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4話目

久々の更新となります。

よろしければ、ぜひ1話からお読みください。

週1程度の更新ペースを目指してがんばります。

竜たちの間では、ある伝説がありました。


『満月の夜、月の涙を飲みし竜、楽園への箱舟となり、空へ昇らん』


白竜と黒竜の伝説への解釈は、それぞれ違いました。


白竜は、月の涙を手に入れ、楽園へ昇ることを望みました。

黒竜は、この大地を捨てるような伝説は、まやかしだと謳いました。


相反する思想を掲げる竜たちは次第に相容れぬ存在となり、

やがて大きな争いが生まれてしまうのでした...。




「『楽園』かぁ...。」


昨日読んだ伝記の最後に記されていた『竜達の楽園』と恐らく同じもの...。

そして今読んだ伝記から察すると、裏切者の『白竜マグナ』は、

自分も白竜だけど、白竜の考えには従えないと思って、黒竜に裏切ったのかな。


そもそも楽園ってなんだろう。

パっと思いつくのは、私達の世界で言う『天国』とか...。


「でも、それだと死を望んでいるみたいになっちゃうよねぇ...。」


『白竜の大戦』について考察をしていたときに、ふと視界に時計が入る。

そういえば、この世界でも、私達と同じ世界の時計と同じなんだな...。

時があり、分があり、秒がある。私達の世界と同じ流れで時が進んでいる。

不思議と言えば、この世界の言葉が何の違和感もなく日本語でやり取り出来たりするのも不思議だ。



この世界で私が今いる国『グラングドラン』は聖暦1392年に建国され、そして現在は聖暦2392年。

すなわち、ちょうど建国1000年記念の聖暦となるのだそう。


初代国王より王政は続き、現在は7代目女王である『シャリュオル=ドレッドノーヅ』のもと統治されている。

...なんでもグラングドラン人はこの世界でも最も長寿であり、平均約150歳程となるのだそうだ。

シャリュ女王も、幼い容姿ではあるものの年齢としては私と変わらない程度らしい...。


また、この世界は大きく分けて5つの大陸が存在する。

世界地図を見ると、まず中心にひとつ大陸があり、その大陸を囲うように他4つの大陸が形成されている。

グラングドランは中心の大陸から見て南西に位置する大陸にあり、この大陸では他の大陸に比較して、他国との争い事はほぼ皆無らしい。

と言うのも、グラングドランの信条として争いは起こさない主義であり、隣国なども戦争には興味がないそうだ。

無論、他大陸などでは戦争で国が滅ぶということもあるそうだ。


そして中心の大陸はどの大陸、どの国からも不可侵とされており、これを破る者へは竜の怒りが災いとなり降りかかるらしい。

伝説によると、中心の大陸には『竜の心臓』なるものが神殿に安置されているとのこと...。



昨夜、ジークさんに教えてもらった、この世界の概要みたいなものだけど。

戦争が未だ続いている世界、というのは普通に怖い。

グラングドラン...シャリュ女王のもとに来ていなかったらと思うと、考えただけで寒気がする。


そもそもこの状況は本当に現実なのか。

もし、もしも...。


「この世界で死んでしまったら...。」


...いけない。

根についたネガティブな思考が私を蝕む。


とりあえず今は考えたって何も分からない。

深く深呼吸をして、心を落ち着かせる。


「9時14分...。」


9時45分に謁見の広間に集合。

ジークさんより正式に指導が行われるそうだ。


...歌の。




--------------------------------------------------------------------




「リバーサーの皆様には、お歌を歌って頂きます。」


「え...?」


その場にいた4名のリバーサー全員が言葉の真意が分からず呆気にとられていた。

そんな空気を裂いたのは一番最初のリバーサーである『三珠 叶(みたま かなえ)』さんだった。


「待って。ジークさん、ふざけてる訳じゃないんだよね。」


「はい。至極真面目にございます。

...『白竜の大戦』について、皆様にはすでに少し話させていただいたと思います。

その中に登場する『7人の女神』そして女神による『黒竜の封印』。

この黒竜の封印が今現在、弱まっており、いつ封印が解かれるか分からない状況にございます。」


「ある伝記にはこのような言い伝えがあってな。

『月が分か断れち時、光の呪縛は解かれ、黒き魂は大地を引き裂く』

もう皆、大方の察しはついておるかと思うが、わしらはお主らこそが『7人の女神』じゃと思っておる。

今、月が2つに分かたれようとしておる...。

この月の異変が確認され始めたのがおよそ一月前。カナエがグラングドランへ来た4日前となる。

わしにはこのタイミングはどうにも偶然には思えぬ。

お主らをこの事象と結びつけることの方がすんなりと理解が出来る、と思うのじゃが...どうかの?」


シャリュ女王の話した通り、確かに合点はいくし、理解も出来ないことはない。

でも、なんで私たちが...私なんかが、なんで選ばれたんだろう...。


「はいはーい。しつもーん!」


やや重くなった空気に明るい声が響く。

3人目のリバーサーである『桜 紅羽(さくら くれは)』ちゃんが手を挙げていた。

その顔は今の私と違い、なぜか楽しそうだった。


「いま女王様が話したのと、歌を歌うのって関係あるんですかぁー?」


「そうですね、この話の本筋となります。

白竜の大戦の伝記によれば『女神達の歌声は、大地を癒し、空を輝かせ、世界に調和をもたらした』とございます。

すなわち黒竜の封印も、女神たちの歌声が鍵となる、とされております。」


「そ、それで、わ、わたし、たちに、お歌を...?」


おどおどしながらも一生懸命に話を理解し、内容を確認する。

2人目のリバーサー『花乃(かの) つぐ』ちゃん。

恐らくまだ中学生くらいだと思うけど...。


「左様じゃ。無理勝手を申しておるのは重々承知しておる。

どうか、この世界のためにお主らの力を貸してもらいたいのじゃ、頼む...。」


シャリュ女王が私たちに頭を下げ、お願いしている。

でも、でも私は...。


「いいじゃん!楽しそうだし!」

「じょ、女王様が、おっしゃるなら....つぐも、がんばる。」

「はぁ...わかりました。やれる事はやってみます。」


みんなが思い思いの言葉でシャリュ女王のお願いを受け入れる。


「うむ。皆、感謝する。...アカネ、お主はどうじゃ?

昨日こちらに来たばかりと言うのに申し訳ないが...無理に、とは言わぬぞ?」



わ、わたし、私は...。



「あはは...が、がんばってみます。」



私は、弱虫だ。




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