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有利に展開するが

 俺は博士の考えを吟味してみた。

 他に方法もない。

 やってみるしかなかった。

セツのほうが素早いが、首を締めるとなると俺じゃなきゃパワー不足だ。

「セツ! 烏羽の気を引いてくれ。俺がヤツの首を締めてやる!」

「わかった、やってみる!」

 セツとの距離は離れていたが、トランシーバーの通信状態は良好だった。

 すぐにセツが動きを変える。


 セツはテレポートで烏羽に肉薄すると一撃を加えて走って逃げる。

 衝撃波が撃たれようとすると、短い距離をテレポート。

 するとまたしばらく走って、衝撃波の狙いがつけられたころに短距離テレポートをして走る。走る時間が多くなっていた。


 なるほど、うまい。

 まるでテレポートする力が尽きかけているような演技だ。

 烏羽もいまが攻め時と誤解して、セツの動きに集中していた。

 俺を狙っていた諸戸もセツを捉えようと、俺から離れていく。

 いい具合だ。

 俺はじりじりと烏羽へ接近した。


 セツがテレポートしたあと、足をとられたように動きを止めた。

 烏羽も動きを止めて狙いを定める。


 この一瞬が俺のチャンス!


 強化された跳躍力で一気に烏羽の背中にとりつく。

 間髪を容れずに左腕を烏羽の首に回して締めあげた。

 こいつの頑丈さは知っている。

 首が取れない程度に力をこめて頸動脈を圧迫してやった。


「ぐふぅぅぅ!」

 烏羽は暴れまわるが、俺は離さない。

 俺と烏羽が密着しているから、諸戸も手を出せないでいる。

 締めあげて数秒、烏羽は泡を吹いて倒れた。

 いくら身体が頑丈でも、人間の形をしている限り、頸動脈を遮断されれば気絶する。

 残るは諸戸ひとりだ。


 俺のブレスレットは変わらない音をたてている。

 次元接続体がそばにいる限り、意識のあるなしは関係ないようだった。

 俺とセツは肩を並べて立った。


 セツはひん曲がった刀を諸戸に向ける。

「あとはおまえだけだぞ!」


 俺も言った。

「降参するならいまのうちだぞ。素直に投降すれば痛い目にあわせないでやる」


 諸戸は笑った。

「くっくっく、まさかあのとき出会った底辺のおっさんにここまで追い詰められるとは思わなかったぜ。金なんてめぐんでやるんじゃなかった」

「おかげでうまい飯が食えたぜ。その恩で、これ以上悪事を重ねないようにしてやる」

「それでいいことをしてるつもりか? まったく底辺てのはどこまでいってもバカなんだな。そんなんじゃ、いつまでも貧乏だぜ」

「でも俺は力をよいことに使っているし、いまはそれほど貧乏じゃない」


 諸戸は空中にいる。

 飛んで逃げることもできるだろう。

 逃げられたとしたら、俺たちに追う力はないが、やつの仲間は一網打尽だ。

 あとのこともなんとかなるだろう。


 だが、諸戸は引かなかった。

「俺ひとりでおまえらを仕留めてやる!」

 諸戸が突進してきて雷撃を放つ。俺たちはすんでのところで避けた。

 セツが空中にテレポートして、諸戸の背後から刀で打った。

 諸戸の体勢が崩れる。

 俺は跳躍し、狙いすました拳の一撃で諸戸のあごを撃ち抜いた。

 諸戸はもんどり打ってアスファルトに落下した。


「うぐぅうう……」

 俺はうなる諸戸の背中を膝で押さえて、腕を取ってひねりあげる。

「よし、これで終わりだ諸戸! おとなしくしろ!」


 諸戸の一味としては、あと蕪屋雫と坂上蒔絵が残っている。

 しかし、いま出てきていないところをみると、やはり戦闘力はないんだろう。

 場合によってはもう逃げちまっているかもしれない。

 セツが傍らに立った。

 そのメイド服はボロボロだった。

 もう鞘に収まらない刀を担いで言う。

「一件落着か。こんな大暴れは初めてだ。いいストレス解消になった。一張羅は駄目になったがな」


 俺はトランシーバーに向かって言った。

「博士、拘束具を持ってきてくれ。もう勝負はついた」


 数秒の間があいて返事があった。

「すまない……。そちらに気を取られすぎていた……」

 真夜中の静けさにパーンと銃声が響き渡る。

 銃声のほうへ頭を向ける。

 道路の向こうに、頭に銃を突きつけられた博士と、銃を持った坂上蒔絵の姿があった。


 なんてこった。

 次元接続体といえども博士は銃で撃たれたら死ぬだろう。

 逆の言い方をすれば、次元接続体としての能力は低くとも、銃を持てば人を殺せる。

 諸戸の一味は千垣組の助っ人として、橘組との抗争に参加している。

 拳銃くらい持たされていても不思議じゃない。


 まさか戦闘力のない坂上蒔絵の手によって状況が逆転するとは! 

 油断していた!


 坂上蒔絵が大声で言った。

「動くな!」

 両手をあげた博士と坂上蒔絵が、足早に道路を渡ってくる。


 俺の下で諸戸が首をひねってそっちを見る。

「へへへ、やっぱ頼りになるな。愛してるぜ蒔絵。さあ、おっさん、どけよ! 仲間の命が惜しかったらな!」

「くそ……」

 俺は身体を離した。


 諸戸は立ちあがって埃を払う。

「さて、どう落とし前をつけるつもりだ。タダじゃ済まねーぞ、え、おっさん」


 くそ、あと一歩だったのに!


 このクソガキが!


 絶対これで終わらせねえ!


 この重大な局面で裸に戻らないように、俺は心を振るい立たせて怒りを注ぎ足していた。

 だが、圧倒的不利に変わりはなかった。


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