表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/26

破壊と創造、そして広がる野望


1563年、夏


 中村屋敷の庭に、蝉の声が降り注ぐ。ギラギラと照りつける夏の陽射しが、俺の肌を焦がすようだった。暦の上では、俺はもう20歳だ。だが、この乱世に成人式なんて洒落たものはない。計画倒産とでも言おうか、晴れの日のないまま、俺は「ポストティーンネイジャー」となった。


 ……ごめん。平和なのかな?今、戦国時代だよ、と思い直す。この蒸し暑い空気の中に、常に戦の匂いが混じっているのを感じる。


 部屋の中では、墨を刷るが静かに響いていた。俺は、畳に座って文机に向かう西園寺公高さいおんじきんたか君に、言葉を投げかける。


「やはり、一度破壊せにゃいかんのです。想像的破壊ちゅう奴ですわ。聖域なき構造改革的な」


 彼は、一切の無駄なく、俺の言葉を筆に起こしていく。その手つきは、まるで名匠のようだ。


「うん。ええとですな、要は源平の争乱で鎮護国家の祈祷に効き目が無かったばかりか、東大寺の仏像が焼けましたやろ?その反省によって、坊主達は知恵を振り絞って、五山派とか日蓮宗や浄土真宗が生まれたんですわ。で、暫く経った今、それが腐ってしもうた。なら、誰かがもう一回、東大寺の仏像を燃やして、争乱を起こさにゃいかんのです。さすれば、自ずと国を護れる仏教が出てきます。俺はそれが出てくるまで魔王でも悪魔でもなんだってやってやりますよ。誰かが悪役をやらねば、物語は進みませんからね」


 俺の言葉は、この時代においてはあまりにも過激だ。だが、俺の信念は揺るがない。腐敗したものは一度壊し、そこから新しいものが生まれる。それが、俺の考える進化だ。


「……って、云う事を良い感じに纏めて書状を書いて、帝に提出して」

「はっ」



 西園寺公高君は優秀だ。その返事には、一切の迷いがない。後は全て彼に任せて、本願寺焼き討ちの言い訳を帝に呑み込んで貰おう。

書状の内容は、きっと美辞麗句と、もっともらしい理屈で埋め尽くされているだろう。


 誰も馬鹿正直に、「彼奴等、仏教勢力の力を削ってやろうと無駄死にさせまくったのに、勝手に和平交渉し始めてウザかったので、ハライセでちょっと温度が高いサウナを作ってやりましたよ!ドヤ!」なんて、言わないからね。そんなことを言えば、ただの狂人だ。


 四国内では、真言宗の坊さんと仲良くする為に、莫大な御布施をしたから、仏教勢力は何とかなるし、無駄な一揆も起こらないだろう。坊さんたちの顔には、満足げな笑みが浮かんでいた。


 御遍路の道路整備と88つの全ての寺の復興・修築・増築事業を推奨した事でも、俺は歴史に名を残すんだろうな。空海好きの戦国大名として。

まあ、どう呼ばれても構わないが、この大規模な事業は、間違いなく一条家の足元を固める。


 取り敢えず、土佐一条家の現状は、維持+αしており、四国と淡路の計5つの国を完全に統治下に治めている。中村城の城下町は、活気に満ち溢れ、人々の顔には希望が満ちている。


 淡路にいる親父達は、摂津の本願寺勢力と三好勢力と敵対しており、阿波から紀伊国へ、量産した毛呂智舟で奇襲に成功した俺達は、最速で支配下に置けるよう努力している。潮風を受けながら、毛呂智舟は高速で海上を滑っていく。


 大和国は、3年前に北畠具教殿が攻め入っているから、下手な刺激を与えたく無いので攻めませんと、云う名目で侵略していない。その表向きの理由は、俺の対外的なイメージを保つためだ。


 実情は、兵力的にそこまで手を出せないというものだが、売れる恩義は恩着せがましく売っておく。それが戦国時代を生き抜く為の知恵だよ。


 紀伊攻めでは、まず、教興寺の戦いで弱体化している畠山氏と、従軍して討ち死にした安宅光定、湯川直光、龍神正房、貴志光宗、目良高湛や、根来衆を忍者達を使って対立させ、見事、内部分裂した直後に畠山氏を滅ぼした。畠山氏の城は、内部からの崩壊により、あっけなく陥落した。城内には、裏切りと憎悪の残滓が漂っていた。


 幕府からの信頼厚いし、妙に高貴振っている畠山氏は、後の統治で弊害にしかならないので、本家筋の男子は無論、分家筋の幼い子すら確実に公開処刑した。その光景は、人々の心に深い恐怖を刻み込んだだろう。だが、これにより、反抗の芽は完全に摘み取られた。


 その後、家臣団に従属を促し、高野山真言宗から分裂した根来衆が真っ先に従うと、続々と申し出てきた。彼らは、俺の圧倒的な力と、冷酷なまでの決断力を目の当たりにしたのだ。


 次に、史実通り、1560年に筒井順慶の本拠地である筒井城を奪い、1561年に六角義賢との合戦である、将軍地蔵山の戦いを行い、1562年に畠山高政との合戦である、久米田・教興寺の戦いを行い、伊勢貞孝・貞良親子の討伐を行った松永弾正久秀まつながだんじょうひさひでには、徹底抗戦をされたが、散々ミサイル撃ち込んだ後に戦車で突っ込むソ連式の戦国版を行い見事捕らえた。城壁は、砲弾によって無残にも崩れ落ち、彼の抵抗も虚しく、その身を拘束された。


 えっ?あんな爆薬抱えられるか!二度手間だったよ。即、斬首。彼の首は、あっけなく胴体から離れ、冷たい地面に転がった。


 内に危険を孕ませたまま、織田に楯突くなんて危険過ぎるからな。未来の知識を持つ俺にとって、彼の存在はあまりにも危険すぎた。


 平蜘蛛茶釜と九十九髪茄子は俺の物です。その美しい輝きに、思わず見惚れてしまう。玉椿は峰子にあげた。世界で二番目に可愛いお兄ちゃん子だからな。彼女の喜ぶ顔を想像すると、自然と笑みがこぼれる。

 紀伊攻めの最後の仕上げは、とある人を招き入れる事だった。


 紀伊には、剣聖・上泉信綱の師匠の愛洲久忠あいすひさただの息子の愛州宗通あいすむねみちがいる。


 史実なら、1564年、佐竹義重に陰流の奥義を伝授し、これを切っ掛けに常陸久慈郡太田城にあった佐竹義重のもとへ、剣術師範として出仕している。


 だが、そうはさせない。剣豪マニアである俺は、全力で忍者達に探し出させて、直接口説いた。山奥のひっそりとした庵で、彼と対峙した。無論、剣で語り合ったぜ。木刀がぶつかり合う音が、静かな山林に響き渡る。


 ちょっと時代を先駆して宮本武蔵を真似した二刀流に興味が湧いたのか、一条家にそのまま仕えてくれた。やったね!彼の鋭い眼差しは、俺の持つ新しい剣術に、深い探求心を見せていた。


 九州に関しては、俺の母上のお陰で大友宗麟を筆頭とする大友家と長期間の停戦協定を結び続けており、一切触れていない。宗麟の書状には、いつも独特の筆跡で、長い文言が綴られている。


 中国地方に関しても、大友家のお陰でかなり負担が減っている。

 俺が、逆賊陶晴賢討伐連合軍時代に、吉川元春は陶晴賢と義兄弟の契りを結んでいるという理由により処刑し、小早川隆景と毛利隆元の間を忍者衆を駆使して仲違いさせたので毛利は大きく弱体化。毛利の両川は、互いに猜疑の目を向け、その亀裂は修復不可能となった。


 大友・毛利間で取りかわされていた大内氏滅亡後の領土の取り分けに関しての密約は無くなり、中国地方に進出しない筈の大友家が、長門国・周防国・石見国・安芸国を平定している。


 三村氏を毛利の統治下から外れる様にと、大友家と共に毛利に圧力を掛け、その三村氏には尼子氏をぶつけさせている。


 尼子経久は天下取りに失敗するだろうから、自ずと潰れるだろう。備前の宇喜多直家が怖いけど。あの謀略家が尼子を丸々吸収して毛利も滅ぼし、大友と中国地方を二分しそうで怖いな。彼の底知れぬ智謀は、俺をして警戒させる。


赤松氏と一色氏を出来れば従属、無理ならば同盟関係に置きたいな。


 ただ、この様に大友家に頼り過ぎている所があるので、宗麟から伴天連追放令をとやかく言われる時は物凄く気を遣う。早く島津家台頭してくれないかな。彼らの躍進を、俺は密かに願っている。


 北畠氏は本願寺を焼いても同盟関係は崩れず、俺の妹の阿喜多あきたの夫であり、具教殿の息子である具房ともふさが家督を継いでいる。


 史実通り、1563年に具教殿の父、晴具はるともが亡くなった為、具教殿は息子に家督を譲ったのだ。具房は16歳。

だが、既に恰幅が良い。俺は、妹を嫁がせた日の夜、


「具教殿の様な立派な武士になって頂かない限り、妹と共に寝る事を許しませんからね?良いですね?筋トレするんですよ?」


 と、散々圧力をかけておいた。彼の顔は、恐怖と困惑に歪んでいた。

 史実の様に、織田軍から「大腹御所の餅食らい」と、からかわれない様にせねば。

 妾を取る?許さんぞ!具教殿が居なくなったら攻めるぞ、おら!


 精々、一条家の対織田防衛線としての壁になってくれ。彼がその役目を果たすことを、俺は強く期待している。


 因みに、ちょっと拗ねてる嫁さんも、今、北畠家にお世話になっている。

 全く興味が無い様な顔をして、


「紀伊平定おめでとうございます」


 と、筒井城の復興作業に励む俺に一言コメントした後、


「毛呂智舟借りますね」


 と、少しばかりお茶目な、しかし抗いがたい視線でお願いをして、とっとと阿喜多の元へ行ったのだ。多分、俺の愚痴大会開いてるんだろう。別にええけどな。彼女が元気なら、それでいい。

 西園寺公高君に、


「チョロいっすね」


 と、言われたので、剣の訓練と称してフルボッコにしてやったぜ。彼の顔が青ざめるのを見るのは、なかなか爽快だった。


 旦那は嫁の尻にひかれるくらいでええの。亭主関白とか令和の時代から外れてるの。


 それに、この前呟いた、剣豪たちに俺の武勇を話してしまった件についての誤解は解けたから良いの。

 俺が戦場で飛んで来た鉄砲の弾を斬った事を、上泉信綱殿が聞いたので、俺を諌める為に剣術指導を行ってくれたことは理解していたが、一体誰がそれを告げ口したのか知らなかった。


 そして俺は、嫁さんの護衛に付けていた忍者に裏切られた事を、嫁さんに見惚れてたから全く気付けなかった。(嫁さんは悪くない)

 肉体的・精神的に痛過ぎて死ぬと思う様な剣術指導を焚き付けた嫁さんを止められなかった忍者達が悪いのだ。

 俺が情報源、嫁さんがそれを伝達、護衛の忍者がその情報流出を阻止できなかった。この構造で考えれば、思わず、俺自身の情報管理の甘さと、その影響の大きさを痛感する。


御高覧頂き誠に有難う御座いました。

いいねと感想を下さいませ。

レビューと誤字報告もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ