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39話 カウンセリングルームにて・4





こんばんは、もしくはおはようございます、五樹です。ちょっとぶりですね。金曜日のカウンセリングで印象に残った話をしましょう。



時子はタッチセラピーを受けながら、カウンセラーととりとめもない話をしていましたが、不意にこう言いました。


「私、常に“全員から嫌われてる”って考えちゃう方で…そんなはずはないんでしょうけど…」


時子は、“自分は誰からも嫌われている”とずっと思い込んできました。


“自分は人類の邪魔をしているから、石打ちに遭って死ぬのが自然なんだ”という、途方もない妄想すら、時子の中にあります。


カウンセラーはその時、こう言いました。


「ええ、それはね、とても自然な事なんです」


「え?自然なんですか?」


「はい。時子さんは、生まれる前から危険な状態だった。搔爬の手術の時には、赤ちゃんも抵抗します。命の危機ですから。そして、産まれてからも、お母さんには拒否され続けてきたから、ずっと危機感があった…だから、“みんなに嫌われてるかも”って考えるのは、当然の防衛反応なんですよ」


「そっか…確かにそうかも…でも、人類みんながお母さんじゃないんですから」


そう言って時子は笑います。


「ええそうです。もうお母さんとは絶縁状態だし、今は旦那さんが一生懸命サポートしてくれるじゃないですか!」


嬉しそうにそう言ったカウンセラーに、時子も少し笑顔を取り戻しました。


「ええ、本当に…お料理とかまで、いつもしてくれて…」


時子は“申し訳ない”と思っているのか、少し声は控えめでした。でも、その言葉をカウンセラーは拾います。


「そうなんですか?じゃあ、時子さんの体は、旦那さんの作ってくれるお料理で出来ちゃってますよ!独りじゃないです!」


時子はその言葉を直感的に理解出来たようで、ほっとしたように喜びました。


“誰かがいつも用意してくれる何かで、自分の身体や暮らしを支えられている”


心の孤独感を直接に払拭出来なくても、その条件があるなら、状況的にはもう孤独とは言えません。



時子はずっと、孤独の中に居ました。カウンセラーの言うように、それは「防衛反応」です。


散々痛めつけられ、「世界は私を虐げるんだ」と学習してしまい、孤独の殻に閉じ篭もる事で、恐怖から逃れたのです。


ところが、周りに優しい人ばかりになったのが時子自身に分かってきてからも、孤独の殻はすぐに破れてはくれなかった。


だからカウンセラーは、「それはもう過去の事ですよ」と教えるため、過去と現在を話で行ったり来たりさせ、身体の感覚も確かめさせるのです。


過去の辛い事を、時子が話すと、カウンセラーは必ず、「そう思うと、体のどの辺りに、どんな感覚が出ますか?」と聞きます。


時子は「お腹の辺りが緊張している感じ」とか、「背中が固くなる感じ」と答えたりします。するとカウンセラーは、話を今に戻してから、時子の感覚が楽な状態に戻るまで話を続けます。


辛かった事を思い出すと身体が緊張し、それを忘れる時には体も楽になっている。カウンセラーはそう話します。


昔辛かった事を思い出した時、なんだか体も辛くなってくるような気がしたけど、誰かにそれを話して励ましてもらったら、力を抜いて過ごせる自分に戻れた。そんな経験はないでしょうか。


ここからはPTSD専門のカウンセリングの話です。「六人の住人」で少し話したかもしれません。


過去を思い出して辛い時と、現在の環境に安心している状態を行ったり来たりする事を、「ペンジュレーション」と言うそうです。日本語にすると“振り子運動”です。


振り子は段々振れるのが早くなり、揺れも小さくなる。それと同じように、段々と、過去の事を思い出してもあまり悲しく感じなくなる。


それを教える為、カウンセリングでは意識的に過去と現在を行き来する。と、前にカウンセラーが説明していました。



カウンセリングの話はここで終わります。


ところで、僕はここ数日、あまり表に出ませんでした。もしかしたら、今後はあまり表に出てくる事なく、時子は自分に耐えられるようになっていくかもしれません。とは言え、今日はある訃報に耐えられず、僕を呼んだようですが。



今回は長くなってしまい、すみませんでした。また読みに来て頂けますと、嬉しいです。それでは、また。





つづく

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