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32話 魔女の過去(3)

 

 マザーさんに言われるがままに着いて行った先にいたのは40人ぐらいの女の子達。

 パッと見た限りその大半がアグネスよりも年上だと思う。


「マザー、その子が新しい子なのね?」

「そうじゃよ。ほれ、自己紹介するとよい」


 マザーさんに背中を押されけど、アグネスはこんなにも大勢の人達に見られたことがないから、思わず緊張して俯いてしまった。けれどなんとか絞り出すように声を出そうと頑張ったの。


「あの、その……アグネスは、アグネスなの」


 アグネスがそう言うと、マザーさんに真っ先に聞いていた年長らしき子がアグネスへと近づいて来た。


「アグネスね。私はエバノラって言うの。よろしくね」


 清楚な女性といえばこの人の事を言うのであろうと思うほど、綺麗で清純そうな人だった。

 年は14歳らしいけど、すごく大人っぽい感じ。

 あんな感じに成長してみたいと少し憧れるなぁ。


 エバノラさんに続いて他の人達も自己紹介してくれたけど、残念ながらあまりにも人が多すぎて覚えきれなかった。

 徐々に覚えていこうと思う。


 こうしてアグネスはマザーさんの家族(?)になった。


 家族であり師弟の関係というのが正しいと思う。

 毎日決められた時間に起き、水汲みなどのそれぞれ割り振られている仕事を行った後、アグネスを含めた7人はマザーさんから魔法を使えるようになるための訓練を受けることになった。

 ちなみに他の人達は内職をしたり外で働きに行ったりして、夜の時間にだけマザーさんから魔法が使えるようになるための手ほどきを受けることになっている。


 アグネスには魔法の才能があるからと、他の6人と同じように訓練することになったのには首を傾げたけれど、その理由を聞いて少し納得した。


「魔法を使えるようになるためには、まず自身の魂を明確に感じ取り、そしてこことは違う世界へとその魂を伸ばす感覚を掴まないといけないのじゃ。

 魂を違う世界へと繋ぎ、そこから魔素を引き出さないと魔法は使えるようにならんのじゃよ。

 アグネスは死にかけていたせいか、無意識に魂を違う世界へと伸ばしておった。

 ワシがお前さんを拾ったのはその感覚を掴む才能があると思ったからじゃね」


 そんな事言われてもアグネスにはその感覚がよく分からないけど、それでもキチンとした根拠があるのなら納得できる。

 ただ――


「あの、アグネスはもっと働かなくていいんですか?」


 来たばかりの新参者が、他の人達が働いている最中にお金を稼がず部屋でただ訓練をすることに焦燥感を覚えるのだ。


「アグネスはここにいる子達と同様に魔法を使えるようになるのが先じゃよ。

 使えるようになれば、お主が今から地道に稼ぎに行くよりも何十倍もの利益が出せるようになるからねぇ」


 そう言われてしまえば納得するしかないのだけど、本当にそれでいいのかと不安にもなる。


 だけどその不安は杞憂だった。


「あ、繋がった……」

「ふむ、やはり一番最初に手解きしたエバノラがまず使えるようになったの。

 1年かかったが、まあそんなもんじゃね」


 そうして魔法を使えるようになったエバノラさんは、マザーの言った通りその力を使って働き出したら他の人達の何倍もの効率で動けていた。

 飼っている家畜の世話を今まで10人ほどで行っていた事を、たった1人で出来てしまうようになったのだ。


「魔法を体感するのに丁度いい作業じゃろ。慣れてきたら本格的な魔法を教えるから頑張るのじゃよ」

「ええ、分かったわマザー」


 すでに超人的な動きが出来ているというのに、あれでまだ魔法を習いたてというのだから凄い。

 魔法でどの程度役に立てるのかと思ったけど、これなら確かに魔法を覚えることに集中した方がいいよね。


 でもそうなると魔法が使えるように訓練し始めたアグネスは、あと1年くらいは何も出来ないのか……。

 正直ちょっと焦るけど、エバノラさんだって1年かかったって言ってたし地道に頑張っていこうと思う。


「よし、ボクも繋がるようになったよ」

「今度はローリーか。お主は勤勉だから寝る間も惜しんで訓練していたし、使えるようになるのが早かったのも当然じゃね」


 ローリーさんは働き者。

 誰よりも早く起きて率先して水汲みなどを行い、マザーさんから魔法が使えるようになる手ほどきを受け終わった後も黙々と自主練して夜遅くまで起きている。


「「た、多分繋がった?」」

「お主らはホント自信無さげじゃの。安心するとよい、ちゃんと繋がっておる」


 双子のイザベルさんとマリさんは気弱そうにしながらも、マザーさんからお墨付きが出ていた。


「うん、出来た」

「これが繋がった感覚?」


 人の事など気にせずマイペースに訓練していたサラさんと、誰よりも小食なビディさんもエバノラさんに続いて数カ月経つころには魔法が使えるようになっており、アグネスだけが取り残されてしまった。


「そんな心配そうな顔をせんでもいずれ使えるようになるから安心するのじゃ。

 魔法が使えるようになったお主らは他の子達も魔法が使えるように手解きしてやってくれ。

 さすがにワシ1人じゃ40人全員にまとめて教えるのは難しかったからの」

「ええ、分かってるわ。ほらアグネス、あなたはまだ習い始めて数カ月しか経ってないのだから焦ってはダメよ。

 私が魔法を使えるようになるのに1年かかったのだから、不安を覚えるならせめて1年間頑張ってからにしなさいね」


 エバノラさんにそう言われてもどうしても不安が消せなかったけど、アグネスは頑張った。

 1年と少し経ってアグネスが魔法を使えるようになるまでこの不安は消えなかったけど、まるで姉のように親身になってくれるみんながいてくれたから、頑張り続けられたよ。


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カクヨム様にて先行で投稿しています。

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― 新着の感想 ―
おかしいなエバノラさん すごくお姉さんにみえる 威張ってらさんじゃなかったんだ、、、(*´∀`*) 、、、て!蒼汰くんがいってました!(高速濡れ衣
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