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岡野と土屋は思案する。  作者: 南風原海
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「異世界転生顔ってなんだよ」

はじめまして。よろしくお願いいたします。

 「おかちゃんってさ、異世界転生顔だよね。」

 校舎の一室。向かい合わせた机。向かい合う男子学生。聞こえてくるのはグラウンドからの運動部の声。もしくは、吹奏楽部の楽器の音。よくある放課後。

 「なんだよそれ。初めて言われたぞ。意味わかんねぇよ。異世界転生に顔とかないだろ。」異世界転生顔と言われた少年"おかちゃん"こと岡野ハルヨシはそう返した。初めて聞く言葉。初めての問い。岡野は異世界転生に詳しくない。「え〜!あるよ、異世界転生っぽい顔!昨日見たアニメもこの間たまたまやってたアニメもみんなおかちゃんぽかったよ!」そう反論するのは岡野の友人"土屋ミナト"。岡野以外からは"つっちー"と呼ばれている。「俺っぽい顔って何なんだ……。それってよくある顔ってことか!?」大きな声を出したかと思ったら、岡野は急に肩を落とした。岡野の肩にそっと手を起く土屋。「ちーがーうーよ!違う違う!見たアニメはね、異世界転生した主人公みんな黒髪でさあ、黒目大きくなくて、キリってしてたの!んで、みんなおかちゃんみたい!カッケー!って思ったわけ。」土屋は優しい手つきにそぐわない声量で否定をした。その土屋の言うとおり、岡野は黒髪短髪。目も一重ではないが、黒目が小さい。顔立ちはどちらかといえばキリッとしている。一時期流行った傾国顔よりも建国顔という雰囲気だ。「二作品だけの情報って……お前、異世界転生知らないだろ。って、そういうことじゃないんだよ!やっぱりそれよくある顔じゃねぇか!土屋、お前何が言いたい!」冷静を装いたいお年頃の岡野も流石に無理だった。高校デビューと同時にクールキャラへの転向を試みた。が、中学から友人の土屋がいる時点で無理なのだ。ツッコミ癖が隠せない。岡野の声は廊下と近くの教室まで響きわたった。「ん〜、何が言いたいかって?え〜聞いちゃう?聞いちゃう?俺はね、おかちゃんカッケー!主人公みたいじゃん!って思ったんだよ!」土屋はニコッと岡野に笑いかけた。それを見た岡野は思う。『コイツ、恋愛漫画の当て馬キャラみたいだよな……』と。岡野は恋愛漫画に詳しいわけではない。姉の部屋にある漫画を適当に拝借した時に偶然読んだくらいである。岡野は諦めた。土屋のナチュラル人たらしには勝てない。「あぁ、そうかよ。好きにしろよ。」岡野は土屋に当て馬顔と言いたい気持ちをぐっと抑えた。これを言ってしまったら、負けた気持ちになるからだ。土屋は岡野と正反対の顔立ちである。赤みがかった髪はふんわりと癖がついている。さながらパーマをかけたようだ。目は二重でくりっとしている。見た目だけは柔らかな印象だ。決して国を建てそうにはない。とはいえ、国を傾けもしないだろう。

 「好きにしろって何〜!ここから議論を深めていくところでしょうよ!」と岡野を左右に揺する土屋。岡野がそれに抵抗しようとした瞬間、「うるせーぞ、用がないならさっさと帰れ。一年ども。」

教室の前方入口から声がした。二人はパッと声の方を見る。ジャージ姿で片手にはバインダー。無精髭に面倒くさそうな表情の男が片足重心でそこに立っていた。「たちたちじゃ〜ん!」「すみません、立川先生。」たちたち、立川先生と呼ばれた男は立川ケンゴ。この学校の教師だ。「たちたちって呼ぶのやめろ。あと、お前たち声がデケェよ。職員室まで聞こえてきてたからな。」教師らしくない風貌の割に教師らしいことを言う。「ほら、さっさと帰れ。ていうか、お前たち部活は?やんないの?」また、教師っぽい。「いや、あの、部活は……」岡野はしどろもどろになる。すると、隣から岡野の返しを遮るように土屋が返す。「やんないよ!俺はおかちゃんと喋ってるのが楽しいから!でもぉ〜、おかちゃんが部活やるなら俺もやる!ね、おかちゃん!」土屋はまたニコッと笑った。岡野はいつもこの笑顔に助けられている。「うん。あの、俺も、やりたいものが見つかるまではこのまま土屋と過ごすつもりです。」その返事を聞いて立川は安心したような、優しい顔をした。「お〜。それもまた青春ってやつだよな。じゃあ、気をつけて帰りなさいよ。さようなら。」そう言って立川は二人を見ずに手を振って、教室から出ていった。その背中に二人は「さようなら」と挨拶をした。

 「んじゃ、怒られちゃったし帰ろっか!おーかちゃん!」土屋は自分のリュック背負い始める。「あの、土屋。ありがとうな、さっきは。」「なになに〜?何が〜?」「なっ、なんでもない!帰ろう!」岡野もそそくさと自分の鞄を手に取った。「へへっ。帰りにコンビニでアイス買おうよ〜!」「俺はコーラが良い。」「おぉ、いいね〜!両方にしよ!」

 こうして二人のは放課後は過ぎていく。土屋と岡野の放課後はこれからも続いていく。

お読みいただきありがとうございます。不定期ですが続きます。よろしくお願いいたします。

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