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襲来に備えて

 俺と呉羽の話は短いものだった。

呉羽はこれまでの活動を詳しく知っているらしく、俺に改めて聞くことはないと言った。

 俺のほうは聞くことがあった。

 呉羽にはスタンショットを隠されていた前科があったので、

万筋服にはほかの機能もないか尋ねてみたが、はぐらかされるばかりだった。

 そんなわけで、

 再会して十分もしたころにはもう話すこともなく、通常空間の農機具倉庫へ帰されていた。


 母方の実家を出て、しばらく歩く。

 親戚が帰ってきても見つからない距離をとってから、イサムに電話をかける。

「うぇーい?」

「イサム、こっちの用事は終わった。迎えにきてくれよ」

「地球では一年に何回地震が起こっているでしょーう!」

「は? なにいってんだ、おまえ? いいから迎えにこいよ」

「正解は五万かーい! 続いて第二問、地球上で雷は一日何回起こっているでしょーう!」

「しるか! なんだよ、おまえは!」

「正解は八百万かーい! 続いて……」

「いいから迎えにこい!」

「悪いけど無理だぜ、おっさん。ワイいま分解されて改修中だからな。動けなくてヒマだぜ」

「改修だぁ? いったいどうなってんだよ、博士は?」

「博士はセツと一緒にオンボロワゴンで出かけてるぜ。監視カメラをしかける場所を探してるはずだ」

「博士が昨日の夜になんとかしたんじゃなかったのか」

「おいおいおっさん、俺の改修はまさしく昨晩始まったところだぜ。博士は俺の改修案をまとめるのに寝てねーんだぜ」

「わかったわかった、歩いてくよ!」


 しかたないので俺は研究所へ歩いて向かった。

 こんな時期にイサムを動けなくするなんてどうなってるんだ。

 イサムは俺たちにとって重要な戦力だった。

 あいつが動けないとなると、俺たち全体の行動力が下がる。

 釈然としないが、研究所へ行けばわかるだろう。


 てくてく小一時間も歩いてやっと研究所に着いた。

 認証を済ませて門をくぐり、庭を通って屋内に入る。

 入り口から中は、すでにけたたましかった。

 金属を削る音や叩く音が、ここまで響いてくる。

 俺は様子を見にいった。


 イサムは整備室で後ろ半分がなくなっていた。

 ロボたちが溶接したり旋盤を使ったり、総出で作業している。


 イサムがクラクションを鳴らし、ヘッドライトでパッシングする。

「お、俺の恥ずかしい姿をみ、見にきたのかよ」

「別に恥ずかしくねえだろ、メカだし」

「まあな、社交辞令みたいなもんだぜ」

「しかしいきなりおまえを改修だなんて、理由はなんだ?」

「そいつは博士に聞いてくれ。かなりヤバいらしいぜ」

「俺も博士に話したいことがあるんだ。こっちもかなりヤバいぜ」

「博士が戻ってくるまでクイズしようぜ、俺が問題出してやるから。おっさんの無知っぷりを味わいたい」

「やれやれだな……」


 俺は自分で紅茶を淹れてイサムのクイズにつきあってやった。

 一時間も経ち、うんざりしたころ、博士たちが帰ってきた。

 左腕にはめたブレスレットがピッピッとゆっくり鳴り始める。

 次元接続体がふたり揃っているためだろう。

 音の感じからしてまだだいぶ余裕がありそうだった。


 俺は出迎えてすぐ切りだした。

「博士、ヤバい話があるんだ!」

「わたしの話もかなりヤバいよ。香華子くんからえひめにメールがあってね」

「俺は呉羽から聞いた。あいつ太刀川レポートの太刀川って人とつながりがあるみたいで」

「それは興味深いね。そちらの話から聞こうか」


 俺たちは話を突き合わせた。

 けっきょくのところ、ふたりで同じ物事について話したがっていただけだった。

 どっちも狭間から来たるものの情報で、内容はまったく同じと言っていい。

 イサムの急な改修も、異次元の怪物に備えるためのものだという。


 俺は左腕のブレスレットを見せた。

「このブレスレットで怪物が来るのを予測できるんだ。激しい警告音がするって」


 セツが口を開く。

「具体的に何人集まったら駄目だという情報はないのか」

「こいつを調べてみるかい?」

 俺はブレスレットを外そうとした。


 博士は頭を振る。

「いや、いいよ。それは素晴らしいものだけど、工作者の新成物はたとえ分解したとしても正確な解析はできないからね。構造が異次元なんだ」

「そうか……」


 ブレスレットはゆっくりした音を鳴らしている。博士はあくびをひとつついた。

「夜にはカメラをしかけに行く。わたしは少し休むよ」

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