22話 10秒で倒せ
乃亜がアイマスクを外した10秒間で決着は着いた。
「なっ、なんだこりゃ!?」
「今です!」
乃亜に言われ、乃亜と共に3人がカティンカに向かって行く。
「くっ、状態異常への対策はしてあるはずなのに、なんで動けねえんだ!?」
乃亜の〔閉ざされた視界・開かれた性癖〕は身に着けていた時間分の強力な麻痺効果を10秒間与える【典正装備】であり、並大抵のスキルや魔道具では防ぐことは無理だ。
なにせあの謙信にすらも効いたのだから。
カティンカが動揺している間に乃亜達は接近しており、後少しで攻撃が当たるという時だった。
「舐めんな! [シャドウハンズ]!」
「なっ!?」
カティンカの周囲に5つの真っ黒な手が現れ、それぞれの手が持った戦斧が乃亜達を弾き飛ばす。
「は、思った通りだな。俺自身は動けなくてもスキルは使えるぜ。そんじゃあ、これでも喰らいな!」
おそらくあのスキルは片腕だけだと見た者達が手数で押してきて劣勢になった時に、意表をついて倒すために新しく手に入れたスキルなんだろう。
前に戦った時は使って来なかったし、もしも元から持っていたら腕を斬られることはなかっただろうからね。
そのカティンカが〔マジックポーチ〕から取り出したのは合計20本の戦斧。
影の手1つで4本の戦斧を握っており、この後何をするのかは以前これで僕が危うく大怪我するところだったのですぐに分かった。
「乃亜、〔拡散する運命の器〕!」
「あ、はい!」
乃亜はすぐさま黒いカプセルをカティンカへと投げつける。
投げられた黒いカプセルは乃亜自身が〔武神・毘沙門天〕などで強化されているために目にもとまらぬ速さに加え、カティンカ自身が動けず20本の戦斧を今にも投げようとしていたために、それは避けられることも弾かれることもなくそのままカティンカへとぶつかった。
「あっ? こんなもんで怯むと思うな!」
「全員突撃!」
戦斧が乃亜達に向かって投げつけられた。
だけど僕が乃亜に何を投げさせたのか他の3人も分かっているからか、突撃の指示に疑問に思う事無くカティンカが戦斧を投げたにもかかわらず全員が突撃する。
「捨て身の特攻か? なっ、外れただと?!」
カティンカが直線的に投げた戦斧も、ブーメランが戻ってくるように乃亜達の背後から襲うような軌道の戦斧も全て、乃亜達が何もすることなく外れたことにカティンカは驚愕していた。
「あの時の借り、ここで返させてもらう!」
「容赦なんてしないわよ!」
「倒れて」
「これで10秒です!」
オリヴィアさんの剣で袈裟斬りされ、冬乃の脚がカティンカの胴体へと突き刺さりくの字に曲がったところで、その頭に咲夜の拳が落され地面に倒れそうになった瞬間、乃亜の大楯がカティンカの背中に叩きつけられた。
「ぐはっ! く、くそっ……。もっと戦いたか――」
カティンカが何かを言い切る前にその身体が光ったと思ったら、すぐにその光が霧散して鬼の姿から元の人間の姿に戻っていた。
「わたしの持つほぼ全ての【典正装備】を使ってようやくでしたね」
「時間をかければそこまでしなくてもよかったかもしれないけど、ソフィアさん達が心配だからね。
でもまずはカティンカを拘束しておこうか。はい、ロープ」
「うむ、分かった」
僕は[画面の向こう側]を解除して外に出てオリヴィアさんにロープを渡してカティンカを拘束してもらう。
「ふぅ、疲れました」
「頑張った」
乃亜と咲夜はどちらも疲弊している様子だった。
〔武神・毘沙門天〕や全力で[鬼神]を使って体力が消耗しているからね。
2人が疲れているのは明らかなので、僕は〔太郎坊兼光・破解〕と〔穢れなき純白はやがて漆黒に染まる〕を取り出し2人を回復させる。
「ありがとうございます先輩」
「ありがと」
2人にお礼を言われた後、縛り上げられて倒れているカティンカを見る。
カティンカ達よりも前に襲ってきた“平穏の翼”の2人は両手両足を拘束しただけだったのに、カティンカは全身グルグル巻きで念入りに拘束されていた。私怨かな?
「こやつは[シャドウハンズ]のスキルで動けなくても攻撃してこれるからな。そう簡単に逃げられないようにしておかねばいけないんだ」
オリヴィアさんにそう言われ納得した。私怨かなとか思ってごめんよ。
「〔マジックポーチ〕も取り上げたしこれで問題ないだろう。
これは私が後方に連れて行くから、鹿島先輩達はソフィアの援護に行ってほしい」
そう言ってオリヴィアさんはズルズルと引きずるようにカティンカを連れて行った。痛そうだった。
やっぱり私怨入ってませんかね?
前に弱いとか言われたり雑に扱われたことに少し怒っているんだろうか?
まあ少なくとも止めを刺したりはしないだろうからカティンカはオリヴィアさんに任せるとして、今はソフィアさん達の方だ。
サイラスという男がどういった戦闘をするのか全く知らないし、ソフィアさんにとって因縁の相手なので無茶したりしていないか心配だ。
オルガやアヤメもいるとはいえ、カティンカ並みの戦闘力があるかもしれない事を思うと急いだ方が良いだろう。
「みんな、ソフィアさん達の所に行こう」
「「「はい!」」」
ソフィアさん達の戦闘は激しくどこにいるのかは分かるけど、戦闘を始めた時よりも離れた所に移動していた。
全速力、では体力を消耗するので駆け足程度の速さで僕らはそこに向かった。
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