一緒(いっしょ)にいていい(こと)なんか(なに)一つ(ひとつ)……」


 飛鳥(あすか)(おれ)(ほほ)(たた)いた。


見損(みそこ)なわないで! わたし、(おや)を見て、友達(ともだち)になるわけじゃないから。それにいい(こと)があるから一緒(いっしょ)にいるとか、そんなんじゃないから」


「ごめん……」

 (なみだ)がこぼれ()ちた。()めどなくこぼれ()ちた。


「わかればよろしい。わたしの(まえ)で、二度(にど)とその話しないでよね。今度(こんど)したら、平手打(ひらてう)ちじゃすまないんだから」

 飛鳥(あすか)(わら)った。


その()(なみだ)(うる)んでいる。ああ、なんて、なんていじらしいんだろう。自然(しぜん)(うで)()ばした。飛鳥(あすか)(むね)()きしめたくて、たまらない。その時、ふいにその(うで)(つか)まれた。


「おいおい、二人(ふたり)でどこ()ったのかと(おも)っただろ」


 亮太(りょうた)だ。(かた)上下(じょうげ)させながら、


勝手(かって)行動(こうどう)してんなよ」


「そっ、それはこっちの台詞(せりふ)でしょ!」

 飛鳥(あすか)()()になって(さけ)んだ。


「おやつ()いに行くとか言って(きゅう)にいなくなるんだもん。それでおやつは?」


 亮太(りょうた)()をぶらぶらさせながら、

()んでて、()えなかった」


「もうっ、何のためにいなくなったのよ!」

 飛鳥(あすか)(おこ)って、亮太(りょうた)(うで)(たた)いた。


☆☆☆☆☆


 長崎港(ながさきこう)(ふね)がついていた。


 飛鳥(あすか)亮太(りょうた)大型客船(おおがたきゃくせん)(まえ)(はし)り出した。亮太(りょうた)(ふね)写真(しゃしん)()りまくっている。飛鳥(あすか)はこっちを()(かえ)った。


(うみ)っていいね、わたし大好(だいす)き。ねえねえ伊吹(いぶき)、この(ふね)をバックに写真撮(しゃしんと)って」


 スマホを(かま)える。太陽(たいよう)(した)、はじける笑顔(えがお)がまぶしい。(あお)(うみ)(そら)射止(いと)めるように()つめ、

「いつか、またこうして三人(さんにん)(うみ)()にこない? それでこういう(ふね)()って世界中(せかいじゅう)(たび)するの」

 (たの)しそうに(わら)う。


純粋(じゅんすい)笑顔(えがお)(むね)がぎゅっとする。この圧倒的(あっとうてき)(おお)きい(ふね)(あお)(うみ)()()す。どこまでも一緒(いっしょ)飛鳥(あすか)(たび)ができたら、どんなに素敵(すてき)だろう……。スマホで写真(しゃしん)撮影(さつえい)していると、飛鳥(あすか)()かって、(くろ)いワンピースを()()(たか)金髪(きんぱつ)外国人(がいこくじん)(おんな)の人が(ちか)づいてきた。


「あら可愛(かあい)らしい。さっきから(おな)(ふく)()た子を()かけるんだけど、あなた(たち)中学生(ちゅうがくせい)?」


 片言(かたこと)めいた日本語(にほんご)飛鳥(あすか)(あか)くなる。


「いえ、あの高校(こうこう)3年生です。修学旅行(しゅうがくりょこう)()てるんです」


 ()かれてもいないのに、個人情報(こじんじょうほう)をペラペラと(はな)すなんて! (あせ)って飛鳥(あすか)(そば)()()った。


「すいません、俺達(おれたち)(いそ)ぐんで」


 飛鳥(あすか)()()って(ある)きだそうとした時、


飛鳥(あすか)伊吹(いぶき)、何してんの? こっちにも客船(きゃくせん)きてんぞ」

 亮太(りょうた)が手を振って走ってくる。


 あのバカ、なまえを()ぶなってんだ!


「へえ、飛鳥(あすか)伊吹(いぶき)か。素敵(すてき)名前(なまえ)ね」

 女の人が、飛鳥(あすか)のもう一方(いっぽう)の手を(にぎ)った。


「ありがとうございます。わたしも、飛鳥(あすか)っていう名前(なまえ)()()っているんです」


 名乗(なの)飛鳥(あすか)にギョッとした。女の人が飛鳥(あすか)(かた)に手を(まわ)した。


「OK飛鳥(あすか)。わたし、この(ふね)(たび)をしているの。今日(きょう)はこの(みなと)停泊(ていはく)だし、今夜(こんや)パーティーがあるから。よかったら(あそ)びに()ない?」


「パーティーなんて、わたし()たことない」


飛鳥(あすか)! 何言(なにい)ってんだ」

 (おも)わず(とが)めるような口調(くちょう)になった。


「OH伊吹(いぶき)(こわ)いね」


「あなた(さき)ほど修学旅行(しゅうがくりょこう)だって、聞きましたよね? (よる)外出(がいしゅつ)(きん)じられてますので。お(ことわ)りします」


 女の人が(わら)った。


伊吹(いぶき)は、目に(けん)があるね。このままだと人を(きず)つける人間(ひと)になりかねない。そうそう私、(うらな)いができるの。飛鳥(あすか)がもしパーティーに()てくれたら、(うらな)ってあげる。伊吹(いぶき)のことも、もっと(くわ)しく(うらな)ってあげるから。(きみ)()たら?」


「あの~(おれ)のこと、(わす)れてません?」


 いつの()にか亮太(りょうた)(そば)()ていた。


「まあ、もっとも(おれ)(うらな)いにもパーティーにも興味(きょうみ)ないですけど」

 亮太(りょうた)微笑(ほほえ)みながら、飛鳥(あすか)(つか)む女の人の手をするりとほどいた。


「それじゃあ、失礼(しつれい)します」

 (おれ)目配(めくば)せすると、亮太(りょうた)飛鳥(あすか)の手を(にぎ)って(ある)()した。


「もうっ、(なん)なのよ、2人(ふたり)とも」

 飛鳥(あすか)(うら)めしそうに()(かえ)っている。


「あっ、あの人、まだこっち()てる」


無視(むし)だ、無視(むし)! 第一(だいいち)、パーティーなんて行ったら、先生に(おこ)られるだろ」


「ええ、亮太(りょうた)がそれを言う? いつも先生に(おこ)られても気にしないくせに」


「あんな(やつ)言葉(ことば)信用(しんよう)して、(ふね)なんかにノコノコ行ったら(なに)されるか()からない。あんなのはスルーするのが一番(いちばん)だ」


伊吹(いぶき)まで……あの人、(わる)い人には()えなかったけどな」


(すこ)しは人を(うたが)え! と言いたくなったが、人の言うことを全部(ぜんぶ)(しん)じ、信用(しんよう)してしまうところが飛鳥(あすか)()いところだ。だから()わずにおいた。しかし(おれ)はこの判断(はんだん)後々(のちのち)まで()いることになるとは、その時はみじんも(おも)わなかった)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ