表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/131

18話 反目し合う人格





おはようございます、五樹です。先ほど、時子、それから僕、あとは桔梗の3人で、それぞれコーヒー、緑茶、紅茶を飲んでしまいました。僕は今、動悸が酷いです。


でも、これは全て時子が用意して、一人で飲もうと思っていた分です。


コーヒーと紅茶を少しずつ飲んだ時点で僕に交代し、そんなにたくさんカフェインを摂るのは、やめさせないといけないと、僕は思いました。


だから、僕がちょっと飲みたかった緑茶を一口二口飲んで、残りを捨てようかと思ったのです。しかし、そうしたら時子に恨まれてしまう。


眠る為に心中深くに引き返していった時子は、今日は不安定だったから、僕は恨まれていました。



時子が不安定になれば僕が現れますが、それが更に彼女に混乱を招く。「どうして混乱してるのに、時間を奪うの」と彼女は泣く。


夜の9時くらいに叔母に電話をしていた時にも、時子は僕をあまり良く思っていないような話をしていました。



だから、僕はまず、そういう時の応急処置的な対処法として、重要な物以外は、Twitterの僕のつぶやきを消そうと思いました。そうすれば、僕の存在は遠ざかるので、“なんで消したんだろう?”とは訝りながらも、時子は安心してくれます。



ここからの説明はかなり長いですが、なるべく分かりやすくなるように努めます。


目立って最近と思しき物で、残しておかないと困るツイート以外を、僕は消していこうと思っていました。でも、僕も途中で酷く眠くなったのです。それは、桔梗が目覚めたがっていたから。


“仕方ない。ここは桔梗にお願いしよう”



僕が目を開けると、それは、別人格達が住む、フラットの目の前でした。


桔梗が、一番端の自室から出てきた所です。


「頼む、後をやっておいて」


そう言うと、桔梗はすぐに足を踏み出して、こう言いました。


「あんたは干渉し過ぎなのよ。だからこうなる。馬鹿」


“そう言われても、交代を迫られたら、やらない訳にはいかないんだけど…元々、誰と交代するかは、時子が決めているんだし”


そうは思いましたが、僕はひとまず部屋に戻って、電気を消しました。僕達は、自室の電気を消さなければ交代出来ません。



その後、表に現れた桔梗が行ったのは、確かにツイートの削除ではあったのです。でも、それは、僕の存在を示唆する物全てでした。


食事の記録も、服薬を何時にしたのかも、僕がこの子に伝えたかった重要事項についても。時子が僕の発言に言い返したツイートも、全てです。それをしている時の桔梗は楽しそうで、尚且つ彼女は怒っていた。僕はそう感じました。


そうしている内に、桔梗は、400mlもあった紅茶をすっかり飲んで、ティーカップやティーサーバーも全て洗い、元の場所に戻します。そうして彼女は、満足して引き返して来ました。



桔梗が眠る前、僕は声を掛けたのですが、同じ事を言われました。


“なんて事をしてくれたんだ。これじゃ何も分からないじゃないか”


“うるさいわね馬鹿”


彼女は短くそう言っただけで、自室の扉を閉じ、電気を消します。


僕は桔梗からは嫌われています。


多分彼女は、“絶好の機会”と思って、仮初にも、僕の存在を一切消しに掛かったんだと思います。



改めて目覚めたのは時子でしたが、彼女は目の前を見て、愕然としたようでした。


「なんで…?無い…あ、コーヒー、冷め切ってるし…なんで…?」


時子が眠る前に胸躍らせていた紅茶も、緑茶も無く、コーヒーは冷めている。


時子はそれから、スマホを手に取りました。僕が残しているかもしれないメッセージに、反撃しようとしたのでしょう。でもそこには、何も無かった。


いくら遡っても僕のツイートはなく、それから、僕のツイートに対して時子が言及しているようなシーンも、全て削除されていました。だから時子は、それにも混乱した。それから時子は酷く落ち込んでいき、また僕が目覚めたという訳です。



僕と桔梗は、反目し合う存在です。元々の目的が、僕達は対極にある。


桔梗は、時子の苦しみを終わらせる為に、全てに終わりを与えたかった存在。今はそれは諦めてくれたけど。


五樹という僕は、明確に意識している最終地点は無いにしても、時子の幸福を願って、その為に努力したいと思っています。だから、桔梗にとっては、ただ邪魔なだけだった。



僕と桔梗は、まだ桔梗がその目的を捨てていなかった頃、その事について話しました。



「出てくるな。お前を出す訳にはいかない」


桔梗が目的を遂げるため、時子を殺そうとした晩の事です。結局出来なかったのは良かった。桔梗はその時、こう言いました。


「これがあの子の本当の望みなのに、私達が叶えてあげなくてどうするの?」



でも、それは本当でしょうか?本当に時子は死にたがっているのでしょうか?


そうだとするなら、こんなにたくさんの人格が出来上がってしまう程、彼女が苦痛から逃れて生き延びた意味は、どこにあるんでしょうか?


僕達は、苦痛の記憶を別の場所に保存して、時子からは見えなくする為、生まれるのです。だとするなら、彼女は、そうまでして生きたかったのでは?そう思う方が自然です。



桔梗は、僕の事をいつも「干渉し過ぎの馬鹿」と言います。それは僕にも分かっている。


でも僕は、時子が苦しい思いをしている時に、それを拭うために働く事でしか、生きてはいけないのです。そうでなければ、僕はすぐに消えてしまう。



今すぐに時子が目覚めたら、「また景色が変わっている、また時間が過ぎている、もうたくさんだ」と悲しむだけでしょう。


僕に出来る事、つまり、僕がやっておいても時子がショックを受けないのは、家事と、入浴くらいです。それで点数を稼いでおかないと、時子には嫌われっぱなしになってしまうかな、と、少し僕も不安ではあります。



それにしても、桔梗は私怨の為に必要な事を投げ捨ててしまうんだと分かったので、これからは彼女に頼み事は出来ないな、と思いました。



複雑な気持ちではありますが、僕は引き続き、水を飲んで、休んでみます。お読み頂き、有難うございました。なんだかいつも目まぐるしくてすみません。それでは、また読みに来て下さると嬉しいです。





つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ