第一話
「返して!アンタのせいであの子は死んだのよ!」
冒頭から自分の子供に向かって険しい顔で暴言を吐きながら、物を投げているこの女は私の母である。
元々そんなに自分の子供に関心の無かった癖に、学校帰りに車で引かれそうになった私を歳の離れた姉が助けてくれたのだ。
だからと言って漫画みたいに姉が車に引かれて死んだ訳で無く、ただ膝を強く擦りむいたので、病院から検査の為に1日の検診が決まっただけである。
世間から見たら母は“異常”と言われる分類に入る人物だ。
まあ自分の子供にまで手を上げているのだから異常で無いと言い張っても信用されないだろう……。
私は母に事故に遭いそうになり、姉が助けてくれたと告げたら冒頭のような行動を起こしたのだ。
なんだかこの場面も飽きてきたので、私は自分の部屋に戻り内側から鍵を閉めた。
部屋の外で何か大声で叫んでいるが、私にはどうでも良い事だ。
部屋に入って煩く無ったので話を戻そう…
何故、私は車に引かれそうになったかと言うと……まあ、簡単に言うと聞こえていないからである
元々は聞こえていた。だが聞こえ過ぎていた。聞いてはいけないもの、知ってはいけない事実……
私の母は本当の血の繋がった母では無い。真っ赤な他人である。しいて言うならば、本当の母親を殺害した犯人だ。
理由は“私の姉を気に入った”と言う伯父さんみたいな馬鹿みたいな理由だが、そんな理由で母親は殺されたのだ。
母親が殺される2日前に出産したのが私である。
母は何度も私を殺そうとしたそうだが、私から言わせてみれば無謀な挑戦でしか無い。
私には痛覚が無い(後に聴覚が無くなる)。
気づくと何故か痛覚が無く、痛みを一切感じ無い
普通ではおかしい身体も生きていれば様になるのか、成長していくにつれてそんな事は気にしなくなった。
気にしていて生きているだけで時間の無駄である。
母は私に柔道や陸上を習い始めた
小学生になると、同い年の子供達は私をからかい始める。
痛みを感じない私をボールや物を投げつけ始めたのだ。
初めはずっと無視や偶然で済ましていたが、そうするとどんどんエスカレートして行き始めたので、私は主犯格の子に手加減したつもりで顔に一発殴った。
すると痛覚が無いので手加減したくても、手加減になっていなかったみたいで主犯格の子の右頬は赤く腫れ上がった。
それに逆上した主犯格の子は私に殴る体勢で走って来たが、私はその腕をそのまま引っ張り柔道の一本背負いを決めたのだ。
その夕方に主犯格の子の母親が怒鳴り込んで来たが、私が主犯格の子のこれまでの行為を話すと慌てて私に主犯格の子の頭を抑え謝らせた。
その日以来からの主犯格の子:朝妻 戦とは幼馴染みである。