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鮭とかえる  作者: イチ
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鮭くんとかえるくんの旅

 

第4話 亀じいさん


奥深い山にも、はっきりとわかる春が訪れました。

山一面を覆っていた雪も、そのほとんどが溶けました。

はだかだった木々もあざやかに。

緑が芽吹き、色鮮やかな花が咲きます。

虫が飛び、小鳥も歌います。


キラキラ、キラキラ。


陽射しが生む生命の躍動。

暖かな春の陽射しは、水の中にも届いています。


ユラユラ、ユラユラ。


流れに任せて揺れる水草は、風になびく柳のようです。

水生植物もまた春の躍動を見せています。

あちこちで多くの魚も泳ぎます。

よどみの落ち葉の中では、なにやら動いている水生昆虫の姿も見えます。


あのふたりはどうでしょう。


産まれたばかり。

鮭の赤ちゃんも、かえるの赤ちゃんも泳ぎが上手くありません。

広いよどみの中をふわふわと泳ぎまわります。

ぽっこりに栄養が詰まっていますから、お腹も空きません。


今日も流れの緩やかな川面を漂うように泳いでいると。


「おふたりさん、こんにちは」


大きな岩の上から声がします。

亀です。

亀がふたりに声をかけました。


「こんにちわ」


「こんにちわ」


「こんにちわ

お主らは鮭とかえるの子どもじゃな」


「うん、そうだよ」


「うん、そうだよ」


「ほぉ珍しいこともあるもんじゃ。

わしは亀じいと呼ばれておる。

もう永くここに住んでおるぞ。

なんでふたりはいっしょにおるんじゃい?」


「なんでって、いっしょに生まれたからさ」


「そうだよ。ぼくらは卵からいっしょにいるんだ」


「ほぉ〜。鮭の仲間やかえるの仲間といっしょじゃないんじゃな」


「仲間?よくわからないんだけど、ぼくらはふたりで生まれたからね」


「ふたりいっしょなんだよ」


「なるほどの。違う種族でいっしょなんじゃの。

鮭とかえるのふたりでいっしょか。見たことも聞いたこともない!

まぁそういうのもおもしろいかのぉ」


「ほっほっほ」


笑いながら、亀じいさんが言いました。


「わからんことがあったら、なんでも聞きにおいで。わしはたいがいここにおるからの」


「うん、わかった」


「亀じいさんは物知りなんだね」


「ほっほっほ」


「亀の甲より年の功と、人間たちも言うておったからの」


「亀の甲?」

「年の功?」

「う〜ん、なんだろう?」


ふたりには、その言葉の意味も、人間も何かはわかりませんでしたが、亀じいさんが物知りなことはわかりました。


「ほっほっほ」


ふたたび亀じいさんが笑いました。


「なかよく遊ぶんじゃよ」


「うん!」


「うん!」

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