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読んだ本の記録  作者: 萩尾雅縁
【精神分析・心理学】
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「妄想・幻声・パラノイアへの認知行動療法」その2(心理学)

 第2章 治療の実践と関係構築


 Ⅰ 認知行動療法の実践

 1.必要不可欠な要素

  (1)カウンセリングスキル

  (2)知識


 2.アセスメントから介入までの8つの基本的ステップ


 ステップ1.問題に焦点をあてる


 3つの見出しをつくって書き出す。

「きっかけとなる出来事(現実、あるいは先行するもの)」

「信念(イメージ、推論など)」

「結果(感情的・行動的反応)」


 無関係にみえた「問題」が1つのテーマから発生していたことが治療者には理解できるようになり、背景にある非機能的思考に関する仮説も直感できるようになる。


 ステップ2.[C]をアセスメントする


 問題の核心は[C](クライエントの感情的混乱と苦痛、破壊的・侵襲的・自己破壊的行動)


「問題[C]の誘因だが、たとえどんなに奇妙な信念や悲惨な出来事があったとしても、本人も含めひどく困っている人がいなければ、認知行動療法を行う必要はない」


 詰んだ――。本人に苦痛の自覚がなく、反社会的行為で周囲に迷惑をかけていなければ、「行う必要がない」のか、それとも「行うことができない」のか?


 認知の書き換えによって起こるはずの、感情や感覚の変化が起きないからかな? まず困っている自分なり、誰かなりがいないと……。


 これでは、アーノルドやアルビーは、認知行動療法では治療できないことになる。明らかに奇妙な言動をしていても、治療のとっかかりがないんだ――。


 →別の選択肢へ(おそらく行動療法的介入)に進むことになる。らしい。



(1)感情的反応[C]

「大多数のクライエントは、強い感情を認めず、その感情抑制自体に気づかないことさえある。治療者はクライエントの感情の深さを探らねばならない。クライエントがネガティブな感情に気づくことができるように、治療者は適切な「態度」を示し、クライエントを十分に安心させる必要がある」


「感情失禁」(自分の意思よりはるかに大きな感情の発露となって、笑ってしまったり、泣いてしまう事が生じることがある)


「ゲシュタルト療法」(未完結な問題や悩みに対して、再体験を通しての「今ここ」での「 気づき」を得る心理療法)


 ・種類を同定する

 クライエントが「混乱しています」と言うとき、

 一次的ネガティブ感情(不安、怒り、抑うつ)の内の一つをクライエントが主に感じるものとして、再提示。

 一次的が変化した二次的ネガティブ感情(傷つき、罪悪感、恥など)



(2)行動的反応[C]

「行動」か「(行動には至らない)衝動」のいずれか。

 行動の「種類」は感情の種類と関連。出来事への解釈は感情と行動の両方を生み出す。

 不安……回避行動か防衛行動とともに生じる。

 抑うつ……非活動性、ひきこもりとともに生じる。

 怒り……攻撃行動ともに生じる。


 出来事への対処としてこのような行動をとるとストレスが一時的に減少するので短期的には有効だが、長期的には問題を維持して悪化させてしまう。


 クライエントは出来事に反応し、その後、自分の反応に反応する可能性がある。



 ステップ3.[A]をアセスメントする


 [C]の引き金となった「具体的な出来事」


 ステップ4.[A]ー[C]が問題であることを確かめる。


 治療者は具体的にクライエントにフィードバックして確認。[C]になった理由は[A]であり、最大の悩みであるということ。



 ステップ5.[B]をアセスメントする


(1)介入的要素:出来事の意味を理解することを共通の目的にする


 人は出来事自体ではなく、出来事の解釈によって悩むのだという洞察を得る


(2)信念の探索

(i)推論のアセスメント:思考連鎖法


(ii)評価のアセスメント

 推論の連鎖の裏には評価がある。

 評価は、ある人物や環境に関する、ある個人による帰属である。


 否定的個人評価「他者→自己」不安・抑うつ「自己→自己」に至る

「自己→他者」強い怒り

 クライエントの行動は独特な「ルール」に従っているかもしれない。

「ルール」は自動思考に現れたり、推論連鎖の途中や最後に現れる。



 ステップ6.フォーミュレーション


(1)認知行動ABCフォーミュレーション:[B]と[C]を結びつける


 [A]が起こったときに、どのような認知[B]が感情的・行動的障害[C]を生み出すかを特定する。


(2)発達的フォーミュレーション:現在のABCと発達過程を結びつける


 特定の脆弱性(苦痛を伴う否定的個人評価のこと)が形成されるに至った理由を検討する。


 ・心理的脆弱性の起源

 ・否定的自己評価や苦痛の再体験を防ぐための個人関係スタイルの発展過程

 ・苦痛を伴うエピソードの頻度(しばしば「ライフイベント」が引き金になる)


 特に、愛着の欠如と自律性の欠如を検討。



 ステップ7.目標を定め、選択できるものを設定する


 1.問題を避けたり、逃げたりする方法

 2.何もしない。つまり、「我慢する」解決方法

 3.変化を試みる方法。


 クライエントはこれらの方法がうまくいかなかった。4つ目の選択肢を提案。


 4.中核的な信念を変えるという方法。これによって、感情的・行動的障害を減らす



 ステップ8.信念への挑戦


「ソクラテス式質問法」


 中核信念に対する代替説明を見つけ出す。→行動実験→クライエントの感情を呼び覚ますような方法を使うことが重要。


 ここまでは、一般的な認知行動療法のアプローチ法かな。



 Ⅱ 関係構築の問題


 1.治療者の共感不全

(1)異常体験への共感不全


「治療者が共感したり直感的に理解したりできないことこそが「精神病」の「診断」である」ヤスパース

 1つの軸の一方の極に正常(と神経症)を、他方の極に「精神病」をおき、両者は不連続であり、その間には超えられない深い溝があると考えた。

 苦痛を受け入れ共感しようとしても、「理解できる感じがしない」


(2)異常体験の反応に共感する


「不連続の深い溝」にできるだけ橋を架けること。


「共感するには、クライエントと同じ体験をする必要はなく、彼らがどのように感じ、考え、行動したかを文脈の中で認識することの方が重要」


「クライエントの理解のあり方(信念と個人的意味づけ)と、それによって生じた感情と行動(結果)については理解できるはずである。

 これこそが「架け橋」である」


 体験には共感できなくても、反応は共感可能で、この反応こそが共感の基礎となる。


 まるで理解の届かない作中人物を、いかに掴んで表現するかのような(笑)。うん、出来事、解釈、行動結果が物語だ。


 理解の届かない出来事であっても、共感を得ることがムリなわけじゃない。

 頑張ろう――。


(2)治療者の信念を検討する:スーパービジョン


 3.クライエントの信念

 1)治療関係を妨害する信念


 2)安全でゆっくりとした共同的な治療スタイル


「障害となる信念をあからさまに論駁したり行動実験の対象としたりしない」

「ゆっくりとそれとなく別の視点を提供していく」

「我々は認知行動家としてどのように動くのか、人間や治療プロセスをどのように理解している、という視点をゆっくりとそれとなく示す」


 4.人間関係への恐れ


 5.妄想を「事実」ではなく「信念」として再概念化する


 ポイント「なぜこれをしているのか(目的)」

「どのようにしてなされるのか(方法)」


「ソクラテス式質問法」……クライエント自身の疑念や、妄想とは矛盾した体験や行動を引き出し、妄想が間違っている可能性を検討してもらう。


 クライエントが信念を変えたくないというならば、共同的実証主義の立場では、治療者はそれを受け入れなければならない。認知行動療法のプロセスは教え諭すことではない。



 6.妄想への挑戦の理論的根拠を作る



 やっと二章終わり。次の章からはぐっと症例が増えてくる。

 



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