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37話 【獏】

 

『4人エントリーが完了しました。準備はよろしいですか?』


 再び空間内に響く機械音声。

 実は咲夜が来た時にも同じ音声が流れていたけど、虚しさと最終試練の準備をしていたから聞き流していた。


「みんな準備はいいね?」

「大丈夫」

『うむ……。着慣れないが戦いが始まれば気にならなくなるか』

『このような衣装に袖を通したのは初めてだの』


 僕以外の3人はコスプレ衣装を着ており、着慣れている咲夜はともかくクロとシロは少しソワソワとした様子だった。

 ……今更だけど、コスプレが趣味じゃない人がコスプレ衣装を着慣れてるって中々無いよね?


 それはさておき、今3人に着てもらっているコスプレ衣装だけど、咲夜には()()チャイナ服、クロには()()()執事服でシロが玄人用メイド服だ。


 今月分の課金をするまでは強化された衣装はメイド服だけだったのだけど、1週間前の[有償ガチャ]で〖[カジノ]のメダル5万枚〗と〖衣装ガチャのコイン100枚〗により、[衣装ガチャ]150連回したお陰で、普段使っているコスプレ衣装は大抵強化された。


 改めて見るとコスプレ衣装の細部が変化しているのが分かり、まるで霊基〇臨したかのようでちょっと面白い。


 まぁ見た目よりもその効能の方が凄いのだけど。


 ・中級チャイナ服:脚力が50%上昇

 ・玄人用執事服:器用度150%上昇


 チャイナ服は20%から50%、執事服は100%から150%と中々の上昇率だ。

 戦闘になったとしても前よりも大幅に強化されているので、装備としてかなり期待できそうだ。


 さて、準備は整った訳だけど鬼が出るか蛇が出るか、いざ!


「準備できました!」


 覚悟を決めて僕は空間内に響くように声を上げる。


『了解しました。最終試練への道が開かれます』


 するとその機械音声が流れると同時に〚EXIT〛の扉の横に、もう1つ扉が出現した。

 僕らは新たに出現した扉へ向かうと躊躇なくくぐる。


 扉の向こうにあったもの。それは――


『……モグモグモグ。………………うっぷ。……はぁはぁ、モグモグモグ』


 涙を流しながら苦しそうに【玄武】の時に地面に大量に生えていた果物を一心不乱に食べる、鼻の短い象をデフォルメした小柄な生物がそこにいた。


「あれは夢を見るたびに現れた象?」


 毎日毎日異常なまでに食欲を刺激させられるのを耐えないといけない夢だったけど、まさか最終試練の場があの夢と同じ場所とは思わなかった。


 ――ぐぅ~


「うっ、果物が遠くにあるのに、毎日食べてたから見ただけでお腹が空いちゃう……」


 咲夜がお腹を押さえながらよだれを垂らしていた。

 毎日夢で見ていたせいで、パブロフの犬のように見ただけで食欲を刺激されるようになってしまったようだ。

 かく言う僕も口の中で大量によだれが分泌していて、気を引き締めていないと果物に向かって走ってしまいそうだった。


「さて最終試練だけど、あの象っぽい何かを倒せばいいのかな?」

「象というか夢の中だし【(バク)】じゃない、かな?」

『ん? 【(バク)】とはなんだ?』

「【(バク)】は夢を食べる妖怪のこと。悪夢を食べる存在と言われてる」

『ほう、夢にまつわる存在ということか。であるなら此度の【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】はあの【(バク)】ということかの?』


 ああ、言われてみればそうか。

 食べるとイライラする果物に気をとられて、しかもそれを食べないように我慢していたせいであの象――ではなく【(バク)】の印象が薄れていたけど、今回の【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】と呼ばれる存在がいるとしたら、あれがそれにあたるのか。


 うわっ、完全に失念していたよ。

 気付けるチャンスはいつでもあったというのに、夢で見ていたあの【(バク)】が【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】だと気付けなかっただなんて……。

 もしかしたら夢だったから【(バク)】を見ても、起きるとその存在を記憶から薄れさせる能力でもあったのかもしれないけどさ。


『あまり戦いがいのなさそうなヤツだが、あれを倒せば今回の騒動を収束できると思っていいのか?』


 僕がちょっとショックを受けつつ、きっと【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】としての能力だったと思っていたら、クロが【(バク)】へと近づこうとしたその時だった。


 ――ザクッ!


 突然上から看板が降ってきて、僕らの目の前に突き立った。


『うおっ、なんだ。試練の内容説明か?』


 突然現れた看板にクロが驚き、第二の試練のこともあって警戒して少し後ろに下がっていた。


 看板が現れたということは最終試練の内容を掲示しているのだろうか?


 ―――――――――――


 帰れ


 ―――――――――――


「「『『まさかの試練拒否!?』』」」


 さすがにこのまま引き返すことで試練が達成し、アメリカの異変が解決して【四天王】が倒せる、なんてことはないだろう。

 いや、まぁ、今までの引っ掛けみたいな傾向からワンチャンそれがありそうではあるのだけど。


『どうするのだ主よ? もういっそのことここからあの【(バク)】へと攻撃してみるか?』

「う~ん、このまま帰るわけにもいかないし、やるだけやってみようか」


 最終試練の内容を示さないのであれば、目の前の敵を倒すことが解決方法としか思えないから仕方ない。

 僕らの中で遠距離攻撃手段を持つのは本来なら咲夜だけなのだけど、ここは精神世界。


 戦い慣れていない僕が試しにやってみようか。


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

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― 新着の感想 ―
帰れwww これで帰ったらどうなるのかな? ドキドキワクワク
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