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読んだ本の記録  作者: 萩尾雅縁
【精神分析・心理学】
17/47

「ケーキの切れない非行少年たち」(心理学)

 宮口 幸治 (著) (新潮新書) 新書 – 2019/7/12


 児童精神科医である著者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。



 


 漫画を読んでから、原作のこの本を図書館で借りました。漫画は医者である主人公の担当した事例の物語なので、同じように詳しい事例で綴られているのかと思っていた。

 そういった事例はさらりと書かれているだけで、著者の担当した少年刑務所にいる少年たちの分析から導き出された共通項の問題、そして「どうしたら」を真摯に考える試行錯誤の書だった。個人を特定されないように配慮もあるのだろうな。

 そして、一部個人、犯罪を犯してしまった彼らだけの特異な問題と切り捨てることなく、社会を構成する人口のうち確実に何割かいる彼らを理解し、社会的な問題としての認識を持って欲しい意図があるのだろう。




 


 第1章 「反省以前」の子どもたち


「凶暴で手に負えない少年」の真実/世の中のすべてが歪んで見えている?/面接と検査から浮かび上がってきた実態/学校で気づかれない子どもたち/褒める教育だけでは問題は解決しない/一日5分で日本が変わる



 今受けている「依存症治療」の講座で、“薬で衝動を抑える”、脳の生理機能としての衝動と抑制を学んでいるせいか、性格とか人格って、何だろう? 本当にあるのだろうか、と整理がつかなくなってきている。


 赤ちゃんを見ていると、それぞれにちゃんと個性があって、同じ反応が返ってくるわけじゃない。けれど、環境下の負荷で作られる防衛的自我には一定のパターンがある。自分たちが自我だと思い、こんな性格だと思い込んでいるのは、偽りの自我=防衛機制なんじゃないか、とかとか。薬で左右される感情を自分のもの、と考えるのもなんだかなぁ、だし。


 以前読んだ精神科医の座談会で、「(精神)病は洋の東西を問わない、症状は同じ。健康な人はそれぞれが違う」というようなこと言われていたのが印象深かったのだけれど、この共通項でくくられるもの=症状が、心身ともに健康とはいえない人の抱える問題=病と言えるのかな。

 どうも、病気と言ってしまうと違う気がする。知能の低さは機能障害だけでなく、環境要因、訓練のあるなしも関係するように思うけれど。

 

 この本のなかでは、「見る力」「聞く力」「見えないものを想像する力」の認知機能の低さの原因を、機能障害なのか情緒障害なのか分けていない。おそらくそのどちらもあり、明確には分けられないのか、分ける必要がないのか…。


 



 第2章 「僕はやさしい人間です」と答える殺人少年


 ケーキを切れない非行少年たち/計算ができず、漢字も読めない/計画が立てられない、見通しがもてない/そもそも反省ができず、葛藤すらもてない/自分はやさしいと言う殺人少年/人を殺してみたい気持ちが消えない少年/幼児ばかり狙う性非行少年



 「感情を表す言葉としてイライラしかしらない」


 “9歳の壁”発達段階の概念。この壁を超えると子どもはガラリと変わる。想像力が急速に発達して口達者になる。

 9歳を超えると怖い→それ以下の幼児を性対象にする。



 第3章 非行少年に共通する特徴


 非行少年に共通する特徴5点セット+1


【/ 認知機能の弱さ 】見たり聞いたり想像する力が弱い/「不真面目な生徒」「やる気がない生徒」の背景にあるもの/想像力が弱ければ努力できない/悪いことをしても反省できない


【/ 感情統制の弱さ 】感情を統制できないと認知機能も働かない/ストレス発散のために性非行/ “怒り"の背景を知らねばならない/ “怒り"は冷静な思考を止める/感情は多くの行動の動機づけである


【/ 融通の利かなさ 】頭が硬いとどうなるのか?/BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)/学校にも多い「融通の利かない子」/融通の利かなさが被害感につながる


【不適切な自己評価 】自分のことを知らないとどうなるのか?/なぜ自己評価が不適切になるのか


「適切な自己評価は他者との適切な関係性のなかでのみ育つ」


【 対人スキルの乏しさ 】対人スキルが弱いとどうなるのか?/嫌われないために非行に走る?/性の問題行動につながることも


・聞く力が弱い→友達が何を話しているかわからず話についていけない

・見る力が弱い→相手の表情やしぐさが読めず、不適切な発言や行動をしてしまう

・想像する力が弱い→相手の立場が想像できず、相手を不快にさせてしまう



【身体的不器用さ 】身体が不器用だったらどうなるのか?/不器用さは周りにバレる/身体的不器用さの特徴と背景




 第4章 気づかれない子どもたち


 子どもたちが発しているサイン/サインの「出し始め」は小学2年生から/保護者にも気づかれない/社会でも気づかれない「/クラスの下から5人」の子どもたち/病名のつかない子どもたち/非行化も懸念される子どもたち/気づかれないから警察に逮捕される


 学校で相談ケースとしてあがってくる子どもの特徴が、少年院の少年たちと共通する。


・感情コントロールが苦手ですぐカッなる

・人とのコミュニケーションがうまくいかない

・集団行動ができない

・忘れ物が多い

・集中できない

・勉強のやる気がない

・やりたくないことをしない

・嘘をつく

・人のせいにする

・じっと座っていられない

・身体の使い方が不器用

・自信がない

・先生の注意を聞けない

・その場に応じた対応ができない

・嫌なことから逃げる

・漢字がなかなか覚えられない

・計算が苦手



 第5章 忘れられた人々


 どうしてそんなことをするのか理解不能な人々/かつての「軽度知的障害」は人口の14%いた?/大人になると忘れられてしまう厄介な人々/健常人と見分けがつきにくい「/軽度」という誤解/虐待も知的なハンディが原因の場合も/本来は保護しなければならない障害者が犯罪者に/刑務所にかなりの割合でいる忘れられた人々/少年院にもいた「忘れ られた少年たち」/被害者が被害者を生む




 第6章 褒める教育だけでは問題は解決しない


 褒める教育で本当に改善するのか「?/この子は自尊感情が低い」という紋切り型フレーズ/教科教育以外はないがしろにされている/全ての学習の基礎となる認知機能への支援を/医療・心理分野からは救えないもの/知能検査だけではなぜダメなのか「?/知的には問題ない」が新たな障害を生む/ソーシャルスキルが身につかない訳/司法分野にないもの/欧米の受け売りでは通用しない


 欧米のノウハウを輸入したものが、どう日本人には合わないのか知りたいと思う。




 第7章 ではどうすれば? 1日5分で日本を変える


 非行少年から学ぶ子どもの教育/共通するのは「自己への気づき」と「自己評価の向上」/やる気のない非行少年たちが劇的に変わった瞬間/子どもへの社会面、学習面、身体面の三支援/認知機能に着目した新しい治療教育/学習の土台にある認知機能をターゲットにせよ/新しいブレーキをつける方法/子どもの心を傷つけないトレーニング/朝の会の1日5分でできる/お金をかけないでもできる/脳機能と犯罪との関係/性犯罪者を治すための認知機能トレーニング/被虐待児童の治療にも/犯罪者を納税者に



 子どもの認知機能への疑問が、今抱えている自分の問題。学習面では問題ないのに、日常生活で目に付く伝わりづらさが、ここに書かれている特徴にかなりあてはまるものがあり、自分事として読んでました。

 コグトレ、もっと勉強して試して見ようと思います。概念を個人に当てはめて考えるには、まだまだ知識が足りない。子どもの抱える問題点を整理して、具体的に対応できるように頑張ります。





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