第1話 〜 幹部Queen 瀬攞杙无 〜
【 天気:快晴 場所:キリサメ区 】
「……異常なし。」
カチッ。
使っていたライトをポケットに入れ
カルテに目を落とす青年
瀬攞 杙无。
白衣を着崩し、
今の検査で気づいた点をカルテに追加していく。
コンコンッ
杙无「……どうぞ」
ガチャッ
杙无の声から一拍置いて
扉が開く。
「失礼致します、杙无様。」
扉の前で水色の髪を一つに束ねた
女性……スクリュナ・フォン・ミィーナが
手を腹部で揃え、一礼した。
杙无「何か用?」
スクリュナ「ギルドマスターがお呼びです。
緊急の幹部会を開きたいと。」
杙无「……面倒くさ……」
ガタッ
杙无「後片付け……」
スクリュナ「お任せください。」
杙无「……ん。」
杙无が言い終わる前に食い気味に了承するスクリュナ。
スクリュナ・フォン・ミィーナは
杙无の直属の部下であり、杙无の身の回りを世話する
メイドの様な存在である。
だが、彼女は重度のワーカーホリックで
雑用などの人に尽くす仕事には異様な積極性を持つ。
早速後片付けを始めるスクリュナを一瞥して
杙无は外に出る。
杙无とスクリュナが在籍するギルド
「 追憶の庭園 」は
7つの幹部が存在する。
するのだが…………
バタンッ
扉を開くと広い部屋に
椅子に座った和装の男性と
着物を肩からかけた長身の男性がいた。
「来たか、杙无。」
初老の男性が声をかける。
八代 艾瑛
「追憶の庭園」ギルドマスターであり、
ギルド創立者の1人である。
いかにも組織の頭目といった風に
にこやかに杙无を受け入れる。
杙无「……大した数の幹部もいないのに何の用。」
「貴様……ボスの御前だぞ。」
既にいたもう1人の男性
斎条 椿が
杙无を睨みつける。
杙无「………………」
艾瑛「まあまあ。
同い年なんじゃし、仲良くしてくれんかのう?」
杙无「……高校生組じゃあるまいし。」
艾瑛「あそこまで仲良くとまでは言わんよ。
実際、他の同年齢幹部も能力まで使って
大喧嘩が茶飯事じゃし。」
艾瑛「みな昔は仲が良かったのにのう……
どこで育て方を間違えてしまったのか……」
椿「ボス、話が逸れています。」
杙无「……帰りたいんだけど。」
艾瑛「そうじゃったのう。
では本題と行こう。」
艾瑛「最近、隣の区の"黒鳥"が
キリサメ区に頻繁に出入りしていてな。」
"黒い鳥"
通称"黒鳥"はキリサメ区の隣街
サジン区に存在する違法ギルドである。
数々の殺|人事件に関与、闇市場への介入といった
犯|罪に手を染めるギルドであり政府の中でも
五本指に入る問題ギルド。
数年前まではサジン区内でのみ活動していたが
最近では他の区にも被害が報告されている。
艾瑛「「黒鳥」が出入りした日には
必ず殺|人事件がキリサメ区で起こる。
しかもその遺|体は決まって異形との
報告もあってな。」
椿「異形、ですか。」
艾瑛「出るもの全てが人とは
思えないほど形が変形しているらしい。」
艾瑛「そこで、政府が正式に
「庭園」に事の始末を依頼してきた。」
椿と杙无を交互に見つめ、
艾瑛「やってくれるかのう?杙无。」
杙无「………………」
艾瑛「政府が幹部を指名していてのう。
今動けるのはお主だけじゃろ、Queen。」
「庭園」には7つの幹部がある。
Heart、Spade、Clover、Diamond
Jack、Queen、Joker
一つの幹部席に1人高ランクの異端者である
ギルドメンバーが着いている。
7つのうちQueenを除いた6つの幹部は
各自指名で依頼で出払っている。
Queenの席である杙无はキリサメ区で突発的に起きた
事件などを処理する役目を担っている。
そのため、今回の依頼は必然的に杙无の仕事になる。
杙无「………………」
杙无「……好きにやるけど文句言うなよ。」
艾瑛「好い好い。
お主の思うようにやれ。」
杙无「……あっそ。」
艾瑛「これが資料じゃ。」
パシンッ
杙无「行ってくる。」
ひったくるように資料を受け取り
サッサと扉へ向かう。
椿「おい待て!人員はどうするんだ!」
杙无「……代理は黙ってろよクソ眼鏡。」
バタンッ!
椿に見向きもせず、出て行く。
椿「メガネは関係ないだろう!!」
瀬攞杙无(21)
・Queen幹部
・「庭園」の医務員「兼任
スクリュナ・フォン・ミィーナ(24)
・Queen組に在籍。
八代 艾瑛(??)
・「追憶の庭園」ギルドマスター
斎条椿(21)
・Clover幹部代理