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現代むかしばなし  作者: かなで四歌
4/4

異類婿

 その人は、SNSをしていました。

 投稿して、誰かが反応をくれる。

 そんなありきたりな流れが、彼女の日常でした。



 ですがある時、彼女の通知欄に、常ではない反応が届きます。

『あなたが好きです』

 彼女は少々気持ち悪く思ったのでしょう。

 ですが、無視することにしたようです。

 ネットではそういうものは付き物だったからです。

 彼女は恐らく、ファンでもできたかなと思い、

 やがてその通知は、後からやって来た通知に押し流されて消えたと思われます。



 しかしその後も、通知は届くのです。

『あなたと結婚したい』

『あなたを見ている』

『あなたが好きです』

 彼女の投稿に毎回そのような反応が届くため、他の人にもそれが知られ始めました。

 彼女は少しずつうんざりしてきたのでしょう。

 たとえ彼女がブロックをしたとしても。

 彼女の投稿を見守り続け、なんらかの反応を寄せましょう。

 彼女は暫く時間を置いたのち、こう反応しました。

『私、あまりお金がないから。

 きっと結婚なんて無理でしょうね』

『じゃあ、お金を送りますよ』



 彼女の銀行口座にはお金が振り込まれていました。

 しばらくは不自由しないだろう額です。

 口座は教えてもらっていませんが。

 きっと彼女はとても気味悪く思ったのでしょう。

『まだ不十分ですか?』

『え……いえ……』

『分かりました』



 毎月、お金は振り込まれます。

『どうですか?』

『もう、話しかけてこないでください』

『分かりました』



 銀行口座を閉じても、他の口座へお金は振り込まれます。

 全ての口座を閉じてしまうと、今度は家のポストへお金が投函されています。

 引越しをしても、そこのポストに毎月お金が入っているのです。



「もう、慣れました」

 彼女は少し微笑んで言いました。

「今は何不自由なく暮らしています。

 働かなくとも、お金が送られてくる。

 不満はありません」

 けれど少し寂しそうに言うのです。

「でも、私はきっとこれからずっと、死ぬまで、こうして一人で過ごすのでしょうね」

「私はきっと結婚したんです」

「どなたかは分かりませんが、“それ”と」

「私が話しかけてこないでと言ったから、もう、話はしていないけれど」

「ずっと見ているんです。たぶん」

「ねえ、あなた」

「私はきっと、あなたの妻です」

「もう、誰かと結婚しようとは思いません」

 私はそれを聞いて、満足しました。

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