モンキーワールドへようこそ!
「新しい衣服が要求されるような仕事は、すべて警戒する事」
ソロー
ウェルカムトゥーザモンキーワルド、モンキーワールドへようこそ! ここは夢と希望の詰まった願いの国、イッツァモンキーワールド! 誰もかれもが浮世の憂さを忘れ、ひと時の夢心地に身を任せる、それがイッツァモンキーワールド! モンキーワールドはあらゆる娯楽を提供します。そこのお兄さん、お外は怖い病気が猖獗していて、まともに出歩くことも出来ないですが、ここにくればもう安心、まずは安心安全なオクスリを提供します! 一度打てば憂いはすべてふっとび、大きな顔をして園内を闊歩出来ますよ!
ゲートをくぐって、注射器の痛みに耐え、すぐ目の前に見えますのが、お客様のお出迎え、朦朧の館。朦朧の館は視界が歪み、頭ががくらくらするような非日常感を体験できます。そんなものが楽しいのかだって? 楽しいんです。なかには熱にうかされたようだと仰るお客様もいらっしゃる人気のスポットです。
その次はカイカイの花園。デコボコに隆起する花園を全力疾走してもらいます。時には掻いてもらった花園が、嬉しくなって地面を揺らすおまけつき。単純なアトラクションですが、これがなかなかどうして、やめられなくなる魅力があるんです。流れるテーマソングと一緒にカイカイ、カイカイ、と歌って、ご自分の体を掻きむしる方までいらっしゃるぐらいです。
カイカイの花園を抜けると、そこに待っているのは赤鼻大将です。赤鼻大将はモンキーワールドいちの悪者で、ほっとくと良からぬことを仕出かしますので、みんなで地面に落ちているボールをぶつけて退治しましょう。弱点は赤鼻です。赤く膨らんだ鼻目掛けてボールを思いきりぶつけましょう。赤鼻大将は痛い痛いと泣き喚きますが、容赦は不要です。なんたって赤鼻大将は悪者ですから、いくらやってもやり足りるという事はありません。
そろそろお腹が空いてきませんか? だったらここはどうでしょう、パスポートの館です。ここはオクスリを打った人間しか入れない、まさに選ばれた者の場所です。ここではあらゆる優遇処置が受けられます。美味しいお食事もその一つで、窓の外にはオクスリを打たないばかりに指をくわえてこちらを見ている人間が多数います。そんな奴らに優越感を抱きつつ、ワインをすするのも乙なもので、これを一度味わうと止められないというお客様は沢山います。
お食事が終わり、お腹も満たせましたら、倦怠の午後で一休みされては? 体のダルさを見事に表現した施設は、腹ごなしにぴったりです。リクライニングシートに寝転び、そのままあの世に逝ってしまわれる方もいるなんて笑い話が交わされるくらい、極上の空間でございます。特別なゴーグルを装着することで、目の前で繰り広げられるサイケデリックな光景は、他ではなかなか体験できぬものです。
体が休まりましたらその後も園内をぶらつき、日が落ちて、あたりがすっかり暗くなると、やってくるのが光と闇の織り成すパレード、それは生死を表現し、誰も彼もが自分の小ささを実感させられるビターなパレード。こんな華やかな園内で何故そんなものをと思うかもしれませんが、人生には苦しみはつきもの、私たち一同はそれを無視してまでこの園を運営することは出来ず、逃げずにしっかり向き合います。あえてそうすることで、お客様はご自分の人生と向き合うことになり、その結果憂いは晴れるという算段です。これがどうして、結構好評なんですよ。これはパレードの副作用なんですが、オクスリは自分の為じゃない、他人のために打つべきだとお客様は口々におっしゃり、自ら周りに喧伝してくれたりするんです。
ウェルカムトゥーザモンキーワルド、モンキーワールドへようこそ! ここは夢と希望の詰まった願いの国、イッツァモンキーワールド!
何ですかお客様、我々の提供するオクスリが信用ならないというのですか? 何を根拠にそんなことをうのですか? これは国も政府も製薬会社も国際機関までもが認めた素晴らしいオクスリですよ? そんなものが信用ならないなんて、さてはあなた、陰謀論者ですね? あることないこと騒ぎ立て、人びとの不安を煽る、いてはいけない人間だ。
なに? データが合わない? 効果が怪しい? 異物が混入していた? そもそも、何故打たなければならないのかですって? まったく、あなたのような人は、頭にアルミホイルでも巻いて、社会の隅っこで道端に落ちた石ころのように暮らすべきですね。そんなことをいう人間に、この社会では席は用意されていないんです。ほら、あなたが気づかないうちに、人びとから冷たい目で見られるようになってますよ? これからはお店にも入れなくなって、買い物一つ出来なくなりますよ? だからオクスリを打ちましょう。なんたってオクスリはタダなんですから!
ウェルカムトゥーザモンキーワールド! 私たちはお客様の気持ちが変わり、遊びに来るのをお待ちしております。なんたって私たちは、とっても心が広いのですから!




