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夢現  作者: ゆうと
3/5

第1幕 3話目

私は仕事を終え家に帰り着くと、充電したままベッドに置いていったスマホにかじりついた。

今朝、電池の切れたスマホをすぐに差したものの、10分やそこらで充電できる筈もなく、数%しか回復していないものを持って行ったところですぐまた電池が切れるのは明白だったため、泣く泣く置いていったのだ。

今日ほどポータブル充電器を持っていないことを悔やんだ日はない。今まで全く必要としなかったーーーつまり、仕事以外ではほぼ家を出ず、外で使う機会はなかったーーーので、持っていなかったのだ。


充電が100%になっているスマホを握り締め、立ったまま普段からも滅多に来ない電話やアプリのメッセージが来ていないことを確認すると、フローリングに敷いたお気に入りの猫柄ラグに座り、ベッドを背もたれにしていつものようにスマホいじりを始めた。


あぁ、ほっとする。


今日の休憩時間のなんと手持ち無沙汰だったことか。

使い慣れたそれが手元にないというだけで非常に落ち着かず、休憩室の角にあるコンセントの差し込み口が視界に入った時は、充電器ごと持ってきてここで充電すればよかった、と激しく後悔する程だった。

けれど個人の携帯をここで充電しているのを見つかって、患者はコンセントひとつ使うにもお金がかかってるのに!なんて叱られても嫌だな、と思ったときに、ポータブル充電器に思考がいったのだ。

いずれにせよ、こんな思いをするのは2度とごめんだった。

ポータブル充電器を普段は使わないとしても、あって困るものではない。災害時なんかには大変重宝するだろうし。

私は、次のお給料が入ったらできるだけ良い充電器を買おう、と固く心に誓った。


約半日振りのスマホを堪能し、いくらか満足したところで一旦スマホから離れた。そして手早く食事とお風呂を済ませる。

私は自分のスマホ依存を自覚していて、自分なりに少なからず危機感を感じている。なので食事とお風呂の時だけはスマホから敢えて離れるようにしていた。

と言いつつ、スマホを触りたい一心で食事もお風呂も日に日に雑になっていく。

私の生活は、人間としても乙女としても枯れ果てていた。




明日も早いしそろそろ寝るか、とベッドに上がり、枕元に置いてあるリモコンで電気を消す。

そうして部屋に点る明かりがスマホの画面だけになると、明かりに集る虫よろしくいそいそとスマホの明かりに吸い寄せられ、画面を触る。寝るか、とベッドに上がったことなど速攻忘れていつものように小説に没頭した。

そうして暫くが経ち、時間を確認するために視線を画面上部に流した。そのときにふと、電池残量マークに目が行った。

100%。

まぁ当たり前の話だ。朝から1度も充電器から外していないのだから。

しかしそこでちょっとした疑問が浮かんだ。


私が自宅以外でスマホを使うのは仕事の休憩時間のみ。自転車で通勤しているので通勤中は使わない。

そして家に着くとすぐスマホを充電器に差す。

差すときにはだいたい70%から80%くらいの電池残量なのだ。

しかし今朝見たときには電池が切れていた。

夜中に寝返りを打ってコードが外れたとしても、一定時間で画面が消灯したスマホが電池切れなんて起こすだろうか。

そこまで考えて、いや、もしかしたらコードが抜けた時に画面が点灯し、私の体のどこかが触れているせいで自動消灯しなかったのかも知れない、とも思った。

何にせよ、事実電池は切れていたのだ。それが全てだ。


電池のくだりから、今朝見た夢のことを唐突に思い出した。

本当に嫌な夢だった。

私は手に持ったスマホからすっかり意識が離れ、今朝見た夢について考えていた。


真っ白なシーツの掛けられたベッド。

私の前に立つ、下劣な雰囲気のあの男。

そういえばあのおじさん、なんか分厚いカーテンのようなものを体に巻き付けるみたいにして着てたな。

腰を赤い帯で締めていたと思う。

部屋の中は明るかったけれど、その明るさが不自然に感じる変な部屋だった。


そして、あの男が振り上げた、銀色のナイフ。


夢を思い返すと、色々な細部が結構鮮明に思い出せた。

でも、できれば忘れてしまいたい内容だ。


『神の御心のままに!!』


神の、御心、ねぇ。

あんたはどう見ても神から程遠いだろ、と、夢の中のおじさんに言ってやりたい。

そんな偏見丸出しな思考を巡らせているうちに、私は眠りに落ちていた。

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