40話 コピーとかズルくない?
『ソウタを渡してもらうよ!』
『鹿島先輩をこっちに寄こすんだ!』
『………』
ソフィアさん達3人は一斉に僕に向かって襲い掛かってきた。
「先輩目当てですか。理由はなんとなく分かりますが。ふっ!」
『ちっ』
乃亜が大楯を構えて、僕とオリヴィアさんの間に割り込みロングソードを受け止めていた。
「蒼汰の力を利用する気満々よね。そんな人に渡すわけないでしょ。[狐火]」
『知らないね。ワタシはもっと強くならなきゃいけない。今回の事でより実感したよ。
ワタシはまだまだ弱く、兄を止める事なんて出来っこないって。
だからそれを成し遂げるためにはソウタが必要なんだ!』
冬乃の[狐火]を素早く避けてソフィアさんは冬乃に肉弾戦を仕掛けにいっていた。
まだ手足だけがメタリックカラーだけど、冬乃相手にそれだけでは通じないだろうから、おそらくすぐに全身強化してくるはず。
それにしてもソフィアさん。オルガの姉のカティンカに敵わずまともに兄の情報を得られなかったからか、そのせいで力を求めるようになってしまったのかな。
オリヴィアさんもカティンカとの戦いの後に思い詰めたように強くなりたいと呟いていたし、この2人の欲は間違いなく強くなることだろう。
しかしそう考えるとオルガの欲とは一体……?
『………』
「………」
オルガの方に視線を向けると咲夜と無言でナイフと素手で戦っており、この2人だけ次元が違うように見える。
オリヴィアさんはまだ見えるし、ソフィアさんも遠くからなら辛うじて動きが見えるけど、この2人は何回攻撃したのか見えないくらい早い。
ガギギギギィ、みたいな金属同士が何度も連続でぶつかったような音が聞こえてきたから、片手で収まらない回数なのは分かるけど、分かる事はそれだけだ。
「くっ、強い。全然攻撃が当たらないし、一方的に攻撃されちゃう……」
「えっ?!」
攻撃が止み、オルガが距離を取ったタイミングで咲夜が漏らした言葉は衝撃的だった。
僕の力で強化している咲夜相手に互角どころか上回るなんてどれだけ……はっ!
僕はある事に気付きドッペルマスターを見ると、狐っ娘状態の乃亜の姿をしているそいつはニヤニヤしながらスマホをいじっていた。
「当然僕のスキルもコピー済みってことか」
自分のスキルをコピーされているというのは非常に微妙な気分だ。
しかし僕の気分は置いておくとして、これはかなりマズイ。
今、乃亜には新人用メイド服、冬乃には新人用巫女服、咲夜には初級チャイナ服をすでに着せていて、オルガ達はまだコスプレしていない状態だ。
オリヴィアさん、ソフィアさんはいいとして、オルガとはすでに今の段階で互角どころか若干負けている。
そこにさらにパワーアップされるのはマズイ。だけどどうすれば……。
『この力は……。やはり鹿島先輩のスキルは素晴らしいな!』
『ああそうだね。ますます欲しくなったよ』
『………』
そう悩んでいる間にオリヴィアさんには新人用メイド服、ソフィアさんには初級チャイナ服、オルガには新人用執事服が着させられていた。
女の子達が全員コスプレして戦ってるとか凄い絵面だけど、今はそんな事を言っている場合ではない。
新人用メイド服:あらゆる能力が10%上昇する
初級チャイナ服:脚力が20%上昇
新人用巫女服:遠距離攻撃の威力を25%上昇
新人用執事服:器用度100%上昇
それぞれの服の効果を考えると割合で強化されるから、乃亜とオリヴィアさんは同じ装備でも地力が乃亜の方が強いと思うから、乃亜の方が有利なはず。
冬乃とソフィアさんでは遠距離攻撃なら冬乃の方が有利だけど、今は接近戦を強いられてるからソフィアさんの方が有利か。
でも他の装備で近接戦で強化される服はない以上、乃亜が早くオリヴィアさんを戦闘不能にして服を入れ替えるしか手がなさそうだ。
「ますます厄介」
『………』
ひたすら無言で攻撃を仕掛けてくるオルガは今は器用さが倍になってるはずだけど、元々まともに戦闘が見えていない僕ではどう変わったのか分からない。
だけど咲夜がより険しい表情になっているので、戦闘力が増しているのは間違いない。
『さて、次はどう強化しましょうかね』
まだドッペルマスターは何かしらの強化を施そうとしているようだけど、これ以上やらせるとオルガに対しての勝ち目がドンドン無くなりそうだ。
「あまりまともに使ってないんだけど、やるしかないよね」
『ご主人さまがやるのです?!』
僕がスリングショットを取り出したからかアヤメが目を見開いて驚いているけど、僕以外手が空いてる人がいないんだからやるしかないでしょ。
「ふっ!」
玉座に座っているドッペルマスターへとスリングショットの弾を放ち、攻撃をしかける。
――パンッ
『きゃっ! 先輩、いきなり服を脱がしてくるだなんて大胆です……』
「誤解を招くこと言わないで!?」
乃亜の姿だから当然[損傷衣転]も使えるってわけだよね。
ダメージは与えられなさそうだけど、衝撃はあるからこれで少しは邪魔できるはず。
『ところで先輩。攻撃してくるのであればわたしの相手は先輩が務めると言うことでいいんですね?』
「うっ……」
正直自分自身との戦いであればまだ勝機はあるけど、乃亜達の力まで兼ね備えたドッペルマスター相手では1人でなんて絶対に勝ち目はないよ。
『今は配下達の戦いです。次にわたしに手を出してくるのであれば容赦はしませんよ』
これ以上手出しすればドッペルマスターは宣言通り僕に容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
僕がやられれば乃亜達の強化もなくなる事を考えると、ドッペルマスターに攻撃するわけにはいかないか。
しかし何かしら手を打たないとマズイ気がする。
僕に他に出来ることは何かないだろうか。
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