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ゲームの合間によく小説を読んでいた。
大宰だとか夏目だとか、そんな大それたものじゃなくて、いわゆる携帯小説とかいう奴。
そこで流行っていたのが、いわゆる異世界転生物で。
プレイしてた乙女ゲームだったり、全然関係ないファンタジーな世界だったりに転生して、なんやかんやで前世を思い出して、幸せになる奴。
そういうのを見るたびに、いいなぁ、私もそんなんなりてーわ。
なーんて考えてた。
えぇ。
考えてました。
でもね?いやほら、でもさぁ?
それってほぼほぼ絶対起こらないから夢見るもんでしょ?
いやいやまっさかー。そんなのないない。ってかるーく思ってた時代が私にもありました!!!!!
はい!なんか知らんが目覚めたら見知らぬ場所です。
頭はズキズキするし目は腫れぼったいし何これ?ここどこよ。
どこぞのテーマパークのホテルかってくらい豪華な広い洋風の部屋、天外つきのベッド。
若い子ならさぞ喜んだろうが、こちとらアラサー通り越してアラフォー独身女、しかも彼氏いない底辺パートでしてよオホホホホ。
って笑ってみても虚しいだけだ。
広いわ静かだわで反響してくる声がまた寂しさを募らせる。
いやほんとこれどんな状況?酒の飲みすぎでまた記憶なくなった?
しかしそれならここどこよ。勢いで高級ホテル宿泊?一泊おいくらか考えるのが怖すぎる・・・スィートとかいうあれだろうか。
とりあえず財布とスマホ・・・あとどっかに住所。
ずるりと重い体を引きずってベッドから出る。
そうして見えた己の体に一瞬頭が真っ白になった。
「なに、これ・・・」
ぽつり、無意識にこぼれた声に驚いて口を塞ぐ。
だって、え?なんで?足ほっそ!美脚!!色も白い!
って、いやいやいや、そうじゃない。なんか、小さい。
声だって聞き覚えがない。ガラガラとか、そういうのじゃなくて、まぁなんか可愛い?落ち着く?声っていうか。んんんわからん!
訳がわからなくて思わず全身触ってみるけど、触れば触るほどなんだこれ。
髪の毛、痛んでない。ツヤツヤでふわふわ。私ボブだったのに腰まであるし、なんと憧れのアッシュブロンド・・・!
頭もちっちゃい。首も腕もウエストも細い。っていうか、胸もない。
全体的に幼い感じだけど、パーツは良い。
これは期待できるのでは、とよろけながら立ち上がりなんとか鏡を探しだし、覗きこんだ先にいたのは。
白い肌、つやふわなアッシュブロンド、大きなつり目がちな翠の瞳、頬は薔薇色で、口も鼻も小さな、まさに姫、人生勝ち組!!な女の子だった。