白いバラのつぼみ
タイトルの白いバラのつぼみは花言葉から取りました
恋をするには若すぎる だそうです。
先生が好きだ。恋に恋してる。
でも先生がいうには私は先生に大人に憧れているだけだって。恋に恋してるんだよって。
中学生には中学生がお似合いだよって優しく笑う。
だから私は今日も自分の気持ちに嘘をついている。
「先生ー。好きだよー。」
そんな言葉に呆れたように先生は言った
「ったくー。神山も飽きないなぁ。」
にへへ。と笑いながら国語の教科書をペラペラと捲る。
先生は数学の先生だから国語はできるのかな?
そんなことを思いながら教科書の音読を始めた
「まだあげ初めし前髪の林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて林檎をわれにあたへしは薄紅の秋の実に人こひ初めしはじめなり」
はじめは急に音読を始めた私を困惑した表情で見ていた先生も私の読む詩に耳を傾けた
ちらりと先生を見てから続きを読む
「わがこゝろなきためいきのその髪の毛にかゝるときたのしき恋の盃を君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下におのづからなる細道は誰が踏みそめしかたみぞと問ひたまふこそこひしけれ」
先生は、変な顔で私を見ていた。
「先生意味わかる?」
すこしバカにした言葉だったかもしれないと思いながらも聞くと先生は頷いて言った
「その音読のチョイスはまぁ、なんていうか神山には早そうだけどな。」
そんな言葉にふふっと笑うと先生は視線をそらした。
「島崎藤村が恋した少女の年齢ってちょうど私くらいかな…?恋っていいな。羨ましい。」
そうだ。私はあの女の子達が羨ましかった。
先生に想いを伝えられたあの子達が。
だから蔑んでたんだ。
本気で恋したって結末がわかっているのに馬鹿馬鹿しい。
だから自分の気持ちを騙して好きを冗談らしく言っていた。本当の好きなんかじゃないって。
ただ、好きって。恋に恋したかのように自分自身をごまかしてた。
「まぁ、まだ神山は子供だからな。いつかわかるときがくるんじゃないか?」
それに私は曖昧に頷いた。だって気づいたのに言えない。だから、私は嘘をつき続けなきゃ。
「うん。ねぇせんせ?」
「んー?」
私を見つめる先生の瞳はやっぱり優しくて…
「んー、やっぱり好きだなぁって思ったんだー。」
なんて冗談っぽく呟いた。もしかしたら先生は気づいてるのかな?
どっちでもいいや。だって結局は嘘をつき続けなきゃ終わってしまう関係。
私と先生は生徒と教師だから