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80話 死に至らしめかねない恐怖





こんばんは、五樹です。今日は、時子の状態と彼女が見た夢の話、僕の状態について話します。



78話で、時子が「もう目覚めたくない」と念じて、あまり出てこなくなってしまったという話をしました。


ですが彼女は、それから一日経った時には、もうすっかり元通りの生活に戻ったのです。


起きて、コーヒーを飲んだら家事をして、休んでは落ち込んで、また力が貯まれば家事をして。


78話を読んだ人なら、それを聞いて、「そんな事をして大丈夫なのか」と感じるかもしれません。大丈夫ではありません。


時子は、少し余裕が出来ると、それを全て使い切ってしまおうとするのです。彼女は、すぐにも自分の理想の生活を実現したがるのです。



それから、昨日の朝、時子はとても怖い夢を見ていました。


夢の中は初め、学校の教室のようでしたが、時子はなぜか布団とシーツの上に座っていました。


時子は友人と音楽を聴いていましたが、授業の時間が迫ると、彼女は屋上でサボタージュをしに、階段へ向かいました。


階段は変な場所でした。行く手の天井がとても低かったり、階段が欠けていたりして、時子は、「進むのは危険だ」と肌で感じていました。


それでも構わずに彼女が屋上手前まで進むと、場所は元の布団の上に戻ってしまいました。時子はそこで、「ここはお母さんの胎内かもしれない」と直感で捉えました。


彼女は自分が恐怖する母親の事を思い出して怯えていましたが、「あと少しで屋上だから」とその先に手を伸ばすと、そこには、今にも破れそうに、外の光が透けている、背が低くて白い壁がありました。


その壁を見た途端、時子は「この先には見ちゃいけない物がある」と強く感じ、目を覆って叫び始めました。



目が覚めてから夢を振り返り、時子は、これが何の夢だったのか、しっかり分かったようです。


“外に生まれてきてはいけない”


“外には怖い事があるから、出てはいけない”


時子は、生まれた後の記憶を持ち、そして生まれる前の自分の記憶もいっしょくたにして、「痛い目に遭いたくなければ生まれてくるな」と自分に言い聞かせる為の夢だったのだと、後から振り返っていました。


夢の意味を正確に受け取る事は難しいですが、自分で確信が得られるなら、その通りなのでしょう。事実、時子は「生まれなければよかったのに」と、散々思わされてきました。



僕の話に移りましょう。


僕は最近、目覚めている時間を辛く感じるようになりました。


時子の抱えている、悲しみ、苦しみが、形のある疲労となって、僕にも被さってこようとしている。そんな気がするのです。


時子が苦しくなって僕に代わったのに、僕も苦しく感じて、時子に返してしまうという事が、頻繁に起こるようになりました。



亡くなった前のカウンセラーが、ずいぶん前にこんな話をしていました。


「時子さんはやっと“凍りつき”が解けたから、不安や恐怖を表現出来るようになったんです!凄く良い事なんですよ!」


その言葉通りに、恐怖の質量は変わっていなくても、彼女はそれに蓋をする事なく、自由に感じるようになりました。


それは、その恐怖を感じている人間を、殺しかねない物です。何せ、時子からすれば、全人類が「自分を虐げるはず」なのですから。


彼女は、母親から植え付けられた、「人間とは自分を虐げるのだ」とい価値観を、全ての人に適用して生きています。それはまだ変わっていません。


彼女が怯える事を始めたとするなら、今までに無い事ですから、僕にも影響があるかもしれません。


時子を守るのが本分である僕が逃げ腰になっていてはいけません。僕は前よりも生活に不安を感じていますが、時子がやっと自由に解放出来た事として、受け止めていきます。



お読み下さり有難うございました。状況が常に変化しますが、出来る事からやっていこうと思います。それでは、また。





つづく

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