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博士の決意

 俺の向かい側の席で香華子は言った。

「次元接続体っていうのも兄が創作用に作った物語上の設定だと思っていたんです。実在するなんて思えないですよね。わたしだってさっきセツさんがテレポートするところを見せてくれなかったら信じられないです。ただ、妄想どおりの場所にえひめさんの家があるか確かめたくて、それで……」


 博士が口を開く。

「たぶんお兄さんも次元接続体なんだろう。次元接続体に関する香華子くんの知識は正しいし、太刀川レポートも実在する。どのような能力かはっきりしないが、隠された現実を見通す力だ」


 俺は思いつきを言ってみた。

「香華子ちゃんは未来が見えるんだろ? そりゃ俺たちにとってすごい戦力じゃないか。俺が中心だったとしてもさ。たとえばある日、パトロールしてなにもなかったとしても、教えてもらえばその日の行動を変えることができる。いや、行動を変えるつもりになっただけで条件が変わるだろ? こいつは無限の時間ができるようなもんだ」


 博士は無表情になった。

「その点については不可能だと思う」

「なんで?」


 香華子が申し訳なさそうに言った。

「さっき博士とも話し合ったんですけど、わたし、妄想……未来視に自分を登場させたあと、熱を出して寝込んじゃったんです……」

「俺が中心なんだろ? 自分が出ないように、例えばここにはもう来ないようにすれば大丈夫なんじゃないか?」


 博士は難しい顔になった。

「違うんだよ、丈くん。香華子くんが熱を出してしまった原因は、未来視から広がる選択肢が多くなりすぎて、過負荷がかかったためだと思われる。つまり未来視のなかに自分が登場した場合、その未来視が現実となるかはすべて自分で決められる。逆にいえばこれは未来が無限の選択肢を持ち、まったく定まっていないということになる」

「だから自分を見ないようにすればいいじゃないか?」

「未来視に香華子くん自身が登場しなくても、視た内容を我々に伝えるなら、自分が登場すること同様に未来が定まらなくなるだろう。つまり未来は無限の選択肢を持ち、その過負荷によって香華子くんはけっきょく体調を崩す可能性が高い」

「つまり、それってもう俺たちにはぜんぜん役に立たないってことか……」

「そのとおり。香華子くんの未来視は我々と関わってしまったことでかえって不完全になってしまった。別の我々と関係ない人物を新たな焦点にするのでもないかぎり」

「そりゃ難儀だな。俺たちに関係ない未来視を視られてもなー」

「騒ぎたてるばっかりでお役に立てなくてごめんなさい……」

 香華子が頭をさげる。


 俺は言葉を探しながら答えた。

「まあ気にするなよ。縁があるかないかでいえば縁があったわけだし。俺たちが出会った意味もそのうちわかるかもしれねえからな」

「はい」

 香華子はまた顔を赤らめた。

 ずっと視てたっていうのが本当なら、俺に気があったとしても不思議じゃない。

 ちょっと歳が離れすぎてるし、ヤクザの娘っていう大障壁もあるが、

 俺にとっての遅すぎる春っていう可能性も少し考慮に入れて付き合いを考えるか……。

 いや、やっぱ歳が問題かな……。


 博士が話題を変えた。

「香華子くんのことはひとまず置こう。諸戸の一味の問題がある。まずはイサムの録画を見よう」

 応接室にひとつだけかかっているモニターに録画が映しだされた。

 俺がさっき烏羽たちと戦ったときの映像だ。


 博士があごに手を当てる。

「イサムが言ったように、今回は幸運だった。相手に透明化されてから遠距離攻撃を受けていたらひとたまりもなかっただろう」


 セツがふっと笑った。

「わたしなら対策がある」


 俺は興味を引かれた。

「いったいどうするんだ?」

「小刻みにテレポートしながらそこらじゅうを斬りまくる。相手に当たるまで」


 博士が咳払いした。

「それは最後の手にしよう。わたしの眼なら、透明化を見破れる可能性がある。わたしがいないときに江藤耀司と遭遇した場合は、まず逃げること。危険が大きすぎる。きみらに代わりはいない」


 俺は頷いた。

「そのほうが安全か。あとは橘組と千垣組の抗争についてだな。俺たちはどこまで首をつっこむ?」


 博士が言った。

「我々は諸戸の一味を追い詰めなければならない。目の前に出てきたからにはね」


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