1話 ポイントの内容
病院から退院した後はあれよあれよという間に話が進んでいき、以前にもあったように【魔王】対策会議に今回はアメリカで参加した。
目を覚ました翌日に1日検査した後次の日には退院だったので、起きてから3日しか経っていないんだけどなぁ。
1週間昏睡状態だった人間をそんなにすぐに退院させるのはどうなんだろうと思わなくもないけど、どうやら目覚めたらすぐに活動できるように治療系のユニークスキル持ちが何人か来て、体だけはある程度健康を維持していてくれたらしい。
普通ならそんな貴重かつ優秀なスキル所持者に治療を頼めば少なくとも8桁はお金を取られるし、現在はダンジョン前で魔物の間引きが行われているので治療系スキル持ちも駆り出されているはずだけど、僕が【魔王】とすぐに対峙できるようにする事の方が重要だということで、僕は一銭も払う事無く治療を受けられた。
ありがたくて涙が出てくるね。
家にも帰れないし、またすぐに【魔女が紡ぐ物語】と対峙しなければいけないだなんて大変なんて言葉では言い表せれないけど、【魔王】が提示した期限まで2週間切っている今、動かないわけにはいかない。
「そのための会議だったけど、各国の精鋭と一緒に金以上の紋章持ちのみがダンジョンに入って【魔王】に挑むって話になるとはね」
【玄武】の時から利用していた宿泊施設の部屋で、僕らはため息を吐きながら会議でどんな話になったか話していた。
「残念ながらわたし達は銀で、金以上なのは先輩と咲夜先輩の2人だけですから。また一緒に行けないのですね……」
「クロとシロの時はダンジョンの外だったので一緒に行動できたけど、“嫉妬”の魔女と“暴食”の魔女の時は限られた人間しか試練に挑めなかったもんね」
「そのどちらかでも挑むことができたら金の紋章になってたかもしれないので残念です」
そのどっちにも挑んでしまったせいで紋章がさらに進化してしまった僕としては何とも言えない。
しかも紋章が成長することになったポイントの内容が物凄く納得いかないから余計にだ。
・【魔女が紡ぐ物語】討伐 10万ポイント
・全ての【四天王】の【魔女が紡ぐ物語】に挑む 40万ポイント
・全ての【四天王】の【典正装備】を自力で獲得する 100万ポイント
・サラお姉ちゃんの嫉妬を一身に受ける ∑(゜Д゜)ユウシャ!? 100万ポイント
・ビディお姉ちゃんのご飯の誘惑に耐える ∑(゜Д゜)ユウシャ!? 100万ポイント
・お姉ちゃん達を手元で保護 (; ゜ ロ゜)ユ!( ; ロ゜)゜ ウ!!( ; ロ)゜ ゜シャー!!! 1000万ポイント
【魔女が紡ぐ物語】を倒したり【四天王】に挑むよりも魔女関連の方がポイントが高いところが余計腹立つ。
そんなんで勇者認定されて紋章がレベルアップしているのだから、何とも言えない気分でいっぱいだ。
あとやっぱり顔文字はふざけてるな!?
同じ100万ポイントでも顔文字があるのと無いのがあるのがその証拠じゃないか。
【四天王】の【典正装備】だけ特殊なのか条件次第で他者に譲渡可能なのだから、自力で全て手に入れたら高ポイントなのは分からなくもないけど、どう考えてもこっちの方が難しくてポイントが高くてもおかしくないだろうに。
「仕方がないので先輩が【魔王】に挑んでる間、わたし達は日本に戻って魔物を間引いておこうと思います。
【魔王】を倒した後でも、魔物が集まりすぎて迷宮氾濫が起こらないとも限りませんから」
「そうよね。最悪【魔王】を倒しきれずに時間切れで魔物が出て来る可能性だってあるんだし、その方が良さそうね」
冬乃がそう言うとオリヴィアさんは顎に手を当てて頷いた。
「ふむ。それなら私は一旦イギリスに帰るとするか。鹿島先輩と共に同行できないのであれば、故郷の平和に貢献した方が良さそうだしな」
「あ~ワタシもオリヴィアと同じように、このままここで魔物でも間引いてることにするかな」
オリヴィアさんに賛同し、ソフィも自分の生まれ故郷を少しでも守ることにしたようだ。
「……ボクは日本に行く」
「ロシアはいい、の?」
「……ボク1人増えたくらいじゃ大して変わらないし、特に思い入れもないから守りに行こうと思わない」
ドライなセリフだけど、オルガの生い立ちを考えると仕方がないのかな?
「……蒼汰達が帰る場所は守っておくから安心して」
「もちろんわたし達だって頑張りますからね!」
「蒼汰達は余計な事は気にせず【魔王】と対峙できるよう完璧に守っておくから安心して言って来なさいよ」
オルガ達3人は日本へと戻ると決まった。
「ん、頑張ってくる。蒼汰君は咲夜が守るから安心してほしい」
「ありがと咲夜。まあ虹色の紋章を持ってるって言っても、僕自身が戦えるわけじゃないから凄く助かるよ」
さて、これで全員どうするか決まったわけだけど、ハッキリ言って僕も帰りたいです。
ううぅ……。家に帰ってゴロゴロしながらソシャゲで遊んでいたいのに、それが許されないのが凄く悲しいよ。
――プルルルル
ん、電話?
ラインの無料電話からじゃないって珍しいな。誰からだろう?
そう思いながらスマホの画面を見ると、先ほどの会議で緊急時のために連絡先を登録しておくように言われた番号からだった。
さっきの今で何が――って緊急時に来る連絡って何があったんだ!?
「はい、もしもし」
僕は慌ててその電話を取ると、そこから信じられない情報が飛び込んできた。
【魔王】がダンジョンの外に出てきたというあり得ないものだった。
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