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「あの方の命令で仕方なく来たものの、なぜ我がこんな雑魚の相手をしなきゃいけないというのだ」


「龍が…喋ってる…だと…?もう何が何だか分からねぇ…」


龍と少女が相対している中、俺は混乱していた。


第一になんで少女と龍が鉢合わせしているのか。

第二に龍ってただの森に普通にいるものなのか。

第三に龍って普通に喋れるものなのか。


いや、そんなこと考えている暇じゃない、このままでは少女が龍に食われてしまう、なんとか注意をこっちに向けさせなければ。

俺は地面に落ちている手に収まるほどの石を持ち、再度自分に身体強化をかけた。

そしてその石を大きく振りかぶり、龍の頭に目がけて勢いよく投げた。


「ゴッッッ!」


痛そうな音は聞こえたが特にダメージは食らってないようだ。


「まぁ、そんなもんだよな…」



「…そこか」


次の瞬間、俺に頭上目掛けて龍の尻尾が振り下ろされた。


「ッッ!?」


俺は屈んでなんとか避けられたが、尻尾の風圧で少し体勢が崩れる。

ここを逃がさんとばかりに龍はたちまち尻尾で攻撃を仕掛けてきた。

が、その攻撃全てを俺は両手で受け耐えた。

身体強化をかけている状態だったのでほぼ無傷だ。


「痛いじゃないか」


「………。お主…何者だ。我の攻撃を防いだこともそうだが、我は半径十キロの敵の気配だって感じ取ることができる。それなのにお主は…。」


龍は軽く怖気付いているような声音で言った。

龍の話から察するに、俺は特殊な能力を持っているという事になる。

異世界に来てから改めて自分がイレギュラーな存在だという事が分かった。

が、こんな事で自惚れてはいけない。

龍は俺の身体強化を加えた石の攻撃でもダメージを負っていないのだ。

つまり身体強化をかけて殴っても意味が無いだろう。

何か武器があれば違うかもしれないが…。


……!!!


そうだ、あるじゃないか武器!


「お主が動かぬなら我から先に行くぞ!」


龍はそう言い放ち、口元から赤黒い炎の塊を出してきた。

が、俺はその攻撃をあえて避けない。

頭首の亜人との戦いで分かった事だがどうやら俺は炎に耐性をもっているからだ。

そして俺は炎の塊を全身で受けた。

炎は辺り一帯に広がり、俺の付近は火の海と化していた。


「避ける素振りを見せなかったのは気にかかるが、これで焼き殺せただろう」


俺は龍がそう話しているのを聞きながら火の海の中を颯爽と走っていた。

おそらく龍はその事に気付いていない。

そして俺は龍と相対していた少女の元まで辿り着いた。


「君に…頼みがあるんだ」


俺は落ち着いて優しく話しかけた。


「な…なんで…生きている…の?わ、私あなたの腹を…」


「すまないが今説明している暇はないんだ。君のその短剣を俺に貸してくれるか?」


俺は少女の腰の部分にある短剣に指を指しながら言った。


「この短剣を…何に使う…の?」


「これであの龍を倒すんだ」


「無理だよ…そんなの倒せっこない…!知ってるでしょ!?龍は…龍は魔物の中でも最上位種なんだよ!?」


死を待つばかりの顔で少女は強気な声音で叫んだ。


ああ、知っている…


俺は元の世界でこういう人の顔を何度か見た事がある。

こんな顔もう見たくない、させたくない。

死を覚悟している顔なんて…。


「大丈夫だ。俺は負けない。そして君は俺が守る。だから…そんな顔するな…」


俺は優しく微笑んだ。

彼女の目から何粒かの涙が零れ落ちていく。


「どう…して…?私は…あなたを殺そうとしたのに…」


「理由なんていらない。俺は君にそんな顔させたくないだけだ」


「そ…う…。なら、これ…貸してあげる」


少女はそう言って涙ながらに微笑んだ。


ああ、俺はこの笑顔を守りたい…。


彼女は俺に短剣を渡してくれた。

そして俺は少女の涙を拭おうと頬に手を伸ばし、、、







その時だった。



龍の尻尾が彼女の顔面に振り下ろされ、血が飛び散る光景を見るのは。










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