表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
594/677

24話 補充要員


≪彰人SIDE≫


 あの【Sくん】騒動から地上はボクのようなインキュバスにとって前よりも過ごしやすい環境へと変わった。

 と言っても、多少過ごしやすくなっただけでダンジョン内の方がまだまだ快適なんだけど。


 それに加え、今まで頭ごなしにどなりつけ命令してきた老害共は【四天王】に軒並みやられて、割と自由に過ごせるようになった。

 ホントいい事尽くめ、と言いたいところなんだけどな~。


「悪いけど手を貸してほしいのさ」

「アメリカ?」

「その通りさ」

「えー」


 ボクは魔術師の桜に面倒くさ気にそう言うけど、内心では蒼汰の様子を見に行けるのであれば悪くないのかもしれないと思っていた。

 ここ最近蒼汰は忙しそうに動いていて、まともに会ってないからね。


「アメリカには何人かサポートに送り込んでるし、1人すでに蒼汰と同じように試練に参戦してるんだけどダメそうなの?」


 以前どこぞの女装会長に対して接触しようとしてきた外国の工作員達の何人かをインキュバスの力を使って配下にした。

 その時の1人がちょうどその試練に挑めるようだったので、蒼汰達に配慮するようお願いしていたんだけど、桜の口ぶりから察するに……。


「正直言って壊滅状態と言っていいさ。もう3週間経っているのに第二の試練が突破できていない上に、試練に挑んでいる人間が2人しか残っていないんだよ」


 やっぱりね。


「人類詰んだ?」

「そうならない為に彰人にこうしてお願いしてるんじゃないさね!」


 その為にわざわざ頭下げに来てるんだし、ボクと関わりのある桜がボクに依頼するよう接触してきたのは分かってるよ。

 インキュバスなら精神世界への侵入も出来るから、あの赤い石に干渉できるだろうし。

 まあいいさ。


「分かったよ」

「本当さね!?」

「そんな必死に聞き返さなくても、やっぱなしとか言わないから」


 行ってもいいかなぁって思ってたし。


「それじゃあついでに出来ればもう1つお願いが……」

「むしろ()()()がメインだよね? でも、それに関してはボクが出来ることほとんどないよ?」

「いや、大丈夫さ! 間に入ってくれるだけで十分助かるから」

「そう? ならいいけど」


 とは言えボクに出来ることはそのくらいなので、交渉に関しては勝手にしてくれと言いたいけど。


「でもダンジョンから追い出された親族たちは君達に保護されているんだから、交渉するなら自分達でしてもいいんじゃない?」

「いや、緩衝材があるのとないのとでは受け入れやすさが違うのさ。1人賛同者がいるのといないのとでは向こうもハードルの高さが違ってくると思うし」


 そういうものなのかな?


 桜がボク以外のインキュバスにも依頼したいのは分かっていたけど、住む場所が無くなった人達で仕事についていない人ならともかく、ボクのように現代に溶け込んで戸籍もしっかりしている者は今の仕事があるから難しいんじゃないかな?


 たとえ世界が滅ぶとしても、自分の身を犠牲にしてまで動く人達ではないだろうし。

 それでも数人参加してくれるだけでも助かるのは分かるけどね。


 ボクはそう思いながら、早速インキュバス達が住むのに用意された場所へと桜と共に向かった。



≪蒼汰母:筒野瀬(つつのせ)乙葉(おとは)SIDE≫


「もうやだ……。なんであの子あんな危ない事ばかりするの?」

「今回に関してはあの赤い石に干渉できる貴重な人間なので仕方がないと思いますが……。

 少なくとも家庭の事情を鑑みると、やっぱり離婚した時に子供を引き取らなかったのが原因では?

 その時点では魔術師としてブランクがあり、自分1人ならともかく子供を連れて行く事に不安があったのですから、その判断が間違いだったとは言えませんが」


 部下の遠慮のない発言に対し、私はぐうの音も出なかった。


 あの子を元夫に任せた事はあの時点では間違いなかったと思うけど、自分の生活が安定したら即行で引き取れば良かったと今は後悔しかない。

 あの子を放任したあの人であれば、私が引き取ると言えばあっさり分かったと言いそうだし。


「今更タラレバなんて言っても仕方がありませんし、行くなら早く行った方がいいんじゃないですか?」

「あなたは来ないつもり?」

「行ってどうするんですか。筒野瀬係長のような魔術特性を持つ者しかあの赤い石に干渉できないでしょうに」


 私の魔術特性は“魂”であり、それによって精神世界へと入り込むことはできなくない。

 上の連中も、攻略にあまりにも時間がかかり過ぎている上に大勢脱落者が出ている現状では、一早く自体の解決のために干渉できる人間をたとえ世間に秘匿されてる魔術師であっても集めていることも知っている。


 問題はあの場に蒼汰とその恋人達がいる事なのよ……。


「できれば息子たちに私が参戦している事がバレないようにフォローして欲しいのだけど」

「無理ですね」

「一顧だにせずバッサリ切り捨てた!?」


 ちょっ、部下が反抗してくるんだけど!?


「いや、だって係長の息子さんがあの世界を外からも観測できるようにしているせいで、どうあがいても無理じゃないです?」


 そう言われてしまうと何も言えないのだけど、もう少し何か考えてくれないかしら?


「まあ移動には時間がかかりますから、適当に理由をつければいいんじゃないですか?

 昔冒険者をやろうとした時に身に着いたユニークスキルのお陰とか言って」

「……まあ、その辺りが無難なところかしらね」


 何だかんだで意見を出してくれたのはありがたいわ。


「それじゃあ私は他にも精神世界に入れる人達と一緒に行くことになるから、後の事はよろしくね」

「こっちの人数が多少とはいえ減るのが不安なところですが、あっちが優先ですからね。なんとかやっていきますよ」


 ダンジョンの監視などの業務を引き継いだ私はアメリカへ行く準備をすることになった。


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 母親ヅラするには色々と遅くない?
[一言] え、、、、、、、、、、、、、、、 ふた・・・り???
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ