表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/131

50話 統合、六度目





おはようございます、時子です。今回、私達は自然な統合の六度目を迎えました。



前話「悠君の大冒険」の後で、私は混乱していましたが、段々と「五樹」を頼る様になり、五樹はそれに照れてうるさがっていました。


「時子」は「五樹」と会話をしたがって、起きている時は頭の中に話し掛けてみたり、Twitterで五樹のツイートに返信をしてみたり。


そんな風に私達の間の垣根が大分低くなり、その影響で二人の意識はまた混じり始めます。


“でも、統合にはまだ早い。この子には僕達を全員引き受ける気力体力はない”


それが、「五樹」としての最後の台詞だったように思います。



時子が目を閉じると、今まで時子だけが見る事のなかった、別人格達が格納されるフラットが見え、そこから出た悠と五樹が目の前に並んでいるのを見ました。時子は胸を膨らませ、二人に微笑みます。



「これで私達、一緒になれるかな?」


大きな頭を俯けていた悠が、頭を上げて時子を見ます。彼は全く「可愛い7歳の男の子」で、まだ細い髪でまんまるく頭を覆っていました。背丈は時子の腰くらい。


「じゃあ、君が時子ちゃん?」


悠は、今までそれを知らなかったようです。


「そうだよ」


「そっかあ!」


悠は“かまってもらえている”とでも思っていたのか、楽しそうでした。


でも、五樹は慎重でした。彼は足先で床を叩き、腕を組み、その姿は、23歳で亡くなった、時子の友人と同じでした。


「上手くいくかは分からない」


そう言って五樹は脇へ息を吐きます。


「そうね」


時子は、その場に居なかった桔梗と彰を呼びます。桔梗はすぐに現れました。


桔梗の赤いスカーフは、半袖の白いセーラー服の襟からスルリと流れていて、彼女の手首はとても細かった。長い髪を耳に掛け、桔梗はすました顔をして、時子の前で立ち止まります。


「来たわよ」


「大丈夫かな?一緒になれそう?」


「多分」


時子は今度、彰を呼びました。


「彰さん!出ておいでよ!」


でも、フラットの中から彰はなかなか出てこなかった。だから時子は彼の部屋の前まで歩いて行って、ドアを開けます。


部屋の中で、彰は、テーブルの足にしがみついて、泣き震えていました。


「どうしたの…?一緒に…ならないの?」


そう聞くと、彰は叫びました。


「そんな事…出来るはずがない!」


彼の叫びは悲痛で、時子は戸惑いながらも話を続けます。


「どうして?」


彰も躊躇っていましたが、流れる涙を拭いもせずに、額には汗をかき、彼はまた叫びます。


「だって、だって俺は…“殺意”だぞ!?そんなもんを受け入れちゃダメだ!」


その時時子は小さく笑ってから、こう言います。


「大丈夫。それも私だし、私はもうそれは使わないから」


そうして全員が私の元へ集まって、私が現実に目を開けた時には、様々な感情が鮮烈に胸に渦巻き、私はぼーっと宙を見ていました。



今、私はまた、統合による心の静謐を感じています。


私の中で一番力を持っていて、私自身の要素として大きかった人格は、やはり「五樹」でした。だから、別人格として在った頃にも、彼ばかり現れていた。


「五樹」は冷徹で、物に驚かず、面倒くさがりでした。だから、目の前の事に冷静に注力して、無駄なエネルギーを使わない。自分の中にそんな意識があるのを、私は今感じています。


ただ、あまりに合理化され、感情さえ省かれてしまって、人の死にも動じない自分を見ているのは、少し辛いです。


人格が8人居た頃の「時子」は、何につけても心揺れない事はなく、何でも味わって大いに楽しみ、悲しみも大きかった。


「五樹」を吸収し終われば、その鮮やかな日々は消えてしまう。それがあるから、いつも統合を維持したくなくなるのです。


でも、今度はこの日々に耐えられるように、努力したいと思います。


まあ、すぐに統合は崩れちゃう気がするんですけどね。


では、今度もお読み下さいまして、有難うございます。いつも展開が急ですみません。それでは、また。





つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ