39話 ドッペルマスター
ヤらないか男をみんながボコボコにした後、城の中を探索していたらやはりというか、乃亜達はおろか僕を目的に襲ってくる人達が大勢現れた。男女関係なく半裸でだ。
『可愛い顔してるわね』
『お姉さん達と遊びましょ』
『オネエさんとでもいいのよ?』
女の人に襲われるのならともかく、心は女性かもしれない野太い声の人に襲われるのは勘弁して欲しい。
「先輩には手出しさせませんよ!」
「未成年に手を出してくるんじゃないわよ!」
「恋愛は同年代の人としてて」
『命の危機ではないから別に構わないのです』
アヤメはもう少し僕に寄り添ってくれないかな?
襲撃者は乃亜達が倒してくれるお陰で色々な意味で僕は守られた。
ロシア、中国の美女に対して惜しいとか思ってませんよ?
「それにしても何でこの人達下着姿なんだろ?」
武器とか持てばまともに戦えただろうに、何故あんな恰好で向かって来たんだか。
『『性欲を満たすことしか頭にないからじゃないかしら?』』
マリとイザベルでもハッキリとした理由が分からないなら、これ以上考えても無駄か。
「武装していないお陰で楽に倒せたからいいんじゃないですかね?」
「そうね。本来なら格上の冒険者の人達だったから、武器を持ってまともに戦われたら勝てるかどうかも分からなかったわ」
まあ乃亜と冬乃の言う通りか。
変態達の恰好よりもドッペルマスターを探さないとね。
そうして何度も襲撃がある中、城の中を僕らは探索し続けた。
しかしドッペルマスターらしき存在は全く見当たらず、ほとんどの場所を探しつくしてしまう。
「全然それらしき存在がいないんだけど……」
「ドッペルマスターって言うくらいですから、もしかしてひたすらご飯とか食べてたりしていた人達の中に変身して混ざってる可能性もあるんですかね?」
「そうだったら最悪だわ。一から探し直しな上に、あの人達とも戦う事になるわよね?」
「相手が武器を持っていないとはいえ、これだけの数の人と戦うのはさすがにキツイ、かな」
『もう聞いた方が手っ取り早いのです。ドッペルマスターはどこにいるのです?』
アヤメがマリとイザベルに問いただしているけど、答えてくれるならこんなに苦労は――
『『少なくともまだ遭遇していない、とだけ言っておくわ』』
「答えてくれるの?!」
えっ、だとしたらもっと早く聞くべきだったよ。
『別にこの程度なら答えても構わないわ』
『ええ、そうね。だって今までのはただの余興。ここからが本番なのだから』
マリとイザベルがしれっと嫌な事を言ってきた。
今までのアレは全部チュートリアルや遊びみたいなものだったの?
「なんでしょう。この脱力感は……」
「今まで神経尖らせて城の中を見て回ったのに……」
「無駄に疲れた……」
『一気にラスボス戦ではダメだったのです……?』
みんなやるせない気持ちなのかそれが表情に出ているけど、数秒後にはすぐに気持ちを切り替えていた。
「まあいいでしょう。今までの所をもう一度見て回ったりしなくていいのですから」
「そうよね。あと他に見てない場所って奥の方くらいかしら?」
「玉座的な場所は、まだ」
『ラスボスがいそうな所なのです』
少なくとも食堂にいるよりは納得できる場所ではある。
一応まだ見ていない部屋に人がいないか確認しながら奥へ奥へと進んで行くと、僕らの身長の何倍もあるような巨大な扉を見つけた。
「これはもう間違いないよね」
「ここにいなかったら庭くらいしか考えられません」
「広そうな部屋でしょうし、絶対ここね」
「ついに本番」
『とっととぶっ倒してこの狂った場所から脱出するのです!』
みんな気合十分である。
早速1人では到底開ける事が出来ない扉をみんなで押して開けると、そこにはこの魔王城と言うべき外観に相応しい玉座の間のような内装の部屋の光景が広がっていた。
『遅かったね』
『「「「「は?」」」」』
広大な部屋には玉座らしき大きなイスが存在していたけれど、そこに座っていた人物。それは――
『待っていたよ僕』
「またかよ!!」
自分と瓜二つの僕そのものだった。
今度は肌の色も髪の色も全く一緒であり、たとえ入れ替わったとしても誰も気づかないくらいそっくりだった。
「二番煎じは止めてよ!」
『それを僕に言われてもね。この姿が嫌なら――わたしの姿なら問題ありませんか?』
「今度はわたしになりましたよ?!」
僕の姿だった存在は今度は乃亜の姿に変わっていた。
「なるほどね。ドッペルマスターっていうくらいだし、ドッペルゲンガーよりも変身能力に優れているのかしら?」
『それはそうですよ。自分が支配する存在よりも能力が劣っているわけないじゃないですか』
「誰にでも変身が自由自在の敵が相手ってこと、かな」
『それだけじゃないですよ咲夜先輩』
ドッペルマスターは乃亜の姿で笑いながらのまま、額に2本の角が生えてきた。
「……っ! そ、それまさか!?」
『そうですよ。咲夜先輩の[鬼神]スキルです』
マジッ!?
『もちろん[鬼神]だけでなく、[獣人化(狐)]のスキルも当然使えます』
生えていた角が引っ込んでいき、今度は乃亜の姿で頭に先端が少し黒に染まってる白い狐耳が生え、尻尾まで生えてきた。
「なるほど。つまり僕ら全員の能力を持った敵ってわけだ」
『その通りです。もっとも最初の相手はわたしではありませんが』
ドッペルマスターがそう言った後、玉座の後ろから見知った3人の少女が現れる。
『まずはこの方達の相手をしてもらいましょうか。丁度あなた達、いえ、先輩に用があるようですし』
ソフィアさん達3人が武器を構えこちらに向かって来た。
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