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っていうか天使じゃない?本物じゃない???

だってほらここ教会だし。世界観もファンタジーだし。

聖女がいて、魔女がいて、魔法が使えるのなら天使もいるのでは!?!?


宗教画でよく見るふわふわとした髪、たまに差し込む陽の光に輝く銀髪。

くりくりとした大きな瞳は透き通った紫色。肌の色は白く、泣いていたらしい目も鼻も真っ赤になってしまっていて痛々しい。


やばい、天使にあってしまった…。

なんじゃこの可愛い生き物は…守ってあげたい……。


しかし私に怯えてるのは明らか。

さて、敵ではないとどう示したものか……、暫し思案し、ドレスのポケットからハンカチを取り出した。

飴ちゃんの一つでもあればいいんだけれど、知らない人からもらったものとか恐怖だろうし。

ついでにいえばこの世界で出会った食べ物は飴すらもまずい。

何したらこうなるの??食べたことないけどサル〇アッキなの????


そぅっとハンカチを差し出す。

ビクッと肩を跳ねさせて怯える姿がなんとも痛々しい…

って、いきなり無言でハンカチ渡されるのも怖いか、そうだよね。


「あの、私はリュゼ・パーガトリ。教会にはちょっと回復してもらうために来ていて…」


コミュ障つれえええええええええええ!!!!

こんな時何て言ったらいいんでしょうか!?

軽快なトークとかできませんよ!?したことないですよ???


「えぇと、今日はいい天気ですね。」


定番はまず天気だよね、うん。そう思って繰り出してみたけど天使様ぽかんとしてるよ!?

えぇと、えぇと…?????あと何、会話の引き出し…

初対面とする会話……天気…………????あと何かあったっけ??

ご趣味は…って見合いかよ!!今日はこれからどちらへ???いやいやいや!

好きな物???えぇー。何言ったらいいの?全然わからないんですけど??

最近会ったよもやま話とか??最近……??????


あぁあわからない!!頭抱えたくなってきた。とこっちも泣きそうになっていた所で、天使が笑った。

ふにゃって、柔らかく!!


「…ありがとう」

「ひぇっ!?」


シャベッタァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

もう脳内この言葉でいっぱいですよ。いや、しゃべるよね?しゃべらない可能性もあるけどしゃべる可能性のほうが多分大きいよねぇえ???


くすくすと天使が笑う。うああ可愛い…。なんかよくわからないけど落ち着いてくれたようだ。


「あの、どういたしまして?」

ハンカチを差し出したままの手をうろうろと動かすと、大丈夫、と断られてしまった。

どうやら自前のものがあるらしい、ちょっぴり残念である。


泣き止んでいるし、もうこの場を去った方がいいのかもしれない。

ほら、邪魔しやがってとか思われてたらことだし。自分の立場で考えたら……うーん、嬉しい気持ちとなんだこいつとだなぁ。


うろうろと視線をさまよわせていると、こてりと天使が小首をかしげた。

「どうしたの?」

いや、どうしたのはこっちの台詞だったんですけどね。えぇと…。

「いや、あの、迷惑だったかなぁ…と。」

俯きながらそう零す。善意っていうのは時として悪意よりも人を傷つけたりイラつかせたりするでしょう?

良かれとおもってのことだけれど、はたして…。

こんな聞き方はずるいとは思うけれど、他に言うべき言葉を私は知らない。


「少し驚いたけど、大丈夫」

「…そう?」


うん。と推定天使様が頷くのを不安になりながら見つめる。


「貴方は大丈夫?」

「え」


「回復に来たんでしょう?もう痛くない?」


えっ…あー…そっか。そうだよね、回復っていったらまぁ怪我とか病気とかだよね基本。

教会にはそういった人が集まるのか、と思うとますます病院染みている。

でもこの世界の病気や怪我はあのヒールでどうにかなるのかと思うと凄い事だ。

苦しみも教会にさえこれば、神父様にあって魔法をかけてもらえれば楽になれる。


そりゃあ信仰するよねぇ。

魔法があったら医療の進歩は難しそうだし…あぁでも魔女がいたんだっけ…

あれ?魔女ってあれだよね、薬草とか作ってる………ん?あれ?なんか嫌な事思いついてしまったぞ??


ほら、あのさ、魔女さんが薬草とか作るでしょ?

で、病気とか怪我とか、治すじゃん??即効性はなくても、時間をかけても。

軽度なものなら治すことができるでしょ?

教会がどこの町にもあるものなのか?それに教会だって慈善事業じゃないでしょ、多分。

オネットが神父様と出て行ったのは多分、ヒールしてもらったお礼として教会へお布施というか援助というか…

金一封みたいな。それなりのお金を包んでいたんだろう。

RPGの世界でも、お金を取られることが殆ど。まぁ、無料な奴もあるけど。

でもなぁー、この辺りはどうなんだろうなぁって所。

魔法の力でそれなりにさかえてるけど、それでもやっぱり暮らしに差はあって、カツカツな場所だってあるんじゃなかろうか。

そういった人々を教会は受け入れるのか?

だって私の件もそうでしょ?大臣の娘で貴族だから。

膨大な利益が望めるから。だから早めに会う機会を作ってくれたんじゃないの??


つまり、教会にとって魔女って邪魔だったのでは…?っていうね。

安いお金で薬草とか配ってたりしたら?

もしくは高く売ってたら??


どっちみち商売敵じゃないか?


教会の者にとって、魔女は邪魔だった。

だから、敵として、悪いものとして大義名分を作って、殺したのでは………?


あ。ブルっときた。もう考えるのはやめておこう。


「…まだ痛むの…?」


心配そうにこちらを見上げる天使様に、はっとする。

いかんいかん、答えも返さず妙な事を考えてしまった。


「うぅん。怪我をしてきたんじゃないの、ちょっと記憶が無くて…」

もう回復してもらったんだけどちっとも戻らなかったし。

あはは、と苦笑いするしかない。立場が逆転してる。

慰めようとしたはずなのに心配させてどうするよ私。


「記憶…」

「うん。でもなんとなくはあるから、多分大丈夫かなって思うんだ」

今回のも戻ればラッキーくらいだったし、そもそも夢だしなぁ…。

最初から無いのかもしれないものを取り戻すことはできるものなのか??

取り戻すっていうよりもあれかな?実績?

私は病院にいきました、これ診断書です。的な。

ちゃんと教会にいって、それでも治りませんでしたっていうのを証明?

怠慢じゃないですよ、ちゃんと動いてそのうえで駄目なんですよ、っていう。


「取り戻したくは、ないの?」

「うぅーん、あれば便利かもだけど…それほど?」


こてりと天使様が小首をかしげる。

いやぁしかし流石というかなんというか何しても様になるというか、その魅力は増すばかりでちっとも損なわれないというか…

凄い。凄すぎる。


「…力を貸して…」

「え」


そっと手を取られる。

小さな手、綺麗な真っ白な手が、私の手を優しく握って…


「キュアー」


ぽわぽわと白い光が周囲から浮かび上がり、私の中に吸い込まれる。

全身が、暖かくなって…



「…嘘…」


頭の中に、記憶が流れ込んでくる。

”私”の記憶。でも、知らない私の記憶。



私は、どうやら随分と長生きしたらしい。

家族が先に亡くなり、家庭を築くこともなく、一人。

一人ぼっちの家の中で、気づかれることもなく私は。


それで、それで”私”は私になった。

すぐだった、私の記憶のまま、気づいたら”私”は変わっていた。

今の私になって、そうして、何も知らないまま生きてきた。


なんて凝った夢。

夢、だよね?こんな、目が覚めたらきっと。


「貴方の魂は少し変わっているね。ここの皆とは違う、とても珍しい色…」


ハッとする。天使様はまだ私の手を握っている、光はもう見えないけれど、彼は私の先、どこかを見て。


「”夢じゃない”と精霊が言っているよ」

「せい、れい?」


夢じゃない?は??いやいやまさかそんな…。そう思った次の瞬間、頭が痛んでとっさに抑える。


「うん。貴方の精霊」


私の?なんぞ精霊…いや、魔法が使えるくらいだし、精霊とかいるのもあり得る。

というか私に精霊がいるの??ここの国の人は皆精霊がいるものなの?


「皆にはいないよ。たまに、そういう人がいるだけ」

「えっ」


口に出したっけ?と目を丸くする私に天使様が笑う。

「精霊が教えてくれる…、僕にもいる、光の精霊…」


光…なるほど神々しい…。

ん?あれ、精霊ってつまり”人”につくのつまりこの子は…


「フフッ、僕は、人間」


あぁあつつぬけぇ。ですよねー。

いやでも天使じゃないから何だというのか、どのみち可愛らしい事に違いは無い。

…っていうか私の精霊って一体?何故に私の心の声を伝えまくるのか??


「現実だって、わかってほしいから。」

「うぐぐ…」


現実。とは??

あれが、あの記憶が私の最後だっていうの?

それを、いきなり信じろと??


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