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14話 数の利

 

 【魔王】が【典正装備】を扱えるようになったことに少なからず僕らは動揺してしまった。

 周囲の冒険者や軍人達も先ほどまで【魔王】を倒せた事に喜んでいたのもあり、その落差に余計に動揺していた。


『しっかりするんだ! 敵は1人。しかもさっきまでと違い、人間サイズになっているんだ。

 数の利を生かして圧倒するんだ!』


 拡声器ごしに響き渡る指示役からの声に、ハッとした冒険者や軍人達が動き出す。が、しかし――


『数の利か。ああ、そうだな。()()()()()()()。〝堕天使召喚〟』


 真っ赤に染まった空に無数に浮かび上がる漆黒の穴。

 そこから何千、いや何万もの仮面を被った一対の黒い翼を持った人型、堕天使が現れた。

 数の利はアッサリと逆転されてしまった。


『蹂躙しろ』


 【魔王】のその一言で堕天使達は一斉に僕らに襲いかかってきた。


 軍の人達はともかく、僕ら冒険者は陣形などあったものではない。

 完全に乱戦となってしまい、迫りくる堕天使相手にただひたすら戦わなければならなくなった。


「先輩、避難を!」

「分かった。[画面の向こう側]」


 乃亜に促され、素早く僕は異空間へと退避。


 そのわずかな間に、おそらく金の紋章持ちである人達から放たれた色とりどりのレーザーみたいな攻撃が堕天使をまとめて葬っていた。

 だけど相手の数があまりにも多すぎた。


 何百体もの堕天使を一気に倒すことができたが、何万といそうな堕天使達のせいでまるで減った気がしなかった。


「咲夜もやる」

「私もいくわ」

「それなら衣装チェンジするね」


 咲夜と冬乃が何をするか察した僕は、すぐさま咲夜のコスプレ衣装を遠距離特化の()()()巫女服に、冬乃の衣装を玄人用メイド服に変更する。


 玄人用メイド服:あらゆる能力が20%上昇する

 玄人用巫女服:遠距離攻撃の威力を35%上昇


 玄人用メイド服は【(バク)】の時も使ったけど、玄人用巫女服も実はあの時にはすでに強化されていたコスプレ衣装の1つ。

 あの数では焼け石に水かもしれないけど、それでも3割以上も強化されるなら使わない手はない。


「〝神撃〟」

「〈解放(パージ)〉」


 2人が一斉に堕天使に向かって攻撃する。

 [鬼神]の本気モードになった咲夜から放たれる光線や、〔籠の中に囚われし焔(ブレイズ バスケット)〕、〔業火を(スペリオル)育む薪炭(フューエル)〕、〔溶けた雫は(バーン オブ)素肌を伝う(キャンドル)〕の【典正装備】を3つも同時に使用した冬乃の炎攻撃は凄まじく、二千体以上の堕天使を撃ち落としただろう。

 もっともその程度で殲滅できるような数ではないが。


 それでも数は一気に減った。


「すぐ回復させるね」

「ありがとう蒼汰君」

「お願い、蒼汰」


 [画面の向こう側]で退避していたけれど、またすぐに出てきた僕は咲夜を回復させるべく行動する。

 冬乃の方はスキルのスマホで[チーム編成]の〈武具〉の箇所で〔籠の中に囚われし焔(ブレイズ バスケット)〕を再装備させてインターバルを消すだけなので、外に出る必要はないのだけど、半紙である〔穢れなき純白は(エナジードレイン )やがて漆黒に染まる(レスティテューション)〕と筆の〔太郎坊兼光(ショート リヴド)破解(レイン)〕を組み合わせて使用する際には直接相手を筆で撫でないといけないので仕方がない。


 咲夜自身が[治癒術]の派生スキル[瞬間回帰]で体力を完全回復できるとはいえ、1日1度しか使えない以上、僕が回復させてあげられる余裕があるなら僕が動かないと。


「咲夜、あと9回、最悪全部使ってもいいから」

「分かった」


 〔穢れなき純白は(エナジードレイン )やがて漆黒に染まる(レスティテューション)〕のストック枚数の上限は10枚。

 HPや体力を吸い出し貯蓄しておけるという能力の性質上、すぐにストックは作れないので無くなれば今日はもう使えないと思っていいのだけど、こんな無数の堕天使を前に下手に温存なんてしている余裕はない。


 冬乃にインターバルリセットでどんどん〔籠の中に囚われし焔(ブレイズ バスケット)〕で炎弾を撃ってもらっても、こっちはこっちで今の火力を維持出来るのは〔業火を(スペリオル)育む薪炭(フューエル)〕の制限時間の5分までなので余裕があるとは言えないし。


 他の人達も必死に堕天使を攻撃しているけれど、残念ながら相手の数が多すぎて中々減っておらず、咲夜達ほどの殲滅能力はなさそうだった。

 とはいえその咲夜も自身の体力を全消費してるし、冬乃は時間制限付きだからこその殲滅能力だけど。


 そんな2人を脅威に感じたのか、近づいて来れた数体の堕天使が一斉に僕らに向かって襲ってきた。


『『『■■■■■』』』

「先輩達に手出しはさせませんよ!」


 そう言って初級羊パジャマを着た乃亜が僕らを堕天使から守ろうと前に出る。


 恰好は物凄くこの場に即わないけど、被ダメージを30%減少させるその効果は盾役の乃亜とは相性が良い。

 乃亜は剣や槍など様々な武器を持つ堕天使の攻撃を、ダメージをほとんど受けずにいとも容易く受け止めていた。


「……ん」

「はあっ!」

「任せろ!」


 オルガ、ソフィ、オリヴィアさんの3人は乃亜に攻撃しようとした堕天使や、攻撃を受け止められて隙だらけの堕天使へと各々攻撃。

 3人には人数制限の関係上コスプレ衣装でパワーアップしてないけど、それぞれの【典正装備】で強化しているからか、堕天使を一撃で倒していた。


「倒せないことはない、って感じではあるけど……」


 空を見上げるとまだまだカラスの群れのように大量に飛んでいる。


 ここまで眷属の数が多いと召喚している本体を狙いたいところだけど、先ほど巨大な【魔王】を一撃で倒した〔乗り越えし苦難は(ソード オブ)英雄の軌跡( ザ ブレイブ)〕は長いインターバルがあり使えないから普通に倒すしかない。

 あの装備のインターバルの長さは、〔典外回状〕を除けば過去最長の3日もある。


 当然この情報は全体に知れ渡っているので、もう〔乗り越えし苦難は(ソード オブ)英雄の軌跡( ザ ブレイブ)〕が使えないことは分かっている。

 分かってはいるはずなのだけど、この絶望的な光景のせいか何とかならないのかという目が僕に向けられていた。


 無理なものは無理だ。

 なんとか堕天使を減らして【魔王】を攻撃できればいいのだけど……。


『〝天より落ちし明けの明星〟』


 【魔王】が黙ってこの状況を見ているわけもなく、次の攻撃が繰り出された。


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

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― 新着の感想 ―
とても緊迫感あるのに なぜだ!蒼汰くんの習字道具の使い方に エロさを感じちゃう私はへんたぃ 墨で汚して、ふででなぞるだなんて、、、
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