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車中のできごと

俺は当然の文句を言った。

「捨てられる前に助けてくれよ、もっと早く」


 博士が答える。

「車のなかの状況は指向性集音マイクで把握できていた。命の危険はなさそうだったから正体をバラして君を取り戻すより情報を集めたほうがいいと踏んだんだ」 


 まあ予想通りの言葉だった。

「そんなとこだろうけどさ……」

「さあ、研究所へ帰ろう」  


 研究所に戻ると、ロボの一体が俺たちに温かい飲み物を作ってくれた。

 それを手にして俺たちはモニター室に入る。


「イサム、録画を再生してくれ」

 博士が命じるといちばん大きなモニターに映像が出た。

 諸戸とマスクの男が俺を抱えて店を出てくるところだった。

 一味は俺を除いて四人。

 アクロスザスターで俺に応対した女と、もうひとり少女がいた。

 初めて諸戸に出会ったときに一緒にいた金髪の少女だった。

 

 博士が言った。

「わたしの目で確かめたが、彼ら四人は全員次元接続体だ。諸戸も、金髪の少女も。諸戸がなぜ次元接続体ばかりを集められるのか、その秘密も判明した」


 次いでイサムの声がした。

「おっさんを担いでいる諸戸じゃないほうは犯行グループのひとりだぜ。体格マッチ、確率九十パーセント」


 俺は答える。

「まあ、わかってたけどな。警備員を気絶させたやつだ。頭をつかまれるともう抵抗する時間なく気を失うぜ」


 セツが自信ありげに言った。

「しくみがわかってれば頭なんか触らせない」


 画面では、一味が俺をワゴン車へ押し込めたところだった。

 集音マイクで拾った男の声がする。

「このおっさん重いですね。百キロはありますよ」


 諸戸の声がした。

「車を出せ」

 俺と一味を乗せたワゴン車が出発し、イサムが後を追う。


 再び諸戸の声がした。

しずく、このおっさんは確かに能力者じゃないんだな? 間違いないか? 微弱な反応もないか?」


 女の声が答える。

「違う。ぜったい能力者じゃない。なにも感じないし見えないもん」


 博士がリモコンで録画にポーズをかける。

「重要なのはここだ。声の感じからしてあの少女だろう。あの少女はわたしと同じように見ただけで次元接続体かどうかわかるんだ。この少女の能力を使って、諸戸は次元接続体ばかりを集めることができたわけだ」

 博士はポーズを解除した。


 しばらく無言が続く。

 たぶん俺の持ち物をあらためているんだろう。

 言葉はなく、車の走行音が響いていた。


 沈黙を破って諸戸の声がする。

「このおっさんロクなもん財布に入ってねえ。名刺もなしか。まあゴミ収集してるのが本当なら名刺も持たないか。蒔絵まきえ、電話のロックを解除だ」

「はい」


 博士がリモコンを振る。

「ここで推測が当たったといえよう。あの女性はやはり電子機器を自在に操る能力を持っている」


 画面ではワゴン車の後部が映り、それをイサムが尾行する画が続いている。

 無言だ。


 俺たちも無言で飲み物をすすってていると、諸戸が吐息をついた。

「ふう。知っている名前も番号もない。どっちの組の関係者でもねえぜ。無関係だ。こいつはただのお人好しなおっさんだぜ!」


 男の声がする。

「ちょっと用心しすぎじゃないすか? こんなおっさんどう見ても単なるメタボじゃないすか。警察にも組員にもみえないっすよ」 


 俺は思わず画面に毒づく。

「なんだと、このガキが!」

 怒りが吹きだし、服を破って万筋服が現れてしまった。


 諸戸の声が答える。

「デカいヤマが終わったばかりだからな。これからも大事だしよ。用心するに越したことはねえ。カメラなんか仕掛けられてたんだからな」


 蒔絵の声がする。

「どうするんですか、このあと」

「なに、適当なところにこいつを捨てて帰ろうぜ」


 博士が口を開いた。

「このあと君はゴミ捨て場で置き去りにされ、我々はいったん離れたあと君を回収したわけだ」


 俺は怒りの具現である万筋服のまま腕組みした。

「まったく、ちょっとはいいやつかと思ってたのによ。やっぱりろくでなしか。もう容赦しねえぞ」

 それから博士に頼む。 

「博士、なんか着るもの貸してくれ。今日はもう着替えがない……」


 諸戸どもは無駄に服を消費させた。

 そのことも怒りに油を注いでくれた。


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