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対人戦闘

 俺たちが通りかかったスーパーの駐車場。

 そこで騒ぎが起こりつつあった。


 二十人ほどの若い奴らが睨みあっている。

 作業着姿にジャンパー、革ジャン。

 髪は金髪が多く赤や白もいるが黒髪はほとんどいない。

 ランニングシャツを着て入れ墨を見せているやつもいた。

 全員不良と認識してかまわないだろう。

 バットや角材を持っているやつもちらほら見える。

 剣呑な雰囲気だ。

 

 このスーパーは駐車場が過剰に広く、この一角は空いていて車もほとんど停まっていない。

 乱闘を繰り広げるにはうってつけだろう。

 俺たちが通り過ぎれば、ひと騒動まちがいなしだ。


 博士がのんきな口調で言う。

「街のヒーローとしてはほっておけないね」

「くそ! わかったよ! イサム、やつらのそばにつけてくれ!」


 相手の数は多いが普通の不良だ。

 このぐらい捌けないと、とても次元接続体とは戦えない。

 これは俺に課された試験でもある。

 このていどの相手にノされるようでは仕事が続けられないということだ。


「うぬぅぅぅぅ!」

 俺は唸りをあげて怒りを醸成する。


 まったく!


 こっちはひと仕事終えて!


 お茶の時間が楽しみだったのに!


 おまえらのせいで!


 怒りのボルテージが急上昇した。服が破れて万筋服が現れる。


 イサムはすーっと近づいてゆき、静かに停車した。

 不良どものまんなかに来た。

 二十人の目が、激しい憎悪を乗せて俺たちに注がれていた。

 プレッシャーは感じるが、大したこともない。

 勝負の時間だ。


 俺はドアを開けてイサムを降りる。

 装甲服を着たおっさんの登場だ。

 まだ高い日差しに万筋服の金属がてらりと光る。

 威圧感ばつぐんだろう。


 だが俺は不良どものほとんどより背が低いし、髪はハゲかけている。

 当然の罵倒を受けた。


「なんだぁ、じじい!」

「失せろ、バァカ!」

「だっせぇ……」


 いいね。

 悪ガキはどんどん怒りのエネルギーを充填してくれる。

 こんなやつらでも手加減してやらなけりゃならない。

 だが、大丈夫だ。

 歳のおかげで忍耐強いんだからな俺は。


 俺はずんずん歩いていき、言ってやった。

「お遊戯は終わりだ。全員ウチに帰ってエロサイトでも見てろ」

「死ね!」

 近くのやつが、躊躇なくバットで殴りかかってくる。

 かなりのワルにちがいない。

 俺も遠慮はしない。

 バットを左腕で受け、右の掌底を打つ。

「スタンショット!」

「うごッ!」

 電撃が弾け、不良は身体を硬直させて倒れた。


 それでも不良どもが怯んだのは一瞬だけだった。

「ヤロウッ!」

「ぶっ殺してやるッ!」

 ふたつのグループが一緒になって俺に襲いかかってきた。

「スタンショット! スタンショット!」

 俺は左右の腕を振るって応戦した。

 バカが次々と倒れていく。

 とくに悪そうなやつにはスタンショットではなく、ビンタを食らわしてやった。

 そいつも脳震盪を起こして倒れる。


 セツとの訓練が活きてきて、俺はなかなかいい動きをしていた。

 乱闘を踊るように戦う。

 たまに思いきりのいい一撃を食らうこともあったが、

 人間の腕力ていどの衝撃は、万筋服がすべて吸収してくれた。


 戦いはそれほど長い時間かからなかった。

 時間の経過はほんの二、三分。


 十五人が倒れ、残り五人は逃げていった。


 ガタイのいい男どもが芋虫のように転がっている。


 そこへ博士もイサムのなかから出てきた。

 結束バンドの束を放り投げてきて言う。

「もうすぐ警察がくる。これで縛りあげておこう」


 俺と博士は手分けして不どもの手足を縛った。

 まだ怒りは続いているが早くしないと裸に戻っちまう。

 俺は急いだ。

「そういやこいつら殴りあいする前にとっちめちまったな。逮捕できるのかい?」

「きっと凶器準備集合罪でしょっぴけるよ。よし終わり。あとは放っておこう」


 いつの間にか俺たちの周りには人だかりができていた。

 ぼつぼつ声があがる。

「おっさんつえー、かっけー」

「なにあの服、すげー」

 スマホで写真も撮られている。

 そのなかでひときわ大きい声がかけられた。

「おじさん! おじさん名前は!」

 俺は博士を見た。博士は鷹揚に言う。

「名乗っとけば」

「ヒーローなんでしょ! 名前は!」


 ヒーロー……。


 俺はこの日、ヒーローになりはじめたのかもしれない。

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