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終章

 香華子はあれから一度だけ、おっさんの生活を視てみたことがある。

 妄想した。

 それは未来視だった。

 その結果またもや高熱を出し、見事に三日間寝込むことになった。

 それ以来、おっさんに関する妄想はしないことにした。

 なんといっても、おっさんが見たければ、実際に会いにくればいいのだから。

 次元接続体犯罪抑止研究所には毎日のように通っている。

 場合によってはえひめが不在でも顔を出している。


 えひめとは学校でも仲良くなった。

 下の名前で呼び合っている。

 そのぶん澄佳との関係に距離ができてしまったが、その修復が悩みどころだった。

 なにせ澄佳は普通人だから、まだえひめの家に呼べないのだ。


 そのうち、次元接続体の存在が公になるという。

 そうなったらすぐに香華子は澄佳もえひめの家、

 この次元接続体犯罪抑止研究所に呼ぼうと思っている。実物のおっさんを見せるのだ。


 香華子は今日も研究所へやってきた。

 えひめはキックボクシングのジムにでかけている。

 おっさんが応接室で、ノートパソコンとにらめっこしていた。


 香華子はすぐそばまで行って茶化す。

「おー、おっさんすごい! 仕事してるみたい!」

 いまでは対面でもおっさん呼ばわりになっていた。

 おっさんは渋い顔をした。

「俺だって毎日仕事してるんだぞ。もう無職じゃない。たまにはパソコンも使うんだよ」

 香華子は構わずおっさんの顔に自分の頬をぴったりつけて自撮りした。

「おっさん、仕事してまーす」

「近い近い! 仕事のじゃまだ!」

「お、彼氏に言ってもらいたいセリフナンバーいくつかの『仕事のじゃまだ!』出ましたねー」

「遅くならないうちに帰れよ」

「今日はえひめちゃんと用事があるからー。遅くなったら送ってってよ」

「別にいいけどよ、イサムはAI、俺はエージェントだぜ、タクシー代わりにすんなよ」


 なんだかんだ言いつつ、おっさんのほうも香華子に甘い。

 時間が合えば、おっさんとイサムが家まで送ってくれることもある。

 おっさんは香華子の家の者に睨まれるがそんなことは気にしない。

 向こうもおっさんの実力を知っているから、うかつに手出しはしないのだった。


 おっさんと香華子はなかなかいい関係に見えた。

 親も兄の哲史も、香華子に歳の離れた恋人ができたと思っている。

 香華子はあえて説明しないでいた。

 もしかしたら、いつ本当に恋人関係になるかもわからないという期待もないではない。

 そのことについて新しい妄想がはじまりそうな予感もあった。

 その妄想は未来視となるだろうか。

 視たら熱が出るのだろうか。

 ここはやはり妄想より現実を重視していくべきかもしれない。


 妄想は素晴らしいが、現実も悪くない。

 香華子はそんなふうに思いはじめていた。

 甘いケーキとスパイスの効いたカレーのようで、両方とも捨てがたい。

 おっさんの妄想を視る、

 つまり次元接続体としての力を再び使うことも、いつかあるかもしれない。

 今回のように、おっさんの前に強敵が立ちふさがったときなどは、

 香華子もリスクを恐れず躊躇しない。

 だが、そのときまではおっさんの生活を見守り、

 普通の女子としてちょっかいを出していきたい。それが香華子の望みだった。


 香華子は屈託なく、おっさんに微笑みかけた。

 ふたつのメガネフレームを掲げて言う。

「ねえねえ、おっさん見て! こっちのフレームとこっちのフレーム、どっちがわたしに似合うかな」

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