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5話 ダンジョン

 

「昨日の今日でダンジョンに潜るのってどれだけいるんだろ?」


 昨日の講習では全員のレベルが1上がったら強制的に戻らされたから、まともにレベル上げも出来なかったし、魔物を殺すことに抵抗があった人以外はやっぱり来たくなるのだろうか?


 もちろん僕はレベルを上げなければ今後の生活に()()()影響があるので、今日の探索で出来る限りレベルを上げたいところだ。


「〔ゴブリンのダンジョン〕が近くにあってよかった。最低ランクのFランクじゃなかったら、とてもじゃないけど1人では入れなかったし」


 ダンジョンはF~Sまでのランクがあり、Dランク以上から一定の戦力がなければ入れない入場制限があるのだ。

 まあ入場制限なんてなくても、E以上のダンジョンで何の能力もない僕が特攻したら死んでしまうか、少なくとも大怪我するだろうから1人では行かないけど。


「それに〔ゴブリンのダンジョン〕なら人型であることを除けば戦いやすい」


 僕はそう呟きながら、昨日講習で取得したIDカードをゲート入り口にかざす。

 ピッと機械音が鳴り、駅の自動改札機のような扉が開いたので中へと入る。


「昨日も思ったけど、ダンジョンって結構きっちりとした造りのところだな」


 〔ゴブリンのダンジョン〕という名称からだと洞窟の様な場所をイメージするけど、実際は幅と高さが4~5m程の広い石造りの通路だった。


 罠がないか警戒しながらダンジョンを進んでいくけど、10分ほど経っても残念ながらゴブリンは見つからなかった。

 すれ違うのは他の冒険者ばかり。

 

 ゴブリンが見つからないのは、他の冒険者が僕と同じようにダンジョンでレベル上げや金稼ぎ目的で来て狩ってしまっているせいだろう。


 2階層以降に行けば出現するゴブリンの数が増えるので遭遇する確率が上がるだろうけど、まだレベル1でろくに戦闘経験のない僕が1人で行くのは自殺行為なので自重する。

 とは言え、このままじゃ何のためにダンジョンに来たのか分からなくなるので、せめてレベル2にはなるよう頑張りたい。


 昨日の講習では全員が効率よくレベルが上がるよう、職員の人が索敵をして必ず1人1体倒せるようにしてくれたけど、見えない敵を探るなんてスキル持ちでもなければできっこないので、足で探すしかないのがツライ。


「はぁ~、どこかにいないかなゴブリン」


 そうため息をつき少し気が抜けた状態で曲がり角を曲がると、ドンッ、と何かにぶつかった。


「わっ」

「ギッ」


 ゴブリンだった。


 ダンジョンで出会いを求めるのは間違ってないかもしれないけど、こんな出会いは求めていない。


「うわっ!?」

「ギギッ!?」


 ゴブリンの方もぶつかった後で僕を認識し、手に持った木の棒を構えてくるので、僕もすぐさま手に持った木刀を構える。


 ダンジョンで魔物と殺し合いをするのにそんな武器でいいのかと思われるかもしれないけど、今潜っているダンジョンは〔ゴブリンのダンジョン〕の名前の通りゴブリンしか出ないので、極論鈍器として使える物を持っていればなんとかなる初心者向けのダンジョンだから問題ない。

 というか、いきなり刀とかちゃんとした武器を買えるほどお金はないです。


「ギー!」


 ゴブリンが片手で木の棒をでたらめに振ってくるので、僕はその木の棒目掛けて水平に木刀を薙いだ。


 小学生程度の身長しかないゴブリンは握力もその見た目通りなせいか、その手に持った木の棒はあっさりと弾き飛ばせた。


「はあ!」


 ゴブリンの手から武器が無くなったチャンスを生かし、木刀をゴブリンへと振り下ろして追撃する。


「グギャッ! ギッ、ガッ……!」


 何度も何度も振り下ろし反撃できなくなるくらい弱らせた後、慎重に近づき包丁をその首に突き立てた。


「ゴボッ」

「ハァ、ハァ、ハァ……」


 生物を殺す感触は2度目でもあまりいい気分ではないけれど、殺すことを躊躇し後悔するくらいなら講習の際に冒険者になることを諦めている。

 実際何人かはどうしても魔物を殺すことができず、冒険者になる事を辞退したくらいだし。


「……ふぅ、疲れた」


 もっとちゃんとした武器があれば、こんな風に木刀で滅多打ちにしてから止めを刺さなくて済むんだろうけど、無い物ねだりをしてもしょうがないか。


 倒した魔物は光の粒となって消えていき、やがてその場には小さい魔石が落ちていた。


「これ1個500円なんだよね。割がいいのか悪いのか……」


 ダンジョンに入って20分ほどで手に入ったと思えば、時給換算なら悪くないかもしれないけど、息が切れる程木刀を叩きつけて手に入った事を考えると労力に見合ってない気がする。


「まあ僕の場合はお金じゃなくてレベルだからいいんだけどね」


 僕はそう呟きながら息を整え、次の獲物を求めてさまよう事にした。


 次々と獲物が見つかる、といったことはないけれど、全10階層の内の1階層ならゴブリンが群れて行動したりしないので、常に一対一で戦えるのが1階層の利点だ。


 結果として、僕は午前8時から午後4時まで8時間歩き回ってゴブリンを9体倒している。

 やっぱり1階層だとゴブリンの数が少ないから見つけづらい。


 いくらほとんどの冒険者が2階層以降で稼いでいると言っても、行く途中で見つけたら当然狩るのだから、ただでさえ少ないのに余計にいなくなってしまう。


「切りよく後1体倒したら帰ろ」


 それでも諦めずに歩き回り、ちょうど僕がいる方向と逆の方を向いていてこちらに気づいていないゴブリンを見つけたので後ろから襲った。

 なんか後ろから襲うとかちょっと犯罪臭しない?


 そう思いながらも楽に倒せるからいいかと、倒れたゴブリンを木刀で滅多打ちにして弱ったところを包丁で止めを刺した。

 うん、行動が完全に狂人だ。


 自分の行動を客観的に見るとかなりヤバいやつだなと思いつつ、ゴブリンが光の粒となって消えていくのを見届けた時だった。


 ――ピロン 『レベルが上がりました』


 レベルアップの告知とともに目の前に突如として出現したステータスボード。

 レベルが上がる度にこれが出て来るのは邪魔なんじゃないかと思ったけれど、よくよく見ると見逃せないある個所が変わっていた。


「スキルが、変質してる!?」



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― 新着の感想 ―
[一言] ありゃ?この世界のボブリンは弱いですね。 自分の認識しているボブリンは体は子供だけど力は大人以上だったので。 因みにゴブリンって言うと雑魚っぽいけどボブリンって言うと可愛く感じるのは自分だ…
[良い点] モチベがソシャゲの為だというところ よくよく考えると実際にそういう理由で 働いている人間もいるから 主人公の行動に説得力がある点
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