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21話 止まらないカウンター

 

「では私は他の者に後れを取らぬよう、ガチャを回さねばな。鹿島先輩、案内助かった」

『あ、うん。気にしないで』


 強制的に連れられたから仕方なく案内しただけだけど、それでも〝鍵〟が1つ手に入ったのだから案内した甲斐があったよ。


 おっと。オリヴィアさんに話しかけられたのでそちらに視線を向けてしまった。

 

 すぐさまウサギと猫へと向き直ると、出会った頃と同じく楽し気に笑うウサギとふてぶてしい表情の猫がそこにいるだけだった。


 妙な笑みを浮かべているように見えたけど気のせいだったかな?


「さて回すか」


 僕を地面に降ろしたオリヴィアさんは床に座り込むとスマホを操作し始めた。

 とりあえず乃亜達の様子でも見に行こうかな。


『僕は乃亜達の所へ行こうと思うけど、オリヴィアさんはどうする?』

「ん? いや、今は移動する手間も惜しいし、1回でも多くガチャを引きたいからな」

『なるほど。なら仕方がないね』


 その気持ちは凄く分かるので無理強いは出来ない。

 とりあえず乃亜達のガチャの結果が見たいから向こうに行こう。


『ん、なんだあれ?』


 乃亜達の元へと行こうとしたところで、先ほどまでは無かったものが宙に浮かんでいる事に気が付いた。

 それは巨大な半透明のスクリーンであり、そこには数字が表示されていた。


『あれかい? あれは〝死亡カウンター〟だよ』

『この世界で死んだ人間の数があそこに表示されるニャ』

『はっ?』


 ウサギと猫はサラリと何でもない事のように言ってきたけれど、そんな軽く言っていいモノじゃないよ。

 だって今も有り得ないペースで数字が増えていっており、まるでデジタル時計みたいに毎秒数字が変わっているし、現在表示されている数字が何よりもおかしい。


『嘘でしょ!? だって今2800なんだよ!』


 それが本当なら、三千人ほどがこの世界に入り込んでいるはずだから、もう大半の人間は死んでしまっているという事になってしまう。


『そんな……、この世界で死ぬ理由なんてよっぽどな事が無い限り無いはずじゃ……』


 そんな困惑している僕にウサギと猫は指を立ててチッチッチと横に振ってきた。


『ちゃんと話を聞いていたのかな? 猫がちゃんと言っていたよね。()()()()()()()()スマホゲームだって』

『キャラクターの服が変わった時、自分達の服も変わったニャ。何でそれが一方通行だと錯覚していたニャ?』


 あっ……、完全に聞き流していた。

 服が変わる程度のふざけた機能としか認識していなかったよ。


 つまりリアル側でHPの最大値が減れば、自分の操るキャラクターにも影響が出るということか。


 だけど全員が全員HPギリギリまで使って死んでしまうのはいくら何でもおかしい。

 自分のキャラクターのHPが減っていることに気付く人だっているだろうし、それに気づければ諦めて外に出ることだって出来るはず……。


 そんな僕の疑問を察しているのか、ウサギと猫が続けて何かを説明しだす。


『それに気が付いていたかな? 周囲の人間が徐々に〈ガチャ〉に対する欲求が増していったことに』

『えっ?』


 そんな変わってたかな? 今さっきオリヴィアさん達の様子がおかしくなったばかりじゃないの?


『あ、これ自分が基準になっているせいで、周囲のガチャ欲が大した事ないと錯覚しているよ』

『まあいいニャ。ついでに言うならシステムが徐々に解放されるのも〈課金〉への敷居を下げる為ニャ』

『もっとも、そこまでしなくても一度でも〈ガチャ〉を回せばその欲は増大していくし、〈ガチャ〉を回した数だけさらに増大するから結局は〈課金〉することになったけどね。ここがどこだと思っているのかな?』

『ただの【アリス】の世界じゃないニャ。“強欲”と“傲慢”の魔女が君臨しているのニャ。そんな試練をお前は知っているはずニャ』


 あっ、“色欲”のエバノラと“怠惰”のローリー!

 あの2人の【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】はその名に関わる試練や敵だったし、そもそも“強欲”と“傲慢”ならつい昨日体感させられたばっかりなのに……!

 この2匹に言われるまで何故か頭に過ぎりもしなかった……。


『“強欲”と“傲慢”によって増大するガチャ欲はもう止められないよ。理性が溶けてガチャを回したい欲求にかられてまともに判断もできないだろうね。

 この世界から出ようなんて思いもしないんじゃないかな』


 2匹から聞いた話を整理した瞬間、僕は最悪の結果を想像し、それが現実になることが宙に浮かぶカウンターに嫌でも気づかされた。


 〈課金〉によるHPの減少。

 そしてターン制の戦闘。

 その2つが示す結論は宙に浮かぶスクリーンの数字が如実に表していた。


『まずい!』

『『もう手遅れ(だよ)(ニャ)』』



≪乃亜SIDE≫


「ポイントが足りません! もっとガチャを回したいのに!!」

『落ち着いて乃亜!』


 誰かのわたしを呼ぶ声が聞こえてきた気がしますが、今はそんな事気にしていられません。

 課金するHPも1しかなくなったせいでガチャを回せなくなった以上、〈クエスト〉を達成してポイントを稼がないと!


『ダメだみんな!? その状態で敵と戦ったら死んじゃうよ!』


 〈クエスト〉は新しい敵と戦ったり、何体倒したかで貰えますからね。

 今まで行った事がない場所へ行きましょう。


 何かがわたしの足を引っ張ったような感覚がしましたが、気にしている場合ではありません。


『モウッ?』


 黒い渦を潜ると早速敵を1体発見しました。ふふっ、幸先がいいです。


 ――エンカウント 1体のミノタウロス(弱)が現れた!


『やああっ!!』


 これまで通りスマホで〈攻撃〉を指示した後、何度も見たようにわたしのキャラクターが一度だけ敵を攻撃し、今度は敵がわたしのキャラを――


『モウッ!』

『きゃああああっ!!』


 ミノタウロスの一撃でHPがあっという間に0になってしまいました。


「えっ、なんで……?」


 目の前にはゲームオーバーの文字が浮かび上がっている事も気にせず、わたしは啞然としていました。

 自身のキャラクターのHPが何故か低くなっていて、ミノタウロスの反撃により一撃で倒されてしまうだなんてありえません!


 しかし何故かを理解する時間はわたしに残されていませんでした。


「うっ!?」


 突然襲ってきた頭と心臓に走る強烈な痛みに耐えきれず、思わずその場に倒れ込んでしまう。


 あっ……、復活のための5ポイント、残してませんでした……。


 床に倒れ込みようやくその事に気が付いた時には全てが遅すぎた事にようやく気付く。


 もう……意識が……。



 ごめ、ん、なさい、先輩……。






 ―――――――――――――――――――


 [セーブ&ロード]が実行されます。


 ロードしますか?


 Yes or No


 ―――――――――――――――――――


 ――ピッ


 ▶Yes


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。


初めての[セーブ&ロード]がこれって……

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― 新着の感想 ―
[一言] やはりガチャは悪い文明。
[一言] やっぱりガチャ引かないが正解だったのか… まあ引きますけどメドゥーサも周年ガチャも水着ガチャも
[一言] これセーブ&ロードみたいなやり直しか復活系のスキルを使わないと初見でほぼ確実に死ぬのか… 人海戦術で欲が上がりきる前に交代して鍵を集めるしか無さそう あれ?オリヴィアさん鍵手に入れたの無…
感想一覧
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