第4話 〜 任務報告 〜
天気:晴天 場所:キリサメ区
杙无「……以上が、塔飛雁についての報告。」
路地裏での塔 飛雁との遭遇から一日、
一通りの始末と情報収集を終えた杙无は
ギルドマスターである艾瑛に件の報告をしていた。
艾瑛「………………ご苦労。
サジン区はすでに無事な者は居らんとはな。」
艾瑛「全くおぞましい事をするのう、
黒鳥のギルドマスターは。」
杙无「幹部が出払ってるのが漏れてるらしい。
さっさとどうにかしないとウチまでサジン区と
同じになるんじゃない。」
艾瑛「かと言って、
こちらも色々やることがあるからのう。
大掛かりに潰しに行くことはできん。」
艾瑛「これが長期休みの
時期じゃったらよかったのにのう?」
杙无「……長期休みに強いのバレてるからでしょ。」
艾瑛「まあ無い事をねだっても意味はない。
今できる最効率の策を練るとしよう。」
杙无「……一つあるんだけど、」
ガチャッ!
「ただいま帰りましたっす、ボス!」
ドアが開く音と同時に大きな声が響く。
杙无「………………」
「あっ、杙无もここに居たんっすね、
ただいまっす!」
艾瑛「おお翠、ご苦労だったのう。」
彼の名は翠
杙无の部下のうちの1人であり、先日から
単独で配達依頼を受けていて不在だった青年である。
翠「途中で荷物泥棒を捕まえたりして
報酬金をおまけしてもらえたっす!
これが合計のお金っす。」
艾瑛「泥棒と遭遇するとは災難じゃったのう。
他に何か不具合はあったか?」
翠「うーん、そういえばおばけみたいな
変なやつに襲われたっけ。
人の形とはちょっと違うというか……」
翠「動物ともいえない感じだったっすね〜。
結構しつこかったんで反撃しちゃったっす。
そしたら割とすぐに跡形なくなっちゃって、」
艾瑛「それはどこであった?」
翠「えっと確か………遥氷たちの学校近くっすね!
といっても真夜中だったから周りには
学生さんとかはいなかったっすけど。」
翠のいう学校とは
キリサメ区の中心部にある高等学校。
そうなると塔飛雁は既に中心部まで
侵入したことがあり、
能力を振るったということになる。
艾瑛「学校……そこまで来てしまわれてるとなると
のんびりはしておられぬか。」
既に何人かがあの異形で発見されているのをも
考慮すればやはり早急な措置を
強いられているのは明白だった。
杙无「……どうすんの。」
艾瑛「手っ取り早いのは、
奴の能力の無力化じゃろうな。」
翠「よくわかんないっすけど、俺の出番っすか?」
状況をまだ掴みきれていない
翠が首を傾げて問う。
艾瑛「ふむ、お主の能力でどうにかなりそうか?」
翠「能力を使えなくすれば良いんっすよね?
ならお役に立てそうっす!ね、杙无っ。」
杙无「………………」
自分に顔を向けた翠を横目に思案に入る。
そして少しの沈黙の後、
杙无「……まあ、何とかなるんじゃない?」
翠の考えたことに粗方の予測がついたのか
小さく頷く。
艾瑛「お主もそういうのなら大丈夫じゃろ。
今回は杙无と翠に行ってもらおう。」
翠「杙无と?
やったっす、久しぶりっすね〜!」
杙无「……無茶苦茶するなよ、翠。」
翠「大丈夫っす、わきまえるっすよ〜?
それにいざとなれば杙无がいるっすから。」
艾瑛「スクリュナには
異形について少しばかり
働いてもらうからそのつもりでな。」
艾瑛「異形にも塔にもまだ謎は多い。
最低条件は塔をこの区から排除すること。
」
・翠(19)
→ 杙无の直属のギルドメンバー。
能力、運動神経も良いため単独行動も多い。
杙无によく懐いている。
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更新が一ヶ月以上途絶えていました、orz