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運命を変える者

 香華子は白日夢から醒めた。

 それはほとんど強制的に頭のなかに広がった未来視だった。

 おっさんの最期だった。

 おっさんはまた死ぬ。

 それどころか博士もセツも死んでしまう。

 新しく知り合いになった人々が何人も死んでしまう。

 

 それは恐ろしいことだった。

 回避できるものならしなければならない。

 その運命を回避するには、香華子が行動するしかなかった。

 誰もこれが来たる現実だとは知らないのだから。


 急激に熱があがり、頭が朦朧とした。

 文字どおり熱病に冒されている。

「もう少し、もう少しがんばって……」

 香華子は自らを励まして、えひめに電話しようとした。

 しかし目の焦点が定まらない。

 激しく左右にぶれて、なにも正しく見ることができなかった。

 それでもなんとか香華子は電話を手にとり……そこまでだった。

 力尽き、香華子は意識を失った。

 

 再び気がついたときは白い部屋だった。

 病室らしい。

 香華子はいま入院していることを知った。

 日付表示のあるデジタル時計があった。

 時間は午前三時、日付は……あれから一日後。

 今回は奇跡的にまだ一日しか経っていない。

そのかわり熱が残っている。

 もうすべては終わってしまっただろうか。

 それともまだ間に合うか。

 それを確かめるためにも、すぐ行動しなければならなかった。


「っ……!」

 香華子は腕から点滴の針を抜きとり、ベッドを抜けだした。

 病室を出ると、見張りが立っていた。香華子の家の者だ。

「だめですよ、お嬢、まだ寝てなきゃ!」

「わたしの電話はどこ!」

「そりゃあおウチでしょう」

「連れてって!」

「朝になって医者に見てもらうまで帰れません」

「違うの! わたしの言う場所へ連れてって! 早く!」

「無理いっちゃだめですぜ、さあ部屋に戻って!」


 香華子は見張りの脇の下に銃があることに気づいた。

 怖ろしかったが、時間がない。思いついたことを実行する。


 香華子は素早く手を伸ばして見張りの銃を奪った。

「お嬢!」

 香華子は震える手で銃口を向ける。

「言うとおりにして! おねがいだから!」

 見張りの目に剣呑な光が宿る。

「お嬢、それはおもちゃじゃありませんぜ」

 香華子は必死になってまくしたてた。

「いいからゆうこと聞けよ! 子分だろ! 早くしろ!」

 尋常ならざる事態だと悟ってもらえたらしい。見張りの男はため息をついた。

「わかりましたよ、お嬢。お嬢がそこまでするからには、よほど重要なことなんでしょう。どこへなりとも好きなところへお連れしますよ……」


 香華子は昂奮で半泣きになりながら、見張りを従えて病院を出る。

 香華子が入院していたのは市内の総合病院だった。

 ここからなら、えひめの家まで十分で着く。


 見張りの車に乗ると、香華子はせっついた。

「飛ばして! 宗吾方向、詳しい場所は行きながらいうから!」

「へいへい……」


 車は五分で研究所に着いた。

「わたしがなかに入るまでクラクション鳴らし続けて!」

 香華子はそう頼んで車を降りるとインターホンのボタンを連打した。

「えひめちゃん! えひめちゃん!」

 イサムの声が応答する。

「よう香華子、騒がしいな、なにごとだよ」

「イサム! 中に入れて! えひめちゃん起こして! みんなが死んじゃう!」

「うぇーい! ただごとじゃねえな! えひめ、起きろ!」

 イサムがドアを開けてくれた。

 香華子は急いで入っていく。


 数秒後、眠そうなえひめが出てきた。

「どうしたの香華子ちゃん?」

「みんなは!」

「監視カメラ仕掛けにいったはずだけど」

 それはまさしく全滅のシチュエーションだった。

「みんな死んじゃう! 未来視で見たの! 怪物が出てきて、そのままだとみんなやられちゃう!」

「ちょっと待って」

 えひめは電話を取りだして父にかけた。博士は出ない。

 えひめは青くなった。

「なにかあったのは間違いないみたい……」


 ちょうどそのころ、博士は坂上蒔絵に銃を突きつけられていた。

 えひめは嘆息した。

「どうすればいいの……」

 香華子はくらくらする頭で考えてきたアイデアを口にする。

「イサム、怪物用に改造してたんでしょ? もう途中でもいいからイサムを送って! それしかできることない!」

「そ、そうね、それぐらいしか……」

 えひめは振り返り、作業を続けるロボたちに言った。

「作業終了! 途中でもしかたないから、いますぐ現場に向かって! 場所はわかる?」

 ルーフに機関銃がついたイサムが言った。

「わかってるぜ、いま廃墟のライブハウスだ」

「すぐ準備して行って! わたしも行くから!」


 香華子も言った。

「わたしも行く!」

「危険な場所よ」

「行けばなにかの助けになるかもしれないし、このまま待ってるのはイヤ!」

「わかった」


 ロボたちは慌ただしく動いた。

 ロボたちの手で人型の物体がコンテナ状にたたまれる。

 それががらあきだったイサムの後部にドッキングされた。

「もうこっちは準備オーケーだぜ、えひめ、香華子!」

 えひめは寝間着、香華子は入院着だったが、着替える時間も惜しい。

「いきましょう!」


 えひめと香華子はイサムに乗って出発した。

 香華子の見張りがあとを追ってきたが、イサムのスピードについてこれず、途中で消えた。


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