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読んだ本の記録  作者: 萩尾雅縁
【精神分析・心理学】
20/47

「子どもが育つお母さんの言葉がけ」(育児)

汐見稔幸 著


何気なく交わしている日常の会話。いまさら、子どもとの会話のやりとりを見つめなおすことなんて、あまりないものです。しかし、実はとても重要! コミュニケーションのとり方次第で、のびのび元気な子に育つか、すぐあきらめてしまう子になるか、キレやすい子になってしまうか……が、決まってしまうといっても過言ではないかもしれません。では、どうすればもっと子どもの気持ちがわかり、素直に才能を発揮することができるのか。何に気をつけ、どんな姿勢で、どのような言葉で子どもに話しかければよいのか……。

本書では、よく交わされる会話を見開きごとに挙げていきます。長年教育学・子育ての研究をしてきた著者が、知らない間に溝ができる理由、子どもが素直になってくれない理由を解説。幼稚園から小学校中学年の子どもを持つ母親・父親のために子どもを伸ばす親の会話力を養うことを目指す。家族と話す子は幸せになれる。汐見流親子会話術の極意。



・「いい感じだね」

会話で育てる子どもの自信。自分に対する素直な肯定感覚。=自尊感情


・「どっちがいい?」

自分で選ばせる。自分で葛藤し、考え、選ぶ。=自己決定力


・警告・禁止の「ダメ!」は素早く。でも、ダメの連続は会話とはいえない。


・試行錯誤は、「こうすればダメだということをわかっていくプロセス」


・子どもは未来のために今を犠牲にできない。


・攻撃性と共感能力

 攻撃性は積極的な能動的エネルギー、困難を克服し前へと向かうエネルギーなので、よりポジティブな行動エネルギーに転化させる。

 →運動と遊びに転化


・暴力に対しては――

 コミュニケーションが上手くとれない。自分のテリトリーが侵されそうになった。

 攻撃性だけを抑えつけようとしても無理。共感性を発揮するように導かなければならない。

 叩かれる→痛い→泣く 自分の嫌なことは相手も嫌、だからやめよう。=共感能力


 でも、「たたきたくなった」その子の気持ちに、大人は共感してあげなければいけない。子どもにとってはまず大人が共感してくれることが大事。それがその後の共感的な行動のモデルとなる。


 子どもの気持ちをまず代弁してあげる。

「攻撃性と共感性を葛藤させるようにしむける」自分を守りたいという原初の気持ちに理解を示す。


・「しつけ」のコツは、葛藤させつつ、望ましい方向、共感性に勝たせること


「個」と「公」は一人の人間のなかで共存している

 自己愛と共感・共苦を発展させたら社会というものをつくることができる。(ルソー)

「しつけは、自分が自分を律するとともに、相手を思いやり、あるときにはいたわる感情を育みます。自分勝手な振舞いは相手を傷つけ、その存在を否定することに直結します。


家とは違う。しつけは社会への配慮からはじまる。子どもの論理よりも、公共の論理が優先される。公共という概念を芽生えさせる役割。


・個性とは――感情にどのような言葉を与え、それをどう表現するか。感情のグラデーションは無限。「イエスかノーか」の二分法では、不合理に切り捨てられた感情がくすぶってしまう。


 個性は感情のなかに表れる。


・そういう感情を持っていることを受けとめる。感情を否定されてしまうのは、個性を否定されてしまうこと。


 感情はそのままではうまく言葉にならない。子どもだけでは感情に忠実な言葉を外に出すことができない。


・感情や気持ちに対して、それにふさわしい言葉を探して表現していく。生きた表現の原点です。これがコミュニケーション。


・感情を的確な言葉にするということは、感情が外に出ていくときの水路を与えること。

 感情は高まると外に放出されることを望む。

 感情表現が抑圧されることによってやがて爆発する。

 抑圧とは言葉を奪われること。

 言葉を奪われた人間は、上手に感情を表出することができなくて、爆発、つまり原始的な攻撃本能、闘争本能、防御本能に頼ることになる。

 感情を言葉にするトレーニングは、人間の攻撃性を文化的な行動に昇華させる訓練。


「どんな感情であっても、そこに言葉を与えていく」


 子どもが感じたその子らしい感情。それを言葉にするのを手伝う。大変手間のかかる仕事です。


「感情じゃなくて、理由(論理)をいいなさい」というのはおかしい。論理とは感情が形をもったもの。論理は感情がなくては生まれない。()


 ここで、正常と病的が分かれるんだな。その感情は正しいか、間違っているか? というよりも、その感情がわきあがった理由が、本当に目の前の出来事に起因するのか。

感情をぶつけられる側の理不尽さ。それを確かめるためにも、まず、受け止めるが必要なのか。


「子どもの感情はどのようなものでもまず受容する」


 まず共感、それから諭して導く。


 一人ひとりの感じ方が違うとおもしろい。微妙に違う。それを違和感ととらえないで、人間のおもしろさと感じる。



 第3章 子どもを素直に育てる会話のルール


 指示・命令・禁止は会話ではない。ときには必要であっても、一方向。子どもの情緒を豊かにさせるのは、双方向のコミュニケーション。


 子どもが反発を覚えるのは、上から押さえつけられたとき。たとえ示されている内容が「正しく」「合理的」であっても、プライドが踏みにじられてしまう。

 自分を自分で判断する主体として見ていない(目的と感じないで手段として扱っている)と感じてしまう。押さえつけ、強制すべき「生き物」として扱われていると思ってしまう。衝動的な反発、反抗、神経症的な反動はこのような蓄積から生まれる。


・子どもは自分で選ぶことで、自信と責任への自覚が育つ


・子どもは親の命令や指示には従うものだ、という先入観は捨てましょう。そして会話に選択肢を用意する。=子どもの主体性を尊重するということ


・ほめるというのは、評価を与えるのではなく、子どもが感じていることに大人が共感して子どもに成り代わってそれを言葉で表すこと。また、応援するということ。


・感性がその人の本質


・大事な社会問題に自分なりの意見をいうことが個性であり、価値観が多様化した社会で求められる市民としての義務。


・子どもは、自分のありのままの感想(感情)を自分なりの方法で表現します。そして他者の表現と出会って感情の交換を行う。これを楽しく、心地よい緊張感を持って限りなく繰り返していくのがコミュニケーション。


・「ヤダ!」反抗期に親の強制力が強いと、心の中では不満でも、「いい子」だと思ってもらうために親との葛藤を封印する。自分を出さずに先回りして親の期待を読み期待通り振舞い「偽りの自分」を作る。

「心が二重構造のいい子を演じている屈折した子ども」


 こういう表現、ウィニコットかな。子育ての話なのに、クライエントの心情にも通じるところがあるんじゃないか、と感じながら読んでいた。


 とても面白かった。





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