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19話 王族ですから

 

 〝開かれし地獄の扉〟により伸びてきたリンゴの枝。

 捕まれば【イモータル】達と同じようにあの木の裂け目に入れられ地獄送りになってしまう。


 【イモータル】達の時はゆっくりと引きずり込まれていたから、逃げ出すことが全くできないということはない――というのはさすがに楽観的すぎるか。

 あれが恐怖を煽るためにわざとやっていたかもしれない事を考えると、一気に引きずり込まれてもおかしくないのだから。


「木の枝なら燃やせるはず。[狐火]」


 冬乃から放たれた[狐火]が伸びてきた枝に当たると、意外にアッサリと燃やすことが出来ていた。

 性質としては見たままの木のようだ。


「よし、行けるわね!」

「だが、あれでは燃えても一部だけのようだな。無数に生えている枝をどうにかするのはさすがに無理があるだろう」


 リヴィの言う通り、確かに[狐火]で枝は燃えたけれど、枯れた木の裂け目から伸びているくせに水分豊富なのか延焼せず、当たったところの周囲が焼け焦げるだけだった。


「それでも何もできないよりはマシだよ。ワタシのレーザーブレードでも余裕で斬れそうだけど、下手に近づいたら捕まりそうだし」

「そうですね。わたし達の中に魔法系の遠距離攻撃できるスキル持ちがいれば良かったんですが、誰も持ってません」

「今までそれで問題なかったけど、1人だけしかまともに遠距離攻撃できないのは案外困るものだね」


 咲夜も一応遠距離攻撃できるとはいえ、体力全消費の〝神撃〟だけなので安易に使えないし。


 僕ら以外の人たちも自身に伸びてくる枝に対応に追われつつ、空から攻撃を仕掛けてくる堕天使を迎撃し、さらに――


『〝天より落ちし明けの明星〟』


 【魔王】が時折放ってくる重力攻撃を躱さなければいけないという鬼畜ゲーをやらされていた。

 もちろんミスれば即ゲームオーバーである。


 幸いにも僕が[画面の向こう側]という安全圏内にいるので、冬乃とかが使った【典正装備】のインターバルをリセットしながら【魔王】の様子を常時観測できるから、〝天より落ちし明けの明星〟を使う予備動作に入ったらすぐさまみんなに警告して回避できている。


 オルガが【魔王】に対して[マインドリーディング]で心を読めば確実なんだろうけど、距離が離れているからハッキリと聞こえないし、他の人達の心の声も混ざって聞こえ辛いらしいから確実ではない。


「あの【魔王】、手をかざして数瞬の間をおいて〝天より落ちし明けの明星〟を使うのと、手をかざした後は向きを変えないからなんとか回避できるけど――」


 ――ボキッ


「「「ぎゃああああ!?」」」


「【魔王】を意識しながら枝を避けて、堕天使迎撃するのは難しいよね」


 時間が経つにつれて他の人達の犠牲が増えており、戦える人が減ってしまいマズイ状況だ。


「くそっ、このままじゃジリ貧だ。こうなったらやってやるぜ!」

「ああ、やるしかねえな!」

「そもそも逃げ回ってるのは性に合わねぇ!」


 いくつかのパーティーが一斉に【魔王】へと駆けていく。

 〝天より落ちし明けの明星〟を使っている間は手の向きが固定されてしまうようなので、その隙をついて左右から挟むように突撃をしかけていた。


 堕天使がそれを防ごうとするも、この場にいるのは実力者だけなのであっさりと堕天使達は倒されていた。

 そうなると問題は【魔王】の背後の枯れた木から生えてくる枝が、【魔王】に近づくにつれ密集していて捕まる危険が高くなることなのだけど、その枝すら切り裂いたり魔法で対処していた。


「覚悟しやがれ【魔王】!」


 おおっ! これは行けるか?


『ふん』


 【魔王】は自身に迫りくる剣に対して鼻で笑うと、あっさりとその剣を腕で受け止め金属音を慣らしていた。

 まるで咲夜が[鬼神]を使っている時のような体の頑丈さだった。


『その程度で私が切れると思うなよ。それと――』

「「「うわあああああ!!?」」」

『武術は王族の嗜みだ』


 ……嘘でしょ?


 【魔王】に接近出来た8人が殴られ蹴り飛ばされと、あっさりやられてしまった。

 王族って護身術を超えて、敵を制圧できるレベルの武術まで学んでるものなの?


 いやそれは置いとくとして、眷属大量召喚、確殺攻撃、重力攻撃なんてどれか1つとっても通常の【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】並みの能力なのに、尋常じゃない防御力に近接戦闘までできるなんてチートじゃないか!?


「本当にどうやってあれを倒せばいいんだ……」

「正直まるで見当もつきませんよね」

「全くだわ。ハッキリ言って今逃げ回ってるのだけで精一杯よ」

「う~ん、咲夜が〝神撃〟で攻撃する、とか?」

「……隙を作らないと避けられそう」

「周囲の人達もいっぱいいっぱいな状況だし、割とピンチ?」

「呑気な事言ってる場合か。あ、だが金の紋章持ちの者は【魔王】に近づいて攻撃しているな」

『でも攻撃はしているのですが、多少ダメージを与えられるだけで受けてるダメージの方が多そうなのです』


 今【魔王】に攻撃を仕掛けている人達もやられるのは時間の問題のように思えるけど、幸いにも【魔王】の気を引き付けてくれているお陰で〝天より落ちし明けの明星〟は使って来ない。

 あれは使用するのにある程度()が必要なのかもしれないな。


 これは少し無理してでも【魔王】に近づいて波状攻撃で畳みかけるべきか?


 そう思ったのは僕だけではないようで、周囲の冒険者達も堕天使や枝を躱しながら【魔王】へとドンドン近づいて行った。

 下手に距離を取るよりも近づく方が、あの【魔王】を討伐する上での最適解か、と誰もが思い始めた時だった。


『ふっ』


 【魔王】が再び笑みを浮かべた。


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まさか全員即死攻撃もインターバル短し?
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