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3話目


昔々、まだこの世界に『竜』が存在していた時代。

竜は『白竜』と『黒竜』とに分かれており、それぞれ対立し、いがみ合い、多くの闘争があった。


ある日のこと、白竜達により古より受け継がれていた秘宝『白竜の宝玉』を一匹の白竜が黒竜へ献上した。

この宝玉は白竜達の生命の源であり、また白竜達が護るべき神である。

それは黒竜達も同じことであり、同じく黒竜が代々護り継いだ『黒竜の宝玉』が打ち砕かれれば、黒竜は滅びの運命を辿ることになるだろう。

そして『白竜の宝玉』が黒竜の手中にあるいま、白竜達の命運は黒竜に握られてしまったのです。


この事件を皮切りに、これまで小さな闘争をしていた竜達はついに全面衝突。

宝玉を奪われ、打ち砕かれた白竜達に時間はなく、力が無くなり命が尽きるか、黒竜達から宝玉を取り返すのが先か、事は一刻を争っていた。


そんな中、黒竜へ宝玉を献上した白竜『マグナ』は黒竜達に味方をし白竜の闘いを完全に封じ切った。


白竜の血が絶えるかと思われた時、奇跡が起きた。


突如として現れた7人の女神により黒竜達は石と化したのである。

そして黒竜は大地の糧となり、絶滅した。


しかし、宝玉ある限り生命は吹き返す。

この黒竜の宝玉を女神達は打ち砕かず、強い魔力によって封印した。


一匹残った反旗の白竜マグナは逃走を図るがあえなく捕縛。

処罰について断頭が処されることが決まったが、白竜マグナの実妹であった白竜『リース』の懇願により、断頭ではなくこちらもまた、女神達の魔力により封印が施された。


その後、残った白竜達はこの大地を離れ、遥か天空にあるとされる『竜達の楽園』へと昇ったそうだ...。



「これがかの『白竜の大戦』である...か。」


朝起きて勝手に部屋を出るのも何だかなぁと思ったので、部屋にあった本棚の本を読んでいた。

昨日、ジークさんにグラングドランについて少し説明をされた時に出てきた白竜の大戦。

その白竜の大戦についての伝記を発見したので読んでみたのだが...。


正直なところこれだけでは全く全容が理解出来ない。

白竜の宝玉についても、打ち砕かれたはずなのに、白竜は絶滅せずに最終的には竜達の楽園へ昇った、とある。

特になぜ白竜マグナは白竜の宝玉を黒竜へ献上したのかが気になる。

自分に利益なんて無いように思えるけど...真意が全く分からない。


そして突如として現れた7人の女神。

何か引っかかるものがある。

『突如として現れた』か...。


「いやいや。ないないない。私が女神とか...。」


とりあえずこの手のものは伝記によって内容が少し変わる部分もあるので、他の白竜の大戦についての伝記も読んでみよう。


と、本棚を物色し始めたところで部屋の扉をノックする音が響いた。


「はーい。」


返事をして扉を開けるとそこにはジークさんが立っていた。


「おはようございます。ヒメミヤ様。」


しっかりと目を見て挨拶をされ、深々と綺麗な姿勢でお辞儀をするジークさん。

日々の営業挨拶で培った私のスキルがあれば...!


「あっ、おっ、お、おはよ、うご、ございます...!」


すっごいどもってしまった。

私は挨拶もろくに出来んのか...!

営業挨拶スキルとは...。


「ふふ。昨晩は良く眠れましたか?」


「あ、はい!それはもうバッチリです!」


「それは良かったです。この後のご予定なのですが、他のリバーサーの方とお会いになってみませんか?」


他のリバーサー...。

さっき読んだことがもし今起きているこの問題と当てはまるのなら...恐らく。


「はい。ぜひお会いしたいです。」


「かしこまりました。ではお召し物を変えましょう。

こちらのお洋服へお着替えしましょう。さぁさぁ着替えましょう着替えましょう。」


「えっ?えっ?ちょっ、じ、ジークさん!?」


疾風怒濤の如く。

見る見るうちに服を脱がされいつの間にやらドレスに着替えさせられていた。


「まぁ。よくお似合いですよ、ヒメミヤ様。」


大きな姿見で今の自分の姿を確認する。

薄いピンクを基調としたドレスで、各所にフリルをあしらい、他にも凝った装飾が施されている。

というかこれはもはやドレスではなく...。


「アイドル衣装なのでは...?」


正直かなり恥ずかしい...。


「さあ行きましょうか。皆様、お食事の間でお待ちですよ。」


「あ、はい...あの、ちなみになんですけど、リバーサーの方って他に何名程いらっしゃるんですか?」


「ヒメミヤ様を除くと3名、ですね。」


「なるほど...私を入れて4人、か。...うーん。」


「如何されましたか?」


「いえ。その、昨日おっしゃってた白竜の大戦ってあったじゃないですか。

あの伝記を見つけたので今朝少し読んでみたんですけど...。」


「7人の女神が気になりますか?」


「えっ?」


やっぱり、何か関係があるのかな...。

7人の女神。4人のリバーサー。でもそうだとしたら後3人...。


「それについては後程、ご説明を致しますので。

...それよりもお食事の間へ到着致しましたので、どうぞお入りくださいませ。」


相変わらず大きい扉をジークさんが開けてくれた。

中の様子を伺うと...。


「いやーここの料理は本当に何でもおいしいねぇ!」


「く、くれはちゃん、もう少し落ちついて食べよ...?ね?」


「はっはっはっ!よいではないか!クレハの喰いっぷりは見ていて清々しいぞ!」


「...アンタら、静かに食べなよ。」


楽しく歓談しながら朝食を摂っていた。女王様含め。

な、なんか、思ってたのと違うなぁ...。

結構身構えてたんだけどな...。


「お。新入りちゃん!カモン!!」


「アカネか!はよう来い!」


「お嬢様。はしたない真似はお止め下さい。」


なんかカオスだ...。

とりあえず空いている席に着く。


「それでは皆様お揃いになりましたので僭越ながら私よりお話がございます。

どうぞお食事を続けながらで構いませんのでお聞きください。」


ジークさんがそう切り出したものの、何かすごく重要なお話をするような気がするので食事は控えておこう。

...と、思いきや、さっきの紅羽ちゃんと女王様は相変わらずすごい勢いで食べていた。


「あ、あはは...き、きにしないでくださいね。いつものことなので。」


おとなしそうな女の子の...


「えっと...。」


「あ、ごごごごっ、ごめんなさい!ふつうの花って漢字に、こういう乃って書いて花乃(かの)つぐっていいます。」


「つぐちゃん、か。私は姫宮朱音。気にしてくれてありがとね。私は大丈夫だよ。」


恐らく年下...というか下手したら中学生くらいなんじゃないだろうか...。

とりあえずお姉さんの余裕を見せれたぞ...!

ちなみに『こういう乃』って言っていたときに自分の手に指で書きながら教えてくれた。かわいい。


「では、お話をさせて頂きます。

こちらで確認出来ている限りで一番最初のリバーサー...ミタマ様が転移されてから、約一月程が経ちました。

ここまでで、ある法則性でリバーサーが増えていることが予想されました。

ミタマ様が転移してから7日後にカノ様が、そして更にその7日後にサクラ様が、そしてその14日後である昨日、ヒメミヤ様が転移されてきました。

恐らくですが、リバーサーが現れた7日後にまた次のリバーサーが、という風に7日置きに新たなリバーサーが増えているのです。」


「待った。桜が転移してきた後、昨日転移してきたこの姫宮さん。ここだけ14日間だけど。これじゃその仮説は立たないんじゃないの?」


ジークさんの説に鋭く突っ込みを入れたのは三珠さんだ。

彼女が一番最初のリバーサーだったんだ...。

てっきり一番場慣れしてるっぽい紅羽ちゃんかと思っていた。


「ミタマ様の仰る通り。サクラ様が転移されてから14日後にヒメミヤ様は転移されてきました。

ですが何もリバーサーはこの城にだけ転移されている訳ではないのです。

ミタマ様は城内の謁見の間にて、カノ様は城下町の宿屋にて、サクラ様においては近隣の森、とそれぞれ城の近くではあるものの離れ離れでございます。

なので、このサクラ様とヒメミヤ様の間にもう1名リバーサーが転移している可能性がございます。」


「なるほどね...つまりその1名に関しては調査をしないとわかんない訳か。」


「その通りでございます。

そしてあまり悠長に調査を進める訳にもいきません。」


「あーそっか。あたしの時は運がよかったけど、この世界って普通に魔物とかいるんだっけ。」


以外にも紅羽ちゃんが話に補足を入れる。

てっきり食べるのに夢中で聞いてないかと思った。

というか魔物...って思うけど、もうここは私の知っている世界じゃないんだよね...。


「サクラ様の仰った通りです。

考えたくはありませんが、最悪の場合、すでに命を落としてしまっている可能性もございます。

事は一刻を争う状況となっておりますので、調査団を派遣し現在国内をくまなく調査中でございます。

...そして最後にもうひとつ。」


ジークさんが表情を変えた。

みんな息を飲んでジークさんの言葉を待つ。


「リバーサーの皆様には、お歌を歌って頂きます。」



...え?




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